人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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風紀委員会 委員長室

ヒナ「というわけで、アダム先生からの推薦応援要因の藤丸リッカよ。一日、彼女は風紀委員会の一員として働いてもらうことになったから」

リッカ「よろしくお願いします!好きなものはコミュニケーションとサブカルチャー全般!嫌いなものは先入観です!」

天雨アコ「アダム先生からの推薦…まぁ、それなら使えないということはありませんね。天雨アコ。行政官です。精々頑張ってくださいね?」

リッカ「よろしくお願いします!なんですかそのヨコチチスリットスカートハレンチな格好は!」

天雨アコ「はぁ!?極めて規律的な服装です!」

銀鏡イオリ「銀鏡イオリだ。よろしくお願いします!!(最敬礼)」

リッカ「!?」

「し、しまった…!アダム先生が私に詳しい謝罪の仕方なんか教えたせいで身体が勝手に…!」

チナツ「火宮チナツです。医療支援はお任せを。…あなたがどれくらいの存在かは、まだ解りませんが」

リッカ「お任せください!一日で爪痕を残してやりますよ!」

ヒナ「このメンバーが主要。さて、リッカ。一日しか時間がないけれど…どうやって風紀を維持する気?」

リッカ「私に秘策あり!ではまずヒナ委員長!──一日、のんびりしましょう!」

ヒナ「─────え?」


木を隠すなら森の中、人を隠すなら人の中。呂布を隠すならモブの中

風紀委員長、空崎ヒナ病欠────。

 

この達しが風紀委員…否、ゲヘナの首魁組織『万魔殿(パンデモニウム・ソサエティ)』からゲヘナ全域に広報された事により、ゲヘナ学園全体は大波乱と混沌を巻き起こす事となる。

 

「ハーッハッハッハ!風紀委員長が体調管理不届きとは語るに落ちたな!風紀委員はヒナのワンマン!カレーを抜いたカレーライス程マズいカレーはないものだ!」

 

「温泉開発し放題だね!部長!」

 

「その通り!さぁ行くぞ、鬼の居ぬ間に洗濯ならぬ!風紀委員長のいぬ間に温泉だ!!」

 

温泉開発部がここぞと言わんばかりに、人員を総動員し温泉開発を決行───。

 

 

「まぁ。ゲヘナ風紀委員長ともなれば身体を壊すレベルで無理をしていたのですね…」

 

「これは素敵な食材を持ってお見舞いに行くほかありませんね〜☆」

 

「辛いときには美味しいものが一番!」

 

「でも…なんかおかしいような…わざわざ病欠を広めるなんて…」

 

「これは美味しいお見舞いを持って来いとのメッセージ…!ヒナさん、確かに承りました!美食研究会、その期待に応えましょう!」

 

美食研究会がヒナへの見舞いの為に、美食活動を開始──。

 

 

「風紀委員長が風邪だぁ?」

 

「つまり今の私らを止める奴らは誰もいねぇ!」

 

「空があんなに青いから──暴れ倒してやるぜぇー!!」

 

ゲヘナ学園の不良達が、秩序の消えたゲヘナにて輪にかけて暴れ回る始末…。

 

空崎ヒナがいなくなっただけで、彼女が抑え込んでいた全てがこうして問題噴出する始末。そう、彼女は圧倒的であるが故に、彼女以外の全てが侮られているのだ。

 

最早ゲヘナ全域に広がった混沌は抑えきれぬのか。ゲヘナに住む、僅かばかりの善良な生徒はその事実を大いに嘆いた。

 

だが───その一日においては。

 

風紀委員会の武力と精度は、前日とは比べ物にならぬものであった。

 

〜ゲヘナ学園生徒達の暴走

 

「ヒャッハー!!ドンパチだ、破壊だー!!」

 

「風紀委員長がいない以上!私達の天下だー!!」

 

不良達が好き勝手に暴れ倒す。無秩序の権化たる者達が、銃を乱射し破壊の限りを尽くす。それらは、全て空崎ヒナ不在の間隙を縫ったものだ。

 

彼女らにとって、ヒナなき風紀委員会など無力。だが……

 

「「「「「「風紀委員、現着!!」」」」」」

 

「あん?」

 

風紀委員会は、数多の部員で構成されている。ここにいるのはネームドではない一般生徒普段ならば、数の足しにもならぬ取るに足らない存在であり戦力には心許ない。

 

「ハッ。風紀委員のザコどもが何しに来やがった?」

 

「私等を止めたかったら委員長を呼べよ委員長をよ!!」

 

当然、不良達は彼女らを侮り、侮蔑する。しかし───。

 

「今の私達は、ヒナ委員長の不在を預かる身!!風紀委員が委員長のワンマンでないことを!野蛮なアウトローに見せてやれ!!」

 

「「「「「「了解です!リッカ隊長!!」」」」」」

 

「戦闘開始!!全員ブタ箱にぶち込んでやれェーッ!!」

 

「「「「「「「突撃ーーーーッ!!!」」」」」」」

 

今の彼女達には、数多のサーヴァントと共に戦い戦術眼を鍛えに鍛え上げたリッカという隊長、指揮官が存在している。アダム先生、シャーレビースト対策委員会元締め、ギルガメッシュ顧問からのロイヤルプリン五個を支給された風紀委員達のリッカによる統率は、まさに常軌を逸していた。

 

「な、なんだこいつら!?なんでこんなに強いんだ!?」

 

「クソッ!どうなってるんだ、押し潰される!?」

 

「数はこっちが勝っている!!ロイヤルプリンを食べた皆は無敵だ!!自由と無秩序を履き違えたアウトロー共に風紀のなんたるかを叩き込め!!」

 

「「「「「「了解!!」」」」」」

 

「風紀は皆で護るんだ!!君達を侮った奴等に地獄を見せろ!!さぁ、押し潰せーッ!!」

 

「「「「「「「風紀執行ー!!!」」」」」」」

 

「「「「うわああぁあぁあぁあぁあ!?」」」」

 

完全なる風紀と統率を叩き込まれた烏合の衆は精鋭部隊になり、リッカの指揮によりゲヘナ学園全域の散発的犯行を完全鎮圧。

 

 

「リッカ隊長!不良生徒達は皆鎮圧、捕縛致しました!隊長の指揮の賜物です!」

 

「それは違うよ。風紀を愛する皆の勝利だ!私達は風紀委員!!空崎ヒナの理想を抱く者達だーッ!!」

 

「「「「「「うぉおぉおぉーっ!!!」」」」」」

 

リッカはこの活躍にて、『風紀委員全員の練度の底上げ』を示した。

 

不良達は皆、厚生局に懲罰房、並びに救護室送りとなったという。

 

〜温泉開発部

 

キヴォトス学園都市の部活の一つで、名前の通り各地で温泉を求めて開拓活動をしている。

 

これだけ聞くと物珍しくもアウトドア系の真っ当そうな部活だが、問題なのは温泉開発のためならそこが市街地だろうが他校自治区だろうが首を突っ込んでは、それを口実とするかのような大規模な破壊活動を行う、異常としか表現しようがない熱意と、「実際温泉が見つかるかどうかや、開発の過程で周囲にもたらす被害など知ったこっちゃない」としか考えてないようなそれ以外への無頓着さ。

 

そのせいで特に対立関係にあるトリニティの正義実現委員会からは美食研究会共々テロリストとまで言われており、風紀委員会を悩ませている。

 

だが───。

 

「ぶ、部長ー!アジト周辺を囲まれてるよー!」

 

赤髪の部員、下倉メグが部長と思わしき小柄な少女に声をかける。彼女らは200人を越えるマンモス部活だが、そのアジトが今、大量の風紀委員に完全に囲まれ包囲殲滅の憂き目にあっていた。

 

「ちぃ…!空崎ヒナは本当に病欠なのか!?風紀委員の対応が早すぎる…!」

 

部長、鬼怒川カスミの懸念は最もであった。普段ならば歯牙にもかけない有象無象の風紀委員。ヒナは愚か切り込み隊長のイオリすらいない雑魚の群れ。それが今、温泉開発部の一斉摘発に王手をかけてすらいるのだ。良くも悪くもヒナのワンマンとたかを括っていたカスミは、その不可解に混乱を隠せない。

 

「うわわわ、もしかして今日一日かけてするつもりだったゲヘナ大温泉地域計画用に持ち出したマグマ刺激用機材がバレちゃったのかなー!?」

 

「いや、そんなまさか…。…!?まさか、これが狙いだったのか風紀委員会!?」

 

「どういう事〜!?」

 

「風紀委員会の中にいる指揮官を探せ!この動きにはまず間違いなく指揮者がいるはずだ!虱潰しに探すんだ!」

 

「だ、ダメだよ〜!皆似たような格好で誰が誰だか解らないよ〜!皆混乱してて滅茶苦茶になってるー!」

 

「えぇい、らしくない小細工を風紀委員会どもめ!!空崎ヒナ病欠の報は最初から、私達を吊り出すフェイク───」

 

そう、カスミ部長が思い至ったその瞬間だった。

 

「部長、空から──」

 

「は───ひ、ひぇえぇえぇええぇえぇえぇ!!??」

 

温泉開発部アジトに『サテライトレーザー』が叩き込まれ、ゲヘナ学園全域温泉開発都市化計画という名の環境破壊計画は頓挫する。

 

「見ろ!邪悪なテロリスト達の本拠地は壊滅した!風紀委員会の勝利だ!!」

 

「「「「ばんざーい!風紀委員会ばんざーい!!」」」」

 

「気絶している下倉メグと鬼怒川カスミを確保し搬送せよ!部員は纏めて収容だ!!」

 

リッカの存在を隠した、風紀委員達の力を引き出した圧殺戦法により、温泉開発部はほぼ壊滅。当分の活動停止処分と相成った──。

 

 

〜美食研究会

 

部活の一つで、料理のレビューや食事に対する探究活動を行っている。

 

“@EATorDIEOfficial”というSNSアカウントを運用しており、そこから随時情報を発信している模様。

 

部員は黒舘ハルナ、赤司ジュンコ、鰐渕アカリ、獅子堂イズミ。

 

「美食」という名を冠しているが、脂っこいもの好きや大食いフードファイター、ゲテモノ好きなどキワモノが多い。

 

しかし、各々の好みの中でしっかりと食と味について探究を行っている。

 

 

美食への道を阻害する物や食べ物に対する冒涜は、たとえ風紀委員会相手でも容赦せず徹底的に制裁する。(レストランや学生食堂を爆破、大食いメニューを徹底的に食らい尽くす等)

 

ただし、明らかに飲食店側に非がある事例も判明しており、また給食部襲撃事件のようにやむを得ない事情を前にした場合には、むしろ手伝いを申し出る一面もあるため、過剰報復とはいえど一概に美食研究会が悪いというわけではないようだ。

 

 

とは言えその振舞い故、自校の風紀委員会から睨まれているのは当然として、特にトリニティの正義実現委員会からは温泉開発部と並ぶテロリストととまで言われている。実際、戦闘に関してはわずか4人ながら正義実現委員会がツルギ到着まで太刀打ちできなかった辺り、200人近い部員数に任せた人海戦術を主とする温泉開発部とは対照的に、1人あたりの戦力比だけ見ればキヴォトスでもかなりの実力武闘派組織に当たる様子。

 

更にてミレニアムのC&Cからも不穏分子として警戒されていることが判明した。

 

「包囲したぞ!美食研究会!」

 

「大人しく観念しろ!!」

 

『空崎ヒナにとびきり精のつくものを』と、ミノタウロスを有するアダムのファームに向かっていた所を風紀委員達に取り囲まれた美食研究会。黒舘ハルナが嘆く。

 

「なぜ風紀委員の皆さまが邪魔をするのです?ヒナさんの身を案じる気持ちは一緒ですのに」

 

「アダム先生のファームに手を出す気なのは分かってるんだ!」

「あそこは私達の憩いの場でもあるんだ、やめろ!」

 

「ん〜、でも私達前々からアダム先生の飼う幻獣を召し上がりたいという気持ちもありまして〜…」

 

「いい機会だから…お願いしに行こうかなって!」

 

「そ、そうよ!せめてこう、ちょっとくらい…」

 

「ふざけるな!アダム先生の仲間、コン様の友達を食べさせるか!」

 

「リッカ隊長!包囲完了!四人います!」

 

「リッカ…?」

 

風紀委員に名を呼ばれ、刀を構えたモブ生徒が歩み出る。

 

「見慣れない顔ね…?隊長なんていたの?あんたたちに?」

 

「ジュンコさん、まずは御挨拶をなさらなくては。こんにちは。私は黒舘ハルナと申します。あなたは…」

 

「風紀委員、風紀部隊隊長藤丸リッカ。──」

 

そして、リッカと名乗ったモブ生徒は──

 

「───貴女達を捕える、風紀委員です!」

 

「え…」「ぁ…」「はうっ…」「うそ──」

 

瞬間、四人が糸が切れたように倒れる。リッカの手にはいつの間にか、刀が握られていた。

 

彼女達は少数精鋭であるが、数が少ない。──その力を上回る役割をあてがえば鎮圧は可能だ。ヒナが不在という油断が…

 

モブに紛れていた、龍を見落とす事となった。

 

「美食研究会を無力化!確保!!」

 

「「「「「確保ー!!」」」」」

 

「空崎ヒナ委員長の不在を契機に決起した諸悪は全て皆が鎮圧した!これは風紀委員がヒナ委員長だけの存在ではないという事の何よりの証拠になった!!」

 

刀を納め、リッカが鼓舞する。──特記戦力頼りの風紀委員会を脱却し、これから目指すべき姿の在り方を示し。

 

「皆の奮闘と頑張りで、ゲヘナの風紀を護り抜こう!!ヒナ委員長はたった一人だ!彼女だけに風紀を任せてはいけない!一人一人が強くあれ!正しくあれ!タフであれ!!」

 

リッカは力強く、皆を激励する。 

 

「風紀委員会は此処にあり!!ヒナ委員長の旗の下、私達は戦い続けるぞーっ!!」

 

「「「「「「うおおぉーっ!!!!」」」」」」

 

ヒナに頼りきりでなくとも…

 

風紀委員会には、改善改革の余地があるのだと。

 

 

────この日は『空崎の風と風紀の新風』として、キヴォトスで話題になったとか。




帰路

ヒナ「まさか、私が何もせずとも問題を解決できる日が来るなんて…」

リッカ「ヒナ委員長が不要だなんて思わないでくださいね。ヒナ委員長だけのワンマン、組織として歪だったので、改革パターンを示しただけの話ですから!」

ヒナ「えぇ。アコもイオリも感嘆していた。風紀委員全体の力を、侮っていたって。これからは指揮や統率にも力を入れるつもり」

リッカ「良かった!一日風紀委員の役割は果たせたみたいで!」

ヒナ「素晴らしかったわ。流石、アダム先生の養子さんね」

リッカ「えへへ…」

ヒナ「……風紀委員指揮官の座は、空席にしておくわ」

リッカ「!」

ヒナ「またいつでも参加してちょうだい。アダム先生も、あなたも、歓迎するわ」

リッカ「──!」

ヒナ「これからも、よろしくね。リッカ」

リッカ「はい!!」

──余談だが。

今日リッカの持っていた銃はデリンジャー…

並びにオルガマリーから借り受けた『フリージア』『アニムスフィア』である。


おまけ 万魔殿

オルガマリー「私はスーパー便利屋の下っ端よ」

マコト「スーパー便利屋!?」

オルガマリー「風紀委員への不当な嫌がらせを控えてもらうために来たわ」

マコト「なんだと!?なぜ便利屋がそんな…!」

オルガマリー「答えは?」

マコト「呑むわけが無いだろう!ふざけるな!」

オルガマリー「そう。…なら、これは見える?」

イブキ『マコトー!イブキ、素敵なチョーカー貰った〜!』

マコト「い、イブキ…!」

オルガマリー「万魔殿のアイドル、マスコット、鎹。可愛いわね」

マコト「き、貴様…!」

「首から上が吹き飛んでも、貴女達は彼女をイブキと呼べるのかしら」

マコト「や、やめろおぉぉ!!解った!要求を、要求を呑む!だからイブキにだけは手を出すなぁあ!!」

オルガマリー「忘れてはダメよ。…アイドルは大切にしないとね」

オルガマリー(まぁ、アレはただの光る手作りチョーカーなんだけど…抑止力にはなるでしょう)

マコト「……おのれ…赦さんぞ…」

「絶対に赦さんぞ、陸八魔アル…!!!」

こうして、ゲヘナ全域の犯罪件数は少しずつ減っていき…


ヒナ(アダム先生に早く会いたい…♪)

ヒナの負担は、グッと下がったという。

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