人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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アヴァロンの影

ブライド『おぉ、いし。楽園の影に、石』

ギル「こやつもまた、救世主の一行であろう。ドワーフ、とこちらの歴史では呼称するのであったか」

──石と身紛うばかりの大いなる年月、この地にて待っていたのでしょうか。ひたすらに、この地に贖罪の意志を持つものが現れると信じて…

マーリン「そのようだね。彼は石板を用意していた。それは、聖剣制作に必要な手順。楽園の妖精…つまり、トネリコの使命をただ後押しするために。完遂させるために」

フォウ(なら、アヴァロンにトネリコの導きで?)

プーリン「それは違うよ、フォウ。彼は必要な素材を持って自分の脚でここに来た。罪を償う証としての素材を持って」

フォウ(…まさか!)

マーリン「哀しいことに、自身のすべてをかけたが故の成果だから彼は目覚めない。だけどそれは、これだ」

プーリン「トネリコが、新しい未来に行けるようにと。聖剣の担い手の未来をと願い、単体で討ち果たしたはじまりのろくにんが一人。【土の厄災】。その遺体さ」

…そう。彼は頑固者だ。容認しなかった。跳ね除けたのだ。

主を人柱にした楽園など。免罪の犠牲など。

マーリン「そして、彼の身体は炉心ともなっている」
プーリン「素材があれば…ブライドちゃんの鎧が作れるんじゃないかな?」

ブライド『おぉ』

主に示したのだ。

自己犠牲は正しくはない。礎とするのは自身で良いと。


土の遺志、騎士の拝命、炎の守護

「皆さん、お願いがあります!」

 

いよいよ都市…ペンドラゴンが獄炎の焦土と化している都市部へと向かわんとした際、ホープ、そしてビリィにバーヴァンシーが一行へと呼びかける。

 

「どうか私達にも、罪と向き合える強さをください!贖罪が終われば返す力で構いません。皆さんの背後ではなく、傍に立ちたいんです!」

 

それは、ホープたち自身の決起にして蜂起。自らの力を、厄災を乗り越えられるように高めたいという願い。真摯なる渇望であった。

 

「こいつらの気合は本物だ。親分のあたいが保証するぞ。誰かに任せきりのごめんなさいは嫌なんだそうだ!」

 

チルノがうんうんと頷き告げるように、彼女たちの中には自立心に責任感がしっかりと根付いていたのだ。それは、責任を取ろうともせず罪から目を逸らし続ける悪魔とその末裔たちを見て、いよいよ自らの意志で戦いを選ぶまでに至ったのだ。

 

「貴方達の足を引っ張るわけにはいかない。せめて自衛になるくらいの力を持っておきたいんだ」

 

「お母様は、ギフト…という、特別な称号を使って騎士の皆を強くしていた。トネリコお母様のやり方を、皆が出来るかどうかは解らないけれど…」

 

『ギフト。第六特異点で獅子王が円卓の騎士に使用していた祝福の事だね。どうかなモルガン陛下?そちらの歴史では使用していたかな?』

『…えぇ。厄災と成りうる妖精に、縛りと自戒としてのギフトは使用していました。理論的に言えば、問題なく行うことが可能でしょう』

 

ロマニの言葉に答えるモルガン。そう、何を隠そう妖精騎士ギャラハッドとしてのギフトをマシュが受けた世界線も存在する。その観点は、力を増大させる手段としては実に理にかなったものだ。

 

「ぬぅ……そんなものは不要だと言いたいのだが、敵ははじまりの悪魔達を前にして護りきれるか保証はできん。万が一に備えるとならば、止めるわけにもいくまい。黄金の旅団よ、果たしてそれは可能か?」

 

『問題ありません。元々私やアルトリアが使っていた魔術なのですから。名前を冠するくらいの事は朝飯前です』

 

モルガンはそう告げ、思い耽る。ウーサーの生み出し方からして、彼女の内面はほぼ女王だったのだろう。だが、心を壊す事はなくひたすらに理想と夢を信じていたが故に、冬の女王にならず救世主としての自身を保ち希望を未来に託したのだ。

 

「モルガン。私からもお願いします。彼女達の旅路を、彼女達が力強く歩めるように」

 

騎士王もまた、彼女達の意志を汲む。彼女達の願いは、悪魔の末裔たちの自分勝手な要求ではない。何かをしたいという発起なのだから。

 

「ビルディング担当として空気を読み自重するCCAなのであった!」

「あ、じゃあ私は龍脈使った援護射撃担当のキャストリアとして自重しますね〜…」

 

「お前はいつまで昔の制服着てるおばさんみたいなことしてるんだ?キャストリア」

「はぁああぁあ!?⑨ゥー!!そういうところだぞ⑨ゥー!!」

 

妖精眼と歯に衣着せぬチルノの言葉の刃にキレ散らかすキャストリアを余所に、その提案をしたとされるバーヴァンシーが言葉を紡ぐ。

 

「私達の罪は、私達のもの。向き合うことも大事だけれど、せめて自分の脚で歩いていきたいと思ったの。お母様が見出してくれた道を、ちゃんと。助けに甘えて、楽ばかりしたら、いつか、その旅路を忘れてしまうと思うから」

 

『バーヴァンシー…』

 

「私、歩くのがやっと。そんな私でも、皆と一緒に旅をしたいの。甘えたままの、無責任なままではいられない。皆で胸を張って…ケルヌンノス様に立派な姿を、見せたいから」

 

ホープ達は頷きあう。それは彼女達が辛い現実や理不尽な罪業に向き合うと決意したがゆえのものと。別の次元の娘…悪辣の仮面を纏わせ己を護らせたかつてのバーヴァンシーと、同じ魂の色を見出したが故に。

 

『…いいでしょう。ですが決して与えた力、得た力に酔いしれ、慢心や傲慢を呼び起こさぬ様に。これは、この罪業のブリテンを生き抜くための導きと心得なさい』

 

「やったぁ!ありがとうございますモルガン様!オヤブン、これであなたを支えられるよ!」

 

「ふっはっは!ますますあたい達妖精のすげぇところが増えてしまったな!リッカ、あたいたちはいずれすげぇ事になるぞ!」

 

「もうなってるよ。すっごくね!あ、マシュは私の騎士だからギフトは大丈夫だよね?」

「先輩!!!はい!私は先輩の騎士、グランドシールダー妖精騎士ギャラハッド兼マシュ・キリエライトです!!」

 

(リッカからのマシュへの信頼も重厚なのだな)

(ケルヌンノス様が仰っています。夫婦漫才だと!)

 

そうして、モルガンの手により三妖精にギフトが施される。それは、妖精騎士としての力を授ける為の魔術。呪いを抑えるのではなく。悪意に負けぬ高潔さを宿すおまじない。

 

『ホープ。あなたはその善性と誠実さから、心優しき騎士『ベディヴィエール』の名を与えます。どうかその希望を絶やさぬように』

 

「はい!黄金の旅団の皆様とともに、一生懸命頑張ります!」

 

円卓における良心にして、心優しき騎士。その名を受け継ぎしホープは妖精騎士ベディヴィエールへと変化を遂げる。白銀の衣服に銀色のツール、アガートラムを着用したバトルピクシー。

 

『ビリィ。あなたはその頑健さに壮健さ、人から学び続けた公正さから、高潔なる騎士『パーシヴァル』の名を与えます。その探究心を忘れぬように』

 

「謹んで拝命致します。皆にこれからも、歪みねぇ心で接し続けることを誓います。真なる騎士道へ、いざぁ…」

 

タンクトップとズボンに加え、手甲に足甲がついた雄々しき騎士、妖精騎士パーシヴァルへと変化を遂げしビリィ。肉体そのものが鎧にして鋼であるため、単純な追加に留まれど威風は陰らない。

 

『バーヴァンシー。………』

 

「…モルガン、様?」

 

モルガンはその姿に、深い安堵を覚えた。自身が救世の旅をしていた頃は、何度も何度も向かってはその善性を保護することが叶わなかった愛娘。悪虐の令嬢たる仮面を被せねば護れなかった愛娘。

 

こうして、別世界では彼女が彼女足り得るままでいてくれた。その事実が、彼女にとっては言葉を詰まらせるほどの感動であった。先は長い。そんな感傷は、あまりにも速いのだとしても。

 

『何でもありません。…バーヴァンシー。繊細にして儚くも美しい貴女には、麗しき騎士『トリスタン』の名を与えます。どうか…その美しき善性を何恥じる事なく奏でなさい』

 

そして、バーヴァンシーはギフトを受け取る。カルデアからの魔力を受け取り、紅き髪をたなびかせ頷く。

 

「──確かに受け取ったわ、モルガン様。これから私は騎士として、皆を全力で助けていくってワケね。なぁ、親分?」

 

「おぉ、バーヴァンシー!立てたか!」

 

「ホープ達を励ましてくれてありがとうな、オイ?これからは私も一生懸命頑張るつもりだから、親分としてしっかり背筋伸ばせよ?よろしく頼むな?お・や・ぶ・ん♪」

 

「元気になったなぁ!言われるまでもない!皆まとめて、あたいに付いてくるんだぞ!」

 

「ふふ。着々とトネリコの騎士達が増えていきますね、モルガン」

 

『そうだな。私としても、彼女達にはその善性を絶やさぬようにあってほしいと願う程度の情はある。…トネリコが産み出した赤き竜、その厄災となれば脅威はお前が解っている筈だ』

 

「えぇ。厄災のペンドラゴンを相手取るのは初めてではありますが…必ずや巡礼を果たしてみせます」

 

「オラ、ビリィにホープ!ボサッとすんなよ、円陣組むぞ。私達はこれから一丸になって巡礼を始めるんだからな。音頭頼むぜ?オヤブン?」

 

「うん!」

「随分逞しくなったなぁ…でも、ナイスでーす」

 

「やってやろうね、騎士王!」

 

「よーし!!絶対ごめんなさいするぞー!!!」

 

「「「お〜!!!!」」」

 

「──はい。新たなるブリテンを、始めましょう」

 

そして一同は歩みを進める。

 

赤き竜、ペンドラゴンの待つ場所へ。彼が護る、その地へと。




『巫女の肉体、それが置かれている場所を魔法陣にて繋げておきました。どこか一つでも開放すれば、速やかにすべてが回収できるように』

『ですがこれは、妖精達に知られてしまえば抜け道、或いは巫女の回収騒ぎにも繋がりかねません。ですからこれは、あなたにだけ教えます』

『そして同時に、黄金の旅団へと託す『兵器』を地下へと隠します。私が組み上げた術式、ロンゴミニアド…それと、妖精國を巡りかき集めた、真作足りうる宝物たち』

『ウーサー。あなたの覚悟を信じこの守護を託します。あなたが、責務から解き放たれた時…これらを彼等に渡してあげてください』

『…すみません。あなたにそんな重荷を背負わせてしまって。でも、これだけは言わせてください』

『あなたが生まれてくれて良かった。最期の日に隣りにいるのが貴方であるのなら、何も怖くありません』

『どうか、我等の希望を御守りください。私の、ウーサー…───』

〜都市跡地 龍脈付近

【【【【【【【】】】】】】】【【【【【【【】】】】】】】【【【【【【【】】】】】】】


──竜の守護に、安らぎはない。


ペンドラゴン【──────!!!】

トネリコの遺産が、正しく渡るその日まで。

彼は永劫、ブリテンを滅ぼし焼き尽くす厄災となるのだ。

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