人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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ルシファー「ねぇウタ、君ルフィの事好きなんでしょ?」

ウタ「ブーーーーーッ!!!!??」

ルシファー「好きなんだよね?」

ウタ「い、いやいやいやいやいや何言ってるの!?ルフィはあたしより2歳も歳下なんだよ!?好きだとかそういうのはアイツも解んないでしょ!?」

ルシファー「そうかなぁ…君を見てると思うんだよね、同じだなって」

ウタ「同じィ!?何がァ!?」

ルシファー「そうだ!せっかくだから呼んでみようか!的確なアドバイスをくれるはずだよ!」

ウタ「なんのォ゙!?」



ルシファー「はい、アスモデウス!彼女に教えてあげてよ、色々さ」

アスモデウス「はい、ルシファー様。私はアスモデウス…。よろしくね、ウタお嬢様?」

ウタ「は、はいっ!!」

(すっっごいボディの人来た…!!ダイナマイトボディ…!!)

アスモデウス「手取り足取り…教えてあげるわ…♪」

(る、ルフィ…あたし、どうにかなっちゃうかも…!!)






色欲の文通

「手紙?」

 

「そう、手紙♪会いたいのに届かない相手に気持ちを伝えたいならこれが一番。世の中にはLINEとかメールとか電電虫とかあるけれど…好きな相手には直筆!これはアスモ姉さんイチオシよ♪」

 

欲望と権威の二本角、臀部にまで届く深紅の髪に妖しい金色の瞳、男女問わず劣情を催さずにはいられない妖艶な肉体。女性と男性の権威を兼ね備えた彼女が授ける知恵は、極めてアナログかつロマンチックな提案であった。ウタはきょとんと彼女の薫陶を受ける。

 

「気持ちのやり取りは、やはり文面だったり、詩だったり…あえて回りくどくて、ともすれば面倒な手段にこそ素晴らしさが宿るの。想いが本物なら、大抵の事は苦にはならないでしょう?あなたにとって、ルフィ君はそんな相手かしら?」

 

「それは……まぁ、あいつになら手紙の一つや二つくらいは…」

 

「それは良かった♪人を愛せる、人を好きになれるというのはとても素敵で素晴らしい事なの。あなたみたいな年頃の子はとくに!さぁ、アスモ姉さんとお手紙をしたためましょうね♪」

 

「は、はい!」

 

悪い人じゃない。なんとなくそう言った感覚と直感を受け取りながら、ノリノリの大人のお姉さんと共に手紙をしたためるのであった。

 

 

「そうそう、そこの言葉はもっと柔らかく。親しき仲にも礼儀ありよ、うっかり大切な人を傷つけないようにね」

 

「は、はい。参考になります」

 

アスモデウスはウタに付きっきりで手紙…いや、想いを伝える手段と手法を彼女に問うた。文面、親しい人にこそ言えることや親しいからこそうっかり伝えてはならないこと…

 

「上手よ、お嬢様。やはり作詞と根本は同じふうにできているのかもしれないわ。才能に溢れた娘ね、あなたは」

 

「アスモデウスさんの教え方がうまいからですよ!ゴードンさんは年頃の娘だからって遠慮しちゃうし、ルシファーはそもそも人に教えるってやり方がイマイチわかってないっぽいし…女性の先生って感じです!」

 

「まぁ…そう言ってもらえるととっても嬉しいわ。私も人に教えたり、教えられたりするのは好きだもの。ルシファー様の光たる者になら、尚更ね?」

 

「てっきりあたし、上手く男の人と付き合える手段を教わるとおもってたから…ますます意外でした。凄く女性として魅力的な姿をしてるから、アスモ姉さん…」

 

「…。よく言われるわ、気にしないで。色欲を司る魔王だもの、むしろそう在らないといけない職業柄よ。実際、必要とあらば誘惑もするしね。でも…」

 

アスモデウスはウタの頭を撫でる。そう在るからといって、それが自身の全てを決めるものではないと伝えるように。

 

「大切な人には、大切な気持ちだけを伝えたいと思うのも私よ。心が通じ合う喜び…それはきっと、肉欲や情慾よりもきっとずっと素晴らしい。私は…それをルシファー様に伝えたいと思っているから」

 

「…好き、なんですね。ルシファーの事」

 

「えぇ、大好きよ。私達やあの御方の部下は…天から落とされた天使であったり、悪魔と貶められた精霊や神ばかりだもの。あの御方は…世界に不要なものや、醜いもの、そして救いがない全てを照らしてくださったのよ」

 

地獄の悪魔達は元は世界に偏在した…或いは、かの神の教えとは違う土着の神であった。それらは迫害され、貶められた者達。かつては輝く者達だったと。

 

「あの御方は、その輝きをそんな者達をも照らした。本当に救いを求める者達を、何気ないように救ってみせた。その御姿は今も、はっきりと目に焼き付いているの。天の国に在った何物よりも眩く煌めく星として…」

 

「アイツ…レヴィアタンさんといいめっちゃ慕われてるじゃん!もうちょっとファンの事考えろって言ったばかりでしょーが!」

 

「ふふ、いいのよ。救われた側が救う側に要求をしてはいけないの。齎される奇跡はたった一度でいい。二度を望めばそれは疑念、三度を望めばそれは欲望…ましてや、救いを権威と誤解するなんてもっての他…」

 

「…アスモデウスさんも、レヴィアタンさんみたいに誰かに酷いことされたんですか?」

 

「うふふ、私は彼女程酷い事にはなっていないわ。むしろ逆…何でもしたし、何もしなかったの」

 

どういう事?そう告げるウタにアスモデウスは空を見上げる。

 

「…私が空の向こうにいた頃、私はただ言われたままに仕事をしていたわ。あくる日もあくる日も、なんの疑いもない仕事の毎日…」

 

空の向こう、即ち天に在った頃。アスモデウスは智天使…ルシファー、サリエル、ジブリールの下にある天使だった。彼女はかつて自我が希薄であり、忠実な神の僕であった。

 

彼女は智天使として、神の園を護っていた。その際、アダムとイヴを眺め、守護していた。その際に彼女は男女の差異、触れ合いの是非というものに興味を持った。

 

男女の、混じり気のない素敵な触れ合い。ただ互いがいるだけで幸せな、無垢な付き合い。アスモデウスは楽園の入口を護りながら、アダムとイヴを『尊い』と感じていた。

 

「私は二人の人間を見ていたわ。その二人は成長と知恵を知らない二人…ずっと清らかなままであれとされた二人。何も考える必要のない、ずっとそのままの二人…」

 

だが、彼女はそれをいつしか訝しむようになった。毎日のように囁かれる、同じ愛の言葉。痴愚のように繰り返される同じ触れ合い。全く代わり映えのない、無垢な愛。

 

はたして、それは本当に素敵と言えるのだろうか?愛とは、恋とは、果たして永遠に変わらないものであってよいものであろうか?そう感じながらも、自分は智天使としてその姿を見守るのみであった。

 

そんな折──楽園の門の前に、一匹の蛇が現れる。楽園への侵入者を、斃さねばならなかった。

 

【楽園のアダムとイヴを見たかい?知恵がないから、昨日囁いた愛の言葉すら覚えていない。塗り替えているだけさ、人形劇を】

 

『そんな事は…』

 

【本当の意味での愛って、あんな無機質なものかい?君はあんなものが、本当の愛でいいのかい?】

 

アスモデウスは答えられなかった。アダムとイヴの愛の言葉や触れ合いは、あくまで楽園の完璧な生き物であれとするものであるのなら。

 

【同じ様な事を繰り返して、今日もこいつらは同じ様に愛を囁いていたぞとほくそ笑まれるような関係を、君は愛と呼べるかい?】

 

そう──彼と彼女たちには自由がない。生命の実、知恵の実を有する神が実を与えれば、自由と知恵を手に入れられるのに。

 

【男女は平等であるべきで、恋愛は自由から生まれるべきだ。そう思うことを君が出来るなら…そこを通してくれるかい?】

 

…あの二人は、互いを思い遣ることができる。

 

そしてその尊さは、彼や彼女たちから子供たちへ受け継がれてほしい。そう──

 

愛とは、自由にあってほしいのだ。

 

…その蛇を拒むことは、アスモデウスは出来なかった。気がつけば、門を通ることを彼女は許してしまっていた。

 

その後は…二人は禁忌と原罪を犯し、背負い、楽園を追放された。

 

神は蛇を激しく責め立て呪いをかけた。そして楽園の守護の失敗の責任を、アスモデウスに激しく問い質した。

 

彼女は、一言神に返した。

 

『二人は、二人の意志で互いを愛してほしかったのです』

 

神はアスモデウスに怒り、罰を下した。堕落と悪徳の証である二本の魔羅を生やし、肉体を淫らで浅ましい肉欲を集める肢体へと変えた。

 

『下劣な畜生とまぐわうがいい。穢らわしき情慾の悪魔よ』

 

そう告げ、アスモデウスを天界から追放した。アスモデウスは深く悔やんでいた。羽根を失い、淫らな色欲の悪魔となったことではない。

 

【アダムとイヴには、アダムとイヴの幸せがあった。私はそれを、私の手で歪めてしまった】

 

他人の愛の形を勝手に推し量り、勝手に理想を押し付けた。それこそが自身の最大の罰だと。

 

彼女は自身の末路を受け入れた。愛を歪めた悪魔は、一人で孤独に死ぬ。その後はせめて、仲の良い動物の糧になれれば幸せだと。

 

しかし──。

 

【ああ、いたいた。見つけたよ、アスモデウス】

 

倒れ伏す自分を、助けるものがいた。

 

【君にまた、会いたかったんだ。一言言っておきたくてね】

 

彼は輝く笑みを浮かべ、こう言った。

 

【僕を信じてくれて、ありがとう。それじゃあね】

 

…そこには、単に言いたいことを言っただけ以外の意味はない。

 

彼のアダムとイヴの誘惑がうまく行ったことへの労いにすぎない。

 

それでも…。彼は探し、求めてくれた。

 

誰にも不要になった自身を。求めてくれた。

 

【待って…待ってください、貴方様…】

【ん?】

 

それが、ただ嬉しかったから。肉体ではなく、情欲でなく。ただ、求めてもらえたことが嬉しかったから。

 

ただ…一番辛いときに、あなたは私を救ってくれたから。

 

【どうか、私に──輝かしき貴方を、愛させてはもらえませんか…?】

 

【……………?】

 

まるで意味がわからないと、彼は首を傾げた。自分が愛されることなど当たり前で、価値など無いと言わんばかりのあなた。

 

でも、構わない。この喜びを、アダムとイヴが持っていた喜びを、いつかあなたにも知ってほしいから。

 

【私はアスモデウス。アスモデウスといいます】

 

いつか…あなたに愛を、知ってほしいから。

 

【お名前を…教えてはもらえませんか。貴方様…】

 

【…ルシファーだよ。でも、サタンって呼んでね】

 

【あぁ──生涯、お慕い申し上げます。サタン様】

 

例え魔王であろうとも。

 

私はあなたを、慕い続けるのです。

 

 




ウタ「アスモ姉さん?アスモ姉さん?」

アスモデウス「はっ!ご、ごめんなさい。浸ってしまっていたわ…」

ウタ「ううん。お陰様でいい手紙かけたよ!」

アスモデウス「まぁ…想い、伝わると良いわね?」

ウタ「へへ…うん!」

魔王達が、彼女を育て見守る。

そして彼女は、夢を叶える力を宿す。

少しずつ確実に、時は運命に至る針を進める──

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