英寿「キャメロット・オークニー…。人間と妖精達の理想郷か。リッカも、カルデアも、妖精も…皆が望んだ世界か」
(この世界がどうなっていくのか…興味が尽きないな。誰もが幸せになれるか、そうならないか…わからないのも面白い)
「…だけど、今の俺の関心はこっちだな」
うたうちゃん「こ、こんにちは。えっと…浮世、英寿さん」
英寿「やぁ。人間が産み出した『人の心を宿したAI』…仮面ライダー、ディーヴァ」
うたうちゃん「きょ、今日は、よろしくお願いします…」
ウォーミングアップ&ロス対策アフターエピソード〜神と機械と理想郷〜
黄昏でない空。白き雲。空を飛翔する竜達、下には調査や改築に沸く人の喧騒。それらを遠くに聞き及び、見つめながら、二人の人物が椅子と円卓を囲み、一席を設けていた。
「この世界の聖杯で拵えた、きつねうどんだ。俺も食べてみたが…絶品だぞ」
一人は、創世の神となった仮面ライダーギーツ…浮世英寿。聖杯を単純なうどん製造機として使い、眼前の女性に振る舞う。黒きタキシードに赤いマフラーを付けた格式ある格好の不敵な男性。
「あ、わざわざありがとうございます…あっ、麺のコシもスープも美味しい…」
対する水色の髪と瞳、身体に関節部分が見える白いワンピースの少女は夏草の産み出した電子の隣人、うたうちゃん。彼女はオーマジオウに見出された仮面ライダー、ディーヴァでもある。別人格のディーヴァはリッカのお世話AIになっているため、単独の招待だ。
「AIと聞いていたが、人間の食べ物もいけるんだな」
「あ、はい。バイオ燃料変換機器が人間の器官部分に搭載されているので、問題なく燃料として取り込めます」
「そうか。人間ってやつは、数百年の間にとんでもない進歩をするからな。…にしても、君は特別だろうけどな」
英寿の言葉に、うたうちゃんは頷く。自覚していない筈はない、自身は溢れんばかりの特別に恵まれ、産まれてきたのだから。
「私は、望まれて産まれてこれました。とても幸福なAIです」
「幸福…か。その定義と、君という特別に聞きたいことがあるんだ」
英寿も聖杯からうどんをよそり、啜りながらうたうちゃんへと問う。穏やかな風が、テラスを吹き抜け頬をくすぐる。
「君は人の心と、精神を完璧に備えた生命体だと俺は思う。そんな君が…『誰もが幸せになれる世界』に行ったとする」
「誰もが幸せに、なれる世界…」
「あぁ。幸せの総量も決まっていない、誰も蹴落とさなくていい世界。そんな世界に、人の心と気持ちを持った君が行ったとする。その時…君は一体何を願う?」
英寿の問いは自然ではあったが、誠実であった。うたうちゃんを機械ではなく、一人の命として問いかけている。
「そこは、私の様なAI…機械にも居場所や機会が与えられるような世界なのでしょうか」
「そうさ。誰もが幸せになれる世界だからな」
「………………………」
ふむ、とうたうちゃんは思い悩む。幸せになれる世界。幸せを求める命として当然の行為。それをするために、人は生きていく。人は、幸福を求める生物であるからだ。
「………そう、ですね。少し、考えてみたのですが…私が願う事は…ないと思います」
「願い事がない?…何故だ?」
英寿としては意外な答えだった。機械ではなく人ならば、浮かべる答えは必ずある。ならばうたうちゃんには、願いがあって然るべきだと信じていたからだ。
「あぁいえ、何も思い浮かべなかったのではなく、もう、願う必要が無かったといいますか」
「願う必要が無かった…。詳しく聞かせてくれるか?」
英寿の言葉に、照れくさそうに頬をかきながらうたうちゃんは答える。
「私は…生み出して貰えただけで幸せなんです。人間の皆様に一緒にいることを赦してもらえるだけで、これ以上ないくらい幸せなんです。だから…これ以上の幸せなんて、思い付かなくて」
「人と、一緒にいるだけで…」
「私やAI、アンドロイドは本来、人間の生活を豊かにするためのツール、道具です。それは人間社会における消耗品であり、日々の技術の進歩でスクラップとビルドを繰り返されていくもの。最新型が数年後には型落ちになり、数十年後にはジャンクパーツになる」
「なら、君が永遠の最新型になる願いも持てるんじゃないか?」
「いいえ。それは違います。私は…No.1のハイエンドになりたいわけじゃないんです。それは、人間の皆様の発明や発達の邪魔になりますから」
いつまでも最新モデルのままで。いつまでもハイエンドモデルの傑作品なままで。それは、自分の願いとは違うという。それは、一種の永遠だとしても。
「私は…忘れ去られていいんです。型落ちになっても、いつか動くことも出来なくなっても、いつか誰から忘れられても、きっとそれでもいいんです」
「どうしてだ?それは人間でいう、死や終わりじゃないか?」
「寂しいと感じられるからです。哀しいと感じられるからです。でも…私の後に生まれた誰かが、人間の皆様が願いと共に産み出した私の仲間を見て、嬉しいと感じられるからです。そう感じられる心を…もう、貰ったからです」
だからこそ、死や忘却など大した問題ではないんだとうたうちゃんは頷く。確かに死や終わりを恐れるのは当たり前の事だ。
「道具にすぎない私に、人間の皆様はかけがえのないものをたくさんくれました。心、絆、想い、人権、尊重…。私の中を満たしているのはオイルではありません。プラスチックでも、モーターでもない。私という存在…『電子の隣人』とまで呼んでくれた、うたうちゃんという無二の宝物です」
「自分という存在こそ…最高の願いという事か?」
「はい。私は求めるまでもなく幸せです。素晴らしい、人間という存在に生み出してもらえましたから。願うまでもなく私は幸せなので、これ以上私が幸せを求めることは…無いと思います」
あ、でも。そううたうちゃんは付け加える。だからこそ、彼女なりに叶えたい願いはあったのだと。
「もし、叶うならば…この命が無くなる瞬間まで、人間の皆様のお役に立たせていただきたいです。これからも進歩し、進化していく皆様…果てしない未来へと、向かっていく人間の皆様のお手伝いをさせていただけることができたなら。そう…」
「…」
「人間の皆様が歩み、未来を選び取る『自由』。あらゆる全てを生み出す土壌となる『平和』。それを命を懸けて護り抜く事。それが…強いて言うならば、私の…きっと、ディーヴァも含めた私達の『願い』になるのでしょうか」
生み出された喜びを。祝福された感謝を。それを以て、自身が何処までも人間に尽くし、奉仕していく。
人間に尽くし、奉仕する事。それこそが、彼女は願いだと断言したのだ。
うたうちゃんの言葉を、英寿は静かに聞いていた。それは、人間が懐くことがあまりに難しいものであり、希少なものであったが故に。
「…ギルガメッシュは言った。『兵器に人の心を付けるな』『人間ではその純粋さには報いられない』と」
「?」
「だが、人間は気付くべきなんだろう。成長するべきなんだろう。君や、物言わぬ隣人達の無償の奉仕をキチンと受け止められるように」
何度も納得したように頷く英寿を、うたうちゃんは不思議そうに首を傾げ見据える。お互いにリアクションは薄いが、感銘と困惑に胸を支配されている絵面である。
「良くわかったよ、うたうちゃん。仮面ライダーディーヴァ。…その願い、俺も叶えてみたくなった」
「あ、ありがとうございます。ですが今ももう十分叶えさせて貰っているといいますか…」
「いいや、まだだ。君のお陰で、神様として俺はどう在ればいいか、っていうのも見えてきた気がするよ」
英寿は手を伸ばし、聖杯をうたうちゃんに差し出す。それは創世の力で産み出した、英寿手製のものだ。
「やるよ、うたうちゃん。君が受け取るに相応しいものだ」
「えっ…?お、お話しかしていませんが…」
「いいのさ。神様を感心させた純真さ…それに贈るトロフィーだよ」
「あ…ありがとうございます…?」
先程までうどんを生成していた聖杯を、神妙な面持ちで受け取るうたうちゃん。本気で、彼女は大層な事をした覚えが無いのか。
「人類の自由と平和…いいね。神様が護るには立派なお題目だ」
キャメロット・オークニーの広がる世界。人間が手にした世界の一部を、英寿は静かに見下ろす。
「頑張れよ、人間の皆。電子の隣人に愛想を尽かされないようにな」
そう笑う英寿の後ろで、聖杯をどう使えば分からないうたうちゃんはしきりにコンコンと叩いたり耳を近づけていたのであった。
モルガン『浮世英寿。並びにうたうちゃん。どうやらその区画には凶暴なゴブリンが巣を作っているようです。妖精達の領域確保のため、排除を命じます』
ゴブリン【【【【【ゲゲゲゲゲ!】】】】】
英寿「ゴブリンか…話が通じないなら仕方ないな」
うたうちゃん「使命を果たします。行きましょう、英寿様」
英寿「あぁ。キャメロット・オークニーの皆も、幸せにしないとな」
ドルフィンプログライズキー『キュアー!』
ゼロワンドライバー『オーソライズ』
デザイアドライバー『セット・デュアル・オン』
「「変身!」」
『キュアー!リヴァイヴ!リジェネ・キューティクル!ヒーリング・ドルフィン!I want to hear even the cry like a song』
『ゲット・レディー・フォー。ブースト・アンド・マグナム。レディー…ファイト』
ディーヴァ『どうしたのよ、やる気満々じゃない?』
(願いを叶える為、だからね)
ギーツ『フッ。さぁここからが…この世界のハイライトだ!』
【【【【【ゲァーーーッ!!】】】】】
キャメロット・オークニーにおいて
仮面ライダーは『未知領域探索』と『危険人型生物の対処』を担当している。
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