チルノ「あたいはチルノ。カルデアサイキョーの妖精だ。風のバカ、お前に聞きたいことがある」
ウィンダ【品のない言動を…!】
チルノ「お前らバカたちのとんでもないやらかしのせいで、後の子分は皆ひどい目に遇ってきた。しょーじき、心底がっかりだ。あたい、妖精達の国ってワクワクしてたんだ」
ウィンダ【……あら、そうなの?】
チルノ「何か、思うところはないのか?オヤブンのお前らが不甲斐ないから、皆が皆苦しい目にあってるんだぞ」
ウィンダ【…そうねぇ…】
チルノ「………」
ウィンダ【──特に、ないかしら。子々孫々がどれだけ呪われ、苦しもうとそれは子々孫々のもの。【別に私は今、苦しくなんてないのだもの】。他人の苦しみなんて、解りたいとも思わないわ】
ブリュンヒルデ「………」
チルノ「──そうか。ならもうお前は、死んでいい!!」
ウィンダ【図に乗らないことね。あなた程度の妖精が、始まりの妖精の首領たる私に勝てると思うだなんて!】
ブリュンヒルデ(…マスター、そのまま聞いてください。私は大神の下で、マスターの為にルーンを鍛え直しました。これを使えば、あなたは真なる氷の化身となります)
チルノ(ホントか!すげぇ!)
ブリュンヒルデ(ですが、これを使う場合は…令呪を参画、私に使用してください)
チルノ(な、なんでだ?)
ブリュンヒルデ(これを使うと、マスターの力はまさに神の領域に至るでしょう。その代わり…あなたの故郷の行事が、行えなくなる)
チルノ(…弾幕ごっこのことか?)
ブリュンヒルデ(はい。原初のルーンはあなたの魂に刻まれる。どうかよくお考えください。この力は…故郷からの追放を引き換えとする、力です」
チルノ「………」
「もうお前らに手加減なんかする気はない!さぁ、さっさと氷漬けになれ!やるぞ、ブリ!」
「はい、マスター…!」
遂に追い詰めた風の魔物ウィンダ。見た目は長きブロンドヘア、七色に輝く翅を持つ随一の美しさながら、その笑みは悪辣であり振る舞いは醜悪そのものな魔物たちの首魁に、チルノはブリュンヒルデと同時に挑む。氷塊と炎の洗礼がウィンダへと飛来する。
【例えモースの供物が無いのだとしても、貴方達ごときに遅れなど取りはしないわ!】
風の魔物だけあり、その風は氷と炎を絡め取るように吹き荒れ、互いを激突させ対消滅させてしまう。風、とはいうが紫と黒の刺刺しき旋風は、まさに悪魔のもたらす死の風だ。
「ならば…!」
ブリュンヒルデが一気に加速し、自身の槍を肥大化させ叩き伏せんと振りかぶる。妖精とはいえ牙、土とは違う非戦闘向けの氏族故、勝機をそこへと見出したのだ。
【無礼者、恥を知るのね】
だが、ブリュンヒルデ…ワルキューレたる彼女の斬撃や刺突をなんと紙一重でウィンダは無力化する。それはまるで、すべてを見抜き読んでいるかのような絶対回避。
(動きを読まれている…?まさかこれは、未来予知…?)
【私は妖精の中で最も価値あるもの。他の妖精など、最も尊き私の劣化コピーにしかすぎないのよ!】
そう、それは鏡の氏族の業、未来予知。ミラたる者の力をウィンダはなんと行使しているのだ。見えている未来が故に、ブリュンヒルデの技はかわされている。
【私は風であり、王。妖精達の中で尊き存在。そんな私を傷付けるなど許されないわ!】
瞬間、翅より無数の衝撃波を発生させブリュンヒルデを牽制する。それは翅と牙の合せ技にして、本来自身のルーツにない【王】の妖精の力を有する攻撃。ブリュンヒルデは咄嗟に反応し、槍を回し捌きながら後退する。
「ならば…!」
ブリュンヒルデは蒼き炎を纏わせ、一気に叩きつける。直接的でなく火力に特化した制圧攻撃に活路を見出したのだ。
【浅知恵にも程があるわね…?】
ウィンダは自身の周囲に雨を振らせ、水の鎧を纏う事でその炎を無力化させる。雨の氏族の単純な力を、そこにて引き出したのだ。
「なら、凍れ!」
チルノは冷気を展開し、その水を凍らせにかかる。凍ってしまえば、ブリュンヒルデの槍の一撃が速やかにウィンダの全てを砕くだろう。しかし、風の祖先たる妖精は一筋縄ではいかない。
【はぁっ!】
風に雨を乗せ、水を一気に押し流す。氷を攫うほどの激流と化したそれは、チルノ目掛けて雪崩込む。
【野蛮な土に溺れるといいわ!】
そこに土の氏族の属性を乗せ、濁流に変化させ致死を狙う。大量の石や不純物を混ぜたそれに飲まれれば、瀕死は免れぬ痛打を負うは必死な波状攻撃。
「マスター!」
「ブリ、合わせろ!」
チルノとブリュンヒルデは即座に横並びとなり、炎と氷の壁を並べ土石流を食い止める。致死の濁流を焼き、凍らせ阻むことに全力を尽くしたのだ。
「くらえーっ!!」
チルノの底力も凄まじく、濁流全てを凍らせた後、破壊したあと全てを操りウィンダへと叩きつける。弾幕ごっこを経験しているチルノならではの、どこか美しさも感じさせる氷の芸術。
【ふん、児戯に等しい氷ですこと…】
瞬間、牙が展開され全てを叩き落とす。これまでの、幼稚で無軌道なる妖精とは一線を画す理性的かつ露悪的な戦法に立ち振る舞い。それはまさに、今までかつこれまでの妖精達の方向性を定めていたであろう賢明さと悪意の創意工夫。
【理解したかしら。これが風の妖精ウィンダの振る舞い、最も美しく素晴らしい生命たるものの力。あなた達がどれほど野蛮な末端妖精であろうとも、力の差くらいはわかっていただけたでしょう?】
「確かに、弱くなってそれならまぁまぁ強いな。余裕ぶっこいてないで全力で潰しに来ないからその程度なんだろうがな!」
【…なんですって?】
「言ってて気付かないのか?あたいをバカにする割には、そんなバカを一気に殺せてないぞ?そーいうみのたけに合わない自信マンマンを『ウヌボレ』とか『イキリ』っていうんだ。賢くなったな、頭のいいバカ!」
【たかが末端妖精風情がこの私に…!】
「もひとつ聞かせろ。お前らの国はもうおしまいだ。お前らのバカなやらかしを受け継いだバカどもはみんな死んだ。もうお前らの国に住んでるヤツは誰もいない。お前だけになって何をしたいんだ?」
チルノは親分としての疑問を、ウィンダにぶつける。
「子分が一人もいない親分なんて、世界で一番惨めでバカじゃないか?」
【何を言い出すかと思えば。元々他の妖精なんて必要ありません。神も、巫女も、私にとってはなんの意味もない目障りなもの。むしろ殺せて清々しました】
「やはり、神殺しの主犯は風の妖精…」
【えぇ、そうです。神のくせに全てが終わってからノコノコ現れ、上から偉そうに告げる役立たずを殺そうと考えたのは私です。ついでに、手軽な奴隷と手駒を作る材料が欲しかったので巫女も使おうと考えたのも、この私。忌々しい呪いさえなければ、私が永遠に妖精達の頂点だったものを…】
全ての始まりにして終着の原罪。妖精達の罪は、まさにこのウィンダから始まったのだ。チルノは更に問う。
「ぼっちになって、今更何をする気だ?お前らの国なんて、お前をチヤホヤするヤツなんてどこにもいないぞ?」
【いるではありませんか。お前達が来た世界。汎人類史という、頭の弱い妖精や人間ばかりがいるであろう世界がね?】
「!…まさか、カース・ロンギヌスを知っている…?」
ウィンダは愉快げに笑い、嘯いた。それらがもたらすもの、その意味を。
【カース・ロンギヌスは私以外のバカな妖精が呪われた吹き溜まりを束ねた槍。それを突き刺すことにより汎人類史に呪いを蔓延させる。苦痛と苦悶に満ちた世界は救世主を求めるでしょう】
「それに、まさかお前が成るっていうのか?」
【その通り。苦悶や絶望に嘆く世界に、私という尊き存在が舞い降り救いをもたらす。愚かな人間達は私をこそ神以上の存在として崇める事になるでしょう。私は彼に、その役割をこそ授かった!妖精国が生み出した救世主として!私は汎人類史に到達する!】
ウィンダは頭が良くなかった。喋らせれば喋らせるほど己に酔い、聞いてもいない敵の企みを暴露していく。
【私達始まりの六妖精は受肉し、再誕したの!もはやサーヴァントなどという脆弱な奇跡の類ではなく、他ならぬ神により見出されし救世主たる者として復活した!私以外の救世主の素養など不要ですから、残り五人も確実に始末する手間をあなた達が省いてくれた!これで私は、汎人類史における救世主ウィンダとして永遠に君臨できる!】
「………」
【私という救世主を、お前たちは永遠に崇め奉る!ウィンダという名を永劫に有難がり、我が思い通りになる世界を手にする!私という妖精の永遠の命題!誰よりも輝き愛されるという宿命をこれ以上なく全うできる!】
その笑みは端正な美貌を歪ませるほどに大きく、吐き捨てる言葉は美声を帳消しにするほどに饒舌かつ不快。どれほど美しかろうと、中身の醜悪さは変えられない。
【すべての生命は、私を崇め奉る為に生まれてきたの!身の程知らず、無知蒙昧にも価値を与えましょう!私という尊き存在、大妖精ウィンダの存在を!万雷の喝采を捧げなさい!私という存在のアクセサリーとして、お前たちは等しく価値ある命であるのだから!私はウィンダ!ありとあらゆる生命を輝かせる至高の存在なのよ!ウフフフ、アハハハ、あっははははははははは────!!】
自己陶酔に染まり切るウィンダ。──そしてチルノは、理解した。
「…皆に愛されるから、お前はすごいのか?」
【えぇ、そうよ。私はそういう妖精なの】
「じゃあ今のお前は、全然凄くないな。お前をすごいって思う子分は皆死んだ」
【解らない?だから私は、汎人類史に至って…】
「お前なんか愛されるわけ無いだろ。見た目がキレイなだけのバカなんだから」
【な───】
「話に聞くブライド様の方がよっぽど綺麗だとあたいは思う。お前はいいとこ、誰かにキレイって言われなきゃキレイになれない『きせーちゅう』だな」
「……くすっ」
フンス、と鼻を鳴らすチルノは、笑みをこぼす。
彼女は親分として勝ち誇っていた。
目の前の、美しさを他者に依存しきった虫螻を前に。
ウィンダ【黙れ──黙れ、黙れ、黙れ!!私を崇めろ、私を求めろ!私を、私を賛美しろ!私を愛さないものは赦さない!私を認めないものは赦さない!決して、決して、決して!!】
チルノ「認めないし、愛さないぞ。ただのちんけなクズじゃないか、お前」
ウィンダ【私の美しさを何故わからない!?救いようのない程バカなのか!?私の身体、力!美貌!誰よりも優れているだろう!】
チルノ「大事なのは心だ。お前はそれが腐りきってる。『しょーみきげんぎれ』の『さんぎょーはいきぶつ』だな」
ウィンダ【だあああぁぁぁまぁぁぁぁあぁあぁあぁあれぇえぇえ!!!】
チルノ「皺まみれだぞ、おばさん。…と言っても、お前なんかが幻想郷に来ても困る。大ちゃんたちもいっぱい困るな。…よし!」
ブリュンヒルデ「マスター?」
チルノ「令呪を使う!──オヤブンとして、コイツはここで終わらせるぞ!」
チルノは決断した。そしてそれは、神の意志の後継だった。
──この生き物を外に出さない。彼女の妖精眼は、ウィンダの醜さをここで消滅させることを選ばせたのだ。
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