眼を開くと
そこには、広がる空と大地と
どこまでも臨める、広大な世界があった
「――」
圧倒される。肌をくすぐる風、土の匂い。突き抜ける青空
無限に拡がるかのような錯覚に、眼を細める
ここが、フランス……
「マシュ、ギル。いる?」
マスターも動き出した。キョロキョロと落ち着きなく回りを見ている
「大丈夫です、先輩。英雄王もここに」
「神気が薄いが、中々の眺めよ。ウルクを思い起こさせる星の景色よな。まだ無駄が少ない時代か……」
「レイシフト……凄い!ここから、私達の旅が始まるんだね!」
「頑張りましょう、先輩!」
「フォウ!(ボクもきた!)」
「フォウさん!?」
面食らうマシュ。あの綺麗なフォウが何故ここに……?
「フォウ、ファウ(ボクは本を出そうと思うんだ。カルデア大冒険日記。その為のネタ集めを現地にてしようと思ってね。ついてきた)」
「大丈夫なの、ロマン?」
『んー、問題ないはずさ。いつの間にかいたりいなかったりするのは得意技っぽいし』
『今更回収するのは難しいわ。マシュ、フォウを御願いね』
「解りました、マリー所長。フォウ君はこちらで」
「マシュ!ギル!あれを見て!」
リッカが空を指差し声を上げる
――空には、巨大な光帯らしき物体が走っていた。輝くそれは、爆大な熱量を持つことが見てとれる
『光帯……ロマニ、1431年にそんなものがあった記録は?』
『勿論、ありません。あれは衛星軌道上に設置された何かの魔術行使だと予測されます』
『――目算で北米大陸とちょっと、か。調査班に資料を渡して、解読を進めて』
「なんだろ、アレ。ギルは何かわかる?」
「さて、な。言えることは。アレを上回る熱量は地上にあるまい」
「まさか……」
「仮定を、地上とするならば、な」
器はいつものごとく気付いているようだが、いつものごとくこちらに全貌は解らない
……アレはこの歴史には無いという、ならば。今はとりあえず放っておくしかない
「無駄な思考に囚われるな。足を動かせ、足を」
「――あぁ、先に言っておこう」
器が口を開く、なんだろうか
「我は確かにサーヴァントであり、貴様らを盛り立てる立場ではある、が。我は貴様らの旅路まで理路整然としたものにしてやるつもりはない。試練や苦難を、我の力で力づくで解決しようなどとは愚にも思うな」
「……!」
「油断も慢心も此度の我は棄ててはいる。が、それを発揮するのは貴様らが特異点攻略の岐路に立ったときのみだ。聖杯を見つけ、手を尽くし、帰還の目処が立ったときのみ我の全霊を開帳する」
「苦難を厭うな。漫然と時を過ごすな。我のことは土壇場でしか動かぬ戦艦のようなものと心得よ」
「我は貴様らの奮闘を査定する。口には出さんが、我が貴様らの旅路をつまらぬものと見定めた場合、我を失望させた報いとしてその首を貰う」
――器はこういっているのだ
『自分で考え、自分で行動するのを忘れるな。我という存在に頼るあまり困難から逃げ続ければ許さぬ』と
それは、全力を出せば何者も必要としない王の、戒めでもあった
「英雄王……」
『大丈夫よ、リッカ、マシュ』
オルガマリーが声をかける
『あなたたちならやれるわ。もともと英雄王なんて、いないのが当たり前なのだもの。幸運とはいえ、必須な訳じゃない』
『サーヴァントだけでは未来は変わらない。そこにいるあなたたちしか、未来を変えられないのは今更よ』
『大丈夫。私達もサポートする。英雄王に任せきりなんて無様はさせないわ』
『だから、頑張りましょう。あなたたちは私達の代表なのだから』
「……と、所長は言っているが?」
くく、と笑う
もったいぶって脅しているが、要するに『油断や慢心はするな』という注意だ
さくっと言えばいいものを、どうしても尊大になる英雄王に、ちょっとだけ微笑ましくなる
大丈夫、もしそうなりそうになったら自分が止める
護ってみせるとも。未来ある二人を
たとえ、英雄王からでもだ
「……解った。旅でいろんな事を感じて、いろんな事を考えろって事だね」
「はい、先輩も私も、全力を尽くします」
「――それでよい。我は貴様らに期待している」
ポン、と頭に手をおく
「我の臣下たるもの、飽きさせぬよう励め。よいな、マシュ、マスター」
「「はい!」」
力強くうなずく二人。うん、かわいい
「よい返事だ!では、ツーリングの開幕といこう!」
ニヤリと笑い黄金の物体を取り出す
黄金のボディ、みがきあげられた装甲、サイドカーを完備したそれは
派手な――バイクであった
『バイク!?なにする気だい!?』
「こんなだだっ広い空間を歩行でいけるか!ヴィマーナは温存しておくとして、我がかつて行われた市街レースにて乗りこなした至高の鉄馬!」
「名を、『栄華極めし王の鉄馬』よ!」
「バイク……!?」
「サイドカーもある!三人乗り!?」
「マシュはサイドカー、マスターは我の背に座れ!貴様らに我の極まりしドラテクを見せてやろう!」
『早くも甘やかしてどうする!大層な高説はどうした英雄王!』
「あまやかしではない!我が乗りたいから乗るのだ!さぁ早く乗り込め!風になるぞぅ!」
「マシュ、乗ろ乗ろ!」
「は、はい!」
二人を乗せ、エンジンに火を入れる
――そういえば、カルデアにサーキット作って乗り回したなぁ。これ
「フォウッ!(いにしゃるG……古いかなこのネタ)」
「マスター、マシュ!振り落とされるなよ?死ぬからな!」
「うぇえ!?」
「は、はい!フォウさんは私が!」
「掴まったな!では行くぞ――英雄王!クラスチェンジ!」
アクセルを回すと同時に、フルパワーで解放された大型マシンが唸りをあげエーテルをフル噴射し、瞬時に110㎞をマークし爆走を開始する
重苦しい鎧から、どこから見繕ったのかライダースーツを着込み完全なバイカーとして生まれ変わっている
「わ――――――――!!!!」
「は、速いです!凄く速いです英雄王――!!」
「ファ――――――!!!(スピードの向こう側へー!)」
ぐぃんぐぃんと加速し速度をあげ、200㎞をマークし爆走を続けるギルギルマシン
「一先ず現地の民草が見えるまで飛ばすぞ!我のライディングテクを甘く見るな!」
『英雄王貴様!カルデアに姿が見えんと思えばこんなことに精を出していたのか!』
「
「ギ――――ル――――!!」
「はーやーいーでーすー!!」
『うそだろ!?本当にライダーにクラスが変わってる!そんな無茶が許されるのか!?』
『許すしかないわよ。英雄王だもの』
『所長が王様に毒された――!!くそぅ!へたれな所長になんてことを!』
「ふははそれでこそだ!我がいる限り、平穏と退屈など無縁と知れ!」
――当たる風がきもちいい。雲が遥か後ろに飛びさっていくのが痛快だ
何も遮るものの無いバイクツーリングは、突き抜ける清涼感を無銘に与えてくれた
『ライダーになれるほどのライディングテクニック!貴様カルデアに来て何にはまっていた!?』
「なにもかもだ!!フハハハハハハ――!!」
上機嫌な器が駆る黄金のマシンは、声高らかにフランスの地を爆走していった――
バイクツーリング、癖になりそうだ……
無銘が速くも順応し始めてきました
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