人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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オベロン「…奈落の穴、か」

ブランカ『チチチ…』

オベロン「あぁ、解ってる。…もう僕はただのフラフラしているだけの妖精さ。本体は、ヴォーティガーンごと持っていかれたからね」

オベロン(だが解せない。奈落の虫なんてあの妖精には無縁なはずだ。なんのために取っておいている…?)

オベロン「…もしかしたら、ケルヌンノスにヴォーティガーンなんて宿したせいで、僕以上にぐちゃぐちゃなのかもね」
『チチチ…』

(…対処を間違えるなよ、カルデア。さもなきゃ何もかもがぱぁになって、おさらばだぜ?)



海岸付近

白き外套の存在『………………』


『──エリ・エリ・エマ・サバクタニ』


感謝の心、尽きぬ炎

「さて!強く後押しもしてもらった事だし、この勢いを大事にして贖罪の旅を進んでいこう!誰もが望んでいる贖罪なら、やり遂げられない理由はないよ!」

 

リッカの力強い言葉に、一同は強く頷く。ファングの言葉と激励は、贖罪に挑むもの達の勇気を大いに奮い立たせた。ケルヌンノスが待っているとされる、その果てへと。

 

 

「まずケルヌンノス様に対する償いとなれば、それはケルヌンノスの巫女様のボディと尊厳を妖精たちから奪還し、かの神の下へと返すべきだと僕は思う」

 

筋骨隆々の妖精ビリィは、ケルヌンノスの巫女の処遇の改善を強く主張していた。彼にとっての、人間へのスタンスがそうさせるのだ。

 

「極めて不本意かつ残虐な事態とは言え、妖精国に人間の概念と技術を齎してくれたケルヌンノスの巫女…今こそ彼女の地獄を終わらせ、ケルヌンノス神との在るべき姿へと戻したいんだ!」

 

天地開闢のマッスルポーズを構え、ケルヌンノスの巫女の尊厳を主張するビリィ。事更に、彼は人間への愛着と尊敬を口にしていたのだ。

 

「ビリィは人間の事、大好きな妖精なんです。色んな土地を回って人間の皆から料理や建築の技術を学んだり、考古学の観点を学んで、トネリコ様の旅でも凄く頑張ってくれたの!」

 

ホープは誇らしげに、タンクトップとズボンのビリィの周囲を回る。ホープを護り、共にケルヌンノスの赦しを得たビリィの心身は高潔であり、人間に敬意を払い、その技術を模倣ではなく自らの血肉として体得し、しっかりと己のものとしていた数少ない妖精なのだ。

 

『模倣ばかりの妖精は劣化ばかりのガラクタしか生まない。それに対して、真に技術を体得したのならば、それは『真作を生む妖精』足り得るだろう』

 

『まさに妖精職人!ビリィ君はトネリコの旅路に相応しい『真作制作』の妖精だったんだね!』

 

「人間への尽きぬ尊敬を形にし続けた結果だよ。僕が悪魔の真相を暴いたのも、人間の方々の観察眼や考古学を学んだ部分があればこそなんだ」

 

ビリィは人間に寄り添い、その技術を吸収したが故にその真髄を体得していた。それが故にその根源たる巫女への感謝も他の妖精たちとは一線を画していた。

 

「ケルヌンノス神の怒りは騙された事より、巫女へ行われた語るも悍ましき蛮行への憤激が大半だろうと思う。ケルヌンノス神は慈悲深き神であることは証明されている。ならばこそ、巫女を地獄とも呼ぶに生温い地獄から解放してあげたい!それは、僕の譲れない願いでもあるんだ!」

 

「ビリィさん…」

 

ルイノスの前で熱烈に語るビリィ。それは愛情でもあり、親愛でもあった。人間という種族に対する博愛でもあった。彼は人間に従事し、残酷な妖精達から人間を護り、人間から数多無数の宝物を授かったと考えることのできる存在であるのだ。

 

『その意見にはカルデアも賛成だ。計算したところ、ケルヌンノス神は南東付近の大穴の遥かな下に鎮座しているとのデータがある。聖剣における浄化を行うには、かの神の遺体に再び動き出して貰わなくてはいけないんだよ』

 

『その際に、核となる存在と成りうる依代としてその巫女の肉体が候補に上がるのです。神から簒奪したものを、在るべき場所へ返す。それは贖罪として非常に理にかなった選択かと』

 

ロマニ、シオンの言葉に一同は賛同を示す。元々罪過と咎の満ち溢れた場所であるのだ。やらなくていい贖罪の手段などありはしないのだから。

 

「ルイノス、君にかけられた呪いもきっと解呪されることだろう。悪魔を討ち果たし、巫女を取り返す事により」

「はい、ウーサーさん。巫女から感じる感情は、戦慄に苦悶と絶望…なんとしても、その生地獄を終わらせなくてはなりませんから」

 

「あ、それなら巫女さんの身体がある場所に鐘を用意するのは如何でしょう。大抵、それを悪用して人間を出荷していた重要機関足りうる場所でしょうから、霊脈や地脈は設置条件にピッタリな筈ですよ。なんならそこでロンゴミニアドとかエクスカリバーの援護も出来ますし」

 

「アルトリア・キャスター!?マジですか!?」

 

「まぁ、CCAさんみたいに建設的じゃなくて脳筋思考ですけど。頭オーロラなはじまりの悪魔連中にはいい薬になると思う!思い、ます!」

 

キャストリアの弱々しくなる宣誓とは裏腹に、一同はそれが偽りで無いことを理解している。彼女は普段は冴えない少女魔術師を行っているが、こと肝心要には数多無数の聖剣を利用して戦うことの出来る存在なのだから。

 

『しかし、このブリテンの不毛の大地っぷりからしてどうやって巫女の肉体を見つければよいのだ…おぞましくも生きたままバラバラにした輩のせいで捜索の目処が…』

 

「それは大丈夫です。私が放たれる意思を追い辿り、皆様に正しい位置へと導かせていただきますので!」

 

『それにこちらでもおおまかな位置は予測してあるんだ。大きな反応は主に五つ!位置情報を転送するよ!』

 

そうしてカルデアが導き出した地点は、それぞれがかつて集落、土地として利用されていた跡地の場所となっていた。人間をクローニング技術で産み落としていた事から、その名残と言えるだろう。

 

『ですが、回収するにはいささか問題がありましてですね。こちらが、直近のその地点の情報です』

 

映し出された映像に、一同は驚愕と瞠目を露わにざるを得なかった。

 

燃えていたのだ。地平線の彼方まで紅蓮の炎が走り、暗雲の真下でありながら死骸の山たるブリテンを焼き尽くしていた。山火事、火災と言った生温い表現では表せない。それはまさに神罰か劫火の顕現だ。

 

『都市部周辺に、執拗なまでの空襲爆撃を繰り返すもの。それは炎の厄災と呼ばれる存在です。この厄災は私達には目もくれず、都市部を…いえ、正確には群がるモース達を間断なく焼き尽くしているんです。狂気、徹底的なまでに』

 

「炎の、厄災…彼も妖精が変化した存在なのかな…」

 

厄災は、救世主に縁深い存在が成り果てたものとしての共通点が見受けられる。ならばと出た疑問に、ライネックが答えた。

 

「いや、違う。縁深くはあるがあれは妖精ではない。あれは人間…正確には、かつて人間であった存在の変質したものだ」

 

「知りあいなのライネックさん!?」

 

「あぁ。トネリコの見出した人間であり、あの日婚姻をトネリコと結ぶはずだった、トネリコが汎人類史の人間を知り、人工子宮に人工卵子、竜の因子をかけ合わせ生み出した『ブリテンの赤き竜』、ウーサー。それがヤツの正体だろう」

 

ライネックの言葉は衝撃的であった。ウーサーはトネリコがその名の通りに生み出された、王となるべき存在であったとされたのだから。

 

「あれ!?でも婚約者だった筈じゃぁ!?」

 

「トネリコの遺伝情報は使われていない。環境を整え産み出しただけで血縁関係ではないからな。こやつを密かに人間の出荷台に紛れさせ、妖精達の習性を見せる名目で手放したそうだ」

 

そしてウーサーは人間として頭角を表し、円卓軍を組み上げる形で北方へと侵攻した。その際救世主としてあれこれ助言をしていく内に、結婚という儀式を容認する程度の関係にはなったらしいとライネックはむくれながら話す。

 

「ウーサーもまた、何か意志があって厄災に変じているのだろう。恨みや憎しみで我を喪う輩ではないと記憶しているからな」

 

しかし、その炎はあまりにも強く、苛烈で、容赦がない。

 

「炎の厄災…」

「ブリテンの赤き竜が、ブリテンを滅ぼす側に回るとは。…なんとも、皮肉なものです」

 

映像内の赤き竜は、ひたすらに地表のモースを文明から焼き払っていた。

 

(これって…)

 

そしてその中、リッカは一つ気付きを得る。

 

(何かを、護ってる…?)

 

その情けのない苛烈な攻撃は、ひたすらにモースを焼き払う他に…

 

誰かに何かを伝えているようだ。リッカはそう、かの厄災を見定めたのだった。




アヴァロンの影

マーリン「おやおや?」

プーリン「驚いたね、まさかこんなところに…」

土の妖精だった岩『』


プーリン「いかつく、大きな頑固岩が置いてあるなんてね♪」

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