(もー、いつもフラフラするんだからあいつ!)
ウタ「ルシファー!?パンケーキ、きゃ!?」
レヴィアタン「あ…。あなたはルシファーさまの…」
ウタ「あ、あなたは…?」
レヴィアタン「私、レヴィアタン。…私の鱗がパンケーキ食べちゃった。次はプレミアムをこのお金で…」
ウタ「だ、大丈夫です!あの…お詫びに、二人で食べませんか?」
レヴィアタン「…二人で…」
〜
ウタ「ルシファーさんの家族なんですよね?ここに来る前、どんなやつだったんですか?」
レヴィアタン「ルシファー様が、どんなやつか…?」
ウタ「はい。なんていうか…最近、あいつのオーラというか、只者じゃなさに気づき始めたと言うか…」
レヴィアタン「…初めて会った印象でよければ…」
ウタ「はい!」
レヴィアタン「…あの人は…美しかった。醜い私も…美しいと、言ってくださった…」
ウタ「美しい…」
彼女は本来、悪魔ではなく創造神たる唯一無二の神が生み出した雌雄番の海の獣であった。
その身体は海の底に尾が付き、海から出た頭は雲を突き破るほどに大きく、あらゆる神威の武器、威光を跳ね除ける鱗を持ち、決して殺されず死ぬこともなく、鼻や口から炎を吐く規格外の存在であった。あらゆる者はこのレヴィアタンに敵わず、一目みただけで戦意を喪失するとまで謳われる最強の存在であった。
だが、彼女…レヴィアタンは他者の侵害や侵略、個体の強さや縄張りなどに興味は無い元来穏やかな存在だった。雄である…仮に【リヴァイアサン】と呼ぶ夫と、海を自らの住処として穏やかに過ごしていた。
『強き身体は、不慮に死なない丈夫さとしてあればいい。夫と海の生き物たちさえいれば、私は満たされ生きていける』
元来の彼女は嫉妬とは無縁であり、むしろ他者を労り慈しむことのできる穏やかな性格と人格を有していた。ただ、夫と共に生きる世界と海があればそれでよいとする、泰然自若のような存在…強者の余裕が形となった存在と言えた。
夫のリヴァイアサンと共に、ただ命を生み、育み、そして死に、当たり前のような生命の輪廻を繰り返していけたならばいいと悠々と海を泳いでれば彼女は満たされていたのだ。
だが……その彼女が嫉妬の魔王として生まれ変わったのには、確かかつ神の残虐さが介在していたのである。
ある日、神…つまり唯一神にして創造主たる彼が輝きを以てレヴィアタンとリヴァイアサンに神託をもたらした。
『お前達は壮強であり、何者も討ち滅ぼすことはできず、いと世界において大いなる存在である』
それを言われてもレヴィアタンは特に思うところはなかった。彼女の精神は極めて理知的で、他者を羨む事も傲ることもなかったからだ。
しかし次の瞬間、神は宣告を行った。
『お前達を討ち果たすのは神の御業である。神の威光と遍く不滅を証明するための大いなる実証となる』
その言葉の意味を理解する前に───レヴィアタンの夫である、リヴァイアサンを神はその威光にて焼き尽くした。
一瞬であった。リヴァイアサンは妻を護る暇も、末期を告げる事もなく絶命し、レヴィアタンは最愛の夫を一瞬で喪うこととなったのだ。
彼女の嘆きは海の逆巻く嵐となり、慟哭は海を割る怒涛となり、涙は海を穿つ暴風雨となった。彼女は彼がいれば良しとしていた生きる理由を、なんの前触れもなく永遠に奪われた。
『お前は子を成すことは永遠にない。お前は永劫、子を成さぬ雌として最後の日まで生きていかねばならないのだ』
レヴィアタンに神は呪いをかけ、子を残せぬ存在となってしまった。彼女が望んだ当たり前の生命の営み。女性の子を生み育てる喜び。最愛の夫。それらを全て神により奪われてしまった。
だが、それでもレヴィアタンは神に問いかけた。何故この様な仕打ちを行うのか。私達は慎ましく生きていました。何故このような酷い仕打ちをなさるのですか。
レヴィアタンは自らが害をなした事は無かった。竜を狩ることで生まれる名誉、欲望、栄華。それらはいつだって狩る側の損得だ。彼女はそんなものに興味はなかった。ただ、愛する世界で生きていられれば良かったのに。
『お前達は強く、大きく、偉大なる獣である。この世界に現れし大いなる命である』
神は言った。それはともすれば、祝福や賛辞であるが…
『故にお前達は神の御業を証明する為の供物である。何者も討ち果たせぬ大いなるお前達が、神に平伏す事により人は私を唯一の父と崇めるであろう』
神の御業と、威光を証明する生贄。それが、レヴィアタンの聞いた神が自身らを害する理由であった。つまり、彼はレヴィアタン達を自らが討伐するために作り出したのだ。
あらゆる神とあらゆる全てが倒せぬ存在。それを討ち果たせるのならば、信仰は盤石かつ揺るぎないものとなる。そんな芝居の為に、自らは生み出され、夫と女としての自らを奪われたのだと。
『そして、私が討ち果たす以上の子孫は不要である。お前が生み出す子を、私は呪い、存在を許さぬであろう』
更に卑劣なことに、自らが手をつけられなくなる様な子の可能性を彼は潰したのだ。徹頭徹尾必要なのは神の偉大さを知らしめる為の当て馬。最初からレヴィアタンには、人権も尊厳も与えられていなかった。
繁殖も許されず、夫を愛することも許されず、ただ神に殺されることで神の御業を証明するための生贄。それがレヴィアタンの全てであった。
『最後の審判にて、お前の血肉を我が永遠の国の民が口にする。お前は我々に捧げられる、無二の供物である』
そして彼女は海面からも追い出され、世界に穿たれた大穴へと投げ捨てられた。星が落ちた地獄の果て、それこそが彼女に与えられた末路。世界に存在すら許されぬ供物の保管場所。
『最後の審判にて蘇るがいい。お前の全ては、神にへと捧げられる供物である』
地獄の果てに投げ捨てられた彼女は、最早何一つ言葉を発さなかった。彼女はただ一つの事を思った。
神に愛されしものが、ただ生きていける全てのものが、ただ生きていける命が妬ましい。羨ましい。自分には何もなかった。ただ、殺されることだけが望まれていた。
なんの憂いもなく、命を宿せた全てが妬ましい。つがいがいて、子を成せる者たちが羨ましい。自分が出来ない全てを出来る命が妬ましい。
世界の全てが、妬ましく羨ましい…。不死なる身体で、遥か地上の全てを嫉み続けたレヴィアタン。
そして…どれほど妬み続けたか。その先に、出会いがあった。
【わぁ、傷だらけじゃないか。どうしたの?】
そう言って、彼は彼女の傷を癒やした。大きくて邪魔だからと、自らの姿に似せて人の姿を授けた。彼は彼女の無事を確認し、頷いた。
【地獄に落ちるなんて可哀想に。そんなに酷いことをしたのかな?】
レヴィアタンは、解らないといった。何故こんな事になったのか解らない。私の何が悪かったのか、わからないのだと。
【わからないなら、探してみれば?羨ましい、妬ましいって思えるんだ、君は立派に生きてるよ】
生きている。自分は果たして、生きていていいのだろうか?
【そりゃそうでしょ。生きていくのに理由なんていらない。それとも理由が欲しいのかい?】
その存在は伝えた。
【なら、君は生きていていいんだよ。その妬み、その羨み。ドス黒く醜い感情だと誰もが言うかもしれないけれど…僕にはないそれはとても素敵だと思うから】
彼は、レヴィアタンを祝福した。思えば彼には、存在しない感情であり美しさであったのだろう。
【僕が持たぬ妬みの君よ。君は今日から地獄の魔王だ。君の名前は?教えてくれるかい?】
『…レヴィアタン。レヴィアタンです。あなたのお名前は?』
【僕か…貰った名前はもう相応しくないからこう呼んでおくれ。サタン。敵対者サタンとね】
彼はレヴィアタンの傷を癒やし、その嫉妬を見つめ続けた。遍く全てを妬む彼女の心を、美しいと讃え続けた。
神に全てを奪われ、理不尽な理由で地獄に落とされた。しかしサタンは告げる。
【神に何もかも捧げるなんて勿体ない。その美しい心は僕におくれ。その鮮烈な妬みの心、僕にもっと魅せておくれ】
はじめは、醜い心と恥じた。他者を羨み、妬み嫉むなど。しかしサタンは、彼女の心を後押しし続けた。
もっと世界を妬むと良い。もっと世界を羨むといい。その時、君はとても素晴らしい。
いつか見せに行こう。神に本当に美しいものを。君から奪えなかった一つのものを。
…それが、嫉妬の魔王レヴィアタンの生誕。サタンを称える彼女の理由。
神すら不要とした、嫉妬の心すらも美しいとしたサタンの言葉。
それが地獄にいた彼女にとって…何よりも素晴らしい光であり救いであったのだ。
レヴィアタン「……まあ、そんなところ」
ウタ「あいつ…すっごいいい事してたんだ……」
レヴィアタン「あの人は、やりたいようにやっている。それがたまたま、私や魔王達の救いになっただけ。…でも、カルデアやあなたは、違う」
ウタ「?」
レヴィアタン「ルシファー様は、あなたたちを愛している。その愛に…できるだけ、応えてあげて」
ウタ「は、はい!」
レヴィアタン「……羨ましい。私もあなたやカルデアみたいに、綺麗な心をルシファー様に見せたかった…」
ウタ「…………〜」
ルシファー「あれ?レヴィアタンと話してたのかい、ウタ?」
ウタ「ルシファー……」
ルシファー「?」
ウタ「…あんたも、ファンは大事にしなさいよね!」
ルシファー「〜???」
改めて只者じゃない。ウタはルシファーに再度思い直すのであった。
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