人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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エレジア崩壊より十年後 ウタ19歳 エレジア深夜

ルシファー『さて…と。じゃあ、約束を果たそうか、ウタ』

ウタ「むにゃむにゃ…」

ルシファー『仮にも『四皇』と話すわけだから、実績が無いと話にもならないだろうし…決行するにもピッタリだろうしね』

レヴィアタン【ルシファー様。レヴィアタン、準備は完了しています。ウロヤソク、レタッソクも準備は万端との声が】

ルシファー『よし。……世界を変えていくのは、革命軍やルフィ、ウタの仕事だ。僕はあくまで、宝物を手にして護るために全てを壊すだけ』

電電虫『漸くか、ルシファー。やるなら早くやれ。ライブが待ち遠しいぞ』

ルシファー『オッケー。さぁ始めよう。今日は世界が、壊れる日だ…!』


夜が明ける日

聖地マリージョアの上空に、星が瞬いた。それは太陽より下界を照らす傲慢の星、明けの明星たる光であった。その光は神を僭称する天竜人、その本拠地たる聖地マリージョアの更に上から見下すように輝いていた。誰もが下を見て、弱きものを虐げるこの時代にて…

 

『『栄光失墜す喪失の楽園(パラダイスロスト)』』

 

その光は、一切の慈悲もなく、容赦無く。安寧を貪る愚昧なる家畜と化した天竜人の住居を別け隔てなく貫き降り注いだ。それはまさに、神たる者の真なる裁きの如くであった。

 

 

「何事か…!」

 

『襲撃です!!何者かが、聖地マリージョアに無差別攻撃を仕掛けてきました!今も尚攻撃は継続中!』

 

「革命軍か…或いは、近年多発している海難の根源か…」

 

「衛兵をすぐに出せ。天竜人を護衛しろ!!」

 

『はっ!総力を挙げて直ちに!!』

 

世界政府の頂点、五老星はその報告を受け速やかに対処を命令。これを以て、『マリージョア聖戦』は幕を開ける。

 

 

「ギャアァァ〜〜〜ッ!!!」

 

「逃げるえ!!殺されるえ〜〜〜!!」

 

住処を破壊された天竜人達は蜘蛛の子を散らすように建物から湧き出我先にと逃げ出していく。たとえどれほど権力を有していようと、降り注ぐ滅びの光には何の意味も持たず、介さない。

 

「あぁ〜〜〜〜!!わちきたちの家が!財宝が!食料がァ〜〜〜〜〜!!」

 

「どこぞの貧乏人の嫉妬だぇ!衛兵共は何をして、ボゲェ!!!」

 

その輝きが害するのは宝物や生活のためのものばかりではない。愚昧と化した天竜人自体にも容赦無く降り注ぎ、天竜人に地獄の苦しみを味わわせ姿を消失させていく。

 

「衛兵共はこの後死刑だえ!!わちき達をこんな目に遭わせて、いる意味が、グェッ!!」

 

「ヒィイ〜〜〜〜!?命だけは、命だけは助け、オゲェッ!?」

 

無論、慈悲はない。天竜人が他者にしてきた怒りと憎しみを思えば、そのエネルギーはまさに無尽蔵だ。世界中の人間が天竜人に憤怒を懐いている。そうとすら言えるだろう。

 

ならばこそ、ルシファーのもう一つの側面が力を発揮する。『傲慢』がルシファーならば、ルシファーの別名【サタン】が司る大罪はこの地にこそ相応しい。

 

『お前達が新時代に行くには、一度滅びなくてはならない。お前達は生まれ変わらなくてはならない』

 

サタンたる黒き羽根から禍々しき赤と黒のエネルギーが溢れ、形を成していく。サタンの美貌と翅もまた、荒々しく雄々しく変容する。

 

【思い知るといい。この世界に蓄積された憤怒。奪われ、虐げられた者達の織り成す大罪の姿を】

 

顕現せしは憤怒の大竜。サタンが司るとされる、真紅と漆黒の禍々しき巨大竜。サタンの翅を中核と成す大魔王の【混沌】の権限

 

【来い。【憤怒天衝・憤懣竜王(ドラゴラース・サタン)】】

 

【キシャアァアァアァァァアアァァァッ!!!!!】

 

蛇の擬神化、怒りの権化。サタンの司る大罪…世界全ての怒りを十年懸けて吸い上げ顕現させた神獣、幻想種最強のドラゴンの顕現。生物ではなく、怒りという概念そのもの。大罪の具現が、マリージョアに向けて放たれる。

 

「ヒィイ!お助けぇ〜〜〜〜〜!!!」

 

「ぐぎゃあぁあぁあぁ〜〜〜〜!!」

 

「息子よ!娘よぉ〜!!」

 

顕現したドラゴンはマリージョアを完膚なきまでに蹂躙していく。天竜人を踏み潰し、建造物を破壊し、天竜人の権威という権威を意に介さず破壊し尽くし、徹底的な蹂躙と侵略を行っていく。

 

「父上ェ゙!痛い、痛いえ〜〜〜!!」

「どうしてアタシ達がこんな目に………!天竜人は、この世界でいちば───」

 

親の前で踏み潰される子供。あくまで転移魔術によりケイオスカルデアに飛ばされているだけではあるが、生きていれば良しとして四肢を踏み潰すなどはしている。その苦痛は真なるものだ。

 

「子供達よ〜〜〜〜〜!!貴様ァ!!貴様が今何をしているのか解っているのかァ!!」

 

【……………】

 

「天竜人だぞ!!この世界に遍く君臨する至上の存在!!我等の命が喪われること!我等を害することがどれほど罪深いか貴様は理解していないのかァ!!」

 

愚昧政策は完全に成功していることを示す態度を天竜人は取る。まだ彼等は理解していない。

 

「奴隷に…いや、家畜にしてやる!!貴様は必ずわちき達の下に跪かせ───」

 

言い切らぬ内に、天竜人は踏み潰される。転送された先で、自分の死の瞬間を存分に思い出す事だろう。

 

【お前達なんて、そこらの石ころと大差はないよ。──蹴飛ばして遊ぶ程度の、ただのゴミだ】

 

サタンは意に介さず、マリージョアの蹂躙を続けていく。電電虫を利用し、その時の光景と音声を録音し、天竜人を存分に痛めつけ溜め込んだ財宝と食料を回収しながら。

 

【マモン。宝物庫はこちらでいいんだね?】

 

《そうですルシ…サタン様!溜め込んだ臭いがプンプンしやがる!もれなく全部持っていきましょうや!》

 

(カルデアとエレジアへ、いいお土産が出来たね。ラッキー♪)

 

その破壊と蹂躙は留まることを知らず──聖地であるマリージョアを、黒き翼と赤き竜が蹂躙し尽くしていく。それを止められる兵力は未だここには存在していなかった──。

 

 

『誰か!誰か助けてくれだえ〜〜〜〜!!』

 

『うぎゃあァァァ!!体が、体が裂けるぅ〜〜〜〜〜!!』

 

『わちき達は天竜人だぞ!!どうして、どうして誰も助けてくれないんだえ〜〜〜〜!!?』

 

「……なんという事だ……」

 

五老星の電電虫から絶えず流れる、天竜人達の悲鳴と絶望の慟哭。天竜人のみを対象にした、圧倒的な蹂躙と殺戮。

 

「かつてのフィッシャー・タイガーの栄光を真似した馬鹿者であるならばよい…金獅子のシキのような大海賊であればよい…」

 

「こやつは違う……!『天竜人』を!『天竜人』のみを明確に襲撃しているのだ……!!」

 

「神をも恐れぬとはまさにこのこと…!下界の海にのさばる海賊共とは脅威の桁がまるで違う!」

 

「世界の敵……!世界政府発足以来、最低最悪の【叛逆者】が今!マリージョアに現れている……!!」

 

人を虐げる天竜人、天竜人が虐げる人。その枠組みから外れるだけでなく、その枠組みそのものを破壊せんと現れしもの。五老星は否が応にも、理解せざるを得なかった。

 

「全霊で対処せねばなるまい……!我等も出るか?」

 

『ならぬ』

 

「「「「「!!」」」」」

 

『ヌシアらでは勝てぬ。死ぬだけだ。座して見るがよかろう』

 

「しかし…!このままでは…!」

 

『何だ?』

 

「………いえ…!!せめて、対処だけでも…!!」

 

『…良かろう』

 

「はっ!!『海軍大将』三人を回せ!なんとしてもヤツを止めろ!!」

 

『報告します!!奴隷を解放している存在が二人確認されました!』

 

「共犯か!?」

 

「それどころではない!!全勢力をあのふざけた叛逆者へと…!」

 

『そ、それが!その存在が、かつて海難事故に巻き込まれた『ントコト・ウロヤソク聖』と!『デジマ・レタッソク聖』との報告が!!』

 

「「「!?!?!?」」」

 

『……………………』

 

「………よもや、此度の騒ぎはそやつらが…」

 

「下界に染まり、絆されたか…!」

 

「……ガーリングに通達しろ!『神の騎士団』を出せと!!」

 

(さて…数年どれほど仕込まれたのか…)

 

 

 

「チャルロスよ!奴隷など捨て置け!また買えばいい!」

 

「嫌だえ〜〜〜!!お気に入りの奴隷だえ、まだ沢山遊ぶえ〜〜!」

「ああっ…!」

 

「ワタシも家を捨てるなんてイヤアマス!海軍は何をしているアマスか!?あの役立たず共!!」

 

少し離れた場所、ロズワード一家の領地。チャルロス、シャルリア、そしてロズワードが奴隷と宝の前で右往左往を続けている。

 

「お前はそろそろ妊み頃の身体なんだえ!絶対逃さないえ〜!」

「ううっ…!」

 

「───『鉄塊・金剛』……!!」

 

「は?」

 

「何をしてるか貴様ァァァアアッ!!」

「ほげぁあァァァアアァァァアア!!!」

 

瞬間、チャルロスはダイヤモンドの如き拳に殴り飛ばされる。きりもみ回転しながら、遥か彼方のマリージョア城にめり込む無様をさらし吹き飛んでいく。

 

「かつての自らもそうだったが故、烏滸がましいが!あまりにも見るに耐えん!!」

 

「き、貴様は!?ウロヤソク!?」

「死んだはずアマス!?何故!?」

 

「話す前に貴様らも奴隷を手放さぬかァ!!!」

 

「「ギャア〜〜〜〜〜〜〜ッ!!!」」

 

二人はレタッソクが棍棒で殴り飛ばす。二人は既に、大多数の奴隷を解放して回っていた。ここが地点的に最後の場所となる。

 

「もう大丈夫だ…!さぁ、逃げよう!」

「あ、あぁ…」

「ショック状態か、無理もない…!おぶるぞ、ウロヤソク!」

 

二人が場を離れようとした、その時──。

 

「…言ったはずだぞ。ウロヤソク、レタッソク」

 

「「!!」」

 

「ゴミを庇うものは、ゴミ以下だと…!」

 

「「…神の騎士団団長…フィガーランド・ガーリング…!!」」

 

電光石火の襲撃戦は、さらなる混迷を極める…──。

 




天竜人「ガペ………ペ……」

サタン【これだけ殴っても死なないのか…、…!】

?「おやァ、大したもんだねェ〜〜〜。わっしの蹴りを避けるとは……」

サタン【………来たか】

黄猿「イタズラにしては度が過ぎてるねェ〜〜………」

赤犬「この時代に、こうも骨のある輩が現れよるとはのぅ…!」

青雉「参ったね……勝っても負けてもどやされるぞ、こりゃァ………」

サタン【海軍大将三人…お待ちかねだ】

赤犬「お前さん…覚悟はできちょるんじゃろうなァ!!」

【丁度…彼女や彼にコートをプレゼントしたかったところだったんだ】

To Be Continued……


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