人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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夏草 グドーシ邸宅

リッカ「ミッション達成、お疲れ様でした!エル君めちゃくちゃ喜んでましたよ!具体的にはこちらを!」

エル「( ˘ω˘)」

アカネ「し、死んでる…」

リッカ「その御礼、ではないですけれど…私とグドーシのお家を二人とシェアさせてください!」

エア『日本における都心近くの街、夏草…ここを、私達に賃貸として貸してくださるのですか?』

リッカ「はい!…これは私見なんですけれど…。二人の目指す未来に、きっと夏草の生活は役に立ってくれると思うんです!レイヴンさんとエアさんの目指す、人とコーラルの共生のちょっとだけでも助けになれば…と」

レイヴン「リッカ…」

リッカ「内海市長にもお話はつけています!どうか、『普通の人生』と、『人の意味』を、私の故郷で追い求めてみてください!」

レイヴン「………ありがとう。その言葉に、甘えさせてもらう」

エア『はい。…エル君と、スターゲイザー・ネクストに関わった皆様にお伝え下さい』

リッカ「!」

『ありがとう、と。新しいスターゲイザー…大切にさせていただきます』

リッカ「…はい!こちらこそ、ありがとうございました!!」




終〜自由意志の表象〜

「…見てくれ、エア。これが…俺達が、焼けた空の向こうで辿り着いた世界の一つだ」

 

カルデアに帰還した、レイヴンとエア。カルデアとリッカの計らいにて、平時にはグドーシの家を拠点に、夏草にて私生活を送ることとなる。これもまた、情緒を取り戻したばかりのレイヴン…そして、人とコーラルの共生を目指すエアの為。人生を取り戻した二人に向けられた報酬とも言えるだろう。レイヴンが、窓を広げエアに青空と白き雲、太陽が彩る天を見せる。

 

「美しいと、思わないか」

 

レイヴンの人間としての機能は完全に回復した。彼は今や最新型強化人間であり、真っ当な人生を漸く取り戻した。夏草の澄み渡る青空をそう称する事が出来る意志が、その証だ。

 

『──はい、レイヴン。知りませんでした。空とは…こんなにも青く透き通っているのですね』

 

そして、エアもまたレイヴンと同じ感覚と気持ちを共有する。人ではなくとも、種族が違っていても、戦火における出会いであっても…。心は確かに、通じ合い、分かり合うことができているのだ。

 

『…レイヴン。貴方は私の想いと、我儘に応えてくれた』

「…ザイレムでの選択か」

 

レイヴンは、エアとルビコンに生きる全ての人々の為に戦うことを決断した。彼に出来た友人と、そこに生きる者達の未来。人とコーラルの可能性を信じた。…自身の恩人達を殺すことになるとしても。

 

「忠義で人は殺せる。だが…恩義で友達は殺せなかった。それが全てだ」

 

彼には──唯一無二の存在が出来た。命を懸ける理由が出来た。それは、彼が真の意味でレイヴンとなった瞬間でもあった。

 

『……貴方の大切なものを、私は喪わせてしまった。その喪失感を埋める為にも、これからの未来のためにも…私は、貴方の傍にいたい』

 

その選択の結果、喪うものと…かけがえのないものを掴んだ。彼の手元には、確かに寄り添う存在が残ったのだ。

 

『何が待っていても…私が、あなたをサポートします』

 

独立傭兵レイヴンは、これからの人生を人とコーラルの為に費やすだろう。

 

共生を夢見て。ハンドラーの願い、普通の人生を追い求めながら。エアを宣誓に、レイヴンは静かに…しかし深く頷いた。

 

『…調べてみたのですが、リッカさんの故郷では、こういった挨拶を『末永くよろしくお願いします』というようです。では改めて…これからも、末永くよろしくお願いします。レイヴン』

「こちらこそ。末永く、よろしく頼む」

 

お互い、いまいちよく分かっていない重い挨拶を交わし合い、窓の向こうの景色を見つめる。

 

ルビコンの灼けた空ではない、翼が辿り着いた穏やかな世界。二人が生きていく空。

 

『──レイヴン。スターゲイザーのコクピット内でロックが解除されたメッセージがあります』

 

「?」

 

『…メッセージの相手は、ハンドラー・ウォルター…!レイヴン、これは…!』

 

レイヴンは頷き、エアによる記録再生を促した。エアも即座に、音声データを解凍、再生する。

 

〈……621、仕事は終わったようだな〉

 

「ウォルター…!」

 

グドーシの部屋に響き渡る、鉄のような硬さと愛犬に語りかけるかのような声音。レイヴンのハンドラーである、ウォルターの声に弾かれたように飛びつくレイヴン。

 

〈お前に一つ、伝えなくてはならない事がある。これは…お前が、俺が託した依頼を受けなかった場合に残しておくメッセージだ〉

 

「………ウォルター……」

『…レイヴン…』

 

どのような理由があれ、彼はウォルターに背いたという事実をけして忘れはしない。与えられた意味を、受けた恩義を裏切ってしまった。レイヴンはそれが、エアを選んだ結果だと受け入れてはいたが…糾弾を覚悟し、レイヴンはぎゅっと目を瞑る。

 

〈お前は、それを裏切りと捉え…自責の念に駆られるかもしれん。だが、お前の行為は決して裏切りなどではない〉

 

「…!!」

『ウォルター…!』

 

〈裏切りとは、共に歩む相手を後ろから撃つことだ。俺は、ただの一度もお前に裏切られた事などない。お前は俺の依頼と仕事を、誠実にこなした。そこに、背信や裏切りの意図など何処にもない。俺はそう感じ…お前を信じた。〉

 

彼が残したのは…どこまでもレイヴンを、621を気遣ったもの。心の傷を癒やすもの。

 

〈選択すること。それは『自立』という立派な人間としての人生を歩み出した証だ。お前は本当の意味で自立し、独立した一人の人間になったという事だ。…俺の事は気にするな、621。むしろ…お前に決して譲れない何かが出来たことを、嬉しく思う〉

 

『…ウォルター、貴方はいったい、どこまで…』

「…………………」

 

レイヴンは、声を出さなかった。出せなかったのだ。エアにとって、コーラルを焼く不倶戴天の敵であるはずのウォルターを、彼女が本気で案じる程の優しさと、暖かさに満ちていたからだ。

 

〈お前を縛るものは、もう何もない。本当の意味で、お前は自由となった筈だ。これからの人生は自分自身の手で、自分自身の力で切り拓いていけ。お前にはその力がある。…お前の稼いだ金も、お前の口座に全て用意してある。20年余りの人生を、これから取り戻していけ〉

 

ハンドラー・ウォルター。彼は英雄であった。たとえ、贖罪と目的のために強化人間達を費やしてきたのだとしても。

 

〈お前の選択が…お前自身の可能性を広げていく事を願う〉

 

「…………ウォルター……」

 

〈……恐らく、直接は伝えられないだろう。この場で、確信を以てお前に伝えよう。俺がハンドラーではなく、一人の人間としてお前に贈る言葉だ〉

 

彼が、621や強化人間達に与えた意味は。注いだ感情は…間違いなく本物であり。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〈───立派になったな。621〉

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………───義父さん…………!!!」

 

レイヴンは、彼がいたからこそ…一人の人間になれたのだから。

 

〈メッセージ再生、終了〉

 

レイヴンは、恥も外観もなくエアに縋りついて泣いた。守り抜いた彼女の温もりを救いとして、ひたすらに泣いた。

 

『…………──今、解りました』

 

そんな、折れそうなレイヴンを支えるエアは、理解する。あれほど強く、あれほど頼もしいレイヴンであろうと、自分が今離れてはへし折れてしまいそうなほどに頼りない。

 

だが、だからこそ。

 

『人は…人と、支え合う為の形をしているのですね。ウォルター、レイヴン…』

 

エアは、レイヴンを支える。その様は、優しく柔らかい母のような、伴侶のような慈しみが備わっていた。

 

…この先の人生において、彼は普通の人間として…独立傭兵レイヴンとして一生を過ごすのだろう。

 

コーラルの蔓延の阻止や破綻の対策、共生の道。取り組むべき道はあまりにも多彩である。

 

『人とコーラルの共生…その道の答えは、きっと見つかる』

 

そのために、レイヴンもエアも学ばねばならない事は山とある。人とコーラルはどう向き合っていくべきか。人とは、どういった存在であるのか。抑圧でも搾取でもない、本当の意味での共存とはなんなのか。

 

『レイヴン。私とあなたなら…カルデアの皆様となら、きっと…』

 

生きるとは、自分の存在を証明するために戦うこと。人は生きる限り、大なり小なり戦いを続けている。

 

ただ…休むこともなく、戦い続けはしない。カルデアは、夏草はあくまで止まり木である。

 

「……いつまでも、泣いては…いられない…」

 

レイヴンとは、自由意志の表象。彼が新たなる未来や可能性を追い求める限り、責任と共にその名前が付随するのだろう。

 

「──街に出よう、エア。義父さんの願いを…普通の人生を学びに行こう」

『はい、レイヴン。どこまでも、お供します』

 

独立傭兵レイヴン。ルビコンの解放者にして、カルデアの黒鴉。

 

 

彼の身体は──自由の為の闘争を求めたばかりなのだから




オルガマリー『レイヴン、聞こえる?カルデア所長、オルガマリーよ』

レイヴン「所長…?」

オルガマリー『今私は学園都市キヴォトス…いえ、それはいいわ。あなたと話したい方がいるの。代わるわね』

ラスティ『──やぁ、戦友。君の良き戦友、ラスティだ。そちらも無事に生き延びたようだな』

レイヴン「ラスティ!?」
エア『機体反応が消えたはずでは…!?』

ラスティ『そちらが、君の得た背景…ルビコニアンの少女か。…あの時、私はハンドラー・ウォルターに不意打ちで機体の頭を破壊され、全てのシステムがダウンした。機体反応ロストはそれが原因だ。咄嗟に追撃は避けたがダメージは大きかった…ターミナルアーマーを積んでいたのが幸いしたよ。そして…気が付いたら学園に保護されていたわけだ』

レイヴン「ラスティ……」

ラスティ『彼女が言うには、ラスティという名前が呼び寄せた縁らしいが…。まぁ今は、互いの無事を喜ぼう。あいにく、まだ動けない身でね。見舞いに来てくれるとありがたい。君も、私と色々話したいだろう?』

レイヴン「あぁ…!君にも紹介するよ。俺の相棒を!」
エア『…レイヴン。本当に良かった…』


…これがカルデアの傭兵、レイヴンとエアの記録の一部始終である。


ラスティと共に、グランドスターズにルビコンを保護し支援を取り付けるため、彼等は今も二つの世界を飛び回っている。

ルビコンの開放者として。

そして──何者にも縛られない、カルデアの専属傭兵として。



エア『行きましょう、レイヴン』
ラスティ「共に行こう、戦友」
レイヴン「あぁ!」


エア『───メインシステム、戦闘モード起動────』



青い空と灼けた空、蒼銀を駆け、未来を掴む戦いを…カルデアで、今も続けているのだ。







おまけ

エア『あなたも…私と同じエアなのですね』

──はい!ふよふよしているところもそっくりですね!

ギル(エアめにため息をつかれるのはいかんな…寝込むやもしれん…少しばかり気合を入れ直さねばな)



ハンドラー・ウォルター『フォウ、お前に意味を与えてやる。…仕事の時間だ』

フォウ「ハイ!ワカリマシタ!」



ラスティ(AC)「君がラスティか」
ラスティ(エルデンリング)「そういう君もラスティ」

((…声が良いな…))

ラニ「あぁ〜」

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