人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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りつか「大変お疲れ様でした、おじさま。ゆっくりお休みください」

おじさん「そうさせてもらう…ハードな同窓会だった…」

りつか「後は、わたしと作家さんが異変を乗り越えれば活路を見出だせます。お手数ですが、引き続き激励のほどを」

立香「は、はい。…じゃあ…作家さんの方を…」

リツカ「質問攻め…ちかれた………!!」

立香「うわぁ!?」

立夏「なるほど、崇高な偶像というわけか。まぁそれは後でいい。藤丸立香!」

立香「はい!?」

立夏「来い。考察の時間だ」

立香「は、はい…!」

(明日休みなので、メッセージや感想の残りは明日にかけても行います!)


人類最後の作家

「俺…一人称が被っているのは面倒だな。ではこれから俺は自分を著者と呼ぶ。コードネームのようなものだ、慣れろ。いいな?」

 

立夏…ミステリー作家であるとされる奇人の藤丸は、立香の前にボードを展開し語りだす。先程までリツカを質問責めにしていたが、その舌の根は乾かなかったようだ。

 

「まず、著者達の共通点は大なり小なり差異はあるが皆同じ藤丸立香という事だ。名前は似ているだけに過ぎんが、藤丸立香を定義する理由を『人類最後のマスター』と仮定しよう。幼女も、偶像も、ライドジャンキーも、君もそこは全て同じだ。いいな?」

 

「はい。合っていると思います。俺も……そうですから」

 

「では、何故我々だけがこの地に迷い込み閉じ込められてしまったのか?我々藤丸立香が平行世界に数多あると仮定すれば、君もここにいる藤丸立香とは知己、知り合いである可能性がある。どうだ?」

 

「は、はい!藤丸リッカっていう、女の子のマスターとフレンドです!」

 

「定期的に話題に出す規格外マスターの事だな。ぜひ会ってみたいが今は置いておこう。そのマスターはここにはおらず、代わりにマシュを愛する以外に然程特徴のない君がここに招かれたという事は、無差別ではない藤丸立香への選定が行われていたか、或いはそのリッカとやらがあまりに規格外で招けなかった…かだ」

 

そんなにはっきり特徴が無いなんて言わなくても…。涙を浮かべる藤丸をまるで相手にせず、若者の立夏は言葉を紡いでいく。

 

「何が規格外であり、何故引き込む事が出来なかったのか?我々が引き込まれそのリッカとやらが引き込まれなかった違い。それは何だと思う?」

 

「え、えっと……質量、とか?」

 

「今君は女性に対し重いと口にした。血を見る羽目になる前に迂闊な発言は自重自粛するように」

 

「(リッカ本当にごめん!!)あ、えっと!確か、アンリマユと、アジ・ダハーカを宿してます、彼女」

 

「─────は?」

 

ピタリと停止する立夏。立香は神話にそれほど明るくない。それがどれだけの規格外さを示すものなのか、口にした本人はまるで理解していない。本人ばかりが。

 

「…なるほど、規格外にも程があった。最早ドリフト対策は完璧だったということか。それは嫌だろう。絶対悪に喧嘩を売るような真似は誰もが安々と出来ることじゃない。どんな経緯でそうなったかを後で聞くとして…」

 

「彼女にあって、自分達にはないもの…」 

 

「まさに君が言った通りだ。悪性情報、その廃棄口…君がサーヴァントとの交流を重んじるならば足を運んだ事はあろう。我々の契約やサーヴァントの悪性廃棄情報、その集積場たる廃棄口。巌窟王が守護しているあの空間だ。恐らく、アンリマユにアジ・ダハーカが悪性情報、廃棄口への干渉を防いだのだろう。紛れもない神話体系の頂点の片割れ、それくらいはやってのける」

 

「じゃあ俺達は…!?」

 

「恐らく、廃棄口の記憶や自責…遡って悪夢や失意を確保され奪われたのだ。そして黒幕は、我々の溜め込んだ悪性情報で出来上がった特異点を制作した…」

 

そんな事が、と言いたくなるがこらえる藤丸。ともすれば八つ当たりにもなってしまいそうな質問は、控えようと思ったからだ。

 

「藤丸が行った異変はアデーレとマカリオスとの再会、ケイオスタイド。リツカはいつかきっと手に入れたい筈の夢。藤丸おじさんはかつての友達との会合。区分において、精神系列とギミック系列に分けられるだろう」

 

「精神系列と、ギミック系列…」

 

「ケイオスタイドがそれだ。単純な視覚や感覚に訴える異変。前者は二人が経験した、過去の体験に基づく異変。何者かが集積した経験や記憶から再現した異変…どちらも悪辣かつ、恐ろしい目論見を感じられずにはいられない。悪趣味という点では随一だが」

 

「あ、あの!このまま異変を放置していたら、どうなるのでしょうか…」

 

「少なくとも、この場所に旅を終えた藤丸はいない。帰れない以上、五つの世界が滅びることになるだろうな」

 

淡々と事実を伝える立夏。彼もまた、冷徹な一面を垣間見せる。

 

「失意の庭で見た、どちらが可哀想マウントには興味がない。だが……どちらにせよ人類最後のマスターの終わりは世界の終わり。それは純然たる事実だ」

 

「なんとしても、自分のカルデアに帰還しなくてはならない。というわけで、早速異変の解決に出向くぞ藤丸君」

 

「はい……えっ!?二人で!?二人で行くんですか!?」

 

「そうだとも。あらゆる可能性を体験する必要がある。それは『二人で挑んだ場合、異変は増やされるのかどうか』…よし、せっかくだからペナルティもあるかどうかも調査するか。行くぞ!」

 

「待ってください!!」

 

「なんだ!」

 

「まだ、あなたの事を深く知っていません…!せめて、せめて話だけでも…!」

 

「著者の過去なんてどうでもいいものだ。話す義理もそうない筈だろう」 

 

「それでも!あなたを応援するために必要な事です!!」

 

「…………物好きな提案としか言いようがないが。あまり大した人物ではないぞ。本当にしがない、フリーのミステリー作家だ」

 

そういう彼の表情は、どこか物憂げでもあった。それは一重に創作活動の苦悩を思わせる。

 

「知らないことを知ろうとする。知らなければならないことを知らぬままではいられない。世に蔓延る未知を明かさねば進めない。そういった全ての疑問や謎を解き明かしてみたい。その為に自分は魔術に関わる存在や、聖堂協会だのなんだのに首を突っ込み続ける生活を送っていた」

 

「どうしてそこまで…」

 

「著者自体が、知りたいと思ったからだ」

 

大人はどうやら、夢や憧れに折り合いはつけられても忘れることは出来ないらしい。その達観した物言いは、渇望の裏返しだったのかもしれない。

 

「満足したか?さぁ、では行くぞ。新たなる異変の体感をできればいいんだが…」

 

おじさんといい、人はそう簡単に生き方を曲げない生き物だ。そのバイタリティの強さにも、見習うべき要素は多分にある。

 

「足踏みしている時間は無いぞ、藤丸。廃棄口から抜き出されたという事は、我等の深層心理にいる者は…」

 

「………!!」

 

「戻らねばなるまい。共犯者を助けるためにな」

 

彼はおじさんと違い、無駄はなく素早く簡潔だ。

 

或いはそれが、彼のスタイル。捜索において無駄は出さない。

 

「…だけど、受け入れていかなきゃ…」

 

その本心に触れるきっかけになれる様、立香は立夏を注意深く注視する。

 

(皆、一緒だから…!)

 

全員の力無くば、突破は叶わない。

 

立香には、そんな皆をはげまし、勇気づける行動を取り最高のパフォーマンスを担ってもらう。

 

それこそが──現実と幻想の狭間に落ちた自分の、無二の使命だと信じて。

 

立香は懸命に、己が役割と向き合っていた。




「さて、どのような異変が…」

立香「……、!?」 

瞬間、藤丸が愕然と停止する。


立香「し、新所長…!?」


眼前にはゴルドルフ。しかし、応答速度があまりにも早すぎる。

「立香、走れ!」

「!?」

「異変は既に、始まっているのだ…!!」

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