人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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白き外套の者『…………』


オーディン「逃さんぞ。無知蒙昧」


『………』

オーディン「贖罪の邪魔も、汎人類史への攻撃もさせん。──始まりの悪魔共のマスターよ」

『………』

(感想とメッセージは今から返信します)


滅菌断罪

【では、まともに見るのもアレな罪人達の右往左往の駆除の手法をゆっくりと堪能しつつ説明させてもらおうか。さながらデスゲームの運営と、それを楽しむVIPルームのように】

 

祭壇に繋がる光が真上に伸びる状態にて一同が待機する湖。オーロラの呼びかけに益々無責任な赦免を望む者達が、光に誘われるように殺到していく。

 

【散々呪われ、焼き殺されていたアレらは存分に苦痛と死しても終わらぬ罪業、いわゆる地獄の責め苦というやつに散々解らされただろう。意地でも免罪を望むために行進するはずだ。単に『これ以上痛い目に遭いたくない』という利己的な理由で赦しを求める為にな】

 

モニターにて見てみれば、地面の色が見えない程の質量でモースが溢れ返り、鐘や活動拠点たる泉に向かって殺到するさまが映し出される。先の会合にて見掛けたモースとは比べ物にならないほど。まさに魑魅魍魎そのものだ。

 

【呪いに果てがないのは、彼等の打ち捨てられた死骸が呪われ、供養もされずに残っているからだ。そして彼等の刻まれた罪が触媒となり、例の唆したとされる輩のサーヴァント…使い魔として、始まりの原罪達が召喚されているのさ】

 

「カース・ロンギヌスの呪いの原動力って事ですか?」

 

【そうなるね。祭りの概念があるなら、罪の概念で喚ぶ事も道理は通る。未だに風と翅が見えないのは、モース共を隠れ蓑にしているからか…まぁ、どの道今から炙り出すさ】

 

そう語った瞬間。泉からも見えるほどの巨大な火柱や、火のドームが幾つも立ちこめる。その圧倒的な火力は、罪人達を裁く地獄の業火。

 

【いちいち湧き潰しをするからキリがない。こうして開かせた地獄の蓋に、ナパーム弾を放り込ませてやれば効率のいい焦土作戦の出来上がりだ】

 

「炎の厄災、いや、ウーサー…!まるで鐘を守るかのように…!」

 

ライネックが感嘆する様に、炎の厄災がさらなる憤慨と奮闘を以て地獄の黒を灼熱に変えていく。どこか範囲確証と出力設定をしていた以前とは違い、ソレはまさに空爆、大空襲に等しい規模だ。

 

「今なら解るぞ。ウーサーは都市部のモースを焼き払うと同時に、巫女やロンゴミニアドの在り処を我々に示していた…」

 

【それ故、万が一にも守護対象の破砕を控えたが故にせめて範囲は狭めていたが…今はその憂いもない。罪人は、業火に焼かれるのが不変の理だ】

 

その範囲規模は凄まじいものだ。まず、鐘の前に火柱を立て進軍を停止させる。次にモース達を後退させながら無慈悲な爆撃を間断なく叩き込んでいくという情け容赦のない対地上への苛烈な攻撃を、ここが決め手であると定めたかのようにペンドラゴンは繰り返していた。

 

【どれだけ苦痛と困難があろうとも、眼の前に希望をぶら下げられていては進まずにはいられない。身体を焼かれようがどうであろうが、火に突っ込んで身体を焼かれるしかない哀れな連中だ】

 

「うわぁ…立ち止まったモースが後ろから押されて将棋倒しみたいになってる…」

 

【だが、これだけじゃあ面白くない。心神喪失状態の輩を害しても苦痛にはなり得ないものだ。というわけで──カービィ、お願いしよう】

「ポヨ!」

 

ニャルに声を掛けられたカービィが、ワープスターにてペンドラゴンに突撃していく。それは焼き殺されながらも湧くモースに対する追撃を牽制する役割を担うが為だ。

 

【そんなに欲しいのならくれてやろう。汎人類史の大発明、『免罪符』だ。オーロラ様】

 

「解ったわ」

 

オーロラはニャルが取り出した呪符を風に乗せ、ブリテン中へと拡散させた。それは、ニャルがホープ達やルイノス達の状態を研究し、ケイオス・カルデアで擬似的に再現するように作ったもの。

 

【これを手にした罪人は、罪はそのままに生来の霊基状態へと再臨される事となる。偽りとはいえ、モースの状態から開放されるということだ】

 

言葉通り、免罪符に触れたモースは光に包まれ、元来の姿であったであろう妖精の姿へと戻っていく。それはホープらに齎された、赦しの救いによる呪いの終わりと似た現象。

 

【だがまぁ…そんな美味しい話があるわけないのは少し考えれば分かることだが、それが解る妖精はモースにならん】

 

モニターから聞こえてくる免罪符を得た妖精の歓喜の叫びは、即座に断末魔に取って代わる。当たり前だが免罪符の総量はモース達の百分の一あるいは千分の一だ。そんなモースの坩堝で、救いを得たらどうなるか。

 

「免罪符で元に戻った妖精を…モースが、バラバラにしてる…」

 

キャストリアのドン引きの声音に、ニャルは満足げにエキドナから貰った弁当を開く。

 

【因果応報。権謀術数で神と巫女を騙した魔物の末裔に相応しいシチュエーションを考えていたのさ。元々自分だけが赦されればいい、というのが罪人共の思考回路だっていうのは把握済みだ。ならばこうして、偽りだろうと救いを椅子取りゲーム方式でやらせてあげたらどうなるか】

 

偽りの救いを見抜けぬ浅ましい罪人の五体を引き裂き、四散させるモース達。悪辣な点は更に織り込まれている。

 

八つ裂きにされた罪人の身体に触れたモースも、先と同じ様に元に戻る。バラバラになった罪人が増えれば増えるほど、免罪符となった罪人の身体が許され、次の免罪符となる。

 

【齎されるのは赦免じゃない。殺菌だ。消毒のマーキングにしか過ぎないソレを、モースはモース同士で奪い合う。短絡的に求め手にしたバカどもは、殺菌された後大地にばら撒かれる】

 

元々許される手段など、ケルヌンノスと巫女に謝罪する他はあり得ない。それでありながら、誰が用意したかもしれぬ赦しに手を伸ばす浅ましさにより、益々もって自身らを断罪へと押し潰していく。

 

【そしてそんな醜態を見せれば、一番怒るのは誰かということにも気が付かない】

 

瞬間、炎の中からモース目掛けて大量の呪いの腕が伸び、無差別にモース達を握り潰していく様が展開される。それは紛れもなくケルヌンノス神の怒り。呪いの厄災の顕現。

 

【反省する気概無しということを見せてあげれば、後は楽なものだ。『自分達が楽になれればそれでいい』という事を醜くも晒した連中を、反省するかもなどと試す理由ももうあるまい】

 

呪いの厄災に追い詰められ、ブリテン中央に敷き詰められるモース達。皮肉な事に、免罪符効果により次々と生前の姿を取り戻していく。その顔は一様に恐怖と絶望を刻み込まれた様相だ。つまり、呪いという心神喪失などで裁きからは逃げられない。逃さないのがニャルの脚本。

 

【そうすれば…齎されるは終末装置の断罪だ】

 

炎、呪い、そして極めつけに至るは最も強き厄災。ケルヌンノス神がいるとされるブリテンの大穴から、超巨大なエネルギー反応がもたらされる。それが何かなど、語るまでもない。

 

【トネリコや、ケルヌンノスやヴォーティガーンの目論見はここに果たされる。罪人達への断罪を。罪から逃れんとする雑多に粛清を。救いようの無さは、偽りの赦しに縋る浅ましさにて示された】

 

ニャルの言葉通りに、ブラックバレルの超絶級のエネルギーの奔流に、罪人達は断末魔すら上げられずに消え去った。それはこの地に蔓延る呪いの根源への、まさに滅菌断罪とも言うべき作業であった。

 

【免罪符にはアヴァロンの戒めと似た魔術を込めた。罪なき者しか活動できない仕掛け、二度と大地からモースは湧き出まい。とすれば…そろそろ出てくるはずだ】

 

『氏族の反応!出てきたわ、これが風と翅の悪魔よ!』

 

【ほら、多分最後のゴミ掃除だ。頑張り給えよ、妖精諸君?】

 

「は、はい!」

 

ホープ達は慌てながらも悪魔に向かいとんでいく。カース・ロンギヌスへの対策と、湧き出るモースの封殺と、厄災の面目を立たせる仕事をケイオス・カルデアは全うした。

 

「行ってきます!オーロラ様!」

 

「!…えぇ、気をつけてね」

 

 

「…ただ安全地帯で座りながら、ブリテン全てを翻弄し、妖精達を嘲笑し、もう一回滅ぼしたんですけどこの人…」

 

「味方にいていいんですかこの人?」

 

【出禁だよ。楽園カルデア以外ではな。カービィ!】

 

「ポヨー!」

 

ニャルの呼びかけに応え、ペンドラゴンの頭に乗ったカービィが湖に帰還するのだった──。

 

「「なんで!?」」




翅の厄災【く…!まさかモースの供給がこんな形で…!】

風の厄災【私達も見る影もないくらいにみすぼらしく…!どうするのよ、これ!】

翅の厄災【知りませんよ!とにかくあの方の意志を…っ!】

ホープ「逃さない……!!」

チルノ「また会ったな!クソヤローども!!」

翅の厄災【汎人類史…!】
風【忌まわしき妖精国の裏切り者…!】

此処に、妖精国の明暗を分けた者達が対峙する。

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