人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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オベロン「やぁやぁ、親愛なるリッカ!件ではお世話になったね!君の王子様、オベロンだ!」

リッカ「アフロが無ければ即死だった…」

オベロン「いやぁ申し訳ない。まさか僕が色々やらかした時空の記憶を持っているなんて予想外だったからさぁ」

リッカ「まぁ、サーヴァントは人間の常識が通じないからね。仕方ない仕方ない!で、どったの?」

オベロン「いやぁ、実はちょっと見てもらいたい相手がいてね?」

〜キャメロット・オークニー渓流区画

トトロット(しょんぼり)

リッカ「モルガン陛下の騎士がしょんぼりしている…」

オベロン「可哀想だろ?彼女、せっかくここまで来たのに塞ぎ込んでいてさぁ。君に助けて貰った御礼に、彼女に導いてあげたというわけ」
ブランカ『チチチ』

リッカ「なるほど…」

オベロン「という訳で!いい感じに立ち直らせてあげてくれ!任せたよ親愛なる君ー!」
『チチ!?』

リッカ「本当に案内するだけ!?」
ブランカ『チチ…』

リッカ「あっ、ブランカちゃん…」
『チチチ…』

リッカ「…声、かけてみよっか」
『チチ!』



アフターエピソード・トトロット〜新たなる復讐者への歓待〜

「おーい!モルガン陛下の騎士トトロット〜!そんなに凹んでどうしたの〜!」

 

「お、あぁ。君は…カルデアのマスターか。見つかっちゃったな、はは…」

 

川の流れを力無く見つめていたトトロットに、努めて元気にリッカは話しかける。託すだけ託して帰ったオベロン…その伴侶の一部たるブランカと共に、彼女の翳りを晴らさんと対話を行う。

 

「ボクの事、心配してくれたのかい?ありがとう。…でもやっぱりボクのやらかしからして、すぐにニコニコって訳にはいかないかなって」

 

「やらかし…妖精獄での大暴れの事?」

 

はっきり言うなぁ!?と驚くがすぐにトトロットは頷く。そう、彼女はケルヌンノス、そしてヴォーティガーンと同調し妖精を滅ぼす妖精、裁断妖精女王トトロット・ヴォーティガーンとして妖精達を呪い、憎み、殺し続けた。復讐者として、彼女は在り続けた。

 

だからこそなのだろうか。彼女はこの清廉にして清らかな理想郷…キャメロット・オークニーにおいて、居心地が悪そうなのである。リッカはそっと、トトロットの隣に座る。ブランカはリッカの頭に留まる。

 

「見てくれ、この血に錆びたハサミ。血染めの針。本当は花嫁の衣装を織るものなのに…ボクは散々殺しに使ってきたんだ。裁縫道具を血に染めてまで」

 

『チチチ…』

 

「人を呪わば穴二つ…憎み、呪いに呪ったのは事実だ。ボクはそうしたいと感じたし、そう断じた。そんなボクが…ここにいてもいいのかなって、思わずにいられないよ」

 

「トトロット…」

 

「ボクは反省し、許された側の妖精じゃない。むしろ、あっちで滅んだ側の妖精なんだわ。そんなボクが、トネリコや皆が辿り着いた場所にいても…いいのかなって…」

 

彼女は愛情深く、そして義理堅い存在なのだ。ならばこそ、因果応報は正しく齎されるべきとの考えを有しているのだろう。自身には、復讐の報いがあるべきだと感じているのだろう。

 

…本来ならば、ここは言葉を尽くすべき場面なのだろう。そうする手段はある。そうする手管は知っている。

 

「──よし!トトロット!付いてきて!」

 

だが、リッカはそれよりもきっと最適な手段を知っていた。トトロットの疑問に相応しい場所を。

 

「うぉお!?な、なんだなんだぁ!?」

 

『チチ〜!?』

 

「あなたの疑問に答えをあげる!私と…私達が!」

「わ、私達!?」

 

そう確信を持って、リッカはトトロットを導く。その場所とは……

 

 

「どうもこんにちは!スイーツじゃんぬキャメロット・オークニー店へようこそ!人生エンジョイ系アヴェンジャーです!!」

 

「えぇ…?」

 

元気よくエプロンをたなびかせ、ハキハキと挨拶する自称アヴェンジャー(アヴェンジャー)、じゃんぬ。モルガンが一口口に入れたスイーツをいたく気に入り一等地に店を構えた店長がリッカとトトロットを迎える。

 

「あなた、アヴェンジャーとして悩んでいるんですって?そんなあなたにあげるのはこれよ!食べてみなさい」

 

トトロット、リッカに出されたのはストロベリーケーキ。シンプルながらもイチゴの配置にも拘った逸品を振る舞う。

 

「う、うん……!!」

 

瞬間、クリームの甘みとスポンジの生地、そしてイチゴの酸味が絶妙なハーモニーを奏で、口の中で荘厳なオーケストラを奏でる。味わった事のない感覚に、トトロットは一転して笑顔を浮かべ告げる。

 

「美味しい!こんなに美味しいデザート、食べた事ない!」

 

「ふっふっふっ、そうでしょうそうでしょう。値千金のレビューありがとう!励みになるわ!」

 

うんうんと頷き、もう色が黒いだけのスイーツお姉さんと化したアヴェンジャー(自称あり)は告げる。

 

「あなた、話を聞く限り正当な怒りと憎しみを抱いて復讐したんでしょ?ならそれ、あなたがここにいていい理由じゃない」

 

「へ…?」

 

「復讐なんて、本当に大切なものや自分より大事なものがなきゃやらないのよ。あなたにはそういう、自分の全てを投げ売ってでも報いたい何かがあった。あんな、自分の事しか考えてない連中とはまるで違う。ずっとずっと誰かを案じてたあんたは…素晴らしい妖精よ!!」

 

解った!?何故かキレ気味に問いかけるじゃんぬ。トトロットはその剣幕とスイーツの美味しさにキョロキョロしながらコクコクと頷く。

 

「ん。復讐者だからってそれしかしちゃいけないなんて道理はないわ。何事にも例外はあるものよ。憎悪を情熱に、業をやる気に変えて自分なりの世界への中指を立ててやりましょうよ。マスターの為に世界を敵にする!それがアヴェンジャー、復讐者ってクラス!あなたの背負ったクラスってやつよ!」

 

「…おぉお…復讐ってこんな前向きで良かったのかい…?」

 

「勘違いしないでくださる?そこの突撃フランス田舎娘はマスターに脳を焼き尽くされた特例よ。復讐者というのは…暗く恐ろしく残酷なものよ。あ、このスイーツはフランス娘が作ったので★1です」

 

「はぁあぁん!?制作者が嫌いだから低評価は止めなさいっていつも言ってんでしょうがザ・フランス女!!」

 

「そのザ・フランスの呼び方は止めなさいっていつも言ってるのがわからない!?はっ倒すわよフランス田舎娘!!」

 

「自分が言われて傷付く事は他人に言うなって教わったでしょーがこのオバケバスト女ァ!!」

 

キー!と凄絶なキャットファイトを始めるじゃんぬとマリーオルタ。お察しの通り、マリーオルタは常連である。

 

【モモモモモモモモモモモモ】

【そうそう。痛快娯楽復讐劇なんて言葉もあるんだ。気楽にやろうぜ?復讐の定義なんて人それぞれ、正解もなけりゃ間違いもない。やられた側からしてみりゃ大体不意打ちなんだからな!】

『私はこのお菓子のカロリーにふくしゅーする!(モモモモモモ)』

【いやオメーは復讐なんて一番遠い立場だろうがよ…】

 

スイーツを貪るアジーカ、キラナに呆れるアンリマユ。そう。彼女らもまた、世界の在りように異を唱えるものだ。

 

「…これが、汎人類史。多様性を極めた歴史…復讐にとってもこんなに見方があるんだ…」

 

「そういう事だ。情と親愛を織り上げた苛烈なる機織りよ。復讐とは、世界に仇なす心の発露。怒りと怨嗟による理不尽への糾弾…」

 

そっとコーヒーを渡す緑色の復讐者、巌窟王エドモン・ダンテス。突然現れて難しいワードをもたらす事に定評のある彼がどこからかやってくる。

 

「故に躊躇うな。己が宿業を恐れるな。その牙を力とし、その爪を収斂し、穿て。お前の愛するものを護るための力を──厭うな。それはお前だけの刃であり、盾なのだから」

 

「………凄いや」

 

(フッ…)

 

「何言ってるか全然わかんないや!あははは!詩人かい?ごめんよ!ボクの為に言ってくれてること以外なんにもわかんないや!あっはははは!」

 

(ブフッ!)

 

想い以外何も伝わらなかった事に珈琲を吹き出すダンテス、伝播し吹き出す一同。それは怨嗟の哄笑ではなく、心から楽しげに笑う痛快なもの。

 

「そっかぁ。復讐者っていっても色々あるのかぁ!そっかぁ…そうなんだ!ありがとう、リッカ!」

 

「吹っ切れた…とはいかなくても。ちょっとは気持ち、楽になった?」

 

「うん!よーし、細かい事は気にせずいっぱい食べるぞ〜!うじうじ悩むのはやめだ〜!」 

 

「よーし!ここにいる全員!今日は私の奢りだ〜!」

 

【『「「「わ〜〜い!!」」」』】

 

(汎人類史…カルデア…。本当に、ここに来てくれたのが皆で良かったなぁ…)

 

「はーい!スペシャルケーキおまちどぉー!」

 

【………ウォン】

『ヒャン!』

『ワフ!』

 

復讐者達の貪欲の宴は続く。新たなる、復讐者の生誕を祝うパーティーはいつの間にか店を貸し切った大宴会となった。

 

 

『チチチ…!』

「うまくいったかい?そうか、ありがとう。ブランカ」

 

それを見て、人知れず胸を撫で下ろすオベロンであったとさ。




リッカ 所持QP 10000


リッカ「ドウシテ…ドウシテ…」
モルガン「我が妻…」

後日、静かに励まされるリッカであった。

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