人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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「走れ!我が戦車!!古今東西の英傑に、我等が力を見せつけるッ!!」


アキレウスの戦車が駆け抜け、瞬時に魔神を轢き潰す


「図体が大きいだけの愚物だ。射抜くのは容易い」

一射九撃のドラゴンホーミングレーザーにて、魔神を瞬く間に蒸発させていくヘラクレス

「――はぁっ!!」

火焔と輝きを放ちながら縦横無尽に飛び回り、それだけで魔神を蒸発させていくカルナ

「はぁあぁあぁっ!!」

一刀にて魔神を真っ二つに引き裂き、弓矢の嵐にて魔神を蜂の巣にする頼光

「絶えず再生させろ!!再生にのみに専念させれば攻撃は来るまい!!」

棍棒を両手に持ち、ただの一撃で叩き潰していくラーマ


「駆け抜けろ、マハ、セングレン」


凄まじい荒々しさの疾走にて、魔神を挽き肉にしていくロイグ


「メイヴちゃん!!見ていてくれぇえ!!!」

大剣を振り回し、竜巻を起こし、巻き込んでいくフェルディア


魔神は再生にのみに専念しなければ即座に、消滅してしまう暴威に晒され続けていた――




《やはり、一つでも残っていれば再生する、か》

――消滅を狙う場合は、一撃の下に総てを滅するか、食い止めるには常に耐久を超過させるダメージを与え続け、再生に専念させる、といった戦法が有効のようですね

《七つの特異点につき七体と仮定する。――となると、七つの魔神どもを狩り続ける手数が必要、か。――フッ。殲滅はマルドゥークの得意分野よ》

――彼等の宝具を重ね合わせねば、消滅には届かない・・・

――その時まで、皆・・・敗けないで!


世界を臨む邪龍・淫蕩にして乙女なる女王

「私は女王メイヴ。――名前を教えて頂戴」

 

 

 

現れるケルト兵。ドラゴン、バイコーン、ゲイザー、スプリガン

 

 

彼女の『女王』としての権能を総て活用した、全身全霊の決闘態勢

 

 

【――藤丸リッカ。好きなことはコミュニケーションと、サブカルチャー全般。嫌いなものは・・・先入観】

 

 

泥を纏い、強固にし鎧に纏う。――彼女のイメージする『邪龍』。――狩猟ゲームに出典されし邪龍の意匠を取り込んだ深紅のラインが走る漆黒の全身甲冑を造り上げる。更にかつて出逢ったランスロットと、ベルセルクの狂戦士の鎧のエッセンスを複合し、頭部を龍の兜にした、リッカのサブカルチャーアーマーとも言うべき無双の鎧だ

 

 

編み上げた材料は総て『この世総ての悪』。右手に握る童子切安綱に黒と赤の稲妻が走り続け巨大な斬艦刀へと変化する。左手の弓矢は左腕と一体化し、獅子の毛皮のマントは黒き翼に変わる。アキレウスより借り受けた盾は、両腕のガントレットとなり装着する

 

 

金色の瞳となる箇所が光輝き、辺りに混沌の覇気が満ち溢れ――人型の『龍』が顕現する

 

 

「そう――では、始めましょうか」

 

 

鞭を高々と上げ、号令を送る

 

 

【うん――いつでもどうぞ――!】

 

 

魂の母と同じ様に構え、低く唸りを上げる

 

 

・・・言葉と馴れ合いは不要

 

 

「さぁ、私の可愛い子達――」

 

【――お母さん、力を借りるね――!】

 

女は唯、武力で語れ――!! 

 

 

 

「――さぁ!踏みにじりなさい!!まずは女王の威厳、見せてあげるわ!!」

 

 

【吼えろ!私!!邪龍の如く!!】

 

 

兵達は一人の少女に

 

 

「「「「うぉおぉおぉ――!!!!」」」」

 

 

少女は、目の前の総てに

 

 

【だぁぁあぁあぁあぁあ!!!】

 

 

存亡を懸け、総身を躍らせ飛び掛かる――!!

 

 

 

・・・フェルグスの種を使った、メイヴ渾身の精鋭兵士100人

 

 

剣を振るい、弓矢を放ち、槍を突き立て目の前の邪龍を鬨の声を上げながら迎え撃つ。雄々しく、勇壮なメイヴ自慢の勇士であり子供達

 

 

本来ならば人間など敵うべくもない戦闘民族――ましてやマスターならば、即座に呑み込まれていただろう

 

 

――それが、普通のマスターならば、だが

 

 

【だりゃあぁあぁあぁあぁあ!!!】

 

100人の鬨の声を上回る、邪龍の怒号を

 

 

唸りを上げ、雄叫び、根源的な畏怖を撒き散らしながら――彼女は刀に宿った母の愛を、その武芸を振るう

 

 

邪龍の鎧の前に剣は刃こぼれし砕け、槍は刺さらずへし折れる。弓矢は突き刺さる前に泥に呑まれる

 

右手の巨大な斬艦刀として象られし童子切が縦横無尽に振るわれる。牙壊がごとき連斬、雷光がごとき瞬撃の一閃、刀を変化させ放り投げる大車輪

 

その剣技は、母の武芸と、リッカの愛する文化の併せ技。誰もが夢見る『ゲームやアニメの技』を、泥の変容による形状変化、魔力放出による身体機能のブーストを駆使し、リッカ独自の戦法として昇華し披露しているのである

 

怒濤かつ無双の剣技に、瞬く間に半数を削られるケルトの勇士達。――むべなるかな、『源氏の棟梁の技』、『鍛えられ、泥を纏い強靭さを極めた肉体』そしてそれを統括する『心』

 

 

――それらを合一せし今のリッカには、高々勇士など物の数では無いのだ

 

【アルテミス!行くよ!!】

 

 

左手に一体化した月女神の弓矢を起動させ、左手のガントレットから月の光矢を一斉掃射し、ケルト兵を穿ち抜いていく

 

被弾せし月女神の矢には泥が込められており、当たった箇所から溶け落ち、融解し飲み込まれていくケルト兵

 

【ぉおぉおっ――!!!】

 

左足を高々と上げ、踵をホワイトハウス外庭の床に叩き付ける。浸透し、噴火のごとく泥が吹き上がり、残りのケルト兵が叩き上げられ空中に浮き上がる

 

 

【――ガァアァアァアァアァアッ!!!!】

 

 

分子構造を振動させ崩壊させる絶死の咆哮を叩き付け、即座に巻き込まれしケルト兵を灰塵と帰させる

 

「ブォオォオァア!!!」

 

【む――】

 

ケルト兵を残らず駆逐したのも束の間、暴れ馬の如くに躍り出し魔獣、バイコーンがリッカに襲い掛かり、踏み潰さんと前肢を高らかに振り上げる

 

 

【――せぇいっ!!】

 

即座に身を屈め、身体の支えとなる後ろ足を脚払いにて蹴り払う

 

「――!?」

 

バランスを崩し、宙に投げ出されるバイコーンに素早く身を寄せ、頭部を抱え込み、プロレスで言うココナッツクラッシュの体勢に持ち込み

 

【――ふんっ!!!】

 

 

泥をブーストにし放出させ、瞬間速度を何倍にも加速させ、一息に膝と腕で頭部を挟み、叩き潰す

 

飛沫、粉砕、崩壊。頭を脳髄ごと叩き潰されバイコーンは即座に絶命する

 

 

【――ッ!】

 

ネメアの獅子皮を変質させた翼で身体を覆い、背後から放たれる邪視を無力化させる

 

 

――遠方から放たれしゲイザーを認め、即座に刀を納め、泥から槍を取りだし一直線に構え、突撃していく

 

【ぜぇえいっ――!!!】

 

離脱も回避も赦さぬ一撃必殺、剛力と加速を受けた槍の一刺しが巨大な目玉ごと内臓器官を抉り抜く

 

『周天にて気を満たし、最高の速度と打点を以て敵を穿つ。細かいことはブッ殺して考える』。三人の師匠の教えの要訣を兼ね備えた絶死の一撃。足りぬ技量は母が補い、足りぬ膂力は魔力放出にて補う

 

 

串刺した肉が固まらぬ内に蹴り飛ばし槍を引き抜く。

 

【っづ――!!!】

 

突如巨大な脚の踏みつけを受け、リッカのいる箇所がべこりと凹む。スプリガンの巨大な体躯の四肢にて、蹴りが繰り出されたのだ

 

サーヴァントですら無事では済まぬ一撃を、リッカはアキレウスの盾を変化させた龍頭のガントレットで受け止める

 

【嘗ぁあぁあぁあめぇえるぅなぁあぁあ――!!】

 

 

師匠譲りの咆哮を上げながら真っ正面よりスプリガンの脚を受け止め力づくで押し返し、同時に翼を分離、合体させ投げ付ける

 

 

【スクランダァ!!カッターッ!!!】

 

 

投げ放たれたその翼刃は唸りを上げ、スプリガンの身体を真っ二つに叩き斬る

 

 

『グゴァアァアァアァアァアァア!!』

 

 

ドラゴンが咆哮を上げ、大きく首を振るい、口に焔を満たす

 

 

――ブレスだ!

 

直感したリッカは翼刃を胸に装着し、左手の弓矢とラインを一体化させエネルギーをチャージし放つ

 

【リッカツイン!シュートォッ!!!】

 

 

放たれる灼熱のブレス、放たれる漆黒の光線

 

 

『グゴァアァアァアァア!!?』

 

即座に押し返され、口許にて大爆発を起こしたドラゴンが怯み、体勢を大きく崩す

 

 

【――今!】

 

右手の童子切安綱に泥の魔力を纏わせ形状変化。天に屹立するほどの絶大かつ膨大な刀身に変化させ、背中に翼を戻し、身体を大きく屈め――

 

 

【――はぁあぁあっ!!!】

 

 

辺りの岩盤を踏み砕き、大地を叩き崩しながら、リッカは羽ばたき天へと翔ぶ

 

 

 

――その光景を見ていたメイヴは、心底震えが走っていた

 

 

なんて雄々しさ

 

 

なんて勇壮な姿

 

数多の困難を打ち砕き、破壊し、躍り、進んでくるその勇敢にして恐れを知らないその眩しさ

 

――なんて、素敵なのだろうと。瞬間ではあるが確かに、メイヴはそんな所感を懐いたのだ

 

「――貴女が、男だったら――」

 

彼女が同性、『敵』でしかない女ではなく

 

異性――互いを喰らい合う『男』であったのなら

 

 

――くーちゃんには遠く及ばないにせよ、私が目を懸け、愛し、跪かせるに相応しい――

 

 

・・・そんな所感を振り払い、メイヴは即座に戦車を召喚し、乗り込む

 

 

「そうよ、私にとって女は敵!男の種を奪い合う邪魔者でしか無いのだから――!」

 

ぱしり、と鞭を叩き牛に檄を入れる

 

「子を孕む母胎は私だけで充分!それを余すことなく、叩き込んで上げる――!」

 

生まれた感傷を捩じ伏せ、メイヴの戦車は嘶きを上げる――!

 

 

 

【誅罰!執行!ちぇえぇえぇえすとぉおぉおぉおっ――――――!!!!】

 

ドラゴンすら見上げる雲耀の彼方まで飛翔し、方向性魔力放出にて下界に加速し、ドラゴン目掛けて刃渡り10メートルにまで変貌した漆黒の童子切を叩き下ろす――!

 

顔面の正中線から、刃を叩き込まれ、勢いを込められた斬艦刀を受けたドラゴンは真っ二つに割れ、即座に泥に飲み込まれ焼失する

 

 

【名付けて源氏現流、誅罰・雲耀の太刀――ありがとう、お母さん、ゼンガー親分――】

 

ゆっくりと斬艦刀を引き上げ――

 

『――まだ終わりではないですよ、リッカ!』

 

脳裏に響く母の声に反射し、咄嗟に刃の腹を前方に押し出すリッカ

 

「――残念!もう少しで轢き殺して上げたのに!アナタ、本当に化け物なのね!」

 

衝撃、そして震動。踏ん張る脚が踏みしめる大地が抉れ、電車道のような軌跡を描き出しながら勢いを増し引きずるように猛進していく

 

【これが、アナタの宝具――!】

 

苦々しげに呟くリッカ

 

「そう!『愛しき私の鉄戦車(チャリオット・マイ・ラブ)』!人を統べる王権!人を虐げる鋼鉄!人を狂わす恐怖!――本来のやり方とは違う野蛮な使い方だけど、特別に見せてあげる!」

 

猛牛の進撃をリッカは受け止める。脚は大地を抉りながら後退していき、勢いは更に増していく

 

 

「どうしたの!?そんなものなの!?勝てるのは子供達だけで、サーヴァントには勝てないの!?」

 

メイヴが叫び、鞭を振るう

 

「『女王』としての私は完敗よ!あれだけ造り、用意した子供達を皆殺しにされた以上ね!ご感想を聞いてもいいかしら!?」

 

【特に!!】

 

「そう!さっぱりしてるのね!ますます――」

 

【――?】

 

「――何でもないわ!そのまま聞きなさい!この私が、アナタに質問を投げ掛けてあげる!」

 

戦車と押し合うリッカに、メイヴは戦車の上から問いを投げるメイヴ

 

「あのクーちゃんの姿、アナタが聖杯で願ったものでしょう!――何を願ったか、聞いてもいいかしら!」

 

――そう、メイヴは聞かずにはいられなかったのだ

 

想い焦がれた相手を、如何にして宿敵は手に入れたのか

 

――彼を振り向かせた願いとは、何だったのかを・・・一人の女として、かつて恋した者として・・・聞かずにはいられなかったのだ

 

「さぁ――私に聞かせてちょうだい!アナタは、何を――」

 

【――私の願いは、あまりに重いと思っていたけど・・・兄貴にとっては当たり前の事かもしれない!】

 

踏ん張り、戦車の勢いを減衰させていくリッカ

 

【――世界を救うまで、誰にも敗けない戦士であってほしい!それが、私が兄貴に願った事だよ!!】

 

 

――メイヴの思考が、空白に支配される

 

「――え・・・そんな、コト――?」

 

――そんなの、願うまでもない

 

彼は生粋の戦士で、勇士で

 

何よりも、奔放で、自由で――

 

そんな、彼にとって・・・当たり前の事を・・・彼に?

 

「――どうして、願ったのか・・・聞いてもいい?」

 

メイヴはその時、総てを忘れた

 

女王も、決闘の事も忘れて、彼女は聞いてしまった

 

――女としての、好奇心と興味のままに

 

【聖杯戦争に参加した兄貴の戦いを見た!――サーヴァントの役目と言われたらそれまでかもしれないけど!――兄貴はあんまりにも、不憫な目に逢いすぎてた!】

 

ぎゃりり、と脚を踏ん張り、大地が砕けんばかりに踏み込む

 

【あんなに強くて、カッコいい兄貴なのに――実力をまともに発揮できてなかったから!私は、ただ単純に思っただけ!『何にも縛られていない、兄貴の全力が見てみたい』って!】

 

 

「――――」

 

【『一回くらいは、全力全開で兄貴を戦わせてあげたい!』――私のものだなんてとんでもない!】

 

やがて勢いが完全に相殺され、停止する鉄戦車

 

 

【『兄貴は、兄貴だけのもの』!――私はただ二人を除いて、英雄を自分のものだと思ったことなんて無い!!】

 

 

「――――――――・・・・・・そんな、コト・・・?」

 

二頭の牛の角を纏めて握り

 

【カルデアに集まる皆は、英雄の皆は――!!】

 

体幹と腕力に全力の魔力解放を放ち、鉄戦車をジャイアントスイングの要領で振り回していく

 

【私の、仲間で、大切な・・・家族だから!!】

 

 

風圧と衝撃にて、牛が失神すると同時に――

 

 

【私の所有物なんかで――あるもんかぁぁあっ!!!】

 

メイヴもろとも、鉄戦車を空高くぶん投げる――!! 

 

 

「――――それが・・・あなたの――クーちゃんに託した願い――」

 

戦車から投げ出されたメイヴは、その所感を反芻する

 

 

――私が焦がれた、ただ一人の男

 

あらゆる理不尽に苛まれながら、誰より自由だった男

 

誰も恨まず、死んでいったただ一人の男

 

 

――欲しい、と願った

 

 

なんとしても、アナタが欲しい、と。聖杯を手に入れて、躊躇いなく願った

 

『クー・フーリンを邪悪なる王に。私に並び立つ邪悪な王に』と

 

――それと同じことを、彼女はクーちゃんにしたというのに

 

『誰にも敗けない、戦士であって』と――

 

そんな、細やかで、当たり前な事を、聖杯に告げて

 

『ありのままの、アナタであって』と――彼に伝えたと言うのだ

 

 

――あぁ、納得した、納得してしまった

 

 

「――あははっ」

 

私のクーちゃんは気だるげで

 

あっちのクーちゃんは楽しそう

 

 

歪めた私と、肯定した彼女

 

――そんな彼女だから

 

 

【はっ――!!】

 

空中に投げ出されたメイヴ目掛け、リッカが翔ぶ

 

――彼の総てを『手にいれたい』と望まなかったから――

 

地獄の九所封じ(ナインライブズ)・その一】

 

腹に脚をかけ、首と脚を掴み

 

――彼女は、たった一つの彼の心を

 

泥を噴射し、大地に渾身の力と速さで叩き付ける――!

 

 

【『大雪山落とし』――っっ!!!】

 

――手にいれることが、出来たんだ・・・

 

 

渾身の勢いで叩き付けられ、地面が抉られながら急所の一つ『背中』を封じられるメイヴ

 

 

「がふ――っ!!」

 

【――っ!】

 

叩き付けられながらも、メイヴは両腕をからめつけ、首相撲の体勢に持ち込む

 

【まだ――!】

 

「――負けるわけには、いかないのよ――・・・!クーちゃんの、名に、懸けて・・・!」

 

サーヴァントの力、女王の意地にて泥の浸食すらはね除けながら力を込めリッカの首を絞めるメイヴ

 

(これは、情けをかけていい相手じゃない!)

 

素早くメイヴの胴体をくの字に折り曲げ、宙ぶらりんとなった腕を取り

 

【その二と、三!】

 

身体を回転させ、勢いを増し――

 

 

【――『スピンアーム・ソルト』――っっ!!!】

 

急所『両腕』を封じ、叩き壊すスープレックスを叩き込む――!!

 

「っっっ――!!」

 

脚を払い

 

【っ!?】

 

即座に脚を四の字固めにてリッカの脚を締め上げるメイヴ

 

【――っあぁあぁあぁ!!】

 

完成度の高い、完璧に極ったその足技に苦悶のうめきを洩らすが、即座に魔力放出の力づくで足技から抜け出す

 

 

「っあ――っ」

 

即座にリッカは立ち上がり、メイヴの脚を折り畳み、高々と持ち上げ

 

【その四と、五!】

 

立てた片ひざに――

 

【――『ダブルニー・クラッシャー』!!】

 

メイヴの両足を叩き付け、『脚』をもろともに粉砕する――!!

 

 

「がふ――っ!!」

 

【――っああっ!!】

 

脚を破壊されながらも、メイヴは渾身の頭突きをリッカの頭部に叩き付ける

 

面を通して、衝撃が伝わり――本能的にメイヴの後ろに回り

 

 

【その、六!兄貴――頭は狙うよ!!】

 

渾身の勢いを込めて――

 

【――『カブト割り』!!】

 

大地に、叩き付ける――!!

 

『脳天』の急所を潰され

 

 

「――っっっ!!」

 

それでもなお、ボディアタックで抵抗するメイヴの意地と気迫に

 

 

【っっっ、――その七!!】

 

吸い寄せられるように飛び上がり、リッカは、脳天から――

 

【『ストマック・クラッシュ』!!!】

 

 

『腹』に突き刺さるように頭突きをかまし、急所を叩き潰す――!!

 

 

「げほ、っ――!!」

 

 

霊核を揺さぶられるほどの七撃を受けながらも

 

 

「ま、だ――よ・・・まだ・・・」

 

よろよろと手を伸ばし、リッカの掌を力の限りに掴む――

 

【――その八】

 

 

死に体とも思えぬその力に堪えるように、強く、強くその手を握り返し

 

【――『ガンド』!!】

 

 

メイヴの霊基をスタンさせる、カルデア最大のガンドを、直接叩き込む――!

 

「――ああっ――!!」

 

 

【ぐううっ!!】

 

スタンを奪われながらも、渾身の力でリッカの首に噛みつき、喉笛を食いちぎらんと吼える――!

 

 

【――なら――!!】

 

ガシリ、と両腕をスピンアームソルトの体勢に抱え、大回転により勢いをつけ回り、回り、回り――メイヴの身体が、その速さと衝撃にて垂直に直立する――瞬間

 

【『地獄の九所封じ(ナインライブズ)』――ラスト、ワン!!】

 

天高く放り投げ、逆さまになったメイヴの『首』に、左脚をかけ、技の完遂に入る――!

 

「――っ、ぁあぁっ・・・!」

 

最後の力を振り絞り、両腕を使い、左足を外さんと力を込める

 

 

【そうはさせない!!】

 

外されかけた左足に、右脚の足裏を叩き付けホールドを強固にする

 

 

「っ――!!」

 

更に外さんと抵抗するメイヴを、重ねた右足に更に右手を叩き付け力で捩じ伏せ、技を完遂させる――!

 

 

【ゲーティアにとっとくつもりだった必殺技!――アナタに手加減や出し惜しみなんて失礼だから今、放つ!!】

 

 

泥を魔力噴出し、倍速以上に加速し、女王の意地ごと粉砕する全霊必殺の一撃を叩き込む――!!

 

 

「――――ふふっ――」

 

 

――メイヴは、笑った

 

 

身体を余さず破壊されながら、清々しく、晴れやかに

 

「――ねぇ、・・・リッカ」

 

届かぬ事を知りつつも、女王は口にした

 

 

「私と、あなた――出逢い方が、違ったら――」

 

 

【名前は私の魂が教えてくれたこの技――!!獣の断頭台・改!!】

 

 

今、大地に――邪龍が穿つ!

 

 

その銘は――!

 

 

 

【『憐憫の断頭台(ゲーティア・ギロチンライブズ)』――ッッッ!!!!!】

 

 

衝撃、暴風、地割れ、激震

 

 

渾身の最大攻撃がメイヴに叩き付けられ、大爆発に等しい衝撃が辺り一帯を覆い尽くす――!!

 

 

 

――・・・・・・やがて、静寂が辺りを包む

 

 

「はぁっ、はぁっ、はぁっ・・・はぁっ・・・」

 

 

全精力を注ぎ込み、アジダハーカアーマーを維持できず解除するリッカ

 

 

「――――わたし・・・の、まけ、ね」

 

ゆっくりと、霊核を砕かれ、消滅が始まるメイヴ

 

 

「――ひとつだけ、いい?」

 

息も絶え絶えに、リッカに問う

 

「どうして・・・私の、髪を、ねらわなかったの・・・」

 

――技を外す時も、引き剥がす時も、リッカはけして、メイヴの髪を狙わなかった。触りもしなかった

 

 

「――兄貴と約束したから」

 

リッカは告げる。クー・フーリンと交わした『約束』を

 

 

「髪は、女性の生命なんでしょ?」

 

「――、・・・そう、ね。そのとおり・・・」

 

 

・・・本当に、ずるい

 

にべもなく拒絶したくせに、そういった所は、ちゃんと覚えているなんて・・・

 

 

――本当に・・・

 

「これで勝ったなんて、私は思ってないよ、メイヴ」

 

「・・・え?」

 

「私はずっと、気圧されっぱなしだった。温存していた技を、全部引き出された。・・・試合に勝って、勝負に負けたのは私」

 

リッカは、告げる

 

「――今度は、敗けないから。必ずまた、やろうね。――命を懸けて戦った、友達として」

 

――女王に、縁を繋ぐ

 

 

「とも、だち・・・」

 

――晴れやかに、消滅しながら

 

 

「――そう言えば。一人も、女友達は――いなかっ、たわね・・・――」

 

満足げに笑い、メイヴは消え去った――

 

 

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

 

・・・ゆっくりと、立ち上がる

 

 

「・・・アナタは、とても・・・強かった。今度は・・・教えてください」

 

空を見上げながら、ゆっくりと呟く

 

「愛する人のために戦い抜いた、その『女子力』を――私に」

 

リッカは晴れやかに、空を仰ぎ続けた――




――ごめんなさい、クーちゃん。先に、逝きます


――どうか、敗けないで。最強の王で在り続けて


――私のクーちゃんは、誰にも敗けない最強の、王なのだから・・・


――フェルディア。約束は・・・また、いずれ・・・ね?


「――む!」

「・・・フェルディア?」

「――――まさに高嶺の華。にべもなく、フラれてしまったなぁ――はははは!」


――また、いずれな。女王よ

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