人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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パンゲアの玉座

サタン【世界を築いた20人の王。世界は平等であるが故の空の椅子。王の玉座…】

「「「「「!!」」」」」

【悪くない座り心地だね】

「貴様……!!」

【平伏せ、五人の老人。たった今から…──僕こそが、お前達の王だ…!!】


人の誇り

マリージョアにおける、サタンの襲撃戦。天竜人のみを狙った、徹底的な局地的テロリズム。大混乱の末、天竜人の八割が姿を消し、建物は瓦解し、財宝は奪われた。海軍大将は三人戦闘不能。情勢は完膚なきまでの世界政府の敗北と言っていい。

 

そして、奴隷解放を執り行っていたのはウロヤソク、レタッソクの両名。奴隷をレヴィアタンに任せ、全て天竜人より奪い返す事に成功。後は自らの離脱を残すのみであったのだが…その前に立ち塞がったのが『神の騎士団』団長、ゴッドバレーの王者、フィガーランド・ガーリング。

 

「『鉄塊・金剛』………!!」

「『剃』!『月歩』!!」

 

ウロヤソクは防御力に、レタッソクは回避力に特化しフィガーランドと2対1で懸命に食らいつく。二人は四年の間、一日も欠かさず特訓と訓練を欠かさなかった。愚民化していた頃からは想像も出来ないほどに強く、事実団長フィガーランドにすら食らいつく実力を発揮する。

 

しかし、それでもフィガーランドは強かった。団長の座を預かるものとしての実力に恥じず、二人の鍛え抜かれた六式を尽く跳ね返し手傷を負わせていく。トドメは刺せぬまでも、確実に二人を追い詰めているのだ。

 

「解ってはいたが、骨が折れる…!流石は神の騎士団…!」

「肉体の全盛期はとうに過ぎた老年…それで尚この強さか…!」

 

「…………………」

 

フィガーランドの強さは覇気の圧倒的な練度。武装色の覇気、見聞色の覇気による単純な剣技を極め尽くし、二人の抵抗を無力化させているのだ。

 

「『嵐脚』!!」

「『指銃』!!」

 

「煩わしい……!!」

 

「「グァ…………!!」」

 

挟み撃ちにした攻撃すら通じない。殺されぬが打開策が見えない。神の騎士団、秩序側のフィガーランドは、天竜人でありながらも遥かその先に存在していたのだ。深く切り込まれ、膝をつくレタッソク、ウロヤソク。

 

「まだ、だ……!我等はまだ生きている…!!」

「心を折ることは出来ぬぞ…!まだ、これからだフィガーランド!かかってこい!!」

 

「……どこで修練を積んだかは知らぬが、よくぞ鍛えたものだ…その実力、神の騎士団の団員の末席に届く」

 

ふと、フィガーランドが刃を下ろした。そして、衝撃の言葉を告げる。

 

「レタッソク聖、ウロヤソク聖。再び『天竜人』へと戻れ。そして我等『神の騎士団』に入団せよ」

 

「!?」

「何だと…!?」

 

「その力、ここで喪うには惜しいものだ。下界と人の認識を捨て去り、再び神へと…天竜人へと舞い戻るのだ。お前達にはその強さと、資格がある…!」

 

フィガーランドから見ても、二人の練度は極めて高いものだった。六式を極め、覇気を高いレベルで身に着けたそれは、天竜人としても大いに上澄みの実力を発揮している。

 

だからこそ、再び彼は二人を勧誘する。此度は愚民でない、騎士団への帰参を。それをすれば罪を赦すと。再び神の座へと至るのだと。

 

「再び『神』となるのだ、レタッソク。ウロヤソク…!」

 

「「─────」」

 

誰もが望む神の座。世界を好きにする最高特権。あらゆる富と名声を再びその手にへと。

 

「────けるな」

 

「…!」

 

「ふざけるな貴様ァッ!!!!!」

 

だが、その提案は今の二人にとっては…何にも勝る『侮辱』であり。その怒りを燃え上がらせるものだったのだ。

 

「何が神だ!何が天竜人だ!!かつての世界を築いた誇り高き20人の王!その血を引いた我等が末裔!!その血は今!腐りきっている!!!!」

 

「……………」

 

「民を脅かし!!堕落を貪り!!生きとし生けるもの全てを害する者の何処が『神』であるのか!!我等は『人』!!今を生きる、懸命に歩む『人』なのだフィガーランド!!」

 

「ウロヤソク…貴様…!」

 

「我等は知っているぞフィガーランド…!かつてのゴッドバレーにおいての天竜人の狼藉!非加盟国の王族から市民を別け隔てなく『虐殺』したおぞましき所業!!貴様は王を斬り、それでなお民を誰よりも斬り殺した!それ故の『王者』!!そうだろうフィガーランド・ガーリング!神の騎士団団長よ!!」

 

手傷を負い、瀕死で尚二人の覇気は微塵も衰えなかった。それは神には無い『人』としての意地。二人の天竜人が宿した、人の強さそのもの。

 

「人として生きると決めた時から、毎日夢を見る…!天竜人として自身が行ってきた、吐き気を催す所業の数々!我等が犯した罪の数々!!」

「万死に値し、死してなお償えぬ恥ずべき罪!我等が犯した罪とは『神の僭称』!!末裔として生まれただけで!我等は何も偉業など成していない!!」

 

神を名乗り、あまりに無法を犯して来た。人として生きている限り、永劫焼き尽くすであろう自らの罪。

 

何度赦しを乞うただろうか。何度涙を流し、自らの首を締めただろうか。だが、死による救済を彼等は決して求めなかった。

 

「断じて死してなるものか…!!我らの罪は生きて償い、背負い生きなければならん!」

「我等は人の生を誇りに思っている!!罪を認め、贖罪に生きる人の在り方をこそ尊んでいる!!」

 

「神に戻れだと!?ふざけるな!!我等にとって『神』として生きた全てこそ堪え難き恥!!」

「「そのようなものに戻るなど…!それこそ!『死んでも御免』だ!!」

 

「…………………」

 

「分かり易い様に、声を高らかに叫んでやろうガーリング…!!」

「そうだとも!聖地などとふざけた名称を持つ!この地でな!!」

 

レタッソクとウロヤソクは、腹の底から叫ぶ。それは、彼等の魂の咆哮。

 

「天竜人とは『世界の嫌われ者』!!誰も天竜人など必要としていないッ!!!!!」

「誰もが懸命に生きるこの世界で!『神』などいてはならん!!人を虐げるだけの『神』など!!存在してはならぬのだァ!!!!!!」

 

それこそが、彼等が下界に降りて見つけた答え。誰もが懸命に生きる世界こそ、新時代において必要不可欠なもの。

 

「…………魂まで腐り果てたか。ならば是非もない」

 

神の座など、もういらない。人という誇り高き種族こそ、二人の天竜人が見つけた本当の答え。

 

「ここで貴様らを『処刑』する…!なにか言い遺す事はあるか!レタッソク!ウロヤソク!!」

 

「あるとも!!『我等は人也』!!」

「『新時代』こそ!我等の目指す理想の夢なり──!!」

 

鉄塊を発動させ、飛びかかるウロヤソク。

剃にて、渾身の嵐脚を叩き込むレタッソク。

 

「何度でも言うぞ…!ゴミを庇うものは、ゴミ以下だ──!!」

 

交錯、激突。そして大激震、そして余波。

 

その余波が完全に収まったその刹那に───

 

二つの、鮮血が舞った。






ウロヤソク「見ろ、レタッソク。貰った花の冠を枯れないように加工したぞ。これで宝として愛でられる!」

レタッソク「私は表彰状を額縁に飾った。何より嬉しい、大切な宝物だ」



ウロヤソク「……また目覚めてしまったか、レタッソク」

レタッソク「あぁ。……嘗ての自分が、あまりにも悍ましい。死んで楽になれたら、どれほど…」

ウロヤソク「それは逃げだ。我等は人…背負っていくのだ。未来永劫な」

レタッソク「あぁ……償いが容易いはずも、無いのだからな」



ウタ「いつか二人も!ライブに来てね!」

レタッソク「我等が…?」
ウロヤソク「いや、我等は…」

ウタ「なに?まだ生まれや立場を気にするの?今の二人は立派でしょ!胸を張りなよ!」


「「〜〜〜〜〜〜!」」

「え、なんで泣くの!?怖い!怖いんだけど!?」



ウロヤソク「新時代…見てみたいな、レタッソク」

レタッソク「あぁ。きっと素晴らしい世界だ。我等は…その礎になろう」

ウロヤソク「あぁ!誰もが笑顔で、幸せな世界を!」

レタッソク「我等の力を、その一端に!」

誰もが笑顔で──幸せな世界を──



フィガーランド「……レタッソク、ウロヤソク」

「……人になった事。それが貴様らの無二の『汚点』だ…!!」


To Be Continued …


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