人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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別並行世界

?『レイヴン…ルビコンに帰る前に、提案があります』

?「提案…?」

?『はい。…ウォルターが最期に言っていた、あなたへの願い。その願いを…叶えましょう』



お前の稼いだ金だ…

再手術をして…普通の人生を…



『…私達は、ウォルターを喪ってしまいました。あなたの愛機…スターゲイザーも、限界が近い…』

?「……」

『人とコーラルの可能性…それを追い求める意味でも…あなたの気持ちの整理としても…少し、休める場所が必要です』

?「……そう、だな」

『実は先程検索してみたところ、身を寄せるに相応しい施設を見つけていました。幅広く戦力と規格を募集している組織…人理保障機関、カルデアと呼ばれる組織に、コンタクトを取ってみましょう』

?「…よろしく、頼む」

『はい。…自動操縦を受け持ちます。レイヴン、あなたは少し休んでください』

「…あぁ」



そうか……621………

お前にも……■■ができた……。



?「………………」


OK召喚〜遥か彼方よりの縁〜
OK召喚〜止まり木を求めて〜


『突然の通信、失礼します。人理保障機関、カルデアの皆さんにお願いと、許可をいただくための交渉をさせていただきたく思い…カルデアのシステム、シバとトリスメギストスにアクセスさせていただきました』

 

カルデア管制室に響く、謎の声。電子セキュリティを安々と突破したその声音に一同は度肝を抜かれ寝耳に水の態勢を取る。ティアマトは涙目になりBBは責任問題を問われ月送りになったがさしたる問題ではない。

 

『私は、ルビコニアンのエアと申します。私の…いえ、身寄りと雇い主を喪ってしまった独立傭兵の代理人として、皆さんにこうして語りかけています』

 

──エア!奇遇ですね〜。ワタシも同じ名前です!

 

「…ギル、どうなさいましょう。敵対の意志はなさそうですが…」

 

『名前がよい。実に良い。そのまま続けよ、特に許す』

 

「は、はい。…私はカルデア所長のオルガマリー・アニムスフィアよ。あなたの交信を受理するわ」

 

『ありがとうございます。私達の要求は、いくつかあります。拒否するにせよ、受諾するにせよ…話を聞いていただかなければ始まりません。感謝します』

 

(丁寧な赤丸だねぇ、焼きボイル君)

(ムニエルな、おっさん!いい声だ、ASMR向けの)

 

エア。そう名乗る通信音声は続けてモニターに映像を映す。そこには、黒を基調にした赤関節と金色の差し色、ショットガンとパイルバンカー、両肩に大型ランチャーを装備した厳しいロボットが映し出される。

 

「あれは!AC!?」

「CMの?」

 

「違いますよアカネさん!アーマード・コア…!汎用性とカスタム性に特化した、アセンブルにてどんな状況も対応できる機動兵器です!まさか、彼女は独立傭兵ですか!?」

 

『ACに理解のある組織なのですね。はい、この機体は私のパートナー、レイヴンのもの…名前を『スターゲイザー』。近距離において敵を完全粉砕することに主軸をおいた機体です』

 

「レイヴン!!!!!まさかあなたは伝説の傭兵のオペレーターなのですか!!!?」

 

『…まさか、そちらの組織は既にルビコニアンを雇用しているのですか?』

 

「あぁいや、単純にロボットで義務教育を終わらせようとしてるお子様なだけで…続けてもらえると助かります…」

 

アカネに後ろから口を塞がれながら引っ込むエルを確認し、エアを名乗る声は続ける。

 

『私達の要求は、ACスターゲイザーを修復する施設と資材の提供。そしてそのパイロット、第四世代型強化人間、レイヴンの再手術…。この二つを、カルデアで受け持ってほしいのです』

 

「つまり母港の役割を要求するのね。そんなにも急を要する事態なのかしら、そちらの状況は」

 

『…芳しくはありません。大気圏突入間際での戦闘を終えたばかり、かつ全体の損傷は7割を越えています。諸事情から補給もままならない今では、皆様が出していた幅広い召喚要請…という呼びかけを頼りにする他無い状況です』

 

(大気圏付近の戦闘だって?一大決戦でもこなしてきたのか…?)

 

「…二つ目の、パイロットの再手術というのは?」

 

『パイロットであるレイヴンは、ACに乗るための強化手術を受けています。ですがそれは、十世代まで進歩した技術の中での第四世代という旧式のもの…戦闘機能以外は、ほぼ機能停止しているような状態です』

 

(ナニカサレテしまっているようですね…!!)

(ロボットだったらホントになんでも知ってるね、エル君…)

 

『彼の再手術…最低でも感情や人間的機能、一般社会に溶け込める程度の再手術を行ってほしいのです。これは私達の…彼の義父でもあった存在の願いでもあります』

 

その口調は、やや沈んでいる事をオルガマリーは聞き逃さなかった。どうやら、壮絶な戦いや人生を乗り越えて来たのは間違いない。

 

『別星系、或いは別銀河系かもしれない皆様に活用してもらえるかはわかりませんが、こちらにおける紙幣通貨は、既に義父たる方が用意してありました。その額は約一億COM…機体の修繕、再手術をしてもなお余りある大金です。こちらを皆様にお支払い致します』

 

《一COM一万として、軽く十億は超える額ではないか。レイヴンとやら、余程腕の良い傭兵と見た》

 

『そして、成功報酬として…レイヴンと私は、カルデアに協力を申し出たいと思います』

 

「何ですって?」

 

『私達には、落ち着いた活動拠点と後ろ盾となる存在が必要です。これから、私達が行うべき目的の為にも…。その為に、どうか私達を永続雇用してはもらえないでしょうか』

 

それは突然の申し出の重ね上げであった。要望と、見返りとしての協力。余程受けてもらわねば困るものなのだろう。

 

(むぅ…どうするかね、オルガマリー君。私としては…純粋に困っているようだから、手を貸してあげるべきだと思うのだが)

(もう言い訳のしようのない善良さマックスおじさんだぞ副所長)

(黙れぃ!)

 

「……あなた、ハッキングや電子戦の名手ね?メインシステムを直接掌握するほどの」

 

『それは、はい。色々特殊な身分なもので。そういったセキュリティ担当や、情報収集ではお力になれるかと思います』

 

「では…そちらの『レイヴン』も、かなりのやり手ね?」

 

『はい。私のレイヴンは、ACの操縦の腕前において並ぶものはなく、作戦遂行率は98・8%。一つの星において、最も名を馳せた個人という実績を持っています。…彼は、私と星を助けてくれました』

 

「成る程…。その話が真実ならば、あなた達の永続雇用契約は蹴ったほうが愚かしい申し出ということね」

 

オルガマリーは決断する。そして、所長として指示をエアへと告げる。

 

「受けましょう、その依頼。スタッフとハンガーを用意させてもらうわ。あなたには強化人間再手術の際に必要なデータと、ACにおける技術ノウハウの収集提供をお願いします。カルデアとして、あなた達の後ろ盾にならせてもらうわね」

 

『ありがとうございます、オルガマリー』

 

「それと…提供された資金の譲渡は結構よ」

 

『?何故でしょう?』

 

「依頼という堅苦しい表現ではあるけれど、あなたが送ってきたのはれっきとした救難信号、SOSよ。そちらの世界はどうか解らないけれど…こちらのカルデアは、困った人の切実な願いには全力で応えるのが方針よ。理屈抜きでね」

 

『…………〜…』

 

「察するに…義父さんが遺してくれたお金でしょう?可能な限り自分達の為に使いなさい。私達は、力を貸してもらえるだけで十分よ」

 

「よっ!流石所長!心のメタボリックシンドロームが止まらない!」

 

「ムニエルは再教育センターへ送っておくように」

 

「ちょちょちょっと待ってください!待って!助けて!お願いします!!わぁぁぁぁぁ!!(退出)」

 

「あなたの技術と決断に敬意を表するわ。座標を送るから、そこに来てもらえる?」

 

『…はい。カルデアという組織は、善性を良しとする組織なのですね。コンタクトを取れて良かったと、思います』

 

「その言葉は、修繕と再手術が成功した時までとっておいてもらおうかしら。では──また会いましょう」

 

『はい。どうかレイヴンを…よろしくお願いします』

 

それを最後に、エアの通信は切れる。受け入れ準備により、俄に管制室が騒がしくなっていく。

 

「ロマニ!医療班に通達しなさい!メカニック班に打電、アトランティス・ボーダードック開放!」

 

「わ、わかったよ!…本当、立派になったね。マリー」

 

「朱に交われば赤くなる。善性に浸されていれば、魔術師も人情家になるものよ。ほら急ぐ!」

 

「了解!」

 

「オルガマリー所長!!スターゲイザーのお迎えは是非僕にやらせてください!!」

 

「ロボット絡みだものね、一任するわ」

 

「お任せくださいっ!!」

 

 

『レイヴン。交渉は成功しました。なんと…無償で行ってくれるそうです。素晴らしい人達ですね』

 

「……あぁ。じゃあ、向かおうか」

 

『はい。座標は…太陽系第3惑星…地球…』

 

「…聞いたことがない、場所だ」

 

『ワープホールが開きます。着艦しましょう、レイヴン』

 

(………まだ、何も見えないけれど。あなたの願いの一つを叶えに行くよ、ウォルター)

 

半壊しているACを操縦し…レイヴンたる独立傭兵は、カルデアに身柄を寄せる──。




エル「ようこそレイヴン!!まさか生で伝説的傭兵に会えるだなんて…!素敵です!!」

エア『様子のおかしい人です』

エル「新しい別世界のメカ…!楽しい時を過ごしましょう!!素敵だぁ…!本当に心が踊ります!」

エア『様子のおかしい人です』

エル「新しいメカニック!さぁ!!楽しみましょう!!レイヴンさん、コクピット失礼します!!」

エア『(ため息)』

アカネ「ほらその前に、パイロットさんの身柄の確保でしょ?」

エル「そうですそうです!それでは御姿拝見…!おおっ!」

スターゲイザーのコクピットを開けた中にいたパイロット、レイヴン。

そこには、腰や背中に神経チューブにて機体接続を行っている強化人間の姿。

レイヴン「お世話に、なります」

無造作な黒髪に、視神経を焼き尽くされたような紅き瞳。まるで機体の心臓、生体パーツのような出で立ちに…

エル「これぞ人機一体!!僕も一度は強化人間になってみたいです!!」

アカネ&エア『「はぁ…」』

レイヴン「そこの君…第5世代以前の手術は、やめておけ…」

エルは鼻血を出す勢いで大興奮であった。

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