人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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大ちゃん「話は色々聞いたよ、チルノちゃん!背伸びして、何でもかんでも一人でやろうとしたんだって!?」

チルノ「う、うぅ。それは…」

大ちゃん「慧音先生も言ってたでしょ!困ったら誰かを頼りなさいって!本当になんでもかんでも一人でやるなら…もう宿題手伝ってあげないから!」

チルノ「うわーっ!あたいが悪かった!それだけは勘弁してくれーっ!」

紫「ふふふ、親分も対等な友人の前には型無ね。これから向かう大妖精ブライドのお話も、キリシュタリアから聞いているわ。きっとあなたが、妖精達の自制に一役買ってくれるはず…」

大妖精「しょ、正直なところ、私がそんな立派な事を出来るようには思えませんが…頑張ってみます!」

チルノ「自分を信じていけ!」

大妖精「チルノちゃんっ!反省してるの!?」

チルノ「してる!すっごいしてる!」

こうして二人は、紫の指示の下に大妖精ブライドの下へと向かった。




抑止の妖精

「おやおや、噂に聞く氷の妖精親分じゃないか。お友達も揃ってようこそ。お茶漬けとかどうかな?美味しいよ〜」

 

「おぉ!嘘つき虫!いっぱい寄越せ!」

 

冗談なのか本気なのか、もてなしのように思えぬ品を勧めるオベロンと全力で受け取るチルノ。ブライドの閨に招かれた際、彼とブライドは彼女と同伴しているため鉢合わせの形となる。無論、チルノに含みやジョークは通じない。

 

「そちらの顔は初めて見るね。汎人類史の妖精…こちらの知己かい?」

 

「は、はい!大妖精といいます!」

 

大妖精もまた、幻想郷以外の妖精はあまり馴染みを持たないが故にオベロンに肩肘の張った反応を返す。外面のいいオベロンは端から見れば無欠の王子だ。緊張するも無理からぬ、である。

 

『まぁ。あなたも大妖精と呼ばれているの?私と同じね。うふふ、こんにちは』

 

「わぁ…!」

 

そして現れしは、美麗にして華麗なる大翅を有した麗しき美貌の大妖精ブライド。風格や気品は脇に置いたラフスタイル、具体的にはカルデアのExtraTシャツを着ている。そんな彼女が、二人の妖精の前に礼をもたらす。

 

「お茶漬けうめぇ!お茶漬けうめぇ!」

 

「ご拝謁に預かり、光栄ですわ大妖精ブライド。この度は貴方様に、この二人の確かなる安寧の一歩の御助力を願いに参りましたの」

 

紫が礼を尽くし、ブライドに恭しく接する。モルガン、ブライド、ケルヌンノス、そしてギルガメッシュが重鎮扱いなのでこの対応は要人同士の応対となる。ちなみにオベロンはチルノとお茶漬け対決を行っていた。

 

『あぁ、大丈夫よ。チルノちゃんのお悩みの顛末は見えていたから。私が手を貸さなくとも、答えはきちんと得たと思ったけれど…件は、そちらの大妖精さんね?』

 

「はい。この大妖精に定められた軛、有された制限。言うなれば潜在能力。その御力で解き放っていただきたいのです」

 

紫が告げる要望は、大ちゃんこと大妖精の力を開放すること。それこそが、チルノやひいてはキャメロット・オークニーに活路を見出す力となることとなると紫は確信を以て答える。

 

「チルノは星の水が姿を成した星の氷精、幻想郷に有した神秘と純性が高い星の触覚に近しい存在。そういった特例、或いは大いなる力を有した例外は幻想郷によく根付いています。程度の能力、という異能はそういった存在、そういった力の発露でもありますので」

 

「素質でいえば大したものだしねぇ、チルノは。となると、このご友人様にもそういったスペシャル能力が備わっていると?」

 

紫はオベロンの懐疑に頷く。チルノが最終的に辿り着くのが星の氷精であるならば、仮にも大妖精を名乗る彼女が何も無いはずが無いと。

 

「彼女は、妖精や幽霊、非実在の存在に強く作用する力を有した妖精。調停や均等に妖精の力を制御する為の役割を担うことの出来る『抑止の妖精(カウンター・フェアリー)』とも言うべき力を有していると私は定義しています」

 

「カウンター…」

「ぱんちゃー?」

 

「そ、そうなんですか!?ぜ、全然心当たりがないのですけど…!?」

 

大妖精こそ、妖精ひいては神秘存在を調停、或いは制御を担う大妖精。チルノが星の触覚であるならば、大妖精は星の抑止力、ガイアの欠片に値するものと紫は付け加える。

 

「協調を良しとする柔和な性格、そして妖精や妖怪など異種族同士の触れ合いを実現する空間の成立。それらは彼女が持つ力の一端であり、人格が示す本質の現れ…封じられた力の存在が、それを確信へと私を導くのにそう時間はかかりませんでしたわ」

 

「なんだ、大ちゃんはすげぇ妖精だったのか!流石はあたいの友達だな!鼻がたけぇぞ!こーそービルくらいな!」

 

肩の荷をおろし背伸びを辞めれば気楽なもので、チルノは無邪気に大妖精の評価を喜ぶ。紫が潤滑に、話を進めていく。

 

「キャメロット・オークニーにて危惧される力の行使や力の危険性、その均等性や突出した存在の抑止に彼女はきっと役立ちますわ。…チルノ、あなたは自分が幻想郷に帰れないと悩んでもいたらしいわね」

 

「ん?おぉ!ジョーシキテキに考えてなんでもかんでも凍らせてたら生活できないし、二回も大ちゃん凍らせたくなかったしな!」

 

「チルノちゃん…」

 

「そういったケースや、悪妖精の鎮圧や抑制にも彼女は一役買うことができます。彼女に眠る力を同じ大妖精たる貴方様に開放していただけたなら、と」

 

紫は、大妖精が力を行使するのはブライドが潜在能力を解き放たせる事によると告げる。それこそが、肝要なる体制の準備にして儀式であると。

 

『えぇ。そういう事なら構わないわ。彼女の霊基?身体?を進化させればよろしいのでしょう?』

「即答かい、ブライド?君自身の力をも封じられ、不都合が生まれるかもしれないぜ?」

 

『いいのよ。同じ妖精の頼みなら聞いてあげるべきだし、チルノちゃんが思い悩む事を解消できる力になれるのなら幸いだもの。私は総ての妖精達の味方であり、隣人でありたいのだから』

 

「〜。まぁそういうのが君だって言うのはずっと知ってるから止めないけどさ」

『チチ!』

 

「大丈夫?紫の妖怪さん。あなたにどういう企みやメリットがあるのかくらいは教えてほしいな〜?」

 

妖精眼を有していながら、言質を要求するオベロン。賢者故に腹芸を要求されるも、紫があれこれ世話を焼くのはカルデアに限りシンプルな理由である。

 

「以前、レクリエーションを計画した際に不手際で散々カルデア側に迷惑をかけてしまった事があってね。その埋め合わせの一環と思っていただければ間違いないわ。腹芸や利用するだなんて大逸れた真似をして、友人や王の不敬を買いたくないもの」

 

「わっはっは!紫ババァもカルデアには恐れを成したということか!よーやく身の程を知ったわけだな!」

 

「全くもう、急にらしくなっちゃって…。それに、汎人類史に在するものとして、かの組織…いえ、そこにいる人々には力を貸したい。理由や理屈なんてそれだけでよろしいのではなくて?妖精王」

 

「…これは少し意地悪な質問だったね。君みたいなキャラがこうまで腹を割るなら、信用するしかないって話さ」

 

『あらあら?どういうお話?私、彼女に施しをして大丈夫?』

 

「あぁ、勿論さ。他人に歪められた事はあれ、君がしたことに無駄や間違いなんて無かったさ。出会ったときからずっとね」

『チチ!』

 

「大ちゃん、どうかしら?チルノがまた幻想郷に帰ってくれるための力を手にする覚悟はある?」

 

紫の言葉に、大妖精は躊躇いなく頷く。其処に、迷いの介在は見られない。

 

「はい!チルノちゃんや、カルデアの皆さんのお力になれるなら…大妖精の名前に恥じない力を振るってみせます!」

「大ちゃん…!ありがてぇ!あたいの子分共にも紹介するからな!」

 

『ふふ。なら決まりね。新たなる善の妖精の誕生を心からお祝い致しましょう。さぁ、目を閉じて…──』

 

こうして話は瞬く間にまとまり、ブライドの力により大妖精が眠らせていた力、抑止の妖精としての力が覚醒する。

 

「うぉお、なんだこれ!力が使えないぞ!これは大ちゃんに勝てなくなったな!わっはっは!」

「力が使えない…じゃあチルノちゃんは、幻想郷に戻ってくれるという事ですね!?」

 

「えぇ、そうよ。逆にあなたは異種族同士の不当な優劣を防ぐ重要な一因となるでしょう。その力を、理想郷に活かしてあげてくれる?」

 

「は、はい!私に出来ることを、精一杯やらせていただきます!」

 

『無事に済ませられて良かったわ。これからも仲良くね、二人とも』

 

「おー!ありがとな、ブライド!ウソつキングもサンキューな!」

 

「あはは、口の減らない地獄の妖精さんだぁ。解らせちゃうぞ〜?」

 

「では、私は温羅と御機嫌王、慧音に報告するわ。せっかくの再会、大切にしなさいね」

 

「はい!」

 

「ブライド様、本当にありがとうございました。どうかあなたも善き時間を過ごされますように…」

 

「これでまた、皆と会えるよ!チルノちゃん!」

 

「おう!皆!本当に色々…ありがとな!!」

 

こうして…チルノの背伸びと、孤独は終わった。

 

「チルノちゃんの子分さんも、紹介してね!」

「勿論だぞ!」

 

答えははじめから…自分の周りと近くにあったのだと。チルノはシンプルな答えに、辿り着いたのだ。




大妖精「ほらほら、チルノちゃん!裁判官になるんだったらたくさんたくさん勉強しなくっちゃ!」

チルノ「うわーっ!!専門書が多すぎるーっ!!」

ホープ(姐さんだ…)

ビリィ(姐さんだ…)

バーヴァンシー(気合入ってんな…)

大ちゃんは無事、『親分のケツを叩く姐御』としての地位を確立したのであった。

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