エル「あ!署長!御協力のお陰でスターゲイザー・ネクストは無事完成しました!本当にありがとうございます!!」
スペース・エレシュキガル『いいのよ。ギルガメスの動乱を治めた英雄達へはこれくらいはね。…その代わり、と言ってはなんだけれど。カルデアに依頼があるの。話だけでも聞いてくれるかしら』
リッカ「おっ、ACあるところに依頼あり!」
レイヴン「聞かせてもらおう」
『ありがとう。今回依頼したいのは、特A級ヴィラン『ジャーク・ワカモリ』と『オモシロ・タカスギ』の不法占拠されたプラントの無力化に二人の身柄の確保なのだわ。この二人は以前からサーヴァントユニヴァースに刹那的かつ緻密な破壊活動な悪行を行ってきたテロリストであり、犯罪コンサルタントの第一人者であるの。『破壊と混沌こそ面白い』『動乱にこそ解はある』として、グランドスターズの秩序を崩さんとする愉快犯と思想犯の二人組…』
リッカ「カルデア…にはいないタイプのサーヴァントかな?タカスギもワカモリも聞き慣れないし」
『その二人がなんと、廃棄コロニーとプラント、そして前シーズンで破棄された武装や機動兵器を掌握してグランドスターズに宣戦布告を行ってきたの!グランドスターズを真っ向から否定し、新たなるヴィランシーズンを到来させる…その理念に呼応したヴィランサーヴァントも集まり、無視できない勢力になりつつある!技術開発、提供を推し進めたのは、この戦力をなんとかしてほしいからなの!』
エル「見た感じ、戦力差は以前有利ですが…敵方の戦力とまともにぶつかれば、深刻な被害を勝つにしろ負わされるのは間違いないでしょう!」
エレシュキガル『そんな訳で、是非ともカルデアに技術提供した新型でこれらを撃破してもらいたいの!グランドスターズの新型は、ヴィランに負けない!そういったメッセージ効果も期待したいから…是非お願いしたいのだわ!』
リッカ「切実だぁ…!レイヴンさん、エアさん、どうします?」
レイヴン「受けよう」
アカネ「即答!?」
レイヴン「お金には困っていない。だから…困っている人を助けるための依頼を遂行させてもらう」
エア『レイヴンの選択を、私はサポートします』
エレシュキガル『ありがとう…!それでは座標を送るわ。よろしくね!伝説の傭兵レイヴン!』
エル「レイヴンさん!」
レイヴン「見ていてくれ。──君達のくれた翼で、飛んでみせよう。行こう、エア」
エア『はい。サポートはお任せを、私のレイヴン』
「廃材や廃棄されたものであれ、有用に転換してやれば立派な自前の戦力になる。見向きもされないガラクタで現体制を転覆させる。中々に面白い試みだな、ワカモリ」
サーヴァントユニヴァース、暗黒地域付近。コロニー施設に要塞プラントが展開されている二人のヴィランの本拠地。周囲には護衛の機械カラクリと、いくつもの防衛兵装が展開された盤石な態勢。赤髪の陽気げなヴィランサーヴァント、タカスギが神経質そうに資料を睨む白髪のサーヴァントに声をかける。
「そろそろ悪辣かつ鮮烈なファイアワークスを打ち上げる頃合いだろう。長い秩序は停滞を生みかねない。エレシュキガル君はよくやっているが、任期がない永久トップの心労を慮ってやらねばね」
タカスギは常日頃より体制側に就くことを嫌い『面白い世の中にする』事をモットーとしたテロリストである。大小構わず、秩序組織の維持する平和に風穴を開けんとする恐ろしい愉快犯である。
そんなタカスギの後ろ盾、スポンサーとして就いているのがこちらのワカモリである。自分は表立たず、タカスギに戦力になりうる手段や資金を提供する。こちらもまた、目論むのは秩序の破壊。正確には自らの計算『善悪はどちらが社会をよく進歩させるか』というテーマを遂行するため、単に今は悪側にいるという複雑な思想犯である。二人は結託し、破棄コロニーやプラント、いくつかの戦艦や衛星砲を掌握。一大勢力としての足がかりをつけたのだ。
「なぁに、それももうすぐ終わるさ。僕らが引き起こす銀河戦争で、グランドスターズを崩せばね」
「…そうするだけの戦力は十分とは言わないが、ボーダーまでには押し上げた。後は彼女らの対抗戦力次第だが…」
「確かに国家間提携組織は強敵だ。だが、中枢はわかりきっているんだからそこさえ討ってしまえば…ん?」
その時、タカスギがメイブリッジモニターに不審な反応を見つける。自身らの宙域に接近する、識別不明の機体を。
「なんだ、?流れ者の漂流者か?ちょっと普通じゃないぞ、この速度…」
「…違う、タカスギ!これは敵影だ、真っ直ぐにこちらに向かってきている!迎撃準備を!」
ワカモリの言葉の通り、それは確かに敵対者であり不穏分子であった。
「一人で突撃だなんて面白いじゃないか!丁度いい、タカスギ・ファクトリーの技術力、味わわせてやるよ!」
(銀河戦争を起こせる程度の戦力保有者に突貫とは、狂人か?それとも…)
…そして二人は、思い知る。
世には必ず、例外が生まれる。何者も予想できない、不確定分子が存在する事を…──。
〜
『作戦領域に入りました、レイヴン。メインシステム、戦闘モード起動』
「了解。こちらも強化人間モードを起動させる。脳深部ナノチップ起動、戦闘感覚拡張」
一方、こちらはヴィラン領域に突入したスターゲイザー・ネクスト。エア、レイヴン共に戦闘状態に移行する。
『最新型強化人間手術は、普段の感覚と強化人間状態を切り替えられるのですね。素敵なものです』
「第十、とは言ったが…これは企業も行えない最先端技術だ。第十一、とでも言うべき…」
行われた手術は、脳と全身に極小のナノマシンとマイクロチップを埋め込むもの。デバイスを突き刺す強化手術、コーラルに脳を浸すものとは一線を画す遙か未来の改造手術により、レイヴンは完全に人間としての機能を取り戻し、同時に強化人間モードの切り替えが可能となった。新世代型強化人間…いや、ハイエンドモデルとすら言えるだろう。
『敵、前方に多数展開。このスピードでは5秒後に接敵します』
エアのオペレートも、脳に直接交信として受け取り意思疎通の齟齬をゼロにする。前方には大部隊の機動兵器が展開しており、行く手を阻む形だ。
「ヤサカニノマガタマ、展開。マルチロックで殲滅する」
『了解。コーラル共振。ヤサカニノマガタマ、展開します』
エアの火器管制により展開するビットユニット、ヤサカニノマガタマ。いくつもの機器で展開するそれは、エーテルによりワープし敵部隊に1秒もかからず接近。そして───。
『敵機動兵器部隊、全滅。…凄まじい射撃精度です。いくら学習機能があるとはいえ、なんという正確さ…』
エアすら驚く、ヤサカニノマガタマの展開により数十機はいたであろう敵部隊を瞬時に壊滅させた射撃精度。それもそのはず、火器管制システムの遠距離、中距離は御機嫌王の射撃を参考にしたのだ。この正確さですら、ギルガメッシュの射撃には程遠いとはエルの談である。
「彼の夢と願いを詰め込んだ機体だ。それに恥じない戦いをしなくちゃいけないな、エア」
『はい、レイヴン。これが私達の愛機の力の一端…とても頼もしいです』
二人は頷き、更にスピードを上げる。宇宙空間でありながら莫大なスピードを保証する推力は、まるで増援部隊が追いつかない。入れ替わるように、ヤサカニノマガタマが敵部隊を殲滅し尽くしていく。
『レイヴン、前方と上方から熱源反応。前方は大型レールキャノン、上空は衛星砲です』
エアの見た目通り、遥か彼方から狙い撃ちにせんと放たれるレールキャノンに、範囲制圧の衛星砲のコンビネーションにて、スターゲイザー・ネクストの機体を火力消滅せんと目論んできたのだ。どちらも、並の機体であるならば即座に蒸発する威力を有するだろう。
『ヤタノカガミ、展開します。レイヴン、私は衛星砲のハッキングに移ります。機体制御を少しの間、お願いします』
「解った」
スターゲイザーの周囲を、赤と白の二重バリアが覆う。これはコーラルの指向性を利用したバリアと、エーテルによる概念遮断を重ね合わせた二重護法であり、ネクストACが有するコジマのプライマルアーマーを再現したものだ。その効果は絶大で、レールキャノンの直撃、衛星砲の連撃を受けながらもスターゲイザーどころか、バリアにすら傷一つつかない。
「火力を集中させろ!」
「化け物め…なんだこの機体は!」
(追いつかれたか)
敵兵器部隊も加わった一斉掃射も受けるが、変わらずヤタノカガミには僅かの減衰もない。それは、ACが携行できる防御兵装の限界を遥かに越えたものであり、戦略兵器ですら突破できないものであった。
『レイヴン、衛星砲のハッキングが終わりました。周囲の敵部隊を砲撃で一掃します』
「あぁ。…レールキャノン側がエネルギーチャージを始めた。最大出力で葬るつもりみたいだな」
『レイヴン、合図を送ります。あなたはレールキャノンに向かって、ヤタノカガミで突貫してください。離脱と同時に、衛星砲を発射します』
「頼む」
短いやり取りは信頼の証であり、証左として即座にスターゲイザーがレールキャノンに向き直りブースターに火を入れる。そして──
『──今です、レイヴン!』
「アサルトブースト、開始」
瞬間速度がマッハ100を越える程の大加速。同時に上空から、スターゲイザーがいた場所に向けての衛星砲の大狙撃。増援に駆り出された部隊は、瞬く間に蒸発四散する。阿吽とも言うべき戦闘の運びに加え、機体の性能も追従する。
「……!」
計算よりも数秒早く、最大出力のレールキャノンが光線を発射する。人型のACを呑み込んで余りある大砲撃を、バリアを挟んで真っ向から受ける形となるレイヴン。
『ヤタノカガミ、エネルギー減衰を認められず。レイヴン、このまま突き進みましょう』
「あぁ。レールキャノンを黙らせる」
なんと、戦艦の主砲以上のレールキャノンの最大出力を真正面から受け止めあまつさえ押し返す芸当をレイヴン達はやってのけた。ビームの出力すら、ブーストの推力とバリアの防御力で押し返す。対企業、対国家を想定したネクストACのコンセプトが、今体現されているのだ。
『発射口に飛び込みましょう。自壊を誘発し、完全に沈黙させます』
最大出力のレールキャノンを真っ向から封殺し、その内部に突入するスターゲイザー。一瞬の静寂の後、大轟音と共にレールキャノンが大爆発し崩壊していく。オーバーロードを起こしたのだ。紅蓮の炎を上げる中で、レイヴンは飛翔する。
『敵艦隊、来ます。どうやら本格的に私達を排除するつもりのようですね』
エアの報告の通り、眼前には全戦力と思われる数百の艦隊が展開されていく。ここで何もせずに壊滅するならば、と全力を出したのだろう。逐次投入を犯す愚策は取らなかったようだ。
『レイヴン。せっかくですので、アメノムラクモの試し斬りをしてみましょう。高橋エルが制作したこの武装には、オーバードウェポンモードがあるようです』
「…ネクストモードと一緒に、試運転を兼ねようか」
『はい。───アメノムラクモ、リミッター解除。メインシステム、ネクストモード起動。レイヴン、衝撃に備えてください』
エアの言葉に応えるかのように、右手の刀ユニットが開放展開し、エーテルとコーラルの紅白の巨大な刀身を形作る。その莫大なエネルギーと負荷を賄うため、ネクストモードにてエネルギー効率を最高に高めオーバードウェポンモードを起動する。
『目標…前方の敵艦隊…!』
限界までコーラルを燃焼し、エーテルを放出。すると刃の刃渡りが数百メートルを越え、宇宙に屹立する柱の様な姿を顕現させる。発信元のスターゲイザーが、矮小な芥子粒かのような刀身が現れたのだ。
「ぬぅう…っ…!!」
レイヴン、エア両名の負荷も尋常でなく、歯を食いしばりコクピットの激震に堪える。通常の兵器とは一線を画す、戦略兵器級の武装攻撃。
『コーラル指向設定、エーテル刀身固定…!ネクストモード姿勢制御安定…!いけます!レイヴン!』
スターゲイザーの眼光から紅きコーラルが奔流として溢れ出、身体からエーテルが放出される。全てはその一撃に対応するために。
「オーバードウェポン『天叢雲剣』…起動完了!」
すると、恐慌に駆られたのか戦艦達が一斉に攻撃を行う。しかし、その剣の完成した今、あまりにも遅きに失したのだ。
「着剣──────!!!!!」
振り下ろされる戦略級の斬撃。形を成したエネルギーの奔流、もはや刀身とすら呼べないそれが、宇宙の暗黒を一息に切り裂いていく。
その刀身の巨大さは、眼前に幅広く展開していた艦隊を瞬く間に飲み込み、破壊し粉砕していく。コーラルは装甲を侵食、融解させる特性を持っている。莫大なコーラルをエーテル推進で叩きつけるそれは、最早固形物体に向けるものではなく…
廃棄プラント、廃棄コロニーを含めた、エレシュキガルが破壊対象に設定した全てを巻き込み、エーテルの奔流の塵へと還したのだ。二人の準備は万全であり、グランドスターズの戦力ともやりあえる戦力を保有していた。
『…オーバードウェポンモード、ネクストモード、同時解除。周囲に飛散したコーラル回収に入ります。端的には…凄く疲れました、レイヴン…』
「…俺もだ。だが、命に関わる後遺症や、身体機能の損害は見受けられない。見事なダメージコントロールだ…」
『はい。エル君の…カルデアの皆様の善性を感じます。これが人間の、思いやり…』
しかし混沌を求めた二人の野望は、飛来した黒い鳥に焼き払われることとなった。
「…ミッションは完了だ、エア。さぁ、帰ろう」
『はい、レイヴン。お疲れ様でした』
カルデアを止まり木として認めた…
自由の表象、レイヴンと、その傍らに在るコーラルにより。
脱出ポッド
タカスギ「なんだあれ、面白すぎるだろ!あのスペック、一体誰や何を想定したものなんだ!?過剰戦力にも程がある!」
ワカモリ「こんな、馬鹿な…!最低でも国家転覆を想定していた戦力が、たった一機の機動兵器に!?あんなもの、どう計算に組み込めば良かったというんだ!?」
タカスギ「僕らの野望は露と消えたが、最高に面白いものを見れたから良しとしよう…っと」
ワカモリ「……イレギュラー…!最悪の不確定要素にして危険分子め…!次は今回のように行くと思うなよ…!!」
タカスギ「こっちはまぁ、そんなあっさり割り切れやしないか…ん?」
エア『確保対象の脱出ポッドを発見しました』
レイヴン「抵抗は無駄だ。確保する」
タカスギ「…年貢の納め時かぁ」
ワカモリ「くそぉー!イレギュラーめぇー!!」
カルデア
エル「わぁ…………!!」
アカネ「…良かったね、エル君」
…自分の組み上げた最高のロボットが、最高のパイロットにより大活躍する。
そんな、彼の夢が今、彼の目の前で叶った。
リッカ(…ありがとう、二人とも)
レイヴンとエアは…これをも目的にしていたのだとリッカは看破し。
赤と白の光を放ちながら帰還するスターゲイザーを見つめるエルの肩や背中を、アカネと共に優しく叩くのであった──。
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