人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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リッカ「いっぱいフレンド増えちゃったぁ。これだから誰かを助けるのはやめられないよね!誰かを助けると、自分も嬉しい!」


アジーカ【WinWin】

アンリマユ【家主様の喜びは借り主様の喜び、っと。ちぃと気を付けたほうがいいかもだけどな】

リッカ「え?」

アンリマユ【さっきの特異点…獣くせぇ臭いがした。ビーストIFならまだぶん殴って解らせられるが、本来のビーストなら…また人類総決戦だぜ?】

リッカ「〜。もしそうなったとしても、大丈夫!いつもみたいに、皆で全力で乗り越えるだけだよ!」

アジーカ【勝つのは私達】

アンリマユ【へっ、だな。…あ〜、その…】

リッカ「?」

アンリマユ【いつもながら…アテにしてくれてよ。その…】

?『すまない、リッカ。いるだろうか?』

リッカ「!」

『アダムだ。少し…時間を貰えるか?』


ブルーアーカイブコラボ〜アダムとリッカのキヴォトス巡り〜
プチ記念〜マスター、少し時間を貰えるか?〜


「アダム先生!!先生就任三年おめでとうございまーす!」

 

 

「……。き、気付いていたか…」

 

照れ臭そうに、雷位の速さで用意されたもてなしパーティーのクラッカーを浴びるアダム。人類男性の全ての規範となるような引き締められた肉体と、赤と亜麻色の髪が祝いに揺れる。

 

『だから言ったじゃないですか!リッカさんは聡明だしサプライズは真正面では通じませんよって!真正面から突撃だなんてー!』

 

「そう言うな、アロナ。私はやはりこの手が一番だと思ったのだ」

 

アダム。異聞帯におけるエデンの王。楽園にて偽神ヤルダバオト・デミウルゴスを叩き殺し、完璧が故に停滞し、剪定されたエデンの可能性を模索するために6000年の放浪の果てにキヴォトスにて先生に就任した始まりの人類。部員時空にて、彼は就任三年目となる。偽神が暗躍する中、彼は楽園の宿敵を一度討ち果たした事のある大功労者とも言える。

 

そんな彼が、隙間を縫ってリッカの自室へと訪問した。人の一動作で全てを見抜くリッカの前にあっさりと意図を見抜かれ今に至る。彼は、リッカの時間を貰いに来たのだ。

 

「改めて…挨拶と謝罪をと、思ってな。リッカ、君の奮闘に心からの称賛を」

 

「あ…」

 

「その小さな身体で、全ての責任を背負い世界を救ったこと。心から驚嘆に値する。苦痛も、苦難も、生半可なものでは無かったろうに。本当に…見事だ」

 

アダムは頭を下げる。彼女に敬意を払うと共に…同時に、深い謝意を込めたものを。

 

「同時に…。偽神が君に齎した艱難辛苦、汎人類史のアダムとイヴが君に齎した虐待の数々、心から謝罪する。…すまなかった。リッカ」

 

「えっ、あ、アダム先生!?」

 

「これが最敬礼。そして次が土下座。最後に五体投地という最大限の誠意を込めかつてイオリに披露した…」

 

「いやっ、あのあの!そういう事ではなくてですね!?お顔を上げてください!?」

 

リッカから見れば突然ではあるが、アダムからすれば汎人類史の現在の状況は己の落ち度だ。

 

叩き殺した筈の偽神は逃げ延び、汎人類史の父を殺し成り代わり、アダムを改悪しリリスを侮辱させ、アダムとイヴを追放した後に『完璧であれば楽園に帰す』などと吹聴し、その記憶を剥奪。何故完璧であらねばならないのかすら忘れたまま、ただひたすら『完璧でなくてはならない』『あるべき場所へと帰りたい』と渇望させ、リッカに自身らの渇望の全てを背負わせた。

 

それは、アダムにとって他人事とは決して思えなかった。本来ならば人類はもっと素晴らしい進化の道を歩めていた。原罪を背負うことも無かったやもしれない。アダムを病的に恐れたデミウルゴスは、汎人類史のアダムを徹底的に改悪した。

 

男は女を支配する。お前はあらゆる生命の上である。お前は私の似姿である。お前は世界の王である。汎人類史のアダムは偽神の歪みきった教育により男尊女卑の傲慢かつ狭量な男性像を有した。

 

その傲慢さにリリスは彼を捨て、より忠実な番のイヴを用意したが、ルシファーの甘言により二人は知恵の実を食らう。生命の実を食べれば二人は神と同じになる。

 

故に偽神は【罪】を作り、二人を罪人として追放した。自分と同じ存在など…真なるアダムなどあってはならないと、未来永劫の神の座を手中にするために。

 

「今の楽園カルデアが負う全ての根幹は、私の不始末が原因だ。その為に君の人生が、尋常ならざるものとなってしまった。…あまりの大罪、どう償えば良いかも解らないが…せめて、謝罪をしなくてはとここへ来た」

 

「アダム先生…」

 

「アダムとイヴの堕落に巻き込み…君にあまりに過酷な傷を齎した事。本当に済まなかった…」

 

リッカからしてみれば、あまりにも不思議な気分だ。かつて父だったものの声が、見目が同じ存在が、これ程自分に誠意ある態度を取ってくれている。

 

自身に求められたものは完璧だった。完璧でいなさい。誰よりも完璧でありなさい。そうすれば私達は安心できる。もう大丈夫と。

 

だけど、聞けなかった事がある。どうしても聞けなかったことが。直感的に、理解していたのかもしれない。

 

『どうして、完璧でなくてはいけないの?』

 

偽神により記憶と楽園への想いを抜き取られ、目的のない完璧主義だけが残されたまま苦界の現代へ放り出された。帰りたい場所も忘れ、どうして帰りたいのか、どこに戻りたいのかもわからないのか、何も思い出せないまま二人はどこまでもその齟齬に苦しんでいた。

 

今ならば…かつて親だった二人の行動が、よく理解できるのだ。だから、もう。

 

「顔を上げてください。アダム先生」

 

深々と、土下座するアダム先生に歩み寄る。

 

彼は誠実の化身だった。本来ならば異聞帯の存在ならば、汎人類史の自身の落ち度など他人事でしかあるまい。しかし彼は、イヴの父でありアダム共々己の罪として彼女に深々と頭を下げた。人類の原初たる彼が、臆面もなく。

 

神を殺しそこねたと彼は言うが、リッカはそれは違うと信じた。神を確かにアダムは殺したのだ。そうでなければ、今の彼の身体に刻まれた、偽神の見苦しい悪足掻きの呪いが刻まれている筈がない。偽神は何らかの手段で、醜く蘇ったのだ。

 

彼には何の落ち度もない。異聞帯のエデンすら、完璧過ぎるが故に完結したという剪定の理由だ。消え行く世界の全てを背負い、異聞帯からやってきた。

 

だというのに、彼は汎人類史に敵対する意思がまるでない。奪うこともなく、帰化し、帰依し、先生として未来ある若者を導かんと決意してくれている。

 

彼は責任感と、決意と自立心に満ちた『大人』そのものであった。神殺しの呪いを受けながらも、自身が一番苦しくとも、その全てを後に続く生命に捧げている。

 

そんな彼を、リッカは責める気にはなれなかった。本当に誠意ある行動は、人の心を何よりも動かす。故に…

 

「私こそ、ありがとうございます。異なる世界の事なのに、あなたには何の落ち度もない筈なのに。こんなにも私を想ってくださって」

 

「リッカ…」

 

「お父さん…だった人と、お母さん…だった人とは、もう二度と会えないでしょう。もう二度と正しい形には戻れないでしょう。でも…アダム先生とは、そうなりたくないです」

 

そっとアダムを助け起こす。リッカは真っ直ぐ目を見つめ、言葉にする。

 

「もし、先生さえよろしければ。私の、夢見たもしもとして…お父さんだった人と、ちゃんと仲良く『家族』をできたもしもの夢が現実となった未来が、今につながったとして…そんな関係を築きたいんです。先生さえ、御迷惑でなければ、その。ベリアル父さんはちゃんといるんですけど!」

 

『ベリアル父さん…???』

 

「その!アダム先生に!えっと…!『あの日の夢見たお父さん』として!接してもいい、でしょうか!アダム先生とは…!過去の事とは関係なく仲良くなっていきたいんです!」

 

「…!」

 

その時、アダムは理解した。彼女は強い。自身の苦難と苦痛に満ちた半生すら、自身の力として、不可欠の人生として受け入れている。

 

万の罵倒を覚悟していた。責任の追求を覚悟していた。だが彼女はとっくに…今と未来を生きていた。過去すらも、大切なものだと受け入れて。

 

 

「………あぁ。喜んで」

 

アダムはリッカを、父のように抱き寄せた。それはリッカがかつて、一度もしてもらえなかった優しく強い抱擁。

 

「ありがとう。強く、健やかに育ってくれて。本当に…ありがとう。リッカ…世界は違えど、大切な…私の娘よ…」

 

「…………ぁ、うぁ。あ…ぁ………」

 

強く気丈で、涙した事など久しく無かった。笑い泣きはした。笑顔に満ちた生活だった。

 

「〜〜〜〜〜〜〜〜…………!!」

 

だが…あの日を思い出させる声音と、逞しくも優しい抱擁は、あの日に満点のテストだけを持ち、背中を見せる二人に伸ばした手が届いたようで。

 

「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」

 

顔を埋め、声もなくリッカは涙し続けた。ただ、あの日に流せなかった涙を流した。

 

アダムはその、誰も見ることの無かったリッカの無垢な傷が癒えていく様を…

 

静かに、包み込むように抱きしめ続けた。まさに──

 

あの日彼女が願った、父のように。

 

 




シッテム教室内

アンリマユ【へへ、良かったじゃねぇの。異聞帯も悪いことばかりじゃねぇな】

アロナ『うわぁ〜〜〜〜ん!良かったでずぅ〜〜〜!』
アジーカ【感銘】

アンリマユ【泣くな泣くな、全くよ…いや、いいか】

(泣くときにも泣けなかったんだ。これぐらいはな)

アロナ『あー!!!』

アンリマユ【なんだぁ!?】

アロナ『アジーカちゃんの頭に!ヘイローが!』

【ビーストマークヘイロー】

アジーカ【ファッ】

アンリマユ【マジかよ、キヴォトス人じゃねぇか…】

アジーカ【あたまがすきとおる】

アロナ『むむ!これはやるしかありませんね!』

アンリマユ【は?待て、私等にはまだスケジュールが】 
アロナ『仲直り(?)親子の!キヴォトス遊覧です!行きましょう、二人共!準備です!準備!』

アジーカ【ファ~】

アンリマユ【…続くのかよ!?】

三周年に生まれた家族の絆は、神秘の学園都市にちょっぴり続く。

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