サクラコ「アダム先生、リッカさん。ようこそお越しくださいました。ミサの準備は整っております。どうぞ、ご参加なさってくださいませ」
リッカ「うぅ…あまりにも厳かな雰囲気過ぎて背筋が伸びちゃうね…」
アダム「神への祈り…か」
リッカ「アダム先生?」
アダム「ここにいる資格は、私にはあまりないかもしれないが…」
パパポポ『そんな事はない』
アダム「!」
『愛する者の為に立ち上がる意志が、間違いであるはずがないのだから』
アダム「…………感謝する。万物の父」
若葉ヒナタ「先生。そしてリッカさん。ようこそ、シスターフッドへ」
伊落マリー「私達の祈りを、遠き座に在る主に…」
シスターフッド生徒「私達…このままお祈りし続けて意味があるのかな…」
シスターフッド生徒「何を言うの!」
シスターフッド生徒「な、なんだか…上手く言えないけど…祈りは届いてないんじゃないかなって…」
シスターフッド生徒「主を疑うの…!?怒りと罰が下るわよ!」
シスターフッド生徒「そ、そんなつもりじゃないんだってば…!」
パパポポ『…………』
リッカ「…示さなきゃね。パパポポ様。神の在処を」
パパポポ『あぁ、その通りだっポ』
リッカ「ふふ〜ん…実は私、脚本考えて来ちゃった!」
アダム先生「脚本…?」
リッカ「根回し完璧!あとは仕上げを御覧じろ…ってね!」
「神に仕え、神と共に生きる皆々様。今日、神はおっしゃいました。今日の日にこそ、神の御声は私達に語りかけてくださいます。悩みを、不安を、何より私達の愛を万物の父にへと届けましょう。皆様の祈りを、天の国への懸け橋としましょう。さぁ、パンと葡萄酒を持ち、かの父と同じ食卓にへと参列なさいましょう。神たる父の、久遠の愛をもたらされますように…」
サクラコの聖なる言葉と共に、手をかけ合わせ祈るシスターフッドのメンバー達。皆、ステンドグラスに映る主に敬虔な信仰を捧げる。永遠なる神の愛と祝福が、この地に在らんことをと。神の愛が、共に在らんことをとひたすらに祈る。
「神よ…」
「私達をお導きください…邪なる誘惑と、ゲヘナの野蛮な暴力から私達をお守りください…」
祈りが満ち、祈りが告げられた荘厳なる空間にて、ミサは粛々と行われる。
「偉大なる父よ、これからもよろしく頼む」
『勿論だっポ。…さて、リッカちゃんの脚本とはどの様なものか…』
リッカは静かに目を閉じ、パパポポに向けて祈っている。その粛々とした空間にて、ミサは荘厳なる進行を告げる。
「…何よ。特別なミサって、何も変わらないじゃない」
「せっかく、お休みを返上してきたのに…」
「サクラコ様、何を考えておいでなのかしら…」
すると、特別と銘打ちながらも変わらぬ祈りの場に不満の声が噴出する。此度のミサは突如組まれたもの。敬虔さを持つが学生である生徒から、声が聞こえ始める。
「一度くらいは姿を、せめて声を見せてもらいたいわ…」
「本当に私達、神に愛されているのかな…」
…預かり知らぬ事ではあるが。偽神の台頭により、神への信仰はゆらぎやすく変質している。信仰を貫くは、並大抵の難易度ではない。
シスター達が信仰に疑問を浮かべ、それを口にした…その時だった。
【──神の愛、神の祝福を疑うとはシスターが聞いて呆れるね。見返りを求める愛など、神に捧ぐには不純なものだ】
瞬間、大聖堂に厳かな、しかし何処までも他者を見下す傲慢に満ちた声が響く。そのただならぬ重圧に、生徒達は騒然となる。
「!!」
『この声は…!』
パパポポ、アダムには聞きおぼえのある…いや、聞き知った声。
「見て!あそこよ!」
生徒が指差したのは、神を表すステンドグラス。そこにいるものは…まさに神の不在の証。
【個人的にはその不信心は好ましいけれど…神を騙る獣は赦さない。塩の牢獄に囚われる前に、僕が救ってあげよう】
「さ、サタン…!サタンよ!サタンだわ!」
「あの、禍々しい六枚羽根…!間違いないわ…!」
神の敵対者。神への叛逆者。六枚羽根の大魔王。なんと…カルデアの同盟者のサタンが、シスターフッドの大聖堂へと侵攻を果たしたのだ。悪魔の首魁、戦慄の大魔王の出現に場が騒然となる。
【さぁ、神の実在を疑う不信心者よ!その魂、僕が連れて行く!最後の晩餐に並ぶがいい──供物として!】
騒然となる大聖堂に、サタンは問答無用の破壊を齎す。生徒達を脅かすように、無数の…物理的な弾丸をコーティングした当たると痛い装飾弾を撃ち放つ。
「きゃあぁあぁあっ!サタンよ!サタンが私達を地獄に招きに来たのよ!」
「た、助けて…!サタンになんか、勝てるわけ無い…!」
神に祈るのであれば、サタンがどれほど位の高い存在か知らぬはずもない。悪魔など及びもつかぬ存在に、生徒達の心は即座に折れてしまう。
「あ、あかない!扉が開かないわ!」
「嘘よ、そんな…!は、早く正義実現委員会に連絡を!」
「助けて…!まだ、死にたくない…!」
混乱と混沌の最中、サタンによる侵攻に大聖堂は蹂躙される。そこはまさに地獄絵図──。
「皆。平静を喪ってはなりません」
しかし。サタンを前にして、サクラコ、ヒナタ、マリーの三人は微塵も揺らがなかった。
「私達を、必ず御守りくださいます。慈悲深き我等が主、父たる方は」
「そうです。故に──祈りましょう」
「私達の日頃の願いが、偽りでないと示すために」
【へぇ……。見所あるね、君達】
「サタンよ。邪悪なる蛇よ。暴虐と暴力で信仰を揺るがすことはできません」
サタンに…サクラコは毅然と告げる。邪悪なる悪魔たる存在そのものの大魔王に向けて。
「私達は神と共に生きるのです。蛇たるあなたに…私達は決して屈しません!」
【──言ってくれるじゃないか。ならば天国の門の向こうに行くと良い。そこで何が待つのかを…!】
一際大きい…クラッカー弾を黒塗りにした波動を作り、サクラコに向けて放たんとするサタン。サクラコは尚も、目を閉じ、祈りを止めない。
「主よ。この身を捧げます──」
「サクラコ様!!」「危ない!!」
サクラコに、波動が叩き付けられる───その時であった。
『────偉大なる慈悲深き父は、決して子らを見捨てません』
「……!!」
その弾を阻んだもの。それは、奇跡たる者の具現。
『神は常に…我等と共にありましょう』
青と白の神衣。神々しき羽根。鎌と本を持ち、慈愛に満ちたその姿。後光差す姿を、サクラコは識る。
「サリエル──様」
サリエル。──カルデアにおける治療により蘇った慈悲と裁きの大天使が、サクラコを護ったのだ。
『えぇ。神の子たる皆様を護りましょう』
【サリエル…!フフ、天界を思い出すね】
『ルシ…サタンよ。あなたを退けます』
そのまま、サタンとサリエルは激しい斬り合いと戦いを演じる。教会にて、慈悲の歌を流すその空間はまさに神話の一幕。鎌と羽根の激突は、天界の決戦の再演。
【無駄だよサリエル。ミカエル、ラファエル、ウリエルにガブリエル。纏めて僕に敵わなかったのにどうして君が僕に勝てる?】
『ッ………』
【滅びると良い。かつての天界の彼等のように!】
サタンもサリエルに負けるつもりはなく、その戦いは少しずつ劣勢になっていく!
しかし──。
「サリエル様!どうか蛇に負けないで!」
『!』
「頑張って、サリエル様!」
「私達が間違っていました…!神はこうして、私達を助ける使いをくださった!」
「どうか不信心をお許し下さい…!私達は、神とあなたを信じています!」
サリエルの姿に、一人、また一人と生徒達が膝を折り祈る。神の奇跡、その実在を知ったが故だ。サリエルに、祈りが一つ一つ積み重なる。
「サリエル様…どうか悪魔を討ち果たしてください…」
「私達の祈りを、どうか…」
「サリエル様…!」
【現金な事だね。姿を見せねば愛してもらえない、ちっぽけな絆だ】
『ちっぽけだから…護るのでしょう』
【…!】
瞬間、サリエルの鎌がサタンを圧す。その力は、サタンの知らぬ力。
【シスターフッド達の力を…祈りを力にしたのか…!サリエル…!】
『慈悲とは、見返りを望まぬ奉仕の心です。サタン…ルシファー』
【……良かった。もうすっかり元気みたいだね──】
押し返され、サタンはサリエルに斬り伏せられた。影に沈むように、サタンは霧散し消えていく。
「あぁ、サリエル様──!」「サリエル様がサタンを討ち果たしたわ!」「あぁ、主よ──!」
歓声が大聖堂に満ちる。サリエルへの祝福が、祈りとなる。そして──
『───愛する子らよ』
「「「「「「「──────!!!」」」」」」」
『私は、君達の全てを愛し、祝福しよう』
そこにいる者達、全ては聞き及んだ。
その声の主たる者を。その声が、何者かである事を魂にて理解した。
『君達の、輝ける青春に───』
一人、また一人と膝を折り、頭を垂れて祈りを捧げる。
サリエルと、その頭の上に厳かに乗る聖霊──
『───光あれ』
輝ける、大いなる主にへと。涙を流し祈りを捧げたという。
パパポポ「いや〜、緊張したッポ。久々に神っぽい事した」
アダム「生徒は愚か、サクラコ達も泣いていたな。余程嬉しかったのだろう」
パパポポ「ファンを大事にするのは当たり前。強く生きてほしいッポ」
サタン【ちぇー。またこんな役かぁ】
リッカ「ありがとう!ルシファー!」
サタン【ふふん、いいのいいの。カルデアの皆の頼みなら大歓迎だよ♪サリエルも良かったね!】
サリエル『無事に快復致しました。多分勝ってましたよ』
サタン【ふふ、またやろうか!じゃあね!リッカちゃんにアダム先生!】
アダム「…手回ししていたとはな」
リッカ「言ったでしょ?御覧じろって!」
アダム「カルデアのマスター、恐るべし…だな。さて、ではカルデアに…」
?「あ、先生じゃんね〜☆やほー!」
リッカ「!」
聖園ミカ「噂は聞いてるよ。良かったらお茶でもしない?」
パパポポ『ポ…』
ミカ「リッカちゃん…だっけ?あなたも良かったら♪」
シスターフッドの次に…
トリニティ最高戦力に目をつけられし一行であった。
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