人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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(今から返信します)
CCA「ただいま私達の故郷!理想郷アヴァロン!の!!影!!」

モルガン『当然ながら、影なので私達がクラフトした未来都市も幽閉塔もありませんね』

キャストリア「未来都市…!?」

CCA「そうですそうです。何もなかったんでクラフトしたんですよ、街とか。尽きない魔力やマナのお陰で完璧な理想都市です!いやー、見せられないのが残念だなー!」

キャストリア(アヴァロンのイメージが砕け散る音)

ギルガメッシュ「セイバー…等はいるはずもないか。影は影。光が生み出せし幻影故にな」

───まるで御覧になったかのような物言いですね、ギル?

ギル《さてな。…夢の話だ》

?「色々君たちが出掛けている間に、細やかな施設ができている。選定の場に向かう前に、少し顔を出してみようか?」

リッカ「え!?」

マシュ「貴方は!?」

マーリン(幻影)「やぁやぁ。ブリテン異聞帯のマーリンだよ。グラサンは赦してくれ。全力でニミュエから隠れているものだからね!」

ギル「ふはは、あいも変わらず幸福物語至上主義者よな貴様は」

──マーリンさん…!なんだかんだでファインプレーしかしない御方!

〜トネリコの墓所

マーリン「ここはトトロット君が定めた、救世主トネリコ…楽園の妖精ヴィヴィアンの墓所だ。ほら、帽子に杖、ウーサーの剣があるだろう?」

バーヴァンシー「トトロット様…お母様のために…」

ホープ「あれ、でもあの方の身体は…」

マーリン「うーん、そこが不思議なんだ。帽子と杖と剣を持ってトネリコだなんて。彼女はどうしちゃったんだろう?」

ブランカ(代理)『チチ…』

〜土の岩

ライネック「エクター!!!」

ホープ「エクター様!あぁ、アヴァロンにいらしたのですね…!」

エクター『』

マーリン「…残念だが、もう死んでいる。彼は土の始まりの悪魔を一人で討ち果たし、ニミュエにここに招かれた。土の悪魔の身体も、素材として使えるだろう」

ビリィ「そんな…エクター様…」

バーヴァンシー「…大したもんだ。お母様の騎士は皆、本当にすげぇ」

ライネック「エクター…お前はただただ、果たしたのだな…岩のような忠義を以て、贖罪を…」

マーリン「…では、いよいよ向かうとしよう。聖剣の鍛冶場。自らを魂と肉体に分断したトネリコが果たすべき、異聞世界を作るための最後の使命」

キャストリア「…じゃあ、それは私がナビゲートしますね。色々手順があるんですが、トネリコ自体は生きながら死んでる、みたいな変な状態なので。監修が無くちゃ」

騎士王「えぇ。どうぞ、よろしくお願いします」


冬の女王

「聖剣を作るための選定の場に向かうための、ちょっとした試練というか確認というか。楽園の妖精の集積情報を読み取って行われる試練みたいなのがあるんですよ。それは、トネリコが歩んできた全ての在り方で定める聖剣の方式。造られる聖剣の性質を決める為の査定、かな?」

 

キャストリアが説明しながら、選定の場…聖剣を鍛える鍛冶場に皆を導く。傍らに在るのは、三つの大切な要因。一つはトネリコの遺体。一つはウィンダの肉体。一つはソイルのバラバラなパーツ。

 

「冬から始まって、春で終わる。最初にとびきり辛い情報から読み取って、最後は春で〆るソウルシアター、みたいな感じかな?ようするに、場面セレクション!的な感じです!」

 

「トネリコがどう生きて、何を感じて、思ったか…」

 

「その為に死なぬままに魂を区分けしたのだ。聖剣を象る鋳型に自らを使うためにな。末期のトネリコとやらは自己犠牲の化身と言えよう」

 

そう。その為にはトネリコの想いを受け止めねばならない。冬、秋、夏、春。妖精国にて感じてきたもの。トネリコの人生という全て。

 

「じゃあ効率よく、出てきた試練はこのCCAが対処しておきますねー。皆さんは安心してトネリコムービーを御堪能あれ!」

 

「お願いします、CCA。…では、冬の記憶から。行きましょう、リッカ」

 

「…うん!」

 

意を決して歩むリッカ達。トネリコの感じた人生、その全てに今、触れる…。

 

 

それは、冬の記憶。 

 

「はぁ、はぁ、はぁ…!」

 

走っていた。逃げ出していた。ひたすらに、ただただ駆け出していた。

 

身体は血まみれで、傷だらけ。満身創痍のその様相。

 

私は追い立てられていました。ただただ命を狙われていました。

 

誰にでしょうか?それはわかりやすく、意外な答えです。

 

「逃げた、逃げたぞ!救世主が逃げた!」

「殺せ、殺せ!捕まえて殺せ!」

「油断した背中を刺したんだ、遠くには行けないはずだ!」

 

それは、妖精たち。救世主が救うべき、妖精たち。楽園の妖精として彼等を救わんとした結果には、必ず命を狙われる結末。

 

「ひっ、ひっ…はぁ、あぁ…」

 

何をされたのかも分からず、何が起こったのかも分からず、発狂寸前まで心が追い込まれました。

 

助けた相手に裏切られる。助けた相手に、自分自身を狙われる。希望と夢に溢れた楽園の妖精には、そんな無慈悲な洗礼ばかり。

 

「どうして。どうして、助けに来たのに。救いに来たのに。皆で幸せなみらいを掴むはずなのに」

 

嫉妬や保身、欺瞞や我欲。その底にあるのは確かな願い。私はそれを汲み取るために奮闘しました。

 

最後には決まって、こんな裏切り。百や二百を越えた頃に、私の心と身体は夢見る少女ではいられなくなっていました。

 

「助けて。助けて…誰か、誰でもいいから、助けて…私を、私を助けてください。お願いします。お願いします…」

 

寝転がることもせず、ただ肩を抱いて朝日までガタガタと震える日々。一睡もできず、日が昇れば逃げるように走り出す。

 

「死にたくない。もう死にたくない。もう嫌だ。もう嫌だ───」

 

「いたぞ!」「救世主だ!」「殺してやろう、遊んでやろう!」「次の救世主は、俺達だ!」

 

「ひ、あ、ああああああああああああああああああ!ああああああああああああっ!!」

 

理想と、妖精達の現実の狭間でぐじゃぐじゃになり続けた千年間。

 

これが、冬の記憶の一つ。冬の記憶は、もう一つ。

 

 

「ああっ!ああああああ!皆が!ウェールズの皆が!皆の、皆の家が!ウェールズの森がっ!!」

 

見ることしか出来なかった、ブライド達との別れ。万が一にもブリテンの術式に気付かれるわけにはいかないが故の、ブライド達が逃がしてくれた懸命の脱出。トネリコらはエクター、ライネック、トトロットに取り押さえられながら離脱する。

 

「離して!離して!!ブライド達が死んじゃう!虫のみんなも、炎の中で生きていられるはずがない!助けに、助けに行かなくちゃ!」

 

「落ち着け、トネリコ…!牙の処刑隊と土の兵隊だ、我らも危うい!」

「お前という希望をブライド様は逃がせと仰せた!その意志を組まんか、馬鹿者が!」

 

「嫌!嫌だ!ブライド!皆!皆と約束したのに!素敵な国を作るって!皆が幸せな国を作るって約束したのに!」

 

「ごめんよ、トネリコ…!本当に…ごめんよ…!」

 

「離して、お願い…離して…ブライドを、皆を…助けなくちゃ…私の、私の国の大切な民達なの…お願い、お願いだから……」

 

大妖精、ブライドとその仲間達との別れ。風と翅の共謀により、捨てられたウェールズの地は地獄となった。大妖精を滅ぼすために結成された大軍から、ブライドによって私達は逃されました。

 

親愛なる者達でした。無垢で、善性を有した妖精達でした。彼等から未来のあらゆる導きや力を学びました。一緒に、大切な事を学びました。自身の国を新生させる事も、話し合いました。

 

そんな彼女らを見殺しにした──その後日。生き残りを探すために、焼け落ちたウェールズを歩き回って。

 

「あぁ……ああぁ…あぁぁ…………」

 

楽しげに笑いあった仲間達が、死んでいます。

 

未来を語り合った仲間達が、殺されています。

 

「あぁぁ、あぁぁっ。あぁぁ…!」

 

ありがとう、救世主と。言ってくれた皆が。

 

ありがとう、トネリコと。労ってくれた仲間達が。

 

ホープ達に続けて出会った、本当の意味での仲間達が、皆皆、死んでいました。

 

「あぁぁあぁぁあぁぁ…!!」

 

…虫たちに、途中で逃げた子はいませんでした。

 

顔を覚えた全員の亡骸を、余すことなく森の中で見付けたからです。ブライドを、私を護るため。最後の最後まで戦い続けたのです。

 

『□□□□(あ、トネ、リコ)』

 

「ああっ!!無事ですか!?まだ息があるんですね!?」

 

巨大なハチ…もはや頭だけのそれに、私は飛びつきました。生きていてくれただけで本当に良かったと。

 

ですが、言うまでもなく。それはもう、手遅れで。

 

『□□□□□(あり、がとう。きゅうせいしゅ。ぼくらの、ぼくらの、きゅうせいしゅ)』

 

「!!!」

 

『□□□□□(すてられたぼくらを、見つけてくれて。ありがとう。ぼくらのために、ありがとう)』

 

「そんな、そんな!御礼なんて…!私は、何も…!」

 

お前のせいだって。お前なんかのせいだって。言われていれば。そんな救いも、許されません。

 

『□□□□□(トネリコ、トネリコ。ぼくらの、だいじな、おともだち。ぼくらの、すてきな、きゅうせいしゅ)』

 

「やめて…やめて…お願い、お願いだから…」

 

『□□□□□(とてもまじめな、がんばりや。いばしょがほしい、がんばりや。あなたのくには、きっとすてきなおくにだね)』

 

「いやああああぁぁっ!!やだ、やだ、やだぁっ!死なないで!死なないで!お願いだから死なないで!私の大事な人達をこれ以上奪わないで!」

 

戦車のようなクワガタやカブトムシ。戦闘機のようなトンボにハチ。皆が皆、ブライドのために。

 

何より…自分が教えた理想の国のため。最期まで、燃えながら戦い抜いてくれたんです。全滅する、その瞬間まで。

 

そんなにして、殺されてまで。虫の皆は、口々に。私への感謝を口にしてくれて。

 

『□□□□□(ありがとう、ありがとう。ブライドさまに、よろしくね)』

『□□□□□(トネリコ、みんなの、きゅうせいしゅ。トネリコ、ぼくらの、きゅうせいしゅ)』

『□□□□□(あなたのくにが、すてきなものでありますように)』

 

『『『『『□□□□□□(さようなら。さようなら。捨てられていたぼくたちは、ふたりのおかげで幸せでした。ふたりのおかげで、とってもとっても、幸せでした────)』』』』』

 

 

やがて、一人、一人と消え去る声。痛みと苦痛に苛まれながら、口にするのは、誰かの感謝。

 

偉大なる大妖精ブライドと、そのオマケみたいな私に対する感謝の言葉。妖精國の、砂金のような宝物。

 

「ああっ、ぐっ、ぎぃっ…ひぐっ、ぐぅっ…!うぐぅ〜〜っ!!うう〜〜〜っ…!!」

 

私は、発狂を迎えました。そこで、理想を求める乙女は死んだのです。夢想を叶える少女は死んだのです。

 

「ああぁああぁああぁああぁああぁああぁ!!!あぁぁあぁぁあぁぁ!!うぁああぁぁあぁぁあぁぁあぁぁあぁぁ!!!」

 

血涙を流し、喉が裂け、目が真っ赤に染まるまで私は叫びました。

 

もう…妖精を救うことはありません。見出した皆と、地獄にはびこるものは最早別。

 

「ああぁああぁーーーーーっ!!!うぅああぁあぁぁあァァァァァァァァァァァァァァァァァァーーーーーーーッ!!!」

 

妖精への甘えや、幻想を吐き出すように。ウェールズの…

 

いいえ。滅び去った私の国の最中で。私は叫びを上げ続けたのです。




冬の記憶は、これでおしまい。

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