ゴードン「では、ルシファー君……これを君に託す」
ルシファー『!』
「これこそが、トットムジカの楽譜。全ての悲劇の引き金になってしまった楽譜だ…」
ルシファー『……受取るよ、ゴードン。……不思議だね』
ゴードン「?」
ルシファー『僕は本来、これを手にするためにエレジアにやってきた。そしてこれを今、手にできた。それで本当は、全て終わりの筈だ。でも、今ここでは終われない。そう思ってるよ、今は』
「ルシファー君…」
ルシファー『任せておいて。あなたの国と、ウタの人生…まとめていい方向にぶん投げてみせるからさ!』
ゴードン「………いいんだ」
ルシファー「?」
(もう…充分すぎるほどに君は、私達を救ってくれているんだよ…ルシファー君…)
(今から明日にかけメッセージと感想返信を行います!)
「というわけで、ルシファー様はギルガシャナ姫の誕生日に渡すプレゼントの為に奮闘を重ね、エレジアに伝わる魔王『トットムジカ』の獲得に成功しました。カルデアの王に姫代よ、改めて我等が主の手にしたプレゼントをお受け取りいただきたい」
王やロイヤルズが使用できるプライベートティールームにて、バアルとルシファーが事の起こりと成果を話す。この十年間あまりの時間は、全てこの瞬間にこそあったのだと。
──ルシファー…!そんなに頑張ってくれただなんて!わ、ワタシとしてはその頑張りこそが一番のプレゼントだから、これ以上は…
《そう言わず受け取ってやれ、エア。世界の大魔王にプレゼントを悩ませる偉業を成させたのはお前ぐらいのものであろうよ》
(トットムジカって厄ネタなのが最高にサタンだとも言うけれどね!)
──は、はい!では…謹んでお受け取りさせていただきます。ありがとう、ルシファー…!
トットムジカ。魔王の楽譜。これは正式に王の財となった。ルシファーの目的は達成された。…だが、まだ終わっていない。
『実は…まだ、あるんだ。二人に、カルデアに協力してもらいたいことが。今日は改めて、そのお願いにもやってきたんだよ』
──お願い…?うん、是非とも力になりたいと思うけれど…
《改まった以上、中々な事案であろう。許す、語るがが良い》
それに頷き、バアルではなくルシファーが語る。トットムジカは…トットムジカには、成し遂げるべき事業があると。
『ウタは、エレジア崩壊の真実を知った。彼女は今から二年間、自身の罪や償いを考え、アーティストとしてさらなる高みに導かれようとしている。罪に折れず、彼女は懸命に抗っているんだ』
(君が十年間支え続けたからそうなれたんだなぁ…)
『ありがとう、フォウ君。…でも、彼女が成すべきはトットムジカとの対話と理解だ。トットムジカ自体にも意志がある。それが悲劇を起こしたのであれば、トットムジカとの決着無くしてウタの新時代の訪れはない』
「つまり、我等カルデアにトットムジカとやらの調伏に手を貸せという依頼か。貴様ともあろうものがらしくないではないか。傲慢に力を貸せとでも宣うかと踏んでいたが…」
「…万が一にも、断られてはならない。失敗できない事案だからだよ、ギルガメッシュ王。この一件は…どうしても。カルデア皆の力がいる」
そう言うと、ルシファーは席より立ち……誰もが信じられぬ行動を取った。
──ルシファー!?
(何をするんだ!?)
脚を折り、両手を大地につき、正座の形で首を相手に晒す。
「君達のマスターは日本人だから、マスターの作法に倣って気持ちを示させてほしい。これは…僕の嘘偽りのない本心だ」
それは、土下座。日本における最上級の敬礼において、敵に首を差し出す最大級の譲歩。傲慢なる大魔王、ルシファーが。額を地に擦り付けギルガメッシュに土下座を行ったのだ。
「───────」
『何故ここまでするのかは、ここからは僕自身のお願いだからだよ。トットムジカを手にした時点で、本来ならあの世界の全てに用はない。エアにプレゼントを渡したのが、僕の最高のアガリだから』
「では?何故お前は今、その光輝の身を地に堕している?」
『…見つけたんだ。僕が護りたい宝物を。見守りたい新時代の萌芽を。その可能性を護るために、盤石に守り抜くために…カルデア皆に協力をお願いしたいからだよ』
バアルは位で言えば主神、パパポポに並ぶ存在だ。ルシファーのこの姿を見せようと、動揺の一つも零さぬと踏まえた上での人選。
『君達の協力に必要なのは、圧倒的な力でも授かっただけの威風でもない。心からの真実と、誠心誠意の嘆願だ。あの世界で、僕は君のように磨いていきたい宝物を見つけたんだ』
「……」
『その娘の歩みと奮闘をもっと見つめていたい。彼女が迎える新時代を見届けたい。そのためには、トットムジカをなんとかしなくちゃいけない。…倒すだけではきっとダメなんだ。そして僕は、倒すだけが限界だ』
彼は世界の理ごと破壊する力を有する。しかしトットムジカを力で制したところで、いつかまた滅亡の機が至るだけであろうと彼は見る。もっと根本的な、完全無欠の対応が必要なのだと彼は至った。
『僕にできないことが、君達にはできる。…ただ神に言われるがまま傲慢だった僕を変えてくれたエアや、カルデアの皆なら。その力を、どうか貸してほしいんだ』
エアとギル…もっと言えばカルデアの全てを彼は自らより美しいと確信していた。彼は自らより美しいものに至上の敬意を払う。例えそれが、自分自身より上を許す傲慢の大罪にあるまじき誠実であろうとも彼は躊躇わない。
『お願いだ。どうか……ウタやエレジアの未来を良くするための力を僕に貸して欲しい…!』
その言葉に、微塵も嘘はなかった。バアルもまた、深々と倣い土下座を行う。バアルもまた、ルシファーを至上の主と認めたもの。そしてカルデアを認めしもの。
「─────」
長い沈黙、或いは一瞬。その果てに、沈黙は破れた。
「──顔を上げて、ルシファー。バアル様」
『!』
ルシファーをそっと起こしたのは、王の至宝たるエア。顔を上げさせ、正座にて向き合う。
「勿論、あなたに力を貸すよ。王の裁定と、ワタシの意志に基づいた決断で」
『え……』
「ギルの御言葉は、『貴様をそうも骨抜きにした宝、俄然興味が湧いた。これは目の当たりにせねば収まらぬ』との事。今からカルデア総出で、トットムジカ対策に移る予定」
『!』
「やりましたね、ルシファー様」
「そしてこれは、もっと単純にワタシの意志。王の言葉ほど重くはないけれど…」
エアは微笑み、ルシファーの手を取る。
「困っている人、助けを求めている人に手を差し伸べるのに迷う必要なんて無いもの。ましてそれが、大切な友だちの貴方ならば、尚更」
『エア…』
「でも、力を貸すとか貸してあげるっていうのはギルの視点の話。ワタシはあくまで、友達の視点であなたにこう言うね」
彼女にとって、話を聞いた瞬間から答えは決まっていた。土下座など、止めるべきだった。呆気にとられてエネル顔にすらなりかけた衝撃であったが故に遅れたが…
「あなたの大切なものを、どうかワタシにも護らせてほしい。友達として力を貸すのは、いつだって当たり前の事だから」
『……!』
「えへへ、この教えもリッカちゃんからの影響だったりするんだよ。あなたの大切な宝物、その未来を…一緒に護って見届けよう!」
ルシファーはその言葉を受け、理解するに時間を有する感情を必死に制御していた。
『……僕は君に貰ってばかりだというのに、こんなにも良くしてくれるだなんて…ずるいなぁ、君は…』
この輝きを前にしては、神に備わらされただけの自らの光など粗製極まるとすら考える。人が人を尊び重んじることで生まれる心の光。これこそがまさに、地上の星であると。
『ありがとう…。本当に、この世界で君に出会えて良かったよ、エア…』
「ふふっ、ワタシも常々思ってるんだ。この世界に来れてよかったなって。友達として気持ちが一緒だね、ルシファー」
(エアの友は我が友同然!ボクも忘れるなよ、天の問題児!)
『あぁ、勿論さ!僕は友達だが、君はエアの親友だ!喜んで…力を借りてあげるよ!』
(おいなんで傲慢成分復活してるんだお前!?)
《フフハハハハハハ!熱い結束はなったようだな!では支度をせよ!ひとつなぎの大秘宝の前に、魔王の至宝を拝みに行くぞ!!》
『…本当に、ありがとう!ギル、エア!フォウ君!』
盟約は成った。また一つ、宿敵との因縁が結ばれた。
全ては…至る決着の祭典の為に。
バアル「角度はこうで良かったでしょうか…?」
ルシファー『黄金比があるんだよ、自然の…こう!』
アスモデウス【!?!?!?!?】
地獄に戻った後、土下座を探求する二人を目の辺りにしたアスモデウスは無事失神した。
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