人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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【さぁて、久し振りにゲス野郎に戻るとするか。ルイノス君、そしてウーサー君。君達の力を借りて、この妖精国に蔓延る膿を一掃する。呪いに満ち溢れるのはしっかり供養せず燻るからだ。全方位から来る呪いを、いっその事一纏めとする】

ウーサー「出来るのか、そんな事が」

ニャル【無論だとも。誘蛾灯とそれにまつわる虫と考えたならあまりにもシンプルだ。巡礼の証も、いっその事一つに纏めてしまえばいい。キャストリア君とCCA君は霊脈を掌握し、ロンゴミニアドと贖罪の鐘の容器を作ってもらう】

キャストリア「な、なるほど?」
CCA「一気に作るんですか?まだ翅に風の悪魔はいるんですよ?」

ニャル【はっきり言って、反省しない妖精を欺くなどベイビー・サブミッションだ。ケイオス・カルデア…いいや。汎人類史の邪悪さを見せてやろう】

キャストリア(うわぁ…嫌な予感…)


赦しの日

「では姉さん!ロマニさん!霊脈を起動してください!はじまりの勇者達の鐘を作る魔力を、霊脈のに乗せ一気に聖剣魔術で制作します!」

 

今回は人の輝きでなく、化け物たる悪妖精の駆除の為にケイオス・カルデアが担当することとなった贖罪の下準備。ニャルが肌をツヤツヤさせながら指揮を取り、キャストリア、CCAの作業を最適かつ最短で完了させる。

 

『了解だ!モルガン陛下、一気に頼むよ!』

『任せなさい。我が妹は場を整えれば完璧に仕事をこなします』

 

やる気に溢れたロマニが指を五本使い、モルガンが妹の霊基を霊脈に繋げ一気に魔力を流し込む荒業を執り行う。それは聖杯の事象成就とノウハウを同じくするもの。願いを叶えるまでの時間や困難を、膨大極まる魔力で前倒しする。つまりこれは、CCAを簡易願望機とした事象短縮なのだ。

 

「うおぉおぉお…!!ブリテンの星王の手にかかれば、この程度の負荷なんてへっちゃらなんですからーーっ!!」

 

そこにかかる、霊基が砕けるレベルの負担をモルガンの防護魔術とオーディンのルーン魔術がカバーし、聖剣の内に秘められた膨大な理想と幻想を魔術として使用する。人々の願いにより打たれた聖剣を至上の笏として、願望を成就させる。

 

「理想投射、魔術式起動!レイライン確保……!!至れ!約束された理想の願いへと!彼女らの望みを、叶え給え───!!!」

 

そのまま、泉の魔術式とトネリコの術式を強制接続。北の牙の鐘から、かつて都市があった土地に配置される内容無き無垢の鐘。黄金の粒子が星空のようにブリテンに満ち、無から五つの鐘が輝き生まれる。

 

「…よし!これだけの魔力と精密な術式があれば…!」

 

キャストリアも聖剣魔術の作り上げた霊脈の基点に従い、十二の霊脈を『仮想新造』し、霊脈閉塞型武装の為だけのエネルギーラインを、自らの管理する聖剣全てを触媒として天空に辿る霊脈として作り上げる。それは、空にパイプラインを新設するような無茶苦茶な芸当。

 

「一本使い切りだけど、霊脈を引き換えに撃つトネリコ謹製対神兵装、ロンゴミニアド装填完了!指示さえあれば、いつでも撃てます!」

「よっしゃー!見ましたか皆さん!キャスターアルトリアにCCAが揃えば、いくらでも困難はショートカットできるんですよ!三クラスに対魔力なんてつけたヤツはくたばれ!!」

 

私怨も存分に交じる感嘆を吐くアルトリア達。星王、聖剣の管理者、魔術王、女王。そして救世主の、魔術における極みたる者達の渾身の仕掛けは今成就する。

 

【そもそも死骸などを踏みしめながらする贖罪など感染病不可避だ。そういう荘厳な儀式は、天にてするに限る。よろしいか!巫女、祭神、並びに聖剣使い!】

 

「無論だ。希望を紡ぐ戦い、断じてしくじるつもりはない」

「ケルヌンノス様も万端です!」

『ヌーン!』

 

三者がやる気を見せ、ニャルはさらなる段階を踏む。それは、かつて魔物が行った卑劣極まる儀式の再利用。

 

【かつて私の同類六匹は、ケルヌンノスを毒殺するために偽りの祭りを開いた。それは卑劣かつアヴァロンに帰れぬ程の悍ましい原罪であり、故に罪として永劫刻まれている。それは『祭り』としての概念がこの地に残っていると言うこと。──愚かなる私と同じ穴のムジナよ。見るがいい】

 

「ケルヌンノス様、その慈悲と力を此処に。どうか善き者達の赦免の祈りを聞き届け給え…!」

 

【これが、『神を祀る』という事だ!】

 

『ヌーーーーーンーーーーーーー!!!!』

 

その容れ物たる六つの鐘に、ルイノスの祈りを通じてケルヌンノスの神たる力が注ぎ込まれる。かつてそれは、六匹の悪魔が行った『祭り』という状況を呼び起こし、逆利用したもの。

 

【ケルヌンノス神は反省を見受けられたなら、自らの身体を大地にし巫女と礎になるつもりだったのだ。神が大地となり、巫女が万物を産み出す役目を担うことで新たなる妖精の未来を作る。短慮な幼稚さで台無しにした、神達の献身と赦免を見るがいい。ケルヌンノスの力と巫女の願いは、正しく祀る事により全開する】

 

ケルヌンノスは慈悲の神だ。なにもかも無くなった世界に現れたのは意味がある。反省し、改めたなら、言われずとも皆を繁栄させる大地とならんとしていたのだ。

 

そしてその遺体たる大地を巫女に託し、妖精たちと共に新たなる全てをはじめる。はじまりの悪魔どもは、愚かなる事に自らの欲望にてそれを歪めに歪めたが故に呪われた。

 

答えははじめからあったのだ。悔い改めたなら新たなる始まりは約束されていた、踏み躙った『もしも』を、楽園は形にし敬意と共に則り形と成したのだ。

 

「ウーサーさん!今です!今始まりの鐘、贖罪の鐘は霊脈を通じて一つになっている…!!」

 

ならば、その喪われた、することの無かったものをこちらが果たす。成れの果てでなく、真に勇者たる『もしも』の彼等が、異聞帯の自身らの罪を背負うことと引き換えに果たす赦免の告解。

 

「我が聖剣に眠りし勇者よ。永遠に敬われるべき大恩在りし妖精達よ。その勇姿と意志を示し給え。永劫の贖罪に今、赦免の鐘を鳴らし給え」

 

祈るルイノスと背中合わせに、高らかに妖精達の勇気が打ちし聖剣を掲げる。そこに宿る意志が、贖罪の儀式を行う活路を拓く。

 

「来たれ!『栄光の六人、始まりの勇者(グローリー・シックス・ブレイブフェアリー)』!!ウーサー・コールブランドの魂の叫びに応え、善なる者に力と未来を齎し給え──!!」

 

聖剣を触媒として、聖剣使いでありながら六妖精を招く、ルイノスとケルヌンノスが在る時に使用される秘匿宝具。それの真名開放を、高らかに行う。

 

「おぉっ!これが素晴らしき、汎人類史の始まりの妖精の輝き!」

「五つの輝きが、ファング様の鐘に集って…鐘に宿っていく…!」

 

再会を喜ぶように、北に光が伸び、そしてブリテン中に制作された鐘に宿っていく。一言もかわさぬのではなく、共に語り合う空間は今作られる。

 

「彼等の善を…!聞き入れ給え───!!」

 

ウーサーの声に応えるように、六つの鐘が輝き、魔力の奔流が現れ鐘と鐘を繋いでいく。それはまるで、妖精達が手を繋ぎ空を踊るかのように。

 

「はああぁっ───!!!」

 

ウーサーが高らかに聖剣を掲げたその場所に、六つの鐘より出た魔力がウーサーの持つ聖剣の光一つになり、天空を貫く虹の柱となりてブリテンを覆いし暗雲を切り裂くように打ち晴らす。屹立せし光の柱は、汎人類史が組み上げた、ケルヌンノスを祭り上げる為の『祭壇』。呪いも介在しない、祝福に満ちた天空の祭壇を、ウーサーは全てを懸けて作り上げたのだ。妖精達と共に。

 

「この光の先に…六人の勇者は待っている。巫女の鎮魂に赦免の鐘を鳴らす贖罪の懺悔も、あの天にて行うといい。君達の祈りをもって、祭神たるケルヌンノスに想いを伝えろ」

 

「ウーサーさん…ルイノスさん、ケルヌンノス様…!本当に、ありがとうございます!!」

 

「…ケルヌンノス神も、ルイノスも、誰かを恨み呪うなどという行為からは最も遠い箇所にいる者達だ。終わらせてやってくれ。この苦しみに満ちたブリテンを」

 

「至りましょう。救世主が目指した理想郷へ!」

『ヌン!』

 

「──はい!!必ずや、皆で一緒に!理想郷へと!」

 

巡礼を束ね、贖罪を天空の祭祀と昇華せし楽園流の懺悔の旅。死体を踏みしめるのではなく、罪なき黄昏の空へと至る。

 

【宇宙は空にある。赦しは天にある。思考の次元を引き上げ、我等は神への贖罪と成す。王の財たるものに、地獄の汚泥は似合わない。お前達は私と同じ穴蔵で消えてもらおう】

 

贖罪と、赦免の場は整った。ならば次は、蔓延る呪いに邪魔者こそを始末する。

 

【此処からは──お前たちとの邪悪さ比べだ】

 

人間であるニャルラトホテプは、その嘲笑を隠すことなく。口を歪め死骸を睨むのであった。

 




ニャル【では、第二段階だ。カービィ?ワープスターに配置についてくれ。ホープ、ビリィ、バーヴァンシー、チルノは準備を】

ライネック「ニャル殿、何をするつもりか?」

ニャル【モルガン陛下、首尾はどうです?】

モルガン『問題ない。メリュジーヌから聞くに、協力するようだ。風の力も振るうつもりとも知った』

ニャル【よし──では、スピーチ開始だ】
ルイノス「す、スピーチ?」



ニャル【呪いに喘ぐ罪人共よ。未だ赦されぬ罪人共よ。お前達に最後の機会をやろう】

ブリテン中に響く、邪神の声。



ニャル【許しの道は今開かれた。天の柱の先に至りし者は、厄災と苦難から開放され遂に自由となる】

悪辣極まる、囁きの甘言。



ニャル【許されず燻るもの共よ。赦しを乞う者よ。今こそ全ての罪から解き放たれる為に甦れ。彼の日、涙と罪の裁きを。灰より戻り、須らく天の玉座に集うべし】

かつて神を騙した者共に、赦しを騙る意趣返し。



【されば祭神よ、その時彼等を赦し給え。今、永遠の死を与える──AMEN】

それは、【許せるものなら許してみろ】という、神を騙る偽神にもぶつけたニャルラトホテプ渾身の皮肉にして嘲笑。

それはまさに怒りの日。それはまさに罪人共の終末の時。


───待ち受けるが、【天地万物灰燼の日】とも知らず。

モルガン『では、生贄としての役割を存分に果たせ。お前は赦しを求める罪人共のよき撒き餌になるだろう』

?『…わかったわ。せめてもの、罪滅ぼしとなるのなら』

ニャル【御心配なく。我々は必ずやお守りしますよ。──オーロラ様】

オーロラ『様は…結構よ…』


【【【【【【【【】】】】】】】】
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【【【【【【【】】】】】】】】】
【【【【【【【【】】】】】】】】
【【【【【【【】】】】】】】】】

偽りの赦しに、呪われし罪人達が次々に蘇らんとしていた──。

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