人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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オーディン「現れたか。白き使徒が告げていた、汎人類史を滅ぼすための厄災…奈落の王アバドン。あれこそが噂に聞くビーストΩの神威の具現。カース・ロンギヌスと共に人理を穿つ禍そのもの…」

ニミュエ「何でも知り得るあなたにしては随分と後手に回ったものね。実際のところ、アレに対処できる手はあるのかしら」

オーディン「奈落の虫へまでは手が回らん。しかし、星の蝗を留める手段は…僅かながらも有している」

ニミュエ「あら、本当に?」

オーディン「全知とはそういうもの。不測の事態を処理するのも、主神たるものの役目であるのだ──」



モルガン「すみません、これは無理です」

CCA「姉さん!?」
キャストリア「女王敗北宣言早すぎない!?」

モルガン「度し難き醜悪さに相性の悪さです。すみません、少しだけこの場を任せます…少ししたら覚悟を決めます。頼みましたよ騎士王(ガクッ)」

CCA「姉さーーん!?」

バーヴァンシー「あ、そっか。そっちのお母様は虫嫌いだっけ…」

ロマニ『気持ちは解るけど今はこっちだ!アバドンも奈落の虫も進撃を開始している!本体はなんとかできても、その特性はあまりにも厄介だ!』

オルガマリー『神の呪いを食らった虫。全てを吸い込む穴。それぞれ、大火力で滅ぼすか中核を穿つのが有効と結論は出ている。でも、眷属たる虫達にブリテンを吸い込む奈落の誘いをなんとかしなくてはならないわ』

リッカ「ギミックを先になんとかしなくちゃ、って事か…!」

騎士王「──では、大火力はこちらが用意しましょう。星の蝗、アバドンのギミックをなんとか停止させてください。その後は私と、キャスター・アルトリアが討伐します」

ライネック「なんと!?」

キャストリア「…はい。聖剣も、聖槍も。ここにはあります。あのアバドンの方は、任せてください!」

?『──では、後は私の術式を護るために必要な防衛ですね。心得ました』

CCA「!?」

モルガン?『覚悟完了。聖剣人格起動。モルガンの霊基を一時使用。救世主として、今こそ本懐を果たしましょう』

ホープ「───あ、なたは…」
ビリィ『ま、まさか…!』

モルガン?『…皆様に積もる話は、また後に。始めましょう。私達の旅を締めくくる、黄金の旅団と力を合わせた最終決戦を。ケルヌンノス神を救う戦いを──!』


善なる因果、連なりし応報

溢れ出す虫。全てを呑みこむ虫。ブリテンの空を覆い尽くす、圧倒的な質量の呪いの蝗害。それは全てを破壊し、貪り尽くす終末の化身にほかならなかった。顕現した時点にて、ブリテンも汎人類史も討ち滅ぼされし絶対的終末。ソレ以外にほかならぬ悪夢。

 

──しかしそれは、裏を返せば『覆せる苦難』でもある。積み重なった悪意でも、罪業でも、救いようのない生命でもない。同じ土俵における、生存競争にして世界の興亡。極めてシンプルな、未来をかけた偉大なる戦い。

 

なればこそ、その戦いは単純明快、そして英雄的かつ世界の命運を委ねる最終決戦なのだ。故にそれは──。

 

『救世主の真名に応じ、応えよ我が心に映りし善き民達よ。素晴らしき善を宿せし奇跡よ、滅びに抗い赦免を懐かん!』

 

聖剣を握り、起動したモルガンの別人格──否、聖剣たる『救世主』は告げる。星の蝗を阻み、心に懐いた優しき國の民達を呼び出すその警句。

 

『来たれ!『善なる森の益虫達(イノセント・インセクト・ウェールズ)』!──祭神よ、彼等の罪を赦し給え!』

 

聖剣を突き立て、広がりしはウェールズの森。善なる妖精たち最期の理想郷は、救世主、胸に懐いた、かつてのかけがえのない彼女の民…即ち、一騎当千、万夫不当たる森の住人、即ち善なる虫達を無数の蝗に向けて撃ち放つ──!

 

「ウェールズの、ウェールズの皆さんが…!」

「聖剣が生み出した森から、次々と!ではやはり今のモルガン様はモルガン様でなく…!」

 

アトランティス・ボーダーを護るように展開される善なる虫達。食い荒らされぬ様がっちりと護るはカブト、クワガタ、ハチ、チョウチョといった絢爛なる昆虫たち。最早飛行機や旅客機ほどある駆体は、聖剣の導きにて。

 

『皆、よくぞトトロットを取り戻した。赦免の終わりは、ケルヌンノス神を取り戻し虫を二匹撃滅すれば迎えられるだろう。私も主神として、最後までそれを全力で応援しよう』

 

「オーディン様!」

「お父様、何を…」

 

『溢れ出る虫は私に…否。『私達』に任せておけ。起動せよ──『至高天・戦神に侍る戦乙女宮殿(グラズヘイム・ヴァルハラ・ワルキューレ)』』

 

救世主に続くように、かつてのセーフティ・ポイント…湖のあった場所に『金色の宮殿』が煌めき立つ。それは言うまでもなくオーディンの設立した宝具、彼のおわす世界樹の頂、至高天。

 

『む、無数のサーヴァント反応!これは…!』

 

『わ、ワルキューレだ!展開された宮殿から、無数のワルキューレ達が出撃してアバドンに向かっていってるんだ!』

 

ロマニ、オルガマリーの感嘆の通り、星の蝗を知ったオーディンが即座に使用に踏み切った、彼が心に思い描く心象、グラズヘイム即ち至高天とそこに連なるヴァルハラを展開する宝具。固有結界の展開。

 

そこは勇士の魂を集め、来るラグナロクの為に貯蔵するヴァルハラがあり、その地に魂を集める役目を担うがオーディンの制作したワルキューレ達。勇士の相手をする為の女性たる彼女らが、今この時こそをラグナロクと定め、オーディンの指示の下に飛翔する。

 

『主神オーディンが命ずる。星の蝗の眷属を、モルガンの虫達と協力し撃滅せよ』

 

主命を受諾したワルキューレ達は一斉に飛翔し、アバドンの周囲に飛び回る眷属達や、空を覆う蝗を撃滅せんと動く。救世主の民達もまた、その意図を理解し助け合う様に陣形を組む。

 

『1を聞いて十を知る。二手三手を読み行うが戦いなれば、理路整然と万物に対処するまで。…可能であれば、もう一手が欲しいところだ』

 

ヴァルハラで大量出撃しているワルキューレ、救世主が聖剣で呼び出したウェールズの民達。それらを合わせても数の多寡を完全に覆すにはまるで至らない。数は減らせているが、その絶対量が多すぎるのだ。この二勢力を以てして、アバドンそのものは傷一つつけられないだろう。あくまで露払いこそが限界、命題なのだ。

 

それにしたところで、圧されれば崩されてしまうが道理。オーディンの計算では、あと数億程の応援が欲しい。それさえあれば、眷属はワルキューレ一人に数千体を倒させる計算で可能となる。

 

『楽園の皆よ。あと一押しを希望する。一人が多数を押し出す質、並びに絶対数を覆す量を。あともう一押しなのだ』

 

『無茶言わないでもらいたいなこの主神は!?サーヴァントを総動員、部員諸君を含めて15000が精々だ、とてもこの数を跳ね返すなど…!』

 

『──いいや、可能だ。相手が偽神、それであるのならば。かの狼藉を跳ね返す民草は私が見出す!』

 

「この声は!?」

「まさか──あの人が来てくれたの!?」

 

マシュとリッカは理解した。その声音。偽神への強き敵意と正義感。紛れもなく神威にして、契約と盟約を交わした『神霊』

 

『──カナンの地、旧き御名を有せし神。ルシファー様の命によりカルデアに所属せし者。我が名こそは『バアル・ゼブル』!盟約と契約に従い、カルデアに助力し偽神に鉄槌を下さん!』

 

瞬間、カルデアの空間を引き裂くように現れしはルシファーの右腕にして、糞山の王と貶められし高き館の主たる同盟者『バアル・ゼブル』。不当な侮辱が消し飛んだ最強の姿にて、怨敵たる呪いを睨みつける。

 

『やぁ皆、長いようで久しぶり』

 

「パパポポ様!?あちらのバアル・ゼブル様は!?」

 

『カルデアのサーヴァントとして、親善大使として私が連れてきたのだよ。カース・ロンギヌスはたった今降下を始め、ルシファー達がその落下を阻んでいる状態だ』

 

パパポポが言うには、アバドンと連動して超速の速さにて下降を始めたカース・ロンギヌスをルシファーら地獄の軍勢が懸命に阻んでおり、その時空の責ぎあいにて、こちらとの空間をパパポポはバアル・ゼブルと飛んできたのだという。

 

『出でよ、我が民にして聖霊達!神が妬み、神が貶めた完全にして完璧たる人と神の有様こそを励みとし、愚かなる神に真なる輝きを見せつけるのだ!!』

 

アトランティス・ボーダーの前に立ち、披露せしは自らの民たる聖霊の連続召喚。かつて万物の神である彼は、彼を信仰する民達をこそ聖霊と定め、無数の援軍にして増援たる存在として加勢にやってきたのだ。

 

糞山の蝿とされこれ以上ない屈辱を受けた聖霊は、しかし神を辱めた事をこそ許せぬ怒りとして猛り、無数の存在を以てアバドンの蝗を叩き潰していく。その数は世界に満ちていた命を有するだけ存在し、星の蝗との数の多寡を可能な限り埋め尽くす程の加勢となった。

 

『フッ。龍の逆鱗を撫で、虎の尾を未だ踏み続ける偽神の因果がみるみるうちに回収されているではないか。露払いでありながら鬼気が迫る有り様よ』

 

「ギル!!」

 

そして、最後に通信を送りしは楽園の王ギルガメッシュその人。今なお、彼にとっては自らや英雄神の出る幕ではないと理想郷にて切り札を手掛けている。

 

『ワルキューレ、と言ったか。鋳型は良いが柔軟性にも苛烈さにも欠けよう。そして何より何だその装備は。北欧の世界観は質素を是としているのか?』

 

『申し訳ない。次からは武具にも鋳型と同じ時間をかけよう』

 

『フッ─ならばよい。その克己の意志に免じ、特別サービスをくれてやる!』

 

瞬間──黒き空に、満天の星空が見える。瞬時に展開されし王の財宝、その黄金の蔵。

 

『穢らわしき害虫よ、我が財の真の輝きを見るがいい!我が至宝の精緻の極地、死して拝せよ!!』

 

パチリ、と王が指を鳴らす。それと全く同時に、地上に向けて無数の黄金の雨が降り注ぐ。

 

「ゲート・オブ・バビロン!ゲート・オブ・バビロンだ!!姫様がアジャストしてる絨毯精密爆撃だ!」

「は?…嘘でしょ、なんで全部中枢神経直撃させてるんですか!?怖い!なんですかこの精度怖すぎて気持ち悪い!」

 

蝗全ての急所を穿つ大質量爆撃に慄くCCAの絶叫はスルーされる。ワルキューレ達、そして民達にも変化が起きていた故だ。

 

『受け取れ、同盟者ども。出血大サービスの宝具貸出セールというやつだ。ふはは、オケアノスを思い出すではないか!』

 

ワルキューレ達に、ギルガメッシュの宝物庫からの宝具が余すことなくもたらされる。神々が託した最高峰の財宝により武装されたワルキューレ達が、名実ともに至高天における無敵の軍勢となる。

 

『我々に出来ることはこれまでだ。奈落の虫、アバドンを倒しケルヌンノスを救ってくれ』

『最後まで気を抜くなよ、財共。世界を救うまでが愉悦の旅路よ!ふふははははははは────!!!』

 

全ての苦痛、不安を蹴散らす黄金の哄笑。姿を見せずとも、王と姫は財から目を片時たりとも離しはしない。

 

──蝗害は封じられた。今まで貶め、見下した因果の報いのままに。それは即ち、本体たるアバドンを討ち滅ぼす準備は間もなく成就されるということだ──




ギルガメッシュ「とはいえ、これは時間稼ぎよ。アバドンとやらを穿たねば、どのみち世界は終わるのだが。数多き見せ場かつ最終局面、彩ってみせよ騎士王!」

フォウ『ブライド!準備はOKかい!?』

ブライド『──赤き竜、因子装填。王鎧起動。長らくお任せいたしました!これより、厄災打倒に向かいます!』

ブランカ『チチ…!』

ブライド『大丈夫です!思い切り文句を伝えて参りますよ!』

力強く頷くブライド。──その姿は変わっていた。

白き身体に、赤き鎧を纏った竜の妖精。バックパックには、ブライドが遺した羽根を模した真エーテル排出口。

ブランカ『チチ!チチ!』

──気をつけて!ブライド!

『はい、エアさん!ブライド=アルビオン・ペンドラゴン!行きます!!』

それは。肉体が竜たる王者に相応しき姿に変化した、竜の妖精ブライド。

ブリテンを苛む現れた二匹の虫を阻むために。

そして、嘘つきを問答無用で引きずりあげる為に。

飛行する距離をゼロにしながら、至宝を纏いし龍は地獄へ向けて飛翔するのだった──。

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