?「…ここは…妖精國?にしては、空の色が違うけれど…海も空気も、何もかも違うわね…」
(私は、確か…厄災に国ごと呑まれてしまって…)
「…死んだの?ならば何故、次代ではなく今のままの私なの?」
(…!この気配は…!)
「…細かいことは二の次ね!色々と話したい事もあるし!待ってなさい!!魔猪の氏族トネリコ──!!」
「おーい!こちらドラゴンスカイラウンドナイツ、ボルシャック!女王陛下にご連絡だ!北の空から、めっちゃいっぱい妖精がやってきてるぜー!」
モルガンがリッカと部屋のインテリアについて話している頃合い、寝耳に水の報をボルシャックが伝えに窓を叩く。キャメロット・オークニーの全容を掴んでいるわけでないカルデアの見落としか、或いは新興勢力か。キャメロットへと猛進する妖精が捉えられた。
「妖精…?まさか土着の妖精が存在していたというのですか?この地における歴史の摺合せは、既に終わっていたものとばかり思っていましたが…」
「アッアッアッ」
膝枕にてリッカの耳掻きを行いながら呟くモルガン、どことなく不満気に頬を膨らませる。王政の合間、完全にリッカを妻として扱いストレス解消のパートナーとして過ごした時間を阻まれたことによる不満である。
「よろしい、平定が足りないというのならば出陣しましょう。我が妻、暫し待っているように。二分で平定します」
「アッアッアッ」
「そう心配する必要はありません。戻ってきたなら…二人だけの睦事の続きをしましょう。よろしい?」
「アッアッアッ」
美女の膝枕耳掻きという魂の夢を叶えたリッカ、腑抜けを曝すもそれすら許し、モルガンは政敵の征伐に剣と杖を摂る。
「誠心誠意に話した後に始末しましょう。理解など、大切な者だけがしていればよい」
そう告げるモルガン…しかし、その認識は過ちであることを彼女は痛感する。
『生まれ変わる』資格を得たのは、悪に落ちる前の死した妖精も対象に含まれるということを、彼女は失念していたのだから…。
〜
「久しぶりね!救世主トネリコ!!知らない世界で知ってるあなたに会いに来てあげたわよ!!」
大量の妖精を引き連れ勇ましき声を上げるもの。トネリコの名を名乗る女王の衣装を纏う者。桃の髪、完璧な黄金比の肉体、大量の護衛たる妖精…
「マヴ…。まさかあなたもキャメロット・オークニーへと招かれるとは。結婚式の場を借りた以来でしたか」
モルガン、ではなくトネリコが彼女の言葉と姿を見受ける。彼女は北の大妖精マヴ。罪悪の妖精とは関わりない、北に離れたケルト方面の妖精とも言うべき存在だ。
彼女らは始まりの魔物が増やした妖精ではなく、ブリテンにて発生した妖精たち、土着の様な存在である。大妖精マヴはトネリコと幾度となく個人的に死あった、ライバルのような存在だ。
「ふっ、大厄災に為すすべなく呑み込まれて滅んだと思ったのに意外な再会よね。私もそうだもの!」
「……」
トネリコ自体はキャメロット・オークニーの土台作りのため、出歴関係なく妖精の死体と魂を求めた。北の地で婚姻という撒き餌を撒いたのも、自身らの暗殺で混乱の最中にマヴが暗殺や暴動に倒れることを織り込んでの事だった。
結果的には、ヴォーティガーンにオベロン、トトロットといった要因により彼女らは国ごと厄災に呑まれた。罪過に沈んだのではなく、単純な滅亡だ。故に、その魂は生まれ変われたのだろう。この、キャメロット・オークニーへと。
(弱み、というほどでもありませんが…些か負い目はあります。話だけでも聞くとしましょう)
「トネリコ!ここで会ったが百年目よ!思えばあなたとの決着はつけずじまい!どうやらここなら大丈夫そう、という事で!あなたに一騎打ちを申し込みます!!」
びしり、とマヴは王の気風を漲らせ宣戦布告する。やはりそうきたか、とモルガンは頷き納得する。小細工抜きのわかりやすい妖精なのはトネリコ時代から理解していたからだ。
マヴは彼女を崇める者があればあるほど力を増す。臣民を有した彼女と彼女の臣民は強固だった。夜闇に紛れ臣下の民を消していき、悪言を流布して信用を失墜させ、悪妖精を何度も差し向けるなど、思えば攻略には苦労したものだ、とモルガンは目を閉じる。
「ただの一騎打ちではなくてよ、トネリコ?こちらをご覧なさい!」
『わ~』
「ブライド・アルビオン…!?」
オベロンとブライドの子に当たる竜の妖精、ブライド・アルビオン。その幼少形態たる白竜がマヴにしっかりと小脇に抱えられた姿を目の当たりにし鉄面皮が崩れ去る。
「この娘、北の地に在った竜の躯から生まれた妖精なのでしょう?ならば当然、その所有権は私にあるということよね?」
『そうなのですか。橋の下から、拾われたブライドですか』
「何を馬鹿な。躯から彼女を見出したのは汎人類史だ。我々が私物化して良いものではない」
モルガンはそういうが、マヴは彼女を離す様子はない。ぺちぺちとお尻をたたき沈静化させている。
「どう言おうと、彼女は既に私の手にあるわ。私が手にしたいものを言葉で手放す女では無いこと、よーく御存知でしょう?」
「…えぇ。よく解っています」
「それは結構。あなたはあなたで変わっていないようね♪どう?私の決闘、受けるわよね?」
モルガン…トネリコとしては、特に付き合う事をせずとも戦力で磨り潰す事は可能だ。こちらには数多無数の同盟者も、人理の生み出した決戦存在、藤丸リッカもいる。真正面からでは芥子粒を石臼で轢き潰すが如きだろう。
しかし、彼女の言う通りアルビオンの細胞と躯は彼女の領地から手にしたものであるし、それに彼女達の躯も存分に利用させてもらった。キャメロット・オークニーがあるというのはそういう事なのだ。諸々の理由から…決闘を無下にできない理由は、既に出来てしまっていた。
「…良いでしょう。しかし、もう私は暇を持て余した少女ではありません。端的最速にあなたを下し、我が妻の下に帰ります」
ならばさっさとケリを付ける。そう断じたモルガンは魔力を寝る。キャメロット自体が大霊地たるが故、モルガンの魔力はこの地で戦う際には何十倍にも跳ね上がる。
「あなたの首を門に飾りましょう。見目麗しき首は実に目立つ装飾です」
「あーもう、待ちなさい!戦いとなったらすぐ力づく!そこがあなたの魔猪たる由縁よ!」
(なんだとコノヤロー!!)
「(控えなさい、トネリコ)…何か形式でもお有りですか?」
付き合うと決めたなら、耳を傾けなくては始まらない。早くしろ、と言外に含ませながら手を止めたモルガンに、マヴは告げる。
「あなたは所詮猪突猛進快進撃しかできない女。そちら方面で戦っても構わないけれど、今回は風情を大事にしましょう?」
「風情…?」
「えぇそう!流した血でなく、汗でなく!公正な審美と審査でどちらが上か決めるのよ!それなら納得はいくものでしょ?」
王だけあって政には拘りがあるのだな、とモルガンは二の句を促す。ハンデとして、条件くらいは許してやろうといった慈悲だ。
「ならばその風情とやらを教えなさい。当然、勝つのはこちらですが」
魔術であれ、殴り合いであれ、何にせよ遅れをとる筈もない。こちらは妻帯者たる身持ちであり一国の女王。負けるはずがあろうものかと鼻を鳴らし胸を張る。
「当然──それはクリエイティブかつ乙女的な対決になるわ!それこそが!」
「──待て。まさかそれは…」
「えぇ!チョコレート制作勝負よ!!我が国の特産物チョコレートを使ったアーティスト魂で勝負するわ!どちらが魂に訴えかけるチョコレートを作れるか…勝負よ!!」
愕然、蒼白となるモルガン。料理は、制作は少しだけ、少しだけ苦手なのだ。バリバリの不利なゲームであることに抗議は…
「詳しい情報は追って話すわ!精々震えて待ちなさい!アデュー、トネリコ!また会う日まで!」
「待て、マヴ……!」
せめて種目を。そういう前にマヴは颯爽と立ち去る。モルガン、振り上げた剣を下ろし…
「…どうしましょう」
料理は不得意です…と、静かに目を閉じる。彼女は魔猪の死体を、食べれるならと貪ろうとした事すらある料理音痴に味覚音痴なのだから…。
モルガン「詰みました…」
トトロット「一体どうしたんだわ、トネリコ!」
リッカ「アッアッアッ」
とりあえず耳掻きを再会し、変わらず骨抜きなリッカであった
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