ブライド『マヴは、モルガンのお友達なのですか?』
マヴ「友達…まぁ、それはちょっと違うかしら。私も彼女も、お互いに歩み寄る暇なんてなかったもの。というより…あの国にはなかったわね。そんな、心温まるお話は」
ブライド『おぉ、そうなのですか。では…今、友達になってみるのはどうでしょう』
マヴ「えぇ?」
ブライド『あなたが敵というのなら、もっとシンプルに攻めることはいくらでもできましたとおもいます。でも、あなたは正々堂々と戦いにドードーしました。ほまれです』
「それはまぁ…なんというか、素寒貧だしね今の私…」
ブライド『生まれ変わったつもりでやってみましょう。ここは皆が望んだ理想郷。あなただけ一人ぼっち。なんてことは無い無いです。…ほら』
マヴ「…!」
『招待状』
『女王さまも、おんなじ気持ちみたいです』
「あっはっはっはっはっ!チョコレートで決戦兵器を作るとか、姉さん心のイノシシが隠しきれてないじゃないですかもー!流石魔猪の氏族なんて愛称があるだけありますねぇ!」
「黙れアルトリア。美味しく食べて敵も仕留める。この合理的なプランが解らないのですか。一つの労力で2つの成果はお得でしょう」
「トネリコ、それくらいにしておくんだわ…CCAが笑いすぎてチョコレート作りじゃなくなってるぜ…」
そんなわけで。リッカ達が声をかけに駆け回った事により、個人的なチョコレート制作は街一つ使った一大イベントにまで膨れ上がる事となり、多種多様な人物が思い思いのチョコレートに着手する事となる。女王が決戦兵器を作ったのだから、もうこの際細かい事は抜きにしようと言った様子で妖精達も巻き込んだお祭り騒ぎだ。
「手間暇かけるとイイモンができる。ビリィがいつも言ってることに実感が持てるぜ。パッと魔力で作るより楽しいもんな!」
「だろう、バーヴァンシー。人間はそういう、手間と暇にも意味を見出す凄い観点と技術を持っているのさ」
「星型チョコレートとか〜。ハート型チョコレートとか〜!どんなチョコレートにも、私ホープは希望を詰め込んじゃいますよ〜!」
「あっちはあっちで盛り上がってるのに、魔猪亜種は何を二の足を踏んでるんだい?」
「誰が魔猪亜種かっ!いやだってェ…モルガンのやらかしは全然他人事に聞こえなくってェ…私もヤバいのできたらヤバくってェ…」
「あはは、そういう事か。君らしくもない。盛大に失敗するといいさ!どうせ誰も君には期待してないからね!」
「ここの時くらい嘘を言えコノヤロー!」
『…チチ』
『ふふ、許してあげましょう。素直になれないのはお互い様なのよ』
ブライドやオベロン、キャストリアや旅の仲間たちも、用意された装置と材料に思い思いのチョコレートを作る。やはりそれは、楽しいイベントならでは。人間の猿真似だったあの国とは違う本物の活気ならではだろう。
「へぇ〜。アヴァロンとは違った理想郷と聞いて遊びに来たら、皆楽しそうだね」
「こういう、楽しい不便や不自由は面白い試みだよ。いい国じゃん、ここ」
「せっかくだし、誰かに学ぶっていう儀式も真面目にやってみようか。聞く限り、酷い国の酷い妖精と一緒にされたくないしな」
(だ、大丈夫かしらリッカ。妖精達に教えるなんてして後ろから斬られたりしない?)
(大丈夫大丈夫!アヴァロンの妖精達の怒りはCCAがバーベキューで連れて行ったから!皆もコーチお願いね!)
「アタイに続け〜!!」
「過度な冷却凍結は禁止だよ、チルノちゃん!」
(黙々と作るオーロラ)
(美しい……)
じゃんぬを始め、エミヤや紅閻魔、ブーディカといったスタッフがチョコレート作りのサポートや妖精達のコーチを担当する。CCAに惹かれて(精一杯の歪曲表現)やってきた妖精たちも、未知なる試みに真面目に取り組んでいる。
「全く。ドラゴンスカイラウンドナイツ…それにアルビオン・ペンドラゴンともあろうものが何をあっさり拐われてるんだ…連鎖的に僕までナメられちゃうじゃないか…」
(ペロペロ)
『今そこで一心不乱にチョコレートペロペロしてるルゥ様の話ししたか?』
「強者の余裕はいいけど威厳がなーい!」
「美味しい!(テーレッテレー)」
『しかしボルシャック。オレ様等の図体では食えるチョコなど微々たるものだぞ。ここは仲間達の笑顔で我慢だな!ぐはははは!』
『まぁしゃーねぇよ。素材を集めて貢献するとしようや』
『心配するな。エルに頼んで主砲からチョコを発射できるようにしておいた』
『ボルメテウスお前それでいいのか…』
『さぁ口を開けろ。浴びるほど食わせてやる』
『ぐはははははは!こおぃ!!』
『来いじゃねぇ!会場がエライことになんだろうが!』
「ウマーイ!(テーレッテレー)」
「はぁ…。ラウンドナイツでまともなのは、この僕だけみたいだね…」
些細な催しで始まったチョコレート制作大会。細やかな願いは皆で共有され、瞬く間にたくさんの笑顔が満ちる催しとなる。
「──へぇ。独り占めの為の虐殺も起きない、足の引っ張り合いもない。本当に、私の臣民に迫るものを手に入れたようね。トネリコ?」
「…来ましたか。招待状が届いたようで何よりです」
気配を察知し、そっと愉快な喧騒から離れたモルガンの下に現れし大妖精マヴ。小脇にプラプラと抱えられたアルビオンを伴いながらかつてのライバルに向かい合う。
『こんにちは、陛下。囚われのヒロインです』
「まるで緊張感がありませんね…。偽悪を振る舞うには、あなたは高潔に過ぎます。妖精の地獄から変わっていませんね」
「しょうがないでしょ、この娘全然物怖じもしないし動じもしないんだもの。しかも似たような黒いドラゴンもいるって言うし、どうなってるのかしらホント!」
「…積もる話は、共に互いを仕留めるチョコレートを作りながら続けましょう」
モルガンにマヴ、大妖精と楽園の妖精が肩を並べて外界の営みを見やる。ドラゴンや妖精、人間や英霊の紡ぐ愉快な喧騒が、彼女たち為政者の本懐を遂げさせた実感をもたらす。
「いい国を作り上げたじゃない。その点は認めてあげるわ、トネリコ」
「作り上げたのは…私達ではない。皆がそう願い、私の夢と理想を形にしてくれたというだけだ」
「それでも、あなたは理想と夢を捨てなかった。どれだけ血塗れに、傷だらけになろうともそれだけは諦めなかった。それが今のこの光景なら…やっぱり、あなたのお手柄なのではなくて?」
マヴはどこまでも敵対者へのリスペクトを忘れない生まれながらの女王たる存在であった。国を滅ぼした相手、素寒貧の身ですらその気高さを失わせはできない。好敵手の賛辞を、生まれ変わった中でも忘れぬ程に。
「…そうですね。あなたとこうして穏やかに語り合える事が叶う。それこそ、私の夢の成就の証なのでしょう。誰もが支え合うとは、かつての敵すらもそうするべきなのだから」
「あ、それは私が特別。私が人一倍フェアネスとリスペクト精神を兼ね備えたスーパー妖精だからっていう事を忘れないでね?」
『じぶんでいうんですか』
「何よあなた辛辣だったりたどたどしかったり!チョコレート食べてなさい!」
『もぐー』
「ふふ。……受けた傷や、犯した罪は消えずとも。こうして赦し合い、癒やすことはできる。あの地で出来なかった事を、私はこの国で実現させていきます。敵であった貴女も、納得できるようなやり方で」
「へぇ…面白いじゃない。精々頑張りなさい。見ててあげるから」
「…そこで、相談なのですが」
「嫌よ!」
「は?」
「あなたという救世主の皮を被ったイノシシのお願いを素直に聞くと思って?私はあなたのライバル!頼みではなく、力を示してお願いは聞かせなさい!」
「………。いま、あなたが私と気が合う理由が少し解った気がします」
『あらそいは、おなじイノシシ同士でしか発生しません』
「何ですって!?一緒にしないでくれる!?…こほん。さぁモルガン?素材の調達に出かけるわよ!」
「ふっ、良いでしょう。女王の名に懸けて、転生したてのレベル1の女王に負けてはいられませんもの」
「言ったわねはいよーいスタート!ブライド、飛びなさい!」
『うわー、チョコレートの恩義に報いて身体がペンドラゴンに〜』
「なっ…!貴様、誉れと矜持はどこにやったと言うのだ!我が妻!我が妻!背中に乗せなさい!飛ぶのです!」
「えっ!?アジーカ、アルビオンに速度で勝てる!?」
【無理】
「諦めてはいけません…!限界を超えるのです!さぁ早く、早く!負けていられません!我が妻!あなたのモルガンの願いを叶えなさい!」
「や、や…大和魂を見せてやるー!!」
…マヴとモルガンは、トネリコの罪業にこれからも向きあい続けることとなるのだろう。
誇らしき民と友、新しく至った理想郷にて。ずっと。
一方、別世界のカルデア
マシュ「あ…」
『招待状』
「これは…?」
『是非、恋人とともにおいでなさい』
「…!」
『春の女王 モルガン・ル・フェ トネリコより』
「…トネリコさん…!」
もう既に、冬は終わり。
──麗らかな春は、訪れているのだ。
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