人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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ギルガメッシュ「帰還したか。地球が生んだ汚物の処分、御苦労であったな」

チルノ「おぉ、金ぴかじゃないか!」

オーロラ「皆、無事で良かった…」

ホープ「ただいま、オーロラ様!」

バーヴァンシー「…なんか違和感がすげぇけど、慣れなくちゃな」

オーディン「ここに王直々に来るとは、つまり」

ギル「然り。この地獄もそろそろ佳境に至る。最後の赦免の仕上げのため、影とはいえ、いよいよアルトリアめの別居を拝見する日が来たということだ」

リッカ「まさか!噂の!?」

騎士王「えぇ。──アヴァロン。理想郷の影たる場所へと向かうのです」

キャストリア「聖剣を…作るために」

(今から返信します)


泉の先へ

「本来ならば罪なき者のみが通れるという七面倒な制約が足を引くところだが、今回は緊急事態でありブリテンも最早滅びたも同然。いくらでも融通が利こう。手掛けねばならぬ武具が数多あるのだ、如何様にでも足を運ばねば始まらぬ。という訳でだ…フォウ!」

 

「えっ?フォウって噂のキャスパリーグ?へぇ〜!まじまじ見るのは初かもしれない!CCA楽しみ!」

 

『フォオウ…!』

 

「なんだこのムキムキビーストー!?」

 

「んー!」

「むー!」

 

「小脇にクソ夢魔二人抱えてるー!?」

 

ツッコミが追いつかない状況ではあるが大真面目なアヴァロンに至る準備である。夢魔であることを利用して影と湖を行き来していた観客気取りのマーリンをフォウがマッスルフォウムにて捕縛。CCAのペット観念無事壊れる。

 

「この湖は、簡易的な固有結界とも言える場所だ。トネリコがかつてウェールズに召喚していた彼女の力を借りる。アヴァロンに騎士王を送り出した逸話を持つニミュエ、それら湖の乙女の概念」

 

「ニミュエ…並びに湖の乙女…マーリンを幽閉した…」

『実にグッドジョブと言わざるを得ませんね』

 

騎士王、モルガンの反応はマーリンに対し芳しくない。当然ながらマーリンを出さなくてはいけないのか、という危惧もあったがそれは逆である。再び閉じ込めるのだ。

 

 

『逸話的に、マーリンが傍にいないと…閉じ込める相手がいないと、ね?宝具が使えないのよ。アルトリア、それにモルガン?』

 

瞬間、泉の中心よりゆっくりと、厳かに一人の乙女が現れる。羽の頭飾り、白き衣装のそれは童話を知るならば既知のもの。

 

「先輩!湖の乙女です!斧の逸話の!」

「私の落としたのは普通のマーリンです!」

 

『まぁ、マーリンを湖に捧げてくれるなんて…。いえ、今はひとまず落ち着くわ。はじめまして。湖の乙女にしてニミュエです。ウェールズがあった時代に一度招かれ、霊基を凍結して眠っていたの。たった今、活動開始したわ』

 

湖の乙女、そしてニミュエ。マーリンを幽閉した質の悪い妖精。しかし一番質が悪いのはマーリンなので、マイナスにマイナスをかけてプラスとも言える存在だ。

 

『あぁ…マーリンが一人。マーリンが二人。素晴らしいわ。素敵な楽園(ろうや)ができそうね』

 

「「ん〜!」」

 

「湖の乙女ニミュエ。まさかこのような形で会えようとは」

 

『あら、アルトリア…?あら?私の知るアルトリアはもっとちんちくりんだったような…』

 

「へ?」

「ん?」

 

『あぁ、そうそうこんな感じの。この慎ましさがアルトリアの本懐よね』

 

「「おいぃ!」」

 

「こ、この方も妖精なのですね?よろしくお願い致します!」

「大丈夫よ。…風の妖精程質の悪い妖精はいないわ」

 

(じぎゃく、というやつか?)

 

「笑えねぇギャグを無理して言うな。ビリィの筋繊維以外傷つかねぇ戯言を吐け、バカ」

 

「バーヴァンシー…ありがとう」

 

『こほん。改めて…私は救世主トネリコの仲間に、アヴァロンへと導くためのパスを開く役割を担っていたサーヴァント。ウェールズの一件で、辛くも私は森の仲間たちにここへと逃された。その後はコールドスリープによって、オーディン様に起こされるまで眠っていたの』

 

「何からなにまで用意周到だなぁ、ここのトネリコ…」

 

『それだけ本気だったという事です。国を手に入れるのではなく、手に入れた国を護るために。…では、このブリテンのアヴァロンの影に我々は詣れるのですかのですか?』

 

湖の乙女、ニミュエは頷く。その為に、オーディンに目覚めさせられたのだと。

 

『私の宝具は、マーリンを触媒としてオリジナルの幽閉の塔を手掛けるもの。アルビオンの霊墓と、アヴァロンの境に私の宝具にて塔を作れば、なし崩しにアヴァロンへと到れるわ』

 

立入禁止の領地を纏めて自身の陣地にする。そんな無茶を通せば、なんと纏めてアヴァロンの影へと到れると言うのだ。それはニミュエが、アヴァロンのエピソードに縁深き妖精であるからだろう。

 

『展開中はマーリン達を閉じ込めてしまうけれど。私が閉じ込めてしまうけれど…特に異論なんて無いわよね?あるはずが無いわよね?あったりしないわよね?私とマーリンを阻んだりしないわよね?』

 

「「「『必要な犠牲でした』」」」

『好きなだけどうぞフォウ』

 

「「んー!?」」

 

異口同音のアルトリアシリーズ、庇う気もないフォウの了承。ダメ押しにモルガンの太鼓判を受け、無事マーリンはニミュエのものとなる。

 

(マーリンさんへのヘイトがエライことです、先輩!)

(まぁその、マーリンは共感性が夢魔レベルだから…)

 

『ありがとう。心置きなくやってあげられそうよ。…そこの、トネリコの妖精たち』

 

「は、はい!」

 

『よく頑張ったわね。償いの旅の終わりは、もうすぐよ』

 

ニミュエの励ましに、ホープ達は涙ぐむ。その言葉は、暖かい肯定に満ちていたからだ。

 

『トネリコの願いを、そして理想を叶えましょう。…さぁ、マーリン。話をしましょう。激しく。もっと激しく。眼と眼を合わせて指を絡ませあって。心と心がとろけあうまで!いずれはキャスパリーグも参加させてあげる!』

『『んー!?』』

『結構です!!いいからはよ宝具!』

 

『あら、そうだったわ。では、霊墓と理想郷の狭間に塔を立てるわね。その塔を開いて理想郷に至りなさい』

 

マーリンが絡むと精神崩壊気味になるニミュエにドン引きするキャストリアにCCA、目を細めるモルガン、騎士王はそっとリッカの目と耳を塞ぐ。

「おっ……………」

 

 

「ルーンにてパス開通を補助する。ニミュエ、彼女らをよろしく頼む」

 

『あなたはこれ以上湖を血なまぐさくしないでくださらない?全く…。…星の内海、物見の台。楽園の最中にあなたを留めましょう。魂の寄る辺はずっとずっとこの場所に』

 

ニミュエが頷き、詠唱を行う。すると、華に満ち溢れた道がゆっくりと現れ、周囲の湖が花畑へと変わっていく。

 

『花の魔術…マーリンが有する魔術でもありますね』

 

「「ん〜〜〜〜!?」」

 

瞬間、立ち上る塔に二人のマーリンが速やかに収容、幽閉されていく。これはニミュエの逸話に殉じた、マーリンを幽閉することにより起動する宝具。

 

『罪なき者のみ通るがいい。『理想郷の幽閉塔(タワー・オブ・アヴァロン)』』

 

屹立するは幽閉されし塔。理想郷にて夢魔を永遠に囚える塔。それすなわち、理想郷に至る道筋の塔。

 

 

「アヴァロンか…まさか、また戻ることになるとはよ」

 

「うん…トネリコ様が匿ってくれた、あの場所に…」

 

「僕らはあくまで、楽園のお客様だった。本当の意味で訪れるのは…これが初かもしれないね」

 

「トネリコの故郷…か。ウーサー、貴様が顔を出すべき場所だったのだぞ」

 

そこにて、鋳造せねばならないものは数多ある。聖剣、赤き竜の躯、何よりも贖罪の為の武具はそこでしか得られないものである。

 

「トネリコ様。やっと…私達が作ってしまった地獄からあなたを解放させてあげられますからね…」

 

トネリコの遺体と魂は、ようやく里帰りを迎えるといっていい。楽園の妖精は、ウェールズ崩落を最後に二度とアヴァロンへと立ち入ることはなかった。バーヴァンシーへの魔力を、大量に置き去って。

 

「私はケルヌンノスやトトロットの動向を見ている。無事に素晴らしき宝を手にしておいで」

 

オーディンとニミュエに背中を押され、いよいよその理想郷の影へと足を踏み入れる。騎士王が、アーサー王が最後に至るとされるその空間へ。

 

『行ってらっしゃい。マーリン達は預かっておくわね』

 

覚悟を決した一同は、幽閉された塔の扉に手をかけ──

 




──そこは、白き雲に蒼き空の広がる場所。

マシュ「わぁあ…!!」

何者も邪悪の無い、正しい意味での理想郷。

リッカ「ここが…!」

モルガン『…影にしては、よくできている』

敷き詰められた花の絨毯。四方に広がる清涼な空間。

理想郷、アヴァロン。影ながらもその地へと、一行は確かに辿り着いたのだ。

トネリコの遺体と、ウーサーの亡骸。

奇しくも、夫婦たるもの達の帰参の願いが今、成就した瞬間でもあった。

此処にて、造られる。過ちを正す光。

即ち──楽園の妖精を素材とした、聖剣である。

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