リリス「ウタワールドへの担当をサタンら地獄の軍勢にすれば、ウタワールドに永遠に閉じ込めておける。そうすれば、世界にこれ以上彼等は干渉できなくなる。人理にとって最大の脅威が労せず無力化できるわ」
オルガマリー「……あなたは、サタンたる彼に運命を翻弄された方。故の忠告ですね」
リリス「彼等は紛れもなく人理の…カルデアの敵となるものよ。玩具を得てはしゃいでいるからといって、過度な肩入れは止めておきなさい。…私のようにならないように」
オルガマリー「…ひとまず、この想定をルシファー達に…」
バアル『失礼する』
リリス「!」
バアル『ルシファー様からの回答だ。『ウタワールドのトットムジカは僕達七大魔王が受け持つ。カルデアは、現世のエレジアとウタを頼むよ』との事だ』
リリス「……本当なの?」
バアル『私を含め、地獄の総意だ。カルデアは生存の可能性を高めろ』
リリス「…ルシファーが…あのサタンが、自分より他人を優先したというの…?」
【これがカルデアからの報告書です。トットムジカはウタワールドと呼ばれる異空間、現実の両空間に現れ、同時に攻撃せねば倒せない。そして完全顕現したトットムジカのウタワールドからは…脱出は不可能と】
【そっか。なら僕達が受け持とう。カルデアには現世でエレジアと、ウタを護ってもらおうじゃないか】
バアル、ベルゼブブから受けたカルデアの報告に、ルシファー…サタンは迷いなくそう答えた。二度と戻れぬ可能性すらある選択を、大魔王は紛れもなく、迷いなく自身に課したのだ。
【ベルゼブブ。僕の為に…僕の見出した宝のために命を捨てろ】
【はっ。無論です】
ベルゼブブも迷いなくその判断に殉じる。ルシファーの持つ絶大なカリスマは、それを当然の真理として受け入れた。
【魔王達を集めろ。勅令を下す】
【承知しました】
そして即座にルシファーの下に集う七大魔王。アスモデウス、ベルフェゴール、マモン、レヴィアタンが大魔王の玉座に集められる。
【カルデアより情報が齎された。魔王トットムジカの調伏には、帰還叶わぬ路にてヤツを討ち果たさなくてはならないと】
ルシファーは簡潔に告げる。ウタワールドからは現状出る手段は無く、ともすれば永遠に閉じ込められてしまい、二度と地上や地獄には戻れなくなるのだと。それは、実質的な精神の死であると。
【故に、ウタワールドのトットムジカは我等が担当する。ベルゼブブ以下、アスモデウス、レヴィアタン、マモン、ベルフェゴール。お前たちは僕と共に、音楽の魔王に挑んでもらう】
【【【【はっ!】】】】
【僕の為に戦い、僕の見出した宝を輝かせるために殉じ、僕の為に死ね。カルデアの同盟者として恥じない威光と威厳を示せ】
ルシファーの言葉に、精神の死という末路にも微塵も動じること無く応じる意気を見せる魔王達。そこに一切の迷いも、躊躇もない。あるのは鋼鉄のような忠義と、狂気とも言える統率。
【ルシファー様の見出した宝物の為に戦い、カルデアの活路を拓くために命を使う…ああ、こんなにも幸福な末路があるのでしょうか?身に余る光栄です、サタン様】
【出られないなら仕方ないか…うん。夢の世界でさようならは、魔王らしからぬロマンチック。悪くない…羨ましがられそうな死に方…】
【フッハッハッハッ!!今更確認など不要ですよサタン様!我等の命と力、自由に使ってください!】
【( ˘ω˘)スヤァ】
【無論、私もあなたの決断と判断に殉じます。…我等の理念にも、図らずも殉じる事となりますな】
【そうだな。カルデアと戦うことは無くなるが…共闘の果てに舞台から降りるのも悪くない】
サタンは全員の決断を聞き届け、そして頷く。ウタワールドには七大魔王全員が出撃する。そして、なんとしてもトットムジカを調伏しウタの懸念と愁いを取り除く。その決定は、絶対なるものだった。
【!…お待ち下さい、サタン様。暴食の軍勢から打電が】
【こちらもです。あなた達、今はサタン様との会合なのだから…え?】
【…サタン様。部下の悪魔たちも、一緒に戦いたい…だって】
魔王軍の配下達が、一様に告げた上申。それは自分達もウタワールドのトットムジカ討伐に参列させてほしいとの事だった。それは即ち、永遠に別世界に幽閉される可能性すらある選択と知っても尚の事だ。
【…どうやら、地獄の軍勢全員からの打診の様です。皆、サタン様に続き今回の戦いを全うしたいとの事】
彼等はエレジア復興における立役者だ。人ならざる力にて、人間の何倍もの速さで都市と国を建て直した。その国の興亡の一戦を、サタン…ひいては魔王達の力になりたいと至ったのだろう。
【ダメだ。悪魔達は現世のエレジア防衛に回す。トットムジカの攻撃からエレジアを護れ。これは命令だ】
サタンの判断は否であった。そもそも、魔王達の戦いに悪魔が立ち入れる道理はない。サタンは冷徹にそれを断じる。
【お前達が注いだ心血を無下にするな。エレジアの存続が第一だ。むしろ被害と損害を僅かにでも出せば楽には死ねないと思え】
断固とした決定に異論を挟むことは許されない。サタンの統治は威光と徹底。どれほど親しくあり、どれほど近くにあろうと地獄において彼の判断には意見することすら許されないのだ。
【我等の誓いを果たす事になるのは存外早くなったな。まぁ、これも楽園の旅路の一幕になることを祈ろう。ベルゼブブ!カルデアに戻り我等の意向を伝えろ。ウタワールドのトットムジカ、我等が受け持つと】
【はっ】
〜
『二面作戦が必要な事は理解している。故にウタワールドのトットムジカは任せておけ。カルデアは現実世界のトットムジカを頼んだぞ』
「バアル…あなたは、あなたたちは……」
微塵の躊躇なく、自身らを死地に送る統率性と判断力。それによりカルデアとの役割は明確にされた。告げることを告げたと去ろうとするバアルに、リリスが声をかける。
「どういうつもり…?サタンは…ルシファーは死ぬつもりなの?」
『脱出手段が無ければそうなるな。私も七大魔王ベルゼブブとして殉じるつもりだが』
「そんな事が何故出来るの?ルシファーとは傲慢の大魔王、自分より大切なものなどない筈。そんな彼が、自分を終わらせるための戦いに挑むというの?カルデアの決着すら投げ出して?」
『あの御方はそういう御方だ。世界の全てに対し傲慢ではあるが…自身より美しきものには、只々誠実に向き合い愛する。それが、我等の明けの明星…ルシファー様という御方なのだ』
「カルデアと、エレジア…それが、彼にとって彼よりも美しいと?」
『そういう事だ。加えるなら、ウタという少女もだな。…そして我等の誓いにも殉じる意味がある』
「誓い…?」
『あぁ。我等は必ずや滅びる。戦いであれ、何であれ。必ず打ち倒され、滅びるという誓いだ。それを果たすための戦いが、今回の戦いになるやもしれぬというだけの事だ』
七大魔王は、敵対者として滅びる誓いを立てているという。いつか必ず、自身らは滅びなくてはならない。
『それが、世界を乱し、人を惑わし、神に仇なした者の報いで無くてはならん。カルデアとの決戦の前に、共闘という形で成すとは幸運というべきか残念というべきか…』
「あなたたちは…大小あれ、神に貶められた側の存在じゃない。何故、そんな誓いを…」
『性質はどうあれ、私達が地上を握ればそこは地獄になる。……カルデアが懸命に護った歴史を地獄にする事を、サタン様が…ルシファー様が望むと思うか?』
「……!」
『これは内密だが…ルシファー様を魅せたその瞬間から、お前達は勝利している。後は、お前達カルデアが天の玉座にて神を騙る者を討ち果たせるかの試練となる腹積もりだったが…礎として消えるも、悪くはない』
ルシファーはエアを美しいと、尊きものと認めた。そしてエアは世界のすべてを美しいと尊んだ。
ならばルシファーがそれに習わぬ道理はない。彼は世界を自在に変えることをもう望まない。それはもう、彼女が愛した世界ではないからだ。
ならば既に、ルシファーが勝ったとして意味はない。尊んだ者を討ち、尊んだ世界を手にしたところで、汎人類史になんの価値もなくなるのだから。
『我々は敗北を確約された者。故に──我等の望まぬ運命全てにおいて無敗である。我等の絶対性を保つ誓いとは、そういうものだ』
「………あの、ルシファーが…自分以外のものを…尊んだ…?」
『私は戻る。ルシファー様はこれから、ウタとトットムジカの対話を試みるようだ。立ち会わねばならぬからな』
バアルは退席する。リリスは呆然と、床を見つめうなだれる。
「……どこまで私を辱めれば気が済むの、ルシファー…いつもいつも、あなたは私の価値観を弄んで…」
「…死なせるわけにはいかないわ。少なくとも、カルデアに関わるルシファーという存在は、誰よりも誠実なのだから」
「…えぇ。探しましょう。七大魔王を死なせず、帰還させる方法を」
(勝ち逃げなど許さないわ、ルシファー…あなたには、人の手で討たれなくては意味がないのだから…)
リリスは静かに決意する。それは、彼女の中でルシファーが大魔王というだけでなくなった瞬間でもあった。
ルシファー「準備はいいかい、ウタ。今から君はトットムジカと対話する」
ウタ「うん。……もしかしたら、相棒になるかもしれない相手だしね」
ルシファー「うん、そうさ。…今の君なら向き合える。信じているよ」
ウタ「うん!行ってくるね、ゴードンさん!」
ゴードン「頼む、ウタ…!トットムジカに、寄り添ってやってくれ!」
エレジアにて、歌姫の償いは更に進む──。
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