トネリコ『トトロット?』
トトロット「あ、あぁ。トネリコ…いや、モルガン?どっちだっけ?」
トネリコ『どちらも、です。私はもう、聖剣に刻まれた記憶であるので。モルガンに身体を貸してもらっているのみの存在ですから』
トトロット「そっか。…本当に、ボクでいいのかい?」
『いいのか、とは?』
トトロット「君の衣装だよ。…滅びを宿したボクがやるの、縁起でもないような気がするんだわ」
トネリコ『あぁ、なんだ。そんなこと。あなた以外には頼めませんよ。…今度こそ、私は私の幸せを掴みます。あの時とは違う…信頼できる者達ばかりの、戴冠式なのですから』
トトロット「…うん。うん…うん…」
ウーサー「女王。時間だ」
ルイノス「参りましょう!」
トネリコ『ありがとう。…では、トトロット』
トトロット「うん。…精一杯、やらせてもらうよ。あの時出来なかった…」
──君の晴れ舞台の、お祝いを。
『お祝いだ!お祝いだー!』『鐘を鳴らせ、鐘を鳴らせ!』『救世主トネリコ!大いなる女王モルガンの戴冠式だー!』
始まりの六妖精が、蒼き空を飛び回る。白き雲が爽やかな風に流れていき、海から祝福の潮騒を届ける。妖精理想郷アヴァロン・オークニー。トネリコが渇望し、目指し、ついに実現した理想郷の聖都部分にて、遂に戴冠式が執り行われる。
「キャメロット特異点の聖都と同じなんだね!流石姉妹!」
「星王アルトリアの監修が存分に活きておりますね。…おや、CCAは?」
「ニミュエさんが引率してきた妖精方に鬼詰めされておりました!『テメェよぉ!アヴァロンのライフライン落として謝っただけで済むと思ってんのか!?』『誠意見せろよ!出すもんあんだろうが!』とお土産をねだられ…」
「あはは、いつもはそんなチンピラ風味じゃないんだけどね…新たなる世界の誕生に気が昂っているのさ」
「マーリン。……無事でしたか」
「イヤそうだね騎士王!?」
「まぁ、マーリンはなんというか無事だよねーって」
リッカらカルデアのメンバーは最高峰の貴賓席を用意され主役を待っている。偉大なる立役者として、建国の勇者達として。永遠の友好国として、トネリコに迎えられたのだ。
「では、また後に。私も控えてきます」
「楽しみにしてるね、騎士王ー!」
「むむむ。アルビオン・ペンドラゴン…僕は左手で、向こうは躯プラス赤竜…ハイブリッドってコト?」
「メリュジーヌも白、私も白、向こうは紅白、リッカちゃんは黒で、ボルシャックたちは赤。ふぁー。ドラゴンいっぱい」
「まさかルゥちん以外にもライバル増えるなんて…これが汎人類史名物、自分との戦いかぁ…」
『戴冠式ねぇ。ドラゴンも招くとは豪気だねぇ!あ、オレはあいつら代表のボルシャックな』
カルデアのドラゴン達も参加する、戴冠式の現場。神々も、人々も、竜種も幻想種達も、全てが席に就いている。
それこそがトネリコの目指した国の在り方。全ての存在が、手を取り合う国と世界。それこそが、かの地獄を乗り越えた全ての生命が迎える新世界たる理想郷の戴冠式。あらゆる全てを、トネリコは受け入れるのだ。
「あ!見て!妖精騎士達だよ!」
いよいよ、トネリコの仲間、親族、大恩ある者達が入場するトネリコの見出した宝物。トネリコが守り抜いた至宝達。そして彼女が心から感謝する者達の代表。
妖精騎士ベディヴィエール・ホープが会場を飛び回り皆を祝福する。正装に身を包む妖精騎士パーシヴァル・ビリィの肩に乗り、朗らかに愛想を振りまく妖精騎士トリスタン・バーヴァンシー。左手にエクターの鎚を持ち、雄々しく叫び鼓舞する勇者ライネックに手を引かれ照れながら歩く、風の妖精オーロラ。
「カービィー!!チルノー!!」
とびきり豪奢な服を着こなすチルノ(ヘル)。引き摺りながらもキリリとした顔の妖精騎士ウーサー・カービィ。トネリコの救世主一行は、トネリコ自身の親族として扱われる。
『『『『『□□□□□□!(おめでとう!おめでとう!トネリコ、おめでとう!)』』』』』
『『『『『□□□□□□!(ありがとう!ありがとう!ぼくらをたみにしてくれて、ありがとう!)』』』』』
彼等はかつてのウェールズの民。トネリコの心象風景にいた彼等は、なんとオークニーの妖精として新生した。転生とも言うべき転換で、記憶はそのままに。彼らもまた、かけがえのないトネリコの国の民なのだ。
この世界は異聞世界。誰もが知らない、未開拓の世界。理想郷であるが故、無限に踏みしめ探求できる世界が広がる。故にこそ、妖精達は増えていくだろう。人々も増えていくだろう。幻想郷や桃源郷のような、並行世界の理想的な世界の一つとして。
「救世主トネリコ!ううん、『春の女王モルガン』だ!」
『『『モルガン!モルガン!春の女王、救世主トネリコ!』』』
大歓声と共に、玉座に向けて現れしは救世主トネリコ…否。これからは異聞帯のモルガンと共にこの世界を統治するために名乗る『春の女王モルガン』の名を戴くモルガンが、トトロットに手を引かれ、ウーサー、そしてルイノスの先導により歩みを進める。
『『『『『□□□□□(トネリコ!トネリコ!かっこいい!かっこいい!よかったね、モルガン!女王モルガン!)』』』』』
「「「「ばんざーい!ばんざーい!モルガン陛下、ばんざーい!」」」」
「「「「救世主に栄光あれ!救世主トネリコに栄光あれ!!」」」」
カルデア職員も含めた総出の祝福に、露出が多く際どいモルガンの服を赤面しつつ着たトネリコが、玉座へと向けて歩む。祝福は、決して止む事なく数千年の奮闘と、これから君臨する春の女王に向けた歌が響き渡る。
「皆様、こちらをどうぞ!ギルガメッシュ王とエア姫より提供されし、天空神の美酒です!ノンアルコール、突き抜けるような爽やかさに病みつきになりますよー!」
「キャストリア…飲んだのもしかして!?先に!?」
「ななななな何のことかなリッちゃん!私はただ広告しただけだよー!?」
「素晴らしい酒だ。色気が足りんが」
「なんだとコラァ自殺おじさんがよー!!」
『勇士…』『勇士…』『勇士…』
「ファッ!?ファッ!?」
「待て待て娘たち。まだ攫ってはならん」
「まだ!?」
「チルノ様、我がマスター…。素敵です…」
オーディンもまた満足気に、酒を酌み交わす。その顔は、顰め面の普段よりもずっと穏やかだ。
『別に僕呼ばなくてもいいのに…何にもしてないのに…』
『何を仰る、ルシファー様。カルデア一同、皆我々に感謝を下さいましたよ』
『え、そう?…そっか!なら、有り難く受け取っちゃお!』
ルシファーとバアルも参加し、カルデアの未来の祝福を担う。彼等は人類の敵であり、カルデアの皆の味方なのだ。
『パパポポの祝福は尻から出る』
『わぁあぁあぁぁ!!!』
『絵面よ、パパポポ…』
妖精国に関わった者達全ての祝福。妖精国を助けた者達全ての祝福を得て、今トネリコは玉座に座る。
「それでは、祭神ケルヌンノス様と全ての神々に捧げる曲と剣舞を此処に!ウーサー!」
「あぁ!」
『ヌン!ヌーン!』
ルイノスが、神に捧ぐ歌を謳い上げる。ウーサーが妖精と神に捧ぐ剣舞を、妖精の聖剣を振るい奉納する。ドスン、ドスンと軽快に跳ねるケルヌンノスが、その儀式に華を添える。
「此度、皆を見守りしケルヌンノスが、妖精達の想いを束ねた聖剣の騎士に新たなる名前を授けんと仰有られました。この場を借りて、どうか祝福くださいませ!」
『ヌーン!!』
「その名、アルマ・メディオクリスペース!汎人類史、そして理想郷を繋ぐ剣士たる彼の新たなる拝命に大いなる拍手を!」
arma mediocrispes《アルマ・メディオクリスペース》。由来は全てラテン語で、名は「剣士」を意味する「arma」、姓は「妖精」を意味する「mediocris」と希望を意味する「spes」から取られたもの。意訳は「妖精の希望たる剣士」。汎人類史のはじまりのろくにんから「英雄」と讃えられた彼に与えられた、新たな名前。
万雷の喝采が響き渡る。汎人類史の、白き巨人を討ち果たせし大英雄。その勲章とも言うべき生誕に、二つの歴史が割れんばかりの祝福をもたらした。六つの鐘も、一際激しく打ち鳴らされる。
「ありがとう、皆。では──いよいよ以て、救世主にして女王の戴冠の瞬間だ」
ウーサー・アルマとルイノス、ケルヌンノスは道を譲り、その瞬間を齎す二人を迎える。
一人は、二つの聖剣を捧ぐ騎士王、アルトリア・ペンドラゴン。姉妹にして騎士王たる存在が、トネリコ…モルガンに二振りの聖剣を渡す。
「本当にお疲れ様でした、救世主トネリコ。汎人類史の代表として、貴女の奮闘に心からの敬意を」
『こちらこそ。誉れ高き騎士の王よ。あなたの輝きを、星の光を導きに私達は進みます』
「モルガン、貴女の力も必要になります。大仕事ですね」
『…ふん。私の国、という点がやや微妙ではあるが…まぁいいでしょう。トネリコの国は私の国、という理論で統治します。どうせ聖剣人格で身体も無いのですから』
『はい。どうぞ、よろしくお願いいたします!』
そして、いよいよその瞬間が訪れる。七色の宝石を誂えた純金の、ギルガメッシュ提供の冠を持てしは──
『ブライド…!!』
『ブリテンの竜、アルビオンとペンドラゴンとして。そして何より、大妖精ブライドとして。この冠をあなたに。──おめでとう、救世主トネリコ。どうか善き未来を、築かれますように』
大人の姿を取ったブライドは、まさに先代に瓜二つ。これ以上なく冠を懐かせるに相応しき者に、いよいよその瞬間を迎える。
一瞬──或いは、永劫の静寂の後。
「───祝え!!厳しき冬を越え、暖かき春を迎えし楽園の妖精!その名も春の女王モルガン!!まさに誕生の瞬間である!!最早言葉は不要──遍く全てを受け入れる理想郷誕生の瞬間を味わうがいい!!」
「「「「「「『『『『わぁあぁあぁあ!モルガン!モルガン!モルガン!モルガン────!!』』』』」」」」」」
大歓声と共に呼ばれる春の女王の名。祝福と共に叫ばれる、モルガンの名。
「……なんと、感慨深い」
モルガン。それは魔女の名。キャメロットの来訪を渇望しながら、拒絶され続けた災いの名。
それが今、民達に心からの祝福と共に叫ばれている。自らの國で。自らの民に。たくさんの笑顔と共に。
「………っ。…………っ…」
「ポヨ!ポヨ!ポヨイ!」
「あぁ、ありがとう。カービィ…私の騎士…」
涙する顔を、カービィが隠す。その愛くるしさに、再び笑顔を浮かべるモルガン。
『皆、ありがとう。私を信じてくれて、私に力を貸してくれてありがとう。この国は、私達皆の国です』
誰も哀しく嘆くものはない。妖精も、竜も、人間も。神すらも、歓喜と祝福に湧き立っている。
『この奇跡を忘れません。皆で手にしたこの国を、皆で手にしたこの希望を、私はずっと護ります』
罪業を越え、至った理想郷に。素晴らしき民達に誓う。
『私の、私達の国へようこそ。──全ての人々を、心から歓迎致します──!!』
歓喜の涙とともに、聖剣を掲げる春の女王、モルガン。
──此処に、建国は成った。
全ての赦免を終え──
見果てぬ空想は、国へと成ったのだ。
空想昇華
救世建国
オベロン「…かくして、苦悩と悲しみに満ちた物語は黄金のお節介焼き達のお陰で完全無欠のはっぴぃえんどになりましたとさ、か」
ブランカ『チチ、チチ!』
オベロン「…元ヴォーティガーンや、厄災になった奴まで招き入れるとかホント、根が甘いというかなんというか」
(誰もかれもが幸せに、ねぇ。果たしてそれは本当なのかどうか)
オベロン「───だが、まぁ…」
(君と飛ぶと約束した蒼い空は、想像よりずっと…綺麗だったぜ。ブライド)
ブランカ『チチ!チチ!』
「あぁ!じゃあいっそ、飛んでみるとしようか!」
『あの、ええと。ごめんなさい。カルデアは、こちらでよろしいのかしら?』
オベロン「────────え、嘘だろ…?」
『チチ!?』
『クラス・プリテンダー、ブライ…あぁいえ、ティターニア。なんだか人理さんに招かれたのだけれど、皆様に御挨拶をだなんてしていたら迷って…あら?』
オベロン「────────」
『──まぁ。お久しぶり、オベロン。トネリコ共々、元気にしていたかしら?』
オベロン「────────あぁ、くそ。認めるよ。…クソッタレ汎人類史め」
『チチ〜!!』
「僕の───負けだ」
ハッピーエンドは、誰にでも。
あなたの紡いだ物語は、誰もが知ることが無いのだとしても。
確かに──あなただけの、物語であるのです。
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