人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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キャストリア「……──素敵な、春の記憶だなぁ」


「…素敵だなぁ………」


(今日は出掛けるので、今のうちに更新しておきます!メッセージや更新も今より!)


星の生まれる刻

春の記憶を垣間見たホープ達。膝から崩れ落ち泣き崩れたビリィやホープをオーロラ、ライネックが懸命になだめ、涙するバーヴァンシーをチルノが熱く抱き寄せながら受け止めた。

 

彼女にとって、苦痛と絶望、人の悪性ですら彼女が得た希望を消すことは叶わなかったのだ。ホープたちの存在こそが、救世主としての彼女を前に進ませる全てだったのだから。

 

『…宝物だというのなら、お前の生き様をこそ言うのだ。よくぞ、救世主の生き様を貫き通した』

「なんというか、どこにいても姉さんは姉さんらしい独占欲を持っているんですねぇ」

 

涙と鼻水まみれになりながらもCCAが締めくくる様は、どこかコメディチックであるが今更である。

 

「…じゃあ、行こう。トネリコの生きた証と救世主の旅路を、宝物を受け取った私達が形にしなくっちゃ」

 

「えぇ。──星を、生み出す刻です」

 

騎士王、マシュらと頷くリッカ。いよいよ聖剣誕生の場、『選定の場』へと一行は至る──。

 

 

「…ここが、妖精達の仕事の場。聖剣を鍛え上げる、星の鍛冶場」

 

ウーサーの言葉が示す、静謐にて荘厳なる空間。中央に星の内海に満ちた穴がある、理想郷の選定の空間。

 

「ここで、楽園の妖精の全てを使って聖剣は鋳造される。あらゆる全てを使用し、星を救う聖剣を作り出す」

 

「いよいよ以て神造兵装の鋳造風景を目の当たりにしようとは。陰気臭い罪人の地に我が財を惑わせた甲斐はあったというものよ」

 

「そうだね、ギルガメッシュ王。間違いなく、今から作られる聖剣は人類史最新のもの。そしてこのブリテンを剪定する咎の終わりだ。罪人たちに隠された至高の宝、どうか大切に持ち帰ってほしい。それが、関わりも謂れもない罪の償いに全力で取り組んだ君達への正当な報酬だ」

 

マーリンの言葉に、神妙に頷く一同。魂の集積情報は既に、星の内海が読み取っていた。後は素材となる、楽園の妖精の肉体の投入のみ。

 

「土のヤツと風のヤツの肉体があるのは大変ラッキーですよ!魂はゴミカスでしたが、身体の素材は最高品質です!文句無しの聖剣を作れるはずです!」

 

「鍛冶は貴様がやるのか、CCA?」

 

「まぁ一応星の王なんで。他の人がやると身体を引き換えにするんですから、嫌でしょ今更そんなトレードオフ。聖剣制作の手助けも、オーディン様に呼ばれた役割の一つですから」

 

CCAはアヴァロンに招かれし王であり、彼女だけの聖剣魔術を使うアルトリアである。ならばこそ、ここに来て本懐を果たすのだろう。

 

「それでは内海に溶かしていきましょうか!バラバラになった土のヤツを最初に入れて〜。次は身体だけは最高の風のヤツをいれればもう最高の聖剣作れる素材は足ります!やったね!」

 

CCAが妖精2匹の身体を選定の場へと放り込んでいく。雑に扱うように見えて、やっぱり丁重なのが隠しきれないのはもう人柄の問題だ。

 

そう、始まりの妖精達の肉体は受肉している。問題なく、素材として使えるのだ。集積した情報魂はトネリコ、肉体は風だけでお釣りが来る中、更に土のダメ押しもあるのだ。

 

「………なんなら、もう作れますよ?どうします?」

 

CCAは、トネリコ…別世界の姉の遺体を見て言った。理解している。把握している。トネリコの遺体は、このために用意されたのだから。救世主は、自分の肉体を用意したのだから。

 

でも、それは最後の確認。彼女の意志を、真に継ぐか否かを。こればかりは、ホープ達の…その世界に生きる仲間達が決めなくてはいけないことだ。

 

「…オヤブンとして、お前たちの決めたことを押し通してやる。最後の決断を、見せてみろ」

 

強く一行を見守るチルノ。しかし、ホープ達はもう迷わなかった。

 

「──トネリコ様は、この瞬間を結実させるために救世主として私達を助けてくれました」

 

「故郷を離れ、地獄のブリテンを何千年も、何千年も彷徨って。それは辛いことばかりだった筈です」

 

「だが彼女は…我等が主は、我等の存在を希望と言ってくれたのだ。我等の忠義を、至宝としたのだ」

 

「その覚悟や決意を、私達の感傷で今更邪魔するとかありえねえよ。…お母様の眠るべき場所は、いるべき場所はあんなゴミの掃き溜めじゃねぇ。…皆様という、優しい人々の想いを有する星であるべきだ」

 

「…では。トネリコの遺体を、星に還すのですね」

 

ホープ達は頷いた。それが、妖精の償いの旅に寄り添ってくれた汎人類史における最大の誠意であり。

 

救世主の道筋の、完遂にして成就だと。ホープ達は信じたのだ。

 

「──解りました。その聖剣は、遍く世界を救うでしょう」

 

「あ、あの!オヤブンと騎士王様に、トネリコ様の遺体を捧げてもらいたいのです!」

 

「ホープ?」

「あたいたちが?」

 

「私達の、最高のオヤブン。そしてブリテンを繁栄に導いた、秩序と善の聖剣の王。私達の救世主と、聖剣を託すのに相応しい方々だと信じています。立ち合いは、王様とマスター様、そしてオーロラ様に…!」

 

「…うん、解った」

「しかと見届けてやろう。まぁ、裁定するまでもない逸品であろうことは百も承知だがな」

「…ありがとう。しっかりと、見ているわ」

 

ホープたちの願いを受け、粛々とチルノと騎士王はトネリコの遺体を抱え、選定の場へと捧ぐ。

 

「お疲れさまでした。あなたは正しく、ブリテンの救世主だった」

「オヤブンのオヤブン、オオオヤブンだな。剣になったら、皆ずっと一緒にいられるぞ」

 

星の内海に、トネリコが浸かった瞬間。遺体の輪郭が輝き光に包まれていく。それに伝播するように、バラバラにされた土の妖精と美品たる風の妖精も共鳴し、聖剣へと打ち直されていく。

 

「聖剣魔術、起動。神造鍛錬、幻想鋳造。聖剣制作開始。炉心点火、集積結晶…!」

 

CCAの手にした聖剣は、鋳造マニュアルスケジュール管理のようなもの。果たされた楽園の妖精の帰還。それらを有し、いよいよ以て聖剣が造られるのだ。

 

『……トネリコ。お前は一つ、大いなる過ちを犯していた』

 

聖剣が、星が生まれる輝きの中で。モルガンは静かに独白する。

 

『お前は、もっと仲間達の今を重んじるべきだったのだ。未来の希望を見るあまり、仲間の嘆きを見落とした。…ならば、その罪をカルデアは背負うだろう』

 

やがて、選定の場に光が満ち溢れる。そして特に、中央の選定の場より、目を潰すかのような光条が溢れ出す。

 

『お前の生み出した聖剣は、お前が見出した宝と共に永遠に共にあるのだ。…輝ける、虹のような歴史に迎えられ』

 

それは、モルガンが終ぞ至れなかった理想郷の運命を越えた瞬間。モルガンが、渇望した自らの国への帰還の成就。

 

 

『お前の救世の旅路は、この罪人の地における『神話』として語り継がれるだろう。…本当に、本当に大儀だった。私ならざる私よ』

 

救世主トネリコを誇りとし、冬の女王モルガンとは違う道を行った楽園の妖精、ヴィヴィアン。なればこそ、彼女の結末は幸福なものに。

 

『お前は確かに──汎人類史に引けを取らぬ功績と財宝を以て。モルガンという女王を討ち果たしたのだ』

 

二度と國に至れなかった、汎人類史のモルガン。

 

最後の最後で、また妖精達に裏切られ失敗した異聞帯のモルガン。

 

だが彼女は最後まで、救世主であったという事実を以て。

 

彼女は確かに、汎人類史へと勝利したのだと。女王は心からの太鼓判を押したのだ。

 

──そして。その時が訪れる。

 

「さぁ皆、受け取るといい。これこそが至上唯一無二たる聖剣の…聖剣の…アレ!?」

 

「…あれ、なんか…」

 

──(厳かすぎてずっと黙っていたエア)さ、鞘と、剣が…

 

「二セット、できてない?」

 

「あ、あれ?あれれ…?ど、どうしちゃったんだろう?は、張り切り過ぎたのかな?素材過多?あれれ〜?」

 

星を救う、至高の聖剣が。

 

──勢い余って、二振り出来ちゃったのであった。




叡智宿りし希望の剣(カリバーン・ホープ)

本来の名はエクスカリバーだが、名称を区別された。鋳造された聖剣の一振りであり、トネリコの慈悲と救済の願いで土の妖精の身体を素材にできた聖剣。

カリバーンに鞘がついたかのような黄金の剣であり、内部には凝縮された聖なる魔力が詰まっており、あらゆる穢れと呪いを退ける『退魔』に特化した属性を持つ。

選定の剣に似ているが決して折れぬ、罪を赦す慈悲の聖剣である。

赦免齎す救世の剣(エクスカリバー・トネリコ)

風の妖精と救世主トネリコの肉体を以て鋳造された、人類最新の聖剣。最高峰の素材と至純の祈りを掛け合わされた妖精國の至宝であり、世界を救う決戦兵器。

剣、鞘、盾、鎧、更に真名解放モードを持つ白金の聖剣

剣(エクスカリバーモード)

鞘から抜き放ち振るうエクスカリバーモード。アロンダイトのように常に魔力が臨界凝縮されており、任意により湖面に映りし斬撃の如く爆散させたり、ガラティーンのように対軍を薙ぎ払うような放射が可能。聖剣の情報を集積したことによる汎用聖剣の一面を持つ。

鞘(アヴァロンモード)

鞘のみを展開することによる遮断形態。自らに纏い、あらゆる魔術を退ける対粛清防御を実現する。

鎧(ウィガールモード)

アヴァロンモードを概念化し、自身に纏う。遮断は出来なく
なるが単純な防御力は対城宝具、ランクAまでの威力を完全に防ぐ。他者に纏わせることも可能。

盾(ウィルネル・グルスヴッヘルモード)

聖剣を鞘に収める事で展開。軍隊をまるまる防護するフィールドを展開する。ただし、聖剣を使用できない。


真名モード(コールブランドモード)

聖剣が中央部分が割れ、鍔の部分が変形スライドした星の内海の魔力を完全放出する必殺形態。白き巨人すら上回る、天に立ち上る黄金の聖剣。

展開の際には反動対策としてアヴァロンとウィガール、どちらかを発動しなくてはならない(並のマスターならば一瞬で干からびる為使用不可)

秩序と光を齎す救世の剣としてのそれは、対界宝具に位置する程の威力とランクを有する空前絶後の神秘を誇る。星薙の大剣としての運用も可能。

但し、聖杯を利用し限界を超えた霊基でなけれは即座に砕け散る規格外の形態であり、本来は人や個人に振るうものではない。

真名解放は、コールブランドの後にさらに銘が付く。

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