人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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騎士王「キャスター・アルトリア」

キャストリア「は、はい!」


騎士王「ご武運を」

キャストリア「──はい!」

リッカ「無理はダメだよ、キャストリア」

キャストリア「リッカさん…?」

リッカ「あなたはもう、カルデアの一員なんだから!」

キャストリア「──っ。はい!!」


希望の願いは赦免と共に

「カルデアの皆はね、『完全無欠のハッピーエンド』を目指す組織なのさ。王様と姫様が、率先してそんな物語を紡いでる。君もきっと、色んな素晴らしい体験が出来るはずさ♪」

 

マーリン…まぁサーヴァントユニヴァースのたちの悪い夢魔の方。まぁ言うてマーリンはどこにいようとたちの悪い夢魔なんだけど。そんな風に、彼女はカルデアを評価していて。

 

「へぇ〜。ポジティブな組織なんですね!」

 

なんて、曖昧で適当な返事を返して。でも、心の中ではこんな事を考えていました。

 

『いや、大の大人が寄り集まってそんなモットー掲げる組織ってなに…?胡散臭くて痛々しくて、関わり合いになりたくないかなぁ』

 

なんて、スレにスレきった感想を一人、胸の内に。

 

だって、当時の私はそんなものを信じていられるほど夢見る乙女ではいられなかったんですよ。

 

子供の頃、夢中になって開いた夢のような物語は。どこまで言っても夢だって事を気付くようになる。

 

現実には、当たり前のように挫折があって。裏切りがあって。悲しみがあって、断絶があって。

 

子供は少しずつ、『そんなものはうそっぱちだ』なんて、現実を理解して大人になっていく。

 

誰もが幸福に。誰もが欠けることなくめでたしめでたしな痛快の物語!

 

──そんなもの、大人になってまで追い続ける夢じゃない。ううん、幼稚な夢ですらない、ただの理想。ただの夢想。

 

そんなのを本気で言うのは、詐欺師か怪しいカルト教団くらいだって。私は、ずっとずっと心のなかで冷めた視線と所感を送り続けていました。

 

 

「か、はっ───はあ、ぁぁあぁぁっ───!!」

 

「キャストリア、さん──!!」

 

「頑張れ、マシュ…!私も、ギリギリまで、やってみせるから──!」

 

 

(あれ…ちょっと、おかしいぞ?)

 

そんな風に考えが翳ったのは、カルデアに参加してからの一週間にも満たなかったかな?

 

美味しいご飯が、いつでも出てきて。

 

自分だけの時間が、いくらでもあって。

 

その時に自分がやりたいことが、やってみたいことが、いくらでも出来て、やれて。やりたくなって。

 

笑っちゃうくらいに単純に、『満ち足りた幸せ』に、自分の皮肉や斜に構えていようとしていた心が、雪解けみたいに溶けていって。我ながら、現金過ぎて笑っちゃう。

 

お腹がいっぱいになって、眠れる幸せ。

 

普通の女の子みたいに、着飾れる喜び。

 

何より──心に吹く、春風のような暖かさが、本当に心地良くて。

 

(私…なんで、あんなに意固地になっていたんだっけ?)

 

美味しいご飯を頬張って、暖かい布団で眠る度に。そんな前の自分の心の棘に呆れ果てて。

 

(でも…そりゃあそうだよね。そんなの、当たり前じゃん)

 

そりゃあ、満たされた場所なら笑えるよねって。満ち足りた場所なら、どんな理想だって叶えられるよねって。

 

自分の器の小ささを認められなくて。『この人達は、恵まれているから誰かの幸せを願えるんだ』って、そんな心の春風を否定していたあの頃。

 

皮肉なものです。普通でありたい。幸せでありたいと考えるくせに、いざそんな世界に来たらそれを疑い、受け入れられない。

 

カルデアの善き人々達を信じられず、ただ『お客様』でしか無かった自分。あなた達の仲間だなんてとんでもない、ただの部外者だったカルデアでの日々。

 

…どれだけ皆の頑張りを見ていても、それが本当なんだと信じれなかった、馬鹿な私。

 

受け入れてもらえてたのに、受け入れられなかった。そんな、私の馬鹿な日々。

 

 

【■■■■■■■■!!!!!】

 

「あうっ──ぐぅうっ───!!」

 

「アルトリア・キャスター…!」

 

「まだまだぁ!三本ぐらい折れたからってなんだぁ!!」

 

 

「凄い、なぁ………」

 

カルデアの皆の記録を読んで、記憶を目の当たりにして。感嘆と、畏怖と、色んな感情がごちゃまぜになったのを覚えてる。

 

生きていれば膝を屈する困難。生きていれば目を逸らしたくなる悪性。生きていれば、溜め息と共に捨ててしまう理想。

 

それが普通で、当たり前で、賢くなって生きていくって事。誰もが行う。現実との折り合い、現実への敗北。

 

「皆…本気で。完全無欠の結末を追い求めてる。酒場の席でも笑われるような夢を、本気で追い求めてるんだ…」

 

誰もが願う幸福な結末。誰もが羨む理想の物語。ページを捲るたび心が踊るような大冒険、笑いが止まらない大活劇。

 

『それが出来れば苦労はしない!』なんて夢物語、そんな愉快なストーリーを、カルデアは全身全霊で追い求めてる。しかもそれを、形にしてる!

 

「凄い、凄いなぁ。──王道ストーリーって、こんな感じなんだ…!」

 

世界中の王様が集まって、世界中の英雄が力を合わせて。今を生きる人間が手と手を取り合って、一つの目標に命を懸ける!

 

そして掴んだ完全勝利に始まる宴!なにこれ、こんなの絶対楽しいじゃん!

 

「世界まで救ってるじゃん!こんなことってあるんだ、こんな物語があったんだ!」

 

心躍る脚本があって、魅力的なキャラクターがあって。懸命に応援する読者がいて、途切れない物語があって!

 

こんな物語、見たことない!もっともっと続きが読みたい!

 

ううん──私も、皆の仲間に入りたい!

 

「私も…このカルデアの皆と一緒なら…!」

 

きっと、春の記憶だって沢山増える!素敵な皆と、これからも──!

 

【これからも、何?】

 

────あぁ。

 

【ずっと疑ってきたくせに。ずっと、心の中で莫迦にしてきたくせに】

 

───そう、でした。

 

【出来るわけ無いだろって。馬鹿みたいな夢から醒めろって。一生懸命頑張る人達を、ずっとずっと蔑んでいたくせに。今更何をするっていうの?】

 

───私は、皆の仲間である資格なんか無いのです。

 

【妖精達が、予言の子にしてきた仕打ち。それを今、カルデアの皆にしてきたあなたが今更何?】

 

──だって、ずっと呆れてました。ずっとバカにしてました。

 

夢見がちな大人たち。大人になれない大人たち。いつまでも夢を見ている、しょうがない人達。

 

【カルデアの『仲間』になるのを誰よりも嫌がっていたあなたが…何をしようっていうの?】

 

そんな風に心で考えていた私が。

 

そんな風に、星の輝きを穢した私が。

 

今更、星になって輝きたいだなんて。例えそれが、春の記憶の夢想でも。

 

【あなたは仲間になんてなれないよ。あなた自身がそう思って譲らなかったんだから】

 

──そんな、不誠実な真似は。絶対に、許されないのですから。

 

【あなたはずっと、巡礼者。あなたはずっと、一人きり。だってそれが、あなたの望んだ旅の形。あわれなあわれな、悲しい子。愚かで悲しい、予言の子──】

 

だから……私は。カルデアにいるだけの。部外者です。

 

カルデアの皆に、ただくっついているだけの…

 

 

「まだ、だ…まだ、まだぁ…!!」

 

『もうロンゴミニアドが三本しかない…!ダメージは与えているんだ、なのに即座に対処してくる!』

 

『これ以上は無理よキャストリア!相手も減衰している、退きなさい!』

 

「いいえ……!もう少し、とことんまでやらせてください、お願いします…!!」

 

『な、なんのつもりかね!?もう我々に任せればいいだろう!?』

 

「限界まで、納得行くまでやらせてください…!私は、アルトリア・キャスター…!始まりはヘンテコだったけど、私だってカルデアの一員です!」

 

「キャストリア…!」

 

「今は、楽園カルデアの…!アルトリア・キャスターなんです…!!」

 

 

──嫌だ。

 

嫌だ。嫌だ。

 

諦めたくない。もう投げ出したくない。

 

もう、一人で肩を丸めて歩くような真似はしたくない。

 

だって、星が増えていくんです。見上げた青い星の周りに、どんどん星が増えていくんです。

 

あの輝きが、ごうごううるさい嵐を吹き晴らしてくれるんです。

 

少しずつ、少しずつ。道を示してくれるのです。

 

あぁ、教えてくれているんです。

 

人の心は、悪意の嵐だけなんかじゃない。尊び、重んじ、輝きを重ねて夜の闇を切り裂けるって。

 

その輝きは、きっと誰かの道しるべになるんだって。

 

──ああなりたい。きっと私も、ああなりたい。

 

定められた使命じゃなくて。

 

望まれた事じゃなくて。

 

自分がやりたいと欲し、望むこと。それが、あの星々の光。

 

 

「聖槍で駄目なら、これを受けてみろ…!白き巨人を真似した時点で、お前の負けだ……!!」

 

ああなりたい。私もあんな、星になりたい。

 

「龍脈閉塞型武装ロンゴミニアド三基を、龍脈焼却型武装エクスカリバーに変奏!!」

 

私も、物語を手に取った誰かを笑顔に出来るようにしたい。

 

このカルデアの皆を、バカにし続けてきた罪を償いたい。

 

「何がビーストΩだ!!こそこそして、誰かの足ばかり引っ張って!そんな卑怯なお前なんかに──!」

 

だから、精一杯やらせてください。私の罪を知って、愚かだと嗤ってください。

 

侮蔑でもいい。軽蔑でもいい。それが償いに、なるのなら。

 

善き人々(カルデアのみんな)が、負けるもんか──!!」

 

善き人々を嘲った私の全てを費やして。せめて取るに足らない1ページになれるなら。

 

 

「祭神よ!!星が如くに輝く人々よ!!」

 

私は喜んで、この命を使うのです──!

 

 

「私の罪を、許し給え─────!!!!」

 

 

……果たして、ロンゴミニアドからエクスカリバーとなった兵装の三撃は。巨人の身体を打ち貫いた。

 

【■■■■■■……………!!】

 

聖剣が生み出されし歴史にて、転換を可能としたその必殺の攻撃は、確かに巨人を貫いた。

 

「は、ははは…やった。どうだ。ざまー、見ろ…」

 

ずっと秘していた。脚光にすら当たることを忌避した。かつての自身の、もしもの奮闘。

 

その奮闘は確かに、マシュの拮抗を崩した。

 

弾き飛ばされ、よろめくアバドン。

 

──そして。

 

「──お見事でした。アルトリア・キャスター」

 

半身すらも焼き尽くした渾身のキャストリアに、アヴァロンを埋め込み。

 

「皆が紡いだこの道に、確かな勝利を」

 

 

──誉れ高き、騎士王と。救世の聖剣が立ち上がった。

 




騎士王「遍く希望を、この一刀に」


「──聖剣、完全開放」


騎士と秩序の王の手で、厳かに──

全ての闇を祓いし聖剣が、目覚める。

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