人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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シャーレ 

アダム「アビドスに加え、ゲヘナ、ミレニアム。三大学校の二つはカバーした。後は最後のトリニティ総合学園で一先ずの一区切りにしよう」

リッカ「トリニティ…確かパパポポ様の言ってた相性のいい学園だっけ」

パパポポ『そうそう。ゲヘナと対となるお嬢様学園…神の信仰に生きる皆がいる素敵な学校。今のリッカちゃんも通えるような綺麗な学園だっポよ』

リッカ「えー!えへへ、お嬢様デビューかぁ〜!長かった下積み…というか私ゲヘナ風紀委員なんだけど!スパイじゃん!?」

アダム「そこはシャーレと割り切るしか無いな。…しかし今は、エデン条約を控え観光という雰囲気ではなさそうだが…」

リッカ「エデン条約…?」

パパポポ『ざっくり言って、対立関係にあるゲヘナとトリニティが結ぶ調停条約だっポ。近々行われるからピリピリしていてね…』

リッカ「じゃあ行くのは厳しいかぁ…ゲヘナがいたらえらい騒ぎだし…」

アダム「何かしらきっかけがあればいいのだが…ん?」

リッカ「どったの?」

アダム「……そのきっかけがやってきた。トリニティ最大勢力の一つ、シスターフッドの首魁が来てくれた」

パパポポ『シスターフッド!私のファンクラブだっポ〜』

リッカ「あぁ、主に仕える的な意味で…」

アダム「相談があるそうだ。…サクラコ。入ってくれ」

歌住サクラコ「わっぴ〜☆」

パパポポ『!?』

リッカ「わっぴ〜☆」

歌住サクラコ「!?!?!?」

リッカ「どうして挨拶した方が驚いているの!?」

サクラコ「…あなたから、神秘を感じます。これは…天使…!?」

リッカ「あ……」

パパポポ『…ジブリール…』


トリニティ〜神の不在〜

トリニティ総合学園───

 

学園都市キヴォトスにおいて三大学園に数えられる一大勢力。

 

ミッション系のお嬢様学校といった雰囲気であり、礼拝堂や古書館、音楽堂といった施設を有し、校舎は宮殿の様な佇まいとなっている。領内には水質の良い湖もあるらしい。

 

 

宿敵・ゲヘナ学園と並ぶマンモス校であり、粗暴で自由気ままな問題児が多いゲヘナとは対照的に、優雅かつ善良な生徒が多く、一見、お嬢様学校といった印象を受けるが、一部では生徒間で陰湿なイジメが行われていたり、派閥の内外を問わず互いの足をすくい合うような騙し合いが横行していたりと、陰謀策謀渦巻くドロドロとした人間関係も垣間見える学校である。

 

 

大昔、トリニティ自治区には幾つもの学園がひしめいており、散発していた学校間での紛争を避けるべく、各校代表が会談を行うために設けられた場を「ティーパーティー」と呼んでいた。

 

 

やがて各学園は「第一回公会議」における合意を以って、「パテル」「フィリウス」「サンクトゥス」という3つの主要な学園を中心とした連合を形成。トリニティ総合学園という一つの学校へと統合していくこととなる。

 

この時、統合に反対の立場をとったアリウス分派は連合となったトリニティから迫害を受け、本来の自治区からも追放。キヴォトスの表舞台から姿を消した。

 

 

トリニティ総合学園となった現在もティーパーティーは生徒会という形で残っており、3派から選ばれた首長が最高権限者である「ホスト」を回り持ちで務める三頭政治体制を敷いている。

 

「エデン条約」編では本来のホストである百合園セイアが諸事情から入院しており、代わりに桐藤ナギサがホストの役割を担うという特例も示されている。

 

 

政治と関わりの薄い一般生徒たちの中には派閥の存在すら把握していない者も多いが、3派以外の一部の派閥も部活という形で系譜を繋いでおり、各部活が独自の情報網や組織体制を持っているなど、ティーパーティーでも把握しきれていない面がある。

 

また、派閥意識の強い生徒・集団は学園の指揮系統が機能しなくなった場合に自己判断で動こうとする性質も強く、潜在的に多くの火種を抱えている。

 

 

ゲヘナ学園とは古くから確執があり、それを解消する為に当代の連邦生徒会長の主導で「エデン条約」を結ぶ運びとなる。

 

 

そして、シスターフッドとはトリニティ総合学園の部活の一つ。本部は同校内にある大聖堂。

 

シスター服のような制服や十字架モチーフのヘイローといった宗教的な要素を持つ生徒達が所属している。

 

 

現状判明している主要な部員はリーダーである「歌住サクラコ」、大きなカバンを持ち歩き備品管理を担当している「若葉ヒナタ」、猫耳フードの新米シスター「伊落マリー」の3人。

 

また、前髪が長い一般生徒(携帯火器はガリル)も大勢所属している。

 

メンバーの言動や(特にカトリックにおける)女子修道会を指す部名の通り、「唯一神教」を信仰しているものと思われる。

 

その活動内容もトリニティ大聖堂や関連施設の維持・管理、生徒達の懺悔を聞く等のカウンセリング、ミサを通しての啓発活動などシスターらしい慈善活動が中心。変わりどころでは銀の弾丸の提供なども行なっている。

 

一方、その前身はユスティナ聖徒会と呼ばれる治安維持組織で、強大な権力を有し、懲罰活動などの武力行使を行う秘密警察じみたものだった。

 

その為か、今もなお生徒会に相当する「ティーパーティー」の管轄下にない一定の武力や発言力、独自の指揮系統や情報網を有しており、トリニティの中でも大きな発言力を有した派閥を形成している。

 

ただし、表向きは政治活動への不参加を表明しており、当初はトリニティーにおける決定権や政治力を放棄している状態にある。

 

 

「改めまして、シスターフッドの歌住サクラコです。このような夜分に足を運び、大変申し訳ありません」

 

彼女は歌住サクラコ。部活「シスターフッド」を取りまとめる中心人物。

 

真面目で聡明な性格であり、不干渉主義を貫いていた独立集団シスターフッドのリーダーとして政治力も持つ。

 

キヴォトスに伝わる「古代語」(ラテン語と思しい言語)を読める技能を持っている数少ない人物でもある。

 

多くの生徒から信頼を集める一方、真面目すぎるせいで世間の流行や常識にはかなり疎い様子。さらにお堅い印象を与えがちなシスターフッドの長であることも相まって「堅苦しい」「気難しい」「怖い」というイメージを持たれていることを少々気にしている。

 

「先の挨拶は、私なりの友好的な挨拶を模索した一端であったのですが…藤丸リッカさん。返してくださりありがとうございます。あなたは、清らかな方なのですね」

 

「ヘイローはマジでめちゃくちゃ禍々しいんですけどね!」

 

『まさかサクラコ君が直々に来るとは…かなり切実なはずだっポ。話聞いてあげてほしいッポ』

 

パパポポ的には、自身に敬虔な祈りを捧げてくれる可愛い信徒なのだろう。此度はパパポポが乗り気であった。サクラコは一息ついた後、語り出す。

 

「実は、こうして無礼を承知でアダム先生にご相談に来たのは…。…神に仕えるものとして、あまりに不敬なのですが…」

 

「心配はいらない。話してほしい」

 

「……近頃、疑問に思ってしまうのです。私達の祈りは、本当に尊き主に、その御心に届いているのだろうか…と」

 

「「……!!」」

 

それは──今世に蔓延る神の不在の一端に触れる、いや…確信にも近い悩みの吐露であり、敬虔なシスターが、本来懐いてはならない煩悶に他ならなかった。

 

「我々は、万物の主たる父に身も心も捧げ、日々をその慈愛の中で生きる幸福に包まれながら過ごしています。…ですが、祈れど祈れど、私の中で、どこか得も言われぬ不安に思えてしまう」

 

『サクラコちゃん……』

 

「神の慈悲、神の慈愛。それを齎してくださる天の父への祈り。ソレは…正しく伝わっているのだろうかと。御座に座りしものは唯一人。そこにおわすは我等が父。そう、それは当然な筈なのに」

 

そう思っても、違和感は拭えない。天に父はおわすのか。本当におわす父は慈悲を有する方なのか。祈りを捧げれば捧げるほど、サクラコの疑問は深まっていくのだという。

 

「神の教えを啓発する立場の私が、このような悩みを持つことそのものが罪深き事。しかし、我々が信じるべき父はたった一人。…万が一、万が一にも…」

 

「サクラコ様…」

 

「神が天におわさない、我々の愛する父がいないのであれば。我々の祈りを受け取る『誰か』とは何者なのか…と。このように、考えてしまって…」

 

アダムも、リッカも、彼女の…シスターフッドの信仰心が紛れもない本物であることを心より理解できた。

 

今の世界に、唯一神たる存在はいない。偽神に殺され、デミウルゴスが神の座と力を自身の為に振るい続けている現状だ。

 

そんな事実を、地上の人は知る由もない。故にこそ『神の不在』を感じたのなら…偽神に信仰を貪られる事を厭うたのならば。それは紛れもない、神への真なる信仰だ。

 

「…このままでは、私は…祈ることすらもできなくなってしまうやもしれないと…弱気になってしまって…」

 

「サクラコ、君は…」

 

「懺悔室でも、このような悩みは打ち明けられませんので。先生と、リッカさんに聞き及んでもらったのです。すみませんでした、このような世迷い言を…」

 

シスターが、神の在処を疑う。それはあまりにも勇気のいる試みだっただろう。エデン条約を控えた中でも、まさにそれは存在意義の基盤に関わる悩みだ。

 

「申し訳ありません。答えなど、神の在処など誰にも解るはずが無いと言うのに。戯言を、大変失礼致しました」

 

その疑問を恥とするほど敬虔な彼女の悩みを…

 

『…アダム、リッカちゃん』

 

慈悲深き父が、見過ごす筈はなく。

 

『どうか…彼女の不安を、晴らしてはくれないか』

 

父たる鳩が、静かに頭を下げた。




リッカ「サクラコ様。明日やりましょう。ミサを!」

サクラコ「り、リッカさん…?」

リッカ「盲信じゃなく、神様を案じるその優しさに、父はきっと応えてくれます!だからやりましょう、ミサを!」

サクラコ「リッカさん…」

アダム「私も……祈ろう。君が疎む偽りの神でなく、真に慈悲深き我等が父に」

リッカ「私達もシスターフッド会合に行きます!だから、サクラコさん!信仰を、捨てないでください!」

サクラコ「アダム先生…リッカさん…。…はい!では明日、特別に大聖堂を開放します。是非ともいらしてください!」

アダム(父よ、解っているな)

パパポポ『勿論だっポ』

リッカ「明日聞けますよ!神様の声を!!」

リッカ達が心強く、サクラコの背を押す。

サクラコ「…はい!」

そして、その帰路にて…

『──ありがとう。敬虔なる君よ』

サクラコ「───!」

サクラコは、優しく大いなる意思を感じ取ったと言う。

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