人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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ルゥ「えぇと、つまり要約すると…。5人分の藤丸立香が特異点に閉じ込められてる」

イザナミ「はい!」

ルゥ「それは悪性情報を聖杯に汲み取らせたもので、下手すれば自壊してしまう危険性がある…」

イザナミ「はい!」

ルゥ「うん。それは解った。伝えるねぇ。…問題は…」

イザナミ「はい…このままではいけません!閉じ込められた藤丸立香さんの中に…」

「──攻略目前で!特異点が絶対に『異変』認定してしまう藤丸立香さんがいるからです!」


汝、手を繋ぐ人龍

「新年早々すまないがブリーフィングだ!皆、休日を笑顔で返上してほしい!」

 

楽園カルデア、ロマニの言わんでいい号令に職員たちの空のペットボトルが投げ込まれる中、モーニングコーヒーを飲み終えたオルガマリーが手慣れた様子でブリーフィングを開始する。ロマニに人間的ムードメイクを任せているため、彼女は努めて冷静に現状を伝える。

 

「伊邪那美大神のジェスチャー、ボディーランゲージ、錯乱を解析した結果、こちらのカルデアが観測していない特異点にフレンドの藤丸立香が巻き込まれたとの結論が出たわ。トリスメギストスにシバもそう結論付けたのよね、シオン」

 

「はい。新年会を終え、カルデアに帰還していた藤丸立香の姿が忽然と消えたとの報告が彼のカルデアから。この状況において生体反応ごと消えるというのはつまりそういう事なのでしょう。何者かに、彼は取り込まれた」

 

「伊邪那美御祖母の話によれば、藤丸立香は五人巻き込まれたという話ではないかね。なんだね?こう…藤丸バース的なアレかな?」

 

「ゴルドルフ副所長、気にすることはありません。藤丸立香という存在はレイドバトルには大量発生する生き物と聞いています。怖いね!」

 

「キリシュタリアの妄言は放っておいて…僕もイザナミお祖母様から詳しい話を聞いてみた。真理を必ず捉えているから、要点を質問すれば必ず有益な返答が返ってくる。…翻訳にリッカは必須だったけどな」

 

「歩く翻訳コンニャクとは私のことです!」

 

ちなみにここにいないマスターはそれぞれ藤丸のいないカルデアの抜けた穴を対応に向かっている。人類最後のマスターの不在、即ちそれは世界の存亡の危機故に。

 

「どうやら今の特異点は多人数攻略形式、藤丸同士が争うものじゃないらしい。サーヴァントは召喚不可、カルデアの通信も通じない。五人の藤丸立香はそれぞれ『普通であり普通でない』傾向にある。そして──」

 

「五人だけの力じゃ、特異点の攻略はできない…そういう風におばあちゃんは言ってた」

 

リッカとカドックの言葉は、まるでそこに参加しカルデアに報告しているかのような正確さだ。今もイザナミはてんやわんやなところから、活路はあるのだが…

 

「攻略できない…?藤丸立香程の素晴らしいマスターが?あり得ない…と言いたいが、伊邪那美大神の神託ならば真実なのだろう。どういう事かな?」

『あのおばあちゃん、ギリシャでもそうない透徹するな…私の女性遍歴も見抜きそうで怖い』

 

「なんでも、五人の中の誰かが最後の仕上げで引っかかるらしい。そのせいで、攻略に届かないんだとか」

 

「ふぅむ…今から数年後に流行るゲームを元にしている特異点なんてイザナミおばあちゃん言ってたけど、巴御前が今絶賛検索中なんだよねぇ…」

 

「攻略できない、なんて穏やかじゃないなぁ。最初から出口がない迷路なんて迷路として破綻している。天才としては許せない所業だぞぅ!」

 

「落ち着きなよレオナルド。最初から出口がない、用意されていないって言うなら僕達も遠慮する必要はない…違うかい?」

 

ダ・ヴィンチちゃんを制し、ロマニが頷く。彼は言う。無法には無法だと。

 

「ギルは今、ロイヤルズの皆と新年世界一周に行っている。王達も新年交歓会の感じで忙しい。シバは今花嫁修行中。というわけで…ここはボクが一肌脱ごう」

 

「ロマン!?」

 

「特異点反応を察知したら、ボクがその特異点を座標固定しその聖杯に干渉する。そしてその後は…リッカ君。君の出番だ」

 

「あっ、このタイミングで話を振られるって事は…!」

 

「そう!君の十八番かつ最適解!『出口を力尽くで切り拓く』さ!そのためのプランを組むから、三分だけ時間をくれるかい?オルガマリー、皆で計画を詰めようか」

 

「解ったわ。ロマニ、考案はあなたに任せる。そのまま三人は待機して」

 

ロマニのいつにないアグレッシブさに、リッカにキリシュタリア、カドックは顔を見合わせる。

 

「やる気だ…ロマンがやる気だ!」

 

「ふふ、私はロマニのやる気には共感しか無いね!」

「僕もだ」

 

「そうなの!?」

 

「あぁ。──藤丸立香のピンチだぞ?」

「リッカ。君が同じ目に遭ったなら私達だって泡を食って大慌てになるさ。なぜなら君は、世界を救うために必ず必要な存在なのだから!」

 

「……えへへ。そっかぁ…」

 

「まぁ君は藤丸立香の皮を被ったジョン・メイトリックスだから心配はいらないかもだけどね!」

「君ならコマンドーの最終シーン再現くらい余裕だろ?」

 

「おおよそ女の子マスターにかける信頼じゃないよぉ!?もっとこう…女の子マスターの一人取り残しはけしからん感じになるはずだよ!?」

 

「お待たせ皆!作戦を説明するよ!」

 

「(展開が)早いぞぉ!?」

 

「楽園カルデアスタッフは最高よ。出来ないことはないわ。結論から言えば…リッカ。あなたの雷位を『弓』と『槍』で適用するわ」

 

カルデアが導き出した作戦──閉塞特異点粉砕作戦の概要が説明される。それは、規格外の藤丸龍華を中核としたものだ。

 

「まず、ボクがソロモンの力で特異点を補足。聖杯にアクセスし座標を割り出す。同時にカルデアの全リソースを使って特異点を固定し、藤丸立香五人を強制レイシフトアウトさせるんだ」

 

「なるほど、楽園カルデアのリソースはほぼ無限。それでカルデア五人分を賄うのか」

 

「とはいえ、いくらボクでも海から角砂糖を見つけるみたいな作業は時間がかかりすぎる。そこで君の出番だリッカ君。君のあらゆる場所へ辿り着く『雷位』を、日本人に対して絶対的な恩恵を齎す『天沼矛』を『矢』として、月女神アルテミスの『弓』から撃ち出すんだ!」

 

「…………………は?????」

 

カドックの困惑声も無理もない。アーラシュの絶技にも迫ろうかとする離れ業を当然の様に請求したその作戦にだ。

 

「伊邪那美大神の権能を、雷位と合わせれば『日本人の危機を救うために天沼矛は必ず望みの場所に飛来する』という結論を導き出した。藤丸立香の危機を救うのは、規格外の藤丸立香であるリッカ君、君の役目だ!」

 

「アルテミスに祈願参拝しなくっちゃ…!!」

 

『なるほど、考えたな。確かに射手としてアルテミスほどの適任は他にいない。オリオンと同じ程度に溺愛しているリッカ君の願いなら聞き届けたるだろうが…人間の身体で放てるエネルギーではないぞ?』

 

「そこはアンリマユとアジーカちゃんの力を借りるのさ。平安京の特異点は覚えているかい?あそこでリッカ君は剣戟をアンリマユ形態で振るった。次はそれを、弓矢と槍で行うのさ」

 

「悪神と眷属龍の悪性、アルテミス神の神秘、イザナミ神の権能、そしてリッカ自身の極み…それをかけ合わせれば、特異点そのものを穿つ一撃を放つ起死回生が可能とカルデアは判断したわ」

 

「リッカ、君の扱いが最早戦略兵器だね!」

 

「魔術師としての積み重ねは皆と違って1代きりだからね!やってみせなきゃ!」

 

「当てるために撃つんじゃなく、『当たるから撃つ』のか…誰が黒幕かは知らないが、リッカのフレンドに手を出したのが運の尽きだな」

 

「その後は君たち二人が…と言いたいんだけど、どうやら情報では君たちは藤丸立香と敵対しているようだ。連れて行くのはダメだとイザナミ神のテンパリお告げを貰ってしまってね」

 

「現地救出は無理か…リッカのピンチだと考えれば、歯がゆいな…」

「敵対者扱いで攻撃されたら怖いからね!では、リッカ君のサポートに回るとしよう!」

 

「そんなぁ…カドック、キリシュタリア…」

 

「落ち込まないでくれリッカ君。君には頼れるフレンドがいるじゃないか!協力は彼等に要請しよう!」

 

「──あっ!!」

 

「そう!藤丸立香を助けるのは、同じ藤丸立香だ!」

 

ロマニの言葉に、喜色満面のリッカ。

 

そう──これはまさに、藤丸オペレーションなのである…!




謎丸「フレンドサポートありがとうございます!ククルカンも喜んでます!」

ORT『ティータイム付けてます』 

リヨぐだ【助けた奴等のカルデアの石全部で手を打とう】

リッカ「二人とも!来てくれたんだ!ククルカンもありがとう!」

ORT『人類皆兄弟。任せてください』

ロマニ「これなら行ける!さぁ、立香君達を助けるぞ!」

カドック「これ僕いるか…?」
キリシュタリア「心配ないさ、このメンツなら私ですら誤差だ!はははは!」

リッカ「皆…必ず助けるからね!!」

頼れる藤丸達と共に、藤丸リッカは新年の星穿ちに挑む!

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