人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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騎士王「──事、此処に至って言葉はない」


アバドン・セファール【■■■■……!………!!】


騎士王「決着の刻だ。奈落の王を騙る巨人」




───騎士王…!

ギル「やはり、ブリテンを救うは貴様でなくてはな。──さぁ騎士王。お前の王としての真価を見せるがいい。人間どもの理性と秩序の王たる者の真価、改めて我が…いや。我等が見定めてやる!」

──どうか、ブリテンに…この異聞帯に輝ける未来を!アルトリア!


確約されし勝利と巡礼の成就

「──────」

 

アトランティス・ボーダー。眼前に巨人、無の空、無の海の広がる終末のブリテンの風景。最早それは聖剣を生み出した剪定事象と相まって、不可逆の世界の崩壊を示していた。

 

背後には、無の海を魔物達がその死骸にて埋め立てた罪業のブリテンが在る。原罪の証、理想郷より追放されし悪魔どもの末裔が積み重なった、永遠の咎の地。

 

しかしそれは今や、救世主の手により新しき理想郷の揺籃と化そうとしている。彼の地こそ、汎人類史と同じ強度と実績をもたらす事が叶うであろう礎。汎人類史に至る…否。救世主たる彼女自身が、汎人類史に至りたいが為に用意した術式ではない。

 

それは、彼女が愛した者達が世界に切り捨てられることこそを防ぐため。それは、彼女の見出した妖精達…かけがえのない善なる妖精達の未来を紡ぐため。自らの国と定めた、かけがえのない仲間達の存在を未来に繋ぐための願い。

 

無数の苦難を迎え、無数の嘘と裏切りに晒され、無数の血に染まった彼女の願いは、それでも尊く美しいものだった。

 

「────」

 

楽園の妖精たるトネリコの願いは果たされ、その身体と魂は聖剣となった。かつて、妖精達が手掛けなかった永劫の罪。存在し得なかった、果たして存在しなければならなかった大いなる星の奇跡。

 

それを今、握りしは誉れ高き騎士王。アルトリア・ペンドラゴンを基に、界聖杯により『善と秩序を統括せし騎士達の王』としての姿を持ち君臨せし、王の中の王の一角。

 

彼女の手に、救世主の聖剣は握られていた。此こそは、かつての終末に振るわれるべきだった聖剣。白き巨人、遊星の尖兵を討ち果たし、世界を在るべき姿に戻す剣。星の未来を担う剣。悪意に染まった妖精達が、創ることの無かった罪業の証明。それが今、騎士王…アルトリア・ペンドラゴンの手に確かに握られている。

 

アーサー王とは、ブリテンに安寧と繁栄を齎せし聖剣の王。滅びゆくブリテンに、最後の栄華を賜わした常勝の王。

 

彼女は己が全てを祖国に費やした。全てを以て、ブリテンの全てを救った。歴史に自らと、その騎士達全てを刻み込む程の功績を齎した。

 

故にこそ、例えそこが何もかもが違うブリテンでも。変わり果てた死骸の積み重なるブリテンであろうとも。そこは確かに、騎士王が護らんとしたブリテンであるのならば。

 

彼女は救うだろう。常勝の王の名の下に。全ての災禍厄災を、打ち払う事によって。

 

 

「──────」

 

厳かに、騎士王は眼前に聖剣を立て構え目を閉じる。その所作のみで、目の当たりにした全ての騎士は膝を付き、足を折るであろう程の優雅さ、気品。そして、覇気。

 

「リッカ。最後の令呪を、どうか私に。この場にて、全ての遺恨を打ち払います」

「勿論!アルトリア、どうかこのブリテンに…ううん。トネリコと皆に未来を!」

 

リッカが最後の最期まで温存していた、特別性の令呪。宝具解放と未来への祈りにより、アルトリアの身体に魔力が溢れんばかりに満ち溢れる。

 

「確かに、承りました。──全てに、勝利を」

 

瞬間、手にした聖剣『赦免齎す救世の剣』に光が結集する。それは世界、否。星の内海に内包された、輝きの形を取る全ての妖精達の『願い』。

 

救いようのない罪人であろうと、罪から赦されたいと、解放されたいと願う心だけは有していた。罪を刻まれながらそれに呑まれぬ者も確かに存在していた。そのような妖精は、罪と共に妖精國の死骸となった。

 

ならばこれは、この黄金の光とは。

 

『…集まっていく。過去、現在、未来。罪にて生きる事が許されなかった妖精達が、今際の際に懐いていた魂の懺悔』

 

その願いは、妖精の残虐さや幼稚さに歪められない清く、清廉で、しかして悪性に沈んでしまった全ての妖精達の赦免への願い。

 

──許されよ。許されよ。我等が罪を許されよ。───

 

その願いは、偽神とその使徒に踏みにじられた。妖精達はあまりにも重き原罪を背負い、罪業のブリテンにて永劫罰せられていた。

 

だが、その儚くも尊き夢は消え去ることはない。死して尊き祈りとして積層された全ての妖精達の声なき願い、懇願なき願いが聖剣に、輝きとして凝縮されていく。

 

「──赦免の希望、免罪への願いは断じて悪ではない。悪辣に沈もうと、けして変わらぬ輝きが此処にある」

 

聖剣が集める輝きは、白くまた黄金のもの。それは、ブリテンに沈んでいた原初の祈りが正しきことを示している。

 

それこそが、異聞帯ブリテンの聖剣に費やされるべき本来の祈りにして尊き輝きが、加速度的に聖剣に束ねられていく。

 

 

妖精達の願いを掲げ、その懺悔を貫けと糺し。常勝の王は高らかに、手に取る奇跡を以て星が生み出せし怪物を討ち払う。

 

【■■■■■■■■───!!!】

 

最後の抵抗とばかりに、眷属を差し向けるアバドン。しかし、それは最早遅きに失している。

 

「───はぁあぁっ…………!!!」

 

気合と共に、騎士王はその聖剣を下段、まるで居合が如くに構える。迫りくる身体の分身すらも意に介さず、魔力を爆発的に高め星の蝗を狙う。

 

そう、その聖剣の名前こそが、この地にて手に入れた救世の剣の証。今こそ王は高らかに、その真名と共に聖剣の真価を発揮する!

 

その聖剣から溢れ出る魔力を前方に撃ち放つ、騎士王にのみ許されし剣こそが──!

 

「『赦免齎す救世の剣(エクスカリバー・トネリコ)』──────!!!」

 

放たれし、白き魔力の大奔流。下から振り上げるように放たれし聖剣の一撃は空を真っ二つに叩き割り、海をその膨大極まる魔力の刃で引き裂きながら、巨人へと変貌したアバドン・セファールを輝ける一刀にて切り捨てんが為に猛進する。

 

勝った──その輝きを見て誰もがそう確信した。現に、巨人の肉体は白き奔流に呑み込まれ跡形もなく消え去っていく。その聖剣は、名前に恥じぬ救世の剣を名乗るに相応しきものだ。

 

【オ、オ────■■■■■■■───!!!】

 

自らの完全消滅を悟った星の蝗は、なんと頭部のみを切り離し逃走を図る。それは虫ならではの帰巣本能であろうか。

 

否──それは、聖剣を有する騎士王を道連れに喰らうための分離。アトランティス・ボーダー毎呑み込まんとする厄災最後の抵抗。

 

「言った筈だ。決着の時だと」

 

騎士王の手にした聖剣が──変わる。剣の部分、鞘の部分を変形させ、物理的な刃から、膨大極まる星の燐光そのものを刀身として展開する、救世の剣の真の姿。

 

「受けるがいい──!!」

 

最下段から、振り上げるように振るった先程ではなく。此度は最上段。魔力放出はアトランティス・ボーダーを激震させ、空を揺るがし、世界に蔓延る邪悪を滅ぼす対界の星の剣へと進化する。

 

真なる救世の剣を此処に。全ての苦痛と悲しみの終わりを此処に。汎人類史の騎士王と、楽園の妖精にして救世主たるトネリコの──

 

否。与えられた名では無き楽園の妖精の真たる名を冠した真なる星の聖剣の姿を顕とする!

 

「『確約された(コールブランド)』───!!!」

 

黄金の旅団の奮闘、救世主達の巡礼、善き妖精達の赦免と免罪の証こそはこの一刀!

 

其は───!!

 

「『勝利の剣(ヴィヴィアン)』────!!!!!!」

 

放たれし、先の聖剣の一撃すら飲み込むであろう規模の星を薙ぐ聖剣の一撃。全ての罪と悲しみ、苦痛と嘆き、絶望と断絶を討ち払う絶対勝利にして唯一無二たる黄金の一閃。希望と勝利が形となった、至高にして崇高なる赦免の一撃。

 

 

【オオ、オオ───ウォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ────────!!!!!】

 

その光の奔流は世界のみに留まらず、外側に到達する程の勢いたる暴力的な大瀑布により、邪悪な呪いごと跡形もなく消え去っていく。

 

断末魔、最早逃れ得ぬ自らの終末に絶叫を爪弾く、星の蝗。ビーストΩによりこのブリテンに巣食った災厄の根源。

 

それが今。確かに打ち払われた。

 

救世主が願いし全ての善と、全ての願いと、全ての希望を宿した聖剣により。

 

そして──

 

「さらばだ、星の怪物。ブリテンには聖剣が在り、人理には我等が在ると知るがいい」

 

聖剣を担いし、秩序を示す騎士王によって。




そして、聖剣から光が溢れ、そしてケルヌンノスに蓄えられた魔力がブリテンを覆っていく。

その輝きは、砕けた世界を繋ぎ止めていく。

ギルガメッシュ「───見事だ、騎士王。地上の星よ」

──はい!アルトリアという少女こそブリテンにおける王、最高の騎士たちの王です!

フォウ(円卓みんな、頭焼かれたんだろうなぁ…)

王と姫、そして獣。全てがその輝きを言葉なく称賛しており。


トネリコ『…………あぁ───』

その光を、救世主は万感の想いで見つめていた…。

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