サラ「とうっ!でぇぇい!!」
飛鳥「しぶとい!!」
サラ「この馬鹿野郎ぉ!!」
飛鳥「ぁあぁ!くっそぉおぉ!!」
ルル「十回連続で切り返しで一撃サーブは無慈悲が過ぎる…」
大和「サラ、迷わないと一番強いから…」
ゆかな「正月から全身全霊な奴等だ…」
アカネ「じゃーん。大吉〜。エル君は?」
エル「中吉でした!アカネさんが大吉だから良しとします!」
アカネ「へっへっへ〜。ラッキーなのはいいことだよね〜」
ルル「2024年か…。リッカ達の奮闘は無事未来に続いているんだな。素晴らしい事だ…」
大和「うん。これからの私達の未来が、ここに到れるものであればいいね」
ルル「あぁ。俺達皆で…な」
天空海「あんた達!何遊んでるの!受け取りに行くわよ!」
ルル「受け取り…?」
「決まってるわよ!お年玉!!」
ゆかな「あぁ…そう言えばそうだったな」
ルル「高校生は貰う側なのか…?まぁいい。行くだけ行ってみようか…」
「はい、お年玉。報酬とは違う行事のお金だから、大切に使い道を決めてちょうだいね」
榊原先生が言葉と共に、夏草組へとお年玉を渡す。子供達のメインイベントといえばやはりお年玉だ。色々と意味は詰まったものだが…ぶっちゃけ子供の臨時収入、ボーナスのようなものである。
「うはー!榊原センセありがと大好きー!中身は!?五万円も入ってるわぁぁあウッキィ〜〜〜〜!!」
『天空海!山分け!私と山分けだからね!聞いてるの天空海ー!!』
『有効に扱いなさいね?二人共』
「へへ、これで裁縫道具や資料がまた買える…!」
「飛鳥、少しは残しておくんだぞ」
「分かってますって!あんただって、衝動買いとか経験あるでしょ?」
「いや…大和のデスクワーク周辺機器の整備に使ったりするな…」
「これだけあればBlu-rayボックスで色々見れますよアカネさん!アカネさんのお部屋で耐久視聴しましょうよ!」
「私の部屋かぁ…。まぁアレクシスに片付けさせたからいいかな〜…よーし、特撮メドレーやるぞー!」
「ゆかなはお年玉、何に使うんだ?」
「あなたとの結婚資金に…」
「ッ゙ン〜〜〜!!」
「ふふ、ご馳走様」
「スザク!どの辺りが玉なのでしょう!」
「フフ…これからはお雑煮やうどんなんかも用意しているわ。皆で召し上がれ」
「え、榊原先生も一緒でしょ?」
「…あら…ふふ、いいのかしら?」
「今更ですよ、先生」
「私達の先生じゃないですか!遠慮は無しですって!」
「…では、御一緒しちゃおうかしら。リッカも誘っておくわね?」
「アイツ、忙しいから来ないなんて奴じゃないですから大丈夫ですよ」
「ルルの言う通りです。意地でも来ますって」
「ふふ…そうね。じゃあ皆、食堂に向かいましょ?」
「「「「「おー!!!」」」」」
夏草組は、榊原先生からお年玉を受け取る。報酬、年俸とは別の小回りの効くポケットマネーの存在はやはり得難いものだ。三が日の過ごし方は、一同皆で過ごすこととなったのであった。
勿論、お年玉のやりとりは夏草組ばかりではない。先生や大人組とも交わされる大切な行事でもある。というより、立派で盛大な正月イベントの一環でもあるのだ。
「アロナ、いつもサポートには助けられている。お年玉として感謝の気持ちを形にした。受け取ってくれ」
『わぁーい!アダム先生、ありがとうございます!』
先生がお年玉を渡すのであれば、当然アダムが渡さぬ道理はない。アロナにデータサイジングした一封を渡す。それはデータリソースであり、アロナのスペックアップに繋がるデータ群でもあった。
『これからも先生のサポートはお任せください!…でも、んー、あれれ?』
「どうした?アロナ」
『今、カルデアの時空は2017年の6月半ばです。こちらでは2024年の一月…何故私達は正月の御祝をしているのでしょうか???アロナ、気になっちゃいました!』
アロナの疑問は時空間の流れの差異を把握しておきながら、その変化を受け入れ擦り合わせている事実であった。態々その様な祝の体系を取ることが謎の疑問を生むのだと、アダムに告げる。
「それは、これにある。見ろ、アロナ」
『わぁ!?これは…部員届と書いてあります!』
「一万四千近くあるこの部員届は、時空と時間を越えてカルデアに集った絆だ。この部員届こそが、この物語を何年も支えてきた魂達の証明であり絆の証…彼等は、カルデアの恩人だ」
『ふむふむ!』
「そんな彼等のめでたい時間と感覚を、共に共有し祝う。同じ場所には共存叶わずとも、過ごした時間が違っていても、時空を超えた絆は結ばれている。だから我々は、遥か未来の彼等の祝辞を祝うのだ。離れていても、彼等や彼女らは我々のかけがえのない存在なのだから」
アダムは先生として、記念イベントの時系列の矛盾の意味をアロナに説いた。アロナは、アダムの教鞭と鞭撻を机に座りニコニコと受け、満面の笑みを浮かべ授業を受けている。
『普段は話すことも、触れ合うこともできないけれど…素晴らしいイベントを共に祝い、幸せな気持ちを分かち合う事ができるから、部員の皆様の時空で御祝いするんですね!確かに私達は一緒だからと!』
「そういう事だ。彼ら無くして、この物語は無いのだからな」
アダムは神妙に頷き、アロナと居住遊覧区を見下ろす。キヴォトスとはまた違う風景は、二人に新たなる刺激と高揚をもたらす。
『アダム先生!せっかくなので、カルデア遊覧区を色々回ってみませんか?アロナ、カルデアを歩き尽くしてみたいです!』
「そうだな。キヴォトスは今エデン条約締結を控え張り詰めている…。遊べる時には遊んでおこう」
『はーい!わぁい、カルデア巡りの始まりです!』
【…本当、異聞帯の彼は好漢ね。あんなに慕われちゃって】
『完璧な男性、完全な男性とはそういうものだっポ。甲斐性と誠実さは先生として天職ッポね』
そんな様子を見守るのは、リリスにパパポポ。彼女は自身の知らぬ、自身がかつて破局した相手のIFを静かに見やる。
【サタンも今じゃ精力的に何かをしているようだし…触れ合いで変わるのは人だけじゃ無かったみたいね】
『地獄にいる者たちは、偽神の無慈悲なる迫害の被害者だ。…ともすれば、カルデアの仲間にもなれる者達であるが…』
【魔王達は、ベルゼブブを除きルシファーのみに付き従う。懐柔は難しいでしょうね】
『ポ…。私としては、一つの未来を夢見ている。カルデアとルシファー達が、力を合わせ偽神に立ち向かう未来を』
【………】
リリスは押し黙る。正直なところ、否定しきれないからだ。かつての傲慢と憤怒の化身であるルシファー・サタンの在り方と…今のルシファーが異なる存在といってもよい変革を遂げていることを。
『リリス。君もその中には…』
【さて…私にそんな資格や気概があるのかどうか…】
リリスはパパポポの言葉を否定も肯定もせず…静かにアダムの背中を見つめていた。
【……献血程度では、あなたの崩壊は止められない。生き延びるには生徒を食い物にするほか無いというのに…それを断固としてするつもりはないのね】
リリスにのみ把握できる…アダムという存在に刻まれた呪いと末路。
【馬鹿な人…。大人なんて、子供を利用し悪用するのが普通でしょうに】
彼の掲げる誠実さ。汎人類史のアダムには欠片も無かった尊重の心意気を…彼女は痛ましげに、見つめていた。
「はい!お年玉だよ!カルデアスタッフ一同の気持ちとして受け取ってほしい!」
「わぁ!ありがとうロマン!やっぱり貰えると嬉しいね!」
「それは良かった。まぁ殆どミスター・ゴルドルフさんの出資だけど気持ちはたっぷり詰め込んだつもりだよ!」
「言わんでいい言わんで!全くキミ、どうしてソロモンでありながらそう迂闊なのかね!?魔術における王なんだらうキミ!?」
「諦め給えゴルドルフ副所長。ロマニは極限まで追い込まれて、それでも誰かに頑張れとケツを叩かれなきゃ頑張れない男さ。これでは所帯を護れるか不安だなぁ。ダ・ヴィンチ的に」
「あはは!能ある鷹は爪を隠すといいますし、ドクターはまさにそれでしょう。ぶっちゃけこの方、破格の性能してるんで私達の立つ瀬を無くさないヘタレモードが一番かと!」
「あれー!皆が僕に厳しいぞー!?マリー!なんとか言ってくださいよ!」
「まぁロマニはロマニである事に意味があるからいいのよ」
「フォローですかそれ!?」
「リッカ、マシュ。あなたたちはずっと変わらずカルデアの支柱よ。これからも、私達の未来はあなた達に託すわね」
「はい!お任せください!」
「やるよ、私達。ギルみたいに背負ってみせる…カルデアの皆の全てを!!」
分厚い封筒を手にしながら──リッカは決意を新たに頷く。
「よぉーし!!じゃんぬの新作スイーツ食べるぞ〜!!!」
仲間達と共に、決意を漲らせるのであった。
カルデア
ルシファー『やぁ、サリエル。調子はどう?』
サリエル『あ…、ルシファー様。ご機嫌よう』
アバドン『あけましておめでとうございます』
ルシファー『あけおめー。二人共、復活できてよかったね』
サリエル『…ジブリール様は…』
アバドン『彼女は、神の炎により羽を焼き尽くされ…』
ルシファー『大丈夫』
『『!』』
ルシファー『ジブリールはね。生きてるよ。…このカルデアで、元気いっぱいにね』
アバドン『……?』
サリエル『そうなのですか?それは…よかった』
ルシファー『君達と再会出来た事も…僕にとってのお年玉かもね。リンゴ、剥いてあげよっか?』
サリエル『ウサちゃんがいいです』
アバドン『おかゆください』
ルシファー『注文多いなぁ。もー、ちょっと待っててよね…』
こっそり同郷に構う大魔王であった。
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