人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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デイビット「三十秒、だな」

リッカ「おーい!!皆〜!!」

キリシュタリア「おおっ!見たまえ皆!巡礼組だ!」

カドック「馬に乗ってるな…キャメロットを展開して…」

ゴルドルフ『な、成る程。地上を一掃していたライネック卿が無害化したため、交通の便が快適になったということか!だから問題なく早馬を使える!当初の予定通りの結果となったな!』

ラムレイ【ブルルッ】

リッカ「騎士王は名馬を二頭も抱えてるんだね〜!」

ドゥン・スタリオン『プルルッ』

騎士王「ふふ、クラスの縛りがなければいくらでも宝具はあるのです。騎士王ですから(ドヤッ)」

CCA(くっ、意外と天然のかわいいよりだこの人…!サイカワアルトリアの立場があぶなぁい!)

モルガン(少なくとも一強ではないだろうに…)

ホープ「ライネック様〜〜!!」
ビリィ「お久しぶりでございます、排熱大公。よくぞ、よくぞ帰参してくださいました!」

ライネック「おぉ…よくぞ、よくぞ生き延びた。トネリコの希望。トネリコの見出した未来よ…」

バーヴァンシー「ぁ…」

ライネック「おぉ、そなたがバーヴァンシーか!トネリコの遺児、原初の善妖精!無事であったか…!」

バーヴァンシー「アヴァロンに…いたから…」

ライネック「…そうか。トネリコ…そうか…」

ファング『息災だったか?ケルヌンノス』

ケルヌンノス『ヌ〜〜〜〜〜〜〜〜ン!!!』

ルイノス『あぁ、歓喜の咆哮をこんなに…』

ウーサー「〜…。再会を、心待ちにしておりました」

カドック「…グランドマスターズの前身、Aチームにおける一般枠のマスターの役割は現地民との交流だ。君の得意技だろ、リッカ」

リッカ「ん!任せて!」

キリシュタリア「いつでも助けるからね〜!」
カイニス「無茶しやがって!死ね!!」

キリシュタリア「死んじゃう!?」

オルガマリー『さて、では…情報交換と行こうかしら』


救世主が遺せし神の手

「さあ、どうぞ。あくまで人間の技術を模倣したものだけれど、こう見えて僕は旅の一行の料理担当だったんだ」

 

キリシュタリアの奮闘、グランドマスターズの活躍により北部は護られ、そこから進めば存在するは、かつて救世主が婚儀を交わした教会。ライネックが護り抜いた、彼女が彼女であった場所。結界を貼り、ファストトラベルポイントに設定する。

 

『邪悪な妖精は近付けないようにしておいたよ!というか、だから料理が出来て一息をついていられるんだよね!』

 

「おぉ、タンドリーチキン…オニオンスープ…お代わりをください」

 

「うっわ〜、騎士王さん大食い〜!」

 

「くっ、その胸に沢山栄養が行くのはたくさん食べる君が好きだからですか…!同じブリテンなのにこの差は!?」

 

「トネリコお母様は…何でも煮詰めていて、雑だった…」

 

 

『…………』

「姉さ、ブフッww」

 

『そんな事は…ないと思うのですが…』

 

ビリィの用意した、人間の技術を『会得』した数々の料理に舌鼓を打つ一行。ライネックはそんな一行の様子を微笑ましげに見守り、言葉を紡ぐ。

 

「では、改めて。オレは排熱大公ライネック。救世主トネリコの妖精騎士の一角であるものだ。純潔の大妖精、ブライドの予言により話は聞き及んでいる。汎人類史の、黄金の旅団。心からこの出会いに感謝する」

 

「私は藤丸リッカって言います!こっちはマシュ、こちらは騎士王!キャストリアにCCA!ウーサー!ルイノスちゃん!」

 

「スーパー騎士、マシュ・キリエライトです!」

「騎士王、アルトリア・ペンドラゴン。ライネック卿、よくぞ主に尽くしました」

「ウッドワス、じゃないんだ。ライネック…あ、よろしくです」

「私こそがブリテンの最強魔術師!キュート・キャスター・アルトリアです!」

「ウーサーだ」

(!ウーサー…ヤツと同じ名…)

「ケルヌンノス様の巫女、ルイノスです!ルイノスチェック…はい!皆様免罪ですね!」

 

自己紹介を終え、一行は話し合う。先の死体を礎とする術式、というものはどういう事かと。

 

「うむ、本来オレは単細胞のバカだが、千年勉強しインテリになった。トネリコの目論見を詳しく説明できるぞ」

 

「参考書百冊は引き裂きましたもんね!」

「頭から何度煙を出した事か」

 

「言うなッ、ホープ!ビリィ!騎士には他に黒騎士エクター、妖精騎士トトロットがいたのだが…それは後でいい。まずはトネリコの、妖精の救済を伝えよう」

 

眼鏡をカチャリとかけ、ライネックは説明を始める。以下、彼の説明するトネリコが託した計画の概要である。

 

 

「まず、トネリコはこの妖精國…六匹の悪魔から始まった罪過と咎の積み重なるブリテンを完全に終わらせる、端的に言えば『空想切除』に当たる現象を起こさんとしていたのだ」

 

「!!」

 

『異聞帯の内部にいながら、空想切除を目論んでいたなんて…救世主トネリコはどれだけ凄い魔術師だったんだ!?』

『イヤミか、ロマニ・アーキマン』

 

「純潔の大妖精、我等が道を示しし大賢者ブライドの未来視を得たトネリコはまさに全知となったのだ!…こほん。その方法は一つ。この異聞帯は『悪魔が聖剣を作らなかった』という事実により成り立つ事から『聖剣を鋳造する』事を、トネリコは考案したのだ」

 

聖剣の製作。妖精國の完全な終焉。最早トネリコの思い描くブリテンに、必要なものはホープやビリィ、仲間たち以外に何も無かったのだ。

 

「そして、彼女が目指したのは人理強度を汎人類史にまで押し上げ、ホープとビリィ、バーヴァンシーという善良なる妖精を『救世歴』という『異聞世界』の妖精とし、汎人類史に送り届ける事だったのだ」

 

『異聞世界…成る程、間違った歴史と発展を全て切除し、見出した至宝と仲間達を汎人類史に託す。わた…トネリコが選んだ救済の概要』

 

「…無理もないことですが、ホープやビリィ達以外は完全に見切りをつけ、見捨てる事にしたんですね」

 

『理解はできる。トネリコ…その娘にとって、妖精國とは仲間達の団欒の輪だった。他の妖精達、そしてブリテンは自身の国を脅かす外敵と認識したのだろう』

 

モルガンが目を細める。彼女の選択は、手に取るように読み取れるのだ。

 

『いつか明日を迎える民であったが故に、手を差し伸べた。だがビリィ、ホープを見つけた事により、彼女の國は完成した。…それを護る為のヤツはまさに他の妖精にとって、冬の女王だったのだろう』

 

「でも…私達、ブライド様に聞いたんです。トネリコ様はどうやって聖剣を作るのだろうって。そうしたら…」

「…自分自身を捧げて、使命を果たす、と…私達はそこまでなさらなくてもいいと言おうとして、出来なかった」

 

空を見上げた横顔は、決意に満ち溢れていた。誰も、決して止められない程に。夢見る乙女は、とうの昔に死んでいて。そこにいたのは、國を守る女王そのものだった。

 

「だから、せめて結婚式は挙げてほしいってお願いしたんです!せめて幸せを掴んでから、全てを始めてほしいって!それなのに、それなのに…!」

 

「…トネリコ様も、ウーサー様も殺されてしまった。妖精達の、哀れで愚かな蛮行によって…」

 

ホープとビリィの嘆願なくば、トネリコは『婚儀』としての体裁は取らなかったろう。街に氏族を呼び集め、魂をまるごと活用していた筈だ。

 

『じゃ、じゃあその異聞世界と、トネリコがブリテンに刻んだ術式は関係しているんだね?』

 

「あぁ。ブリテンは妖精達の死骸の折り重なった神秘の肉塊。浄化し、ろ過し、魔力として変換出力が叶うならば、それは膨大な『燃料』になる。悪魔が罪を犯した時間から、一万二千年分蓄積されたとてつもない魔力にな」

 

『一万二千年分!?ゲーティアの集めた魔力でも紀元前1000年から2016年までなんだ!それで星が生まれる瞬間まで逆行できるくらいの魔力を生成できるんだ、それが…この一万二千年分!?』

 

異聞世界。ホープ達が迎え紡ぐ『救世歴』を織り成すために、踏みしめた穢らわしい死体、妖精國そのものすべて魔力にする仕掛け。それがトネリコの大魔術『サルベーション・アヴァロン』の実態。

 

「その術式が、『死体を魔力へと変換する大術式』だ。ブリテンの大地を壊されては困る理由はここにあったのだ。…しかし、トネリコは『変換』の術式は組めたが、『浄化』の術式までは辿り着けなかった。手持ちの魔術では、罪の浄化に数万年がかかる計算だったからな」

 

「まぁ…この世界の始まりの悪魔連中を見ていれば、納得しか無いと言うか…」

 

「そこで、大賢者ブライドの知見を借りたトネリコはお前達『黄金の旅団』に託すことにした。汎人類史からの来訪者。彼女のブリテンに最初に招く来賓。その同盟の証として、トネリコは用意した。『聖剣』となる材料…即ち、自分自身を」

 

「───楽園の妖精。その肉体と、あれば魂…集積情報…」

 

「む、詳しいなトネリコに似た少女。大賢者ブライドは、一万年に一人と言っていいほどの力と無垢さを持ち合わせていた。トネリコは彼女から、始まりの悪魔達の行使した力と魔術を貪るように学んだのだ」

 

「あー!だからトネリコさんって500年もかけて虫を克服したのかぁー!」

 

「ウェールズの森の皆は、本当に大切な仲間であり、お友達でした。…あんな事になるまでは…」

 

「よせ、今はいいのだホープ。…聖剣を作り上げたのなら、術式を起動させ、全ての死骸を魔力に変換し、ケルヌンノス神に放ち、ブリテンの歴史を全て終わらせる。繁栄するべきで無かった異聞帯を完全に切除し、制作した『聖剣』と『魔力』を汎人類史に託し、ホープ、ビリィ、バーヴァンシーを『異聞世界』と化した『救世歴』の存在として汎人類史の黄金の旅団へと保護してもらう。これが、トネリコの考えた救世。自らの國の繁栄。厄災を全て切り捨てた…救世主の願いなのだ」

 

一同は、ただ感嘆する他なかった。

 

狂気を感じるまでに練られた計画。

 

自らすらも材料とする概念。

 

死骸となった妖精達を躊躇いなく使い潰す無慈悲さ。

 

これこそが、救世主トネリコの全てを懸けた救済の全貌。

 

 

「…オレが護っていたものは、この北の教会の地下深くにあるものだ。何故か分からんが、今の今まで忘れてしまっていたもの。聖剣制作に不可欠なもの」

 

『…それは』

 

「あぁ。──あの日、毒にて死した日から色褪せぬ…トネリコの遺体だ」

 

…奇しくも、オベロンが偽装を解除したことにより、認識が叶ったのだ。

 

護り抜くべき、最重要の要素。自分自身すら希望の素材にした…救世主の遺体を

 




ホープ「でも…でも。すごく、すごく、ワガママで、言わないように、考えないようにしていたけれど、でも、やっぱり…」

ビリィ「…あぁ。同じ気持ちだよ、ホープ」

ホープ「…トネリコ様も、一緒にいてほしい。トネリコ様が一番頑張ったのに、作り上げた國なのに…どうしてトネリコ様がそこにいないの…?」


モルガン『……我が妻。トネリコを、どう思いますか?』

リッカ「うん…そうだね。天才だよ。とんでもない天才。どうしようもなく正しくて、どうしようもなく頭のいい。でも…」

バーヴァンシー「…泣かないで、ホープ」
ホープ「ごめんなさい…でも、でも…トネリコ様も一緒にいてほしかったの…」
ビリィ「………ホープ」

リッカ「…一つだけ。本当に一つだけ。間違えた事があるよ。それを──伝えなきゃ。彼女の目指した、國の中で」

モルガン『──えぇ。必ず、彼女の國を形にしましょう。その上で、徹底的に教育しなくては』

リッカは既に、決意していた。

トネリコの國を実現させること。

そして…

たった一つの罪を、彼女の代わりにこの地で贖うことを。



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