人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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パパポポ『すまない。私の不手際、不始末に突き合わせてしまって…』

バアル『気にすることはない。妖精共は怠惰であるが、この異聞帯が狂い果てた根源が偽神にあるのなら…糺してやる必要はあるというものだ』

ギルガメッシュ「然り。罪で身動ぎ一つ出来ぬ者共を救うのであれば、それらは悪夢のようなものであったとすればよい。汎人類史の、平行世界としてな」

オーディン『座標と場所は把握している。後はケルヌンノス神の役割を『英雄神』が果たせば良い』

バアル『ルシファー様も承知の上だ。『クソガキのわからせみたいなものでしょ?』…我らに害が無いならば、容認しよう』

──準備はできております、ギル!

ギルガメッシュ「よし──では、無念の内に沈んだ財も、纏めて拾い上げてやろうではないか!」


原罪浄化

一万二千年前。空より尖兵が現れた。

 

それらは世界の全てを吸い付くし、喰らいつくし、収穫し、星の全てを奪い取らんとした。

 

あらゆる神々が挑み、あらゆる人々が嘆き、あらゆる生命が戦慄を顕にした。

 

それらは世界の終末そのもの。隆盛を極めた神が一人、また一人と消え去っていき、神の時代はみるみる内に衰退していく。さながらそれは、恐竜の様に。適応が叶わぬ強者の様に。

 

その様において、かの巨人を討ち果たす世界の切り札が必要不可欠であった。

 

それは聖剣。白き巨人を討ち果たさんとするために星の内海が鋳造する、最強の神造兵装。最強の決戦兵器。

 

それらが無くては、白き巨人に全ての文明を収穫され星は無の海と化す。巨人を討ち果たすことが出来るか否かこそが、その世界の命運と発展を分かつ絶対の岐路。

 

逆に言えば、その前提を悪意を以て打ち砕けば、異聞帯が成立するだろう。妖精共の怠惰と蛮行により、罪業のブリテンが形成され、妖精達は未来永劫罰を受け続ける事になる。

 

完全無欠の結末を望むなら、『全ての妖精の赦免の意志』を汲み取ることも王の役目。異聞帯は異聞世界となり、トネリコやモルガン…ひいては楽園カルデアの同盟国となった。本来なら、これはここで終わりの出来事。

 

しかし、それは妖精共の原罪…その有り様を歪めた悪意を糺さねば終わらない。妖精の過ちが、汎人類史に起因するのであれば。確かにそれは精算しなくてはならぬ事象なのだ。

 

全能の父たるパパポポの義憤と怒りは、示された座標へのレイシフト、異聞帯の境目の転移すらも安々と可能にした。偽神が干渉するための事象を、本来の大いなる父に不可能である筈がない。

 

その異聞帯の始まりは、悪辣なる偽神の使徒が妖精達に怠惰と悪辣なる愉悦を教え、全てを見殺しにした事に起因する。明確なる世界の見殺しと、悪辣な滅亡への教唆。

 

『『『『『『聖剣を作らなくてもいいの!?』』』』』』

 

『────』

 

『わーい!じゃあ今から遊んじゃおう!』

 

かつての偽神の使徒は、進んで始まりの六人の使命を放棄させるように動いていた。楽園に訪れし神の代行者。彼等の監督役を騙る存在として。

 

その甘言により、妖精達はセファールへの対策を完全に放棄した。己の欲望を優先し、更に外の世界の有り様を見せつけそれを娯楽にすることで、悪妖精への変質を成そうと目論んでいた。

 

『そういえば、外の世界はどうなってるのかな?』

『なんだか楽しいこと、見つけられるかな』

 

ミラ、レインの言葉を皮切りに、使徒が滅亡と罪業の歴史を始めようと悪辣な愉悦を教えんとした…

 

───その時。

 

『GAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!!』

 

『『『『『『ひぃいぃい!?』』』』』』

 

楽園に、天地を引き裂く大咆哮が響き渡った。それは魂を粉々に粉砕する憤怒と憤懣を有した神の激憤そのものであり、たるみきった始まりの六人の精神を粉々に粉砕した。

 

そして、破壊せしは妖精達の腑抜けた心胆ばかりではない。

 

『!!!!!!』

 

突如として現れた英雄神、マルドゥークの怒りの込められた拳は、始まりの六人を扇動していた偽神の使徒を完膚なきまでに叩き潰した。ぐちゃり、と地面に紅い血痕が残り、怒りに満ちたその断罪は情け容赦無く歴史の歪曲化の原因を撲殺してみせた。

 

『GAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAーーーーーッッッ!!!!』

 

そして、黄金の英雄神はその怠惰と悪辣を怒り裁く咆哮と共にその姿を顕す。ケルヌンノスのような慈悲ある善神ではなく、苛烈で、雄々しく、そして無慈悲である英雄神の威光を以て、妖精達をひたすらに諌め、その絶叫で糺した。

 

『『『『『『あ、あぁ…あぁ……』』』』』』

 

最新鋭の未解明金属で構成されたその神体は、妖精達にとってはただただ恐ろしく、悍ましいものとして映った。天地森羅万象を激震させる神そのものの在りようを示す眼の前の存在がどのようなものかを、ウィンダ達は魂にて理解した。

 

『このおおきくてこわい神様は、ぼくらをはたらかせにきたんだ』

『ころされる。ころされる。さぼっていたら、ころされる。ぐちゃぐちゃにされて、ころされる』

『しごとをしなきゃ、ころされる。らくしていたら、ころされる』

 

『『『『『『う、うわぁあぁあぁぁ!ごめんなさい──!!!』』』』』』

 

猛り狂う黄金の獅子が如きマルドゥークの威光の前に、偽神に吹き込まれた甘言や堕落の教えなど即座に消し飛んだ始まりの六人は、我先にへと選定の場における鍛冶場へと飛び込んだ。

 

働くか、死ぬか。それ程までにマルドゥークの怒りは恐ろしかった。それはマルドゥークが、ここで彼等が使命を全うしなければどれほど残酷な世界が生まれるか、どれほど妖精達が苦しむかを知ればこその怒りであった。

 

本来ならば、『遊星そのものを破壊する』事が使命にして目的の一つたるマルドゥークにかかれば、セファールごとき容易く撃退できる。それでは神の時代が終わらぬ故にマルドゥークは勇退したのだし、マルドゥーク神を失ったが故にメソポタミアの神々は命乞いを行ったのだ。

 

この異聞帯を帯とするならば、異聞世界のキャメロット・オークニーは新たなる帯になり切り離されたものである。ならばこれは、『落書きされた帯』という事実を糺すために必要な儀式だ。イザナギとイザナミの仲を、取り持ったように。

 

──やがて、妖精達の肉体により聖剣は無事に鋳造される。マルドゥークに心底震え上がった妖精達六人は、なんら躊躇うことなくその使命を実行した。

 

その光り輝く聖剣は、正しき歴史の通りに聖剣の担い手に託され、白き巨人を討ち果たす。それにより、異聞帯の前提そのものが崩れた。

 

ホープ・カリバーンとエクスカリバー・トネリコの存在により、罪業のブリテン世界そのものが剪定され、今回のレイシフトにより一万二千年の異聞帯の歴史そのものが選定された。

 

偽神により歪められた悪辣な妖精の地獄はそもそもの前提から『存在しなかった』事となり、何もかもが変わり果てた袋小路から、サボり気味の妖精が神に叱られ仕事を果たしたという、大きく汎人類史に逸脱せぬ『並行世界』として組み込まれる事となる。

 

これにより、アバドンが生まれる事もなく、罪業に苦しむ妖精達は皆『原罪など存在しない』という事象を有することになる。悪辣なるビーストに背負わされた罪はこれにより存在することが無くなった。

 

カース・ロンギヌスの前提となっていた星の呪いも生まれず、罪業の妖精獄も存在せぬ事となった事で、妖精達は原罪を抜き取られた形となるのだ。

 

これからの歴史は、汎人類史と似て非なる…しかし致命的な袋小路に至らぬ世界の歴史を歩んで行くだろう。偽神の介入により歪められたものを正し、偽神の介入よりも良いものとする。それが、王と大いなる父の『世界と、罪に沈んでいった全ての妖精達の救済』の全貌であった。

 

やがて、聖剣の一撃が炸裂。汎人類史のようにセファールは討ち果たされ、妖精達はいずれ人との関わりを絶った隔絶の種族としての道を歩むのだろう。異聞世界へと移行した善き妖精達には、もう関係のない話であるが。

 

「これもまた、世界を手にした王の権利にして義務というヤツよ。三流の脚本家が書いた筋書きなど、徹底して直してやらねば始まるまい」

 

『あぁ。これで…善なる妖精たちが不当に罪に沈むことも無くなるのだね』

 

『妖精共を、神の怒りにて更生させるとは…豪快な対処、恐れ入った』

 

「一々説法などしてやるものか。これで我が財にこびりついた汚濁は根本より消え去った。気兼ねなく世界の探索ができるというものよ!では帰るぞ、荒れ果てた世界の黎明になぞもう興味は無いわ!」

 

──大変お疲れ様でした、マルドゥーク神!

 

『ლ⁠(⁠・⁠﹏⁠・⁠ლ⁠)』

 

偽神の世界を滅ぼし、そこに生きる妖精達の原罪の全てを消し去った。

 

それは妖精國という世界を手にした王の、最初で最後の後始末に他ならなかったのである。

 

 

──この瞬間を以て。妖精獄ヴォーティガーンは完全に宇宙より滅び去り、消え去るのであった。




パパポポ『マルドゥーク神、右手の血痕や肉片を私に』


マルドゥーク『(⁠?⁠・⁠・⁠)⁠』

パパポポ『あの使徒の情報を下に、掴むのだ。偽神めの在処を。その場所を…』

オーディン『アバドンの羽根も有している。住処の一つも割れればよいが』

ギル「フ、そちらは任せよう。しかし行事には参加しろよ?」

パパポポ『行事?』

──はい!キャメロット・オークニーによる…救世主トネリコ祭&戴冠式です!

妖精達の原罪を浄化したとて、王らの愉悦は終わらない。

全ての罪の終わりと同じ様に。全ての祝福は今始まるのだ──

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