人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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ロマン『なんだ!?アルトリア達、一体何をしたんだい!?』

キャストリア「あぁ、どうやらライネックさんは復活の余地がありそうでしたんで、カルンウェナンやマルミアドワーズを空中に展開して」

ルイノス「私が、ケルヌンノス様に伝える赦免の祈りを捧げ!」

CCA「私が聖剣魔術によってライネックさんに解呪ビームとして叩き込みました!これでライネックさんは罪から解き放たれ、一人の騎士に戻ったのです!」

ロマン『力強くにも程が無いかなぁ!?』

ウーサー「心に深き想いがあればこその裏技だ。それに…」

ホープ『ライネック様!今そちらに向かいますから!』
ビリィ『くれぐれも無茶をなさらずに』

ライネック『ホープ…ビリィ…よくぞ無事でいてくれた、トネリコの希望の光よ…』

ウーサー「他者を思いやらねば生まれぬ、絆の力だ。…どうか力を、牙の妖精ファング」

騎士王「聖剣に宿る、妖精の力と願い…」

「堕ちた悪魔に、その威光と勇猛を示し給え…!」

 『厄災、恐るるに足らず!!』



ライネック『…そうか。これが、真の始まりの妖精達の力。正しき歴史を歩んだ、牙の始まりの力!』

『異なる世界なれど、お前は我が子だ。その忠義と誓を牙にして、我が有り得た姿の悪魔を討ち果たせ!』

『承知した!感謝を捧げよう、牙の勇者ファングよ───!!』


弾劾、そして断罪

『すまぬ、生き恥としか言えぬ見苦しきを晒した。トネリコの告げた黄金の旅団よ、あらゆる全てを内包する可能性の歴史よ。今一度…このライネックに力を貸してくれ!』

 

誇りと正気を取り戻せしライネックは、四つ足から確かに2足の理性ある姿に立ち戻る。血に染まった呪いを吹き出す身体は白き毛並みを取り戻し、雄々しく荘厳な神獣たる様相を見せる。救世主の随獣、まさにそれは守護獣たる牙だ。

 

【お前、許されているな?その許し、オレに寄越せ。許しなど、オレだけが持っていればいいんだ】

 

どこまでも自己中心的な厄災、ファングとライネックは睨み合う。牙獣の騎士、牙の厄災。先祖と末裔が、譲れぬが故に向かい合う。

 

 

【この大地ごと、消えてなくなればいいのだ。お前たちも、ケルヌンノスもまとめてなぁ】

 

「何っ…!?」

 

俊敏極まる速度でファングは跳躍し、。テナガザルのような腕を大きく振りかぶる。汎人類史のファングは、ケルヌンノスを軽々と持ち上げたとした。それが異聞帯のファングにも、舎っていたとしたら。この妖精達の死骸で積み上げられたブリテンの大地は…。

 

『させんッ!!』

 

瞬間、爆発もかくやなロケットダッシュにて、ファングに素早くライネックが喰らいつく。長い手を、素早く拘束しガッチリと組み付く。

 

『この地はやらせん!トネリコが目指した、ブリテンの為にも!』

【くそっ、鬱陶しい…離れろ、離れろ!】

 

ライネックを鬱陶しがった牙の厄災は、その攻撃を何度も何度も叩きつける。始まりの厄災、始まりの六人に相応しい力を持ちしその呪いは、。一つ叩き込まれる毎にブリテン全体を激震させていく。

 

『厄災となった事で、貴様を遠慮なく討てるというもの…!貴様らに刻み込まれた罪の重さ!トネリコの受けた痛み!余すことなく思い知れ!!』

 

執拗に、大地への攻撃をライネックは阻む。ソレはがむしゃら、捨て鉢などでは決して無い。確固たる勝算、あるいは希望をもって牙の厄災へと全身全霊で食らいついてく。

 

『汎人類史の英傑達よ!この気を逃すな!お前達の渾身を叩き込め!!』

 

「そんな!あなただって無事では済まないわよ!?」

 

アイリスフィールの驚愕通り、ここにいる英霊達は全てがトップクラスのメンバーだ。巻き添えで十分命は奪われる。しかし、ライネックは揺らがず譲らない。

 

『丁度いい。迷いに迷い、呪いに堕ちた騎士崩れにはちょうどいい対価だ。その罪を贖うには、それくらいしなくてはな!』

【くそっ、離せ、離せ!近寄るな!】

 

ガッチリと捕まえられ、明確な焦りを懐いたファングがより一層暴れまわる。だが彼は決して離そうとも、離れようともしない。

 

『頼む!汎人類史の勇者達よ!これが、今のオレにできる…このケルヌンノスへと捧げる『断罪』なのだ!この地に最早呪いは不要!故に…!』

【悪くない、悪くない!我等は皆、悪くないのだ!あの日に見ていた『アレ』が、あまりにも楽しかったから…!】

 

(アレ…?)

 

『頼む!!我等罪人たる者等に、慈悲と刃を与えてくれ……!!』

 

その打撃は重く、蹴りはあまりにも鋭い。最早ライネックが組み付いている時間は残り僅かだろう。彼がどれだけ渾身の力を込めて抑え込んでいても、呪いに落ち果てていても始まりの悪魔達の強さは凄まじいものであった。

 

「…皆、行くぞ」

 

キリシュタリア、カドックは宝具の発動態勢に入る。ライネックの覚悟に、全身全霊で応える為だ。

 

「極東では武士の情け、というらしいね。でもソレは無論、然るべきものに与えられるもの!残念ながら呪いに沈んだ始まりの一人には効くまい!」

 

「そもそもかける慈悲なんかあるか。罪を認めないなら、その罪が生み出したこの島にどこまでも沈んでいけ…!」

 

キリシュタリアのカイニス、カドックのアタランテ。そしてシグルドも、項羽も、娘達も、ゴッホもセイバーライオンもガレスも、宝具を一斉に装填する。

 

「行くぞ皆!それぞれの最強の一撃を…!!」

 

 

【や、やめろ!】

 

「あのクソ野郎に向けて、叩き込めえッ────!!!」

 

【やめろおおぉぉおおぉぉおおぉぉ!!!!!】

 

楽園のグランドマスターズ達の渾身の宝具の連打が、ライネックに捕らえられ逃げることもできないままに一斉放火を叩き込まれる。妖精はサーヴァントのあり方を同じくする生命体。過度の攻撃は、妖精達の核に確かなる亀裂を刻んでいく。

 

【ぎゃああああぁあぁあぁあぁあぁ!!オレはファングだ!!牙の妖精達の始まりだぞ!何故この様な目に合わなくちゃいけないんだ!なんでこんな目にぃいぃ!!】

 

不可逆の傷を負わされながらも、決して誰にも謝罪しようとしないファング。いや、そもそも罪を犯したという実感すら無いこの邪悪な悪魔に、付ける薬もかける慈悲もとうに消え去っていたのだ。彼等の悍ましき幼稚さは、ライネックの忠義と騎士道精神を決して振り払えない。

 

『我等が赦されぬは必定、破滅は宿命だ。それは無論覚悟している。貴様を含めた六匹の悪魔共を今更恨みはしない』

 

【だったら離せ!離せよ!死ぬなら一人で死ね!死にたくない!何も悪くないのに死にたくない!】

 

最早牙の妖精のプライドすら捨て、妖精の本能のまま幼稚にわめきたてるファング。無論、ライネックは赦しはしない。

 

『だが、貴様らの原罪を引き継いだ幼稚で愚かな咎人共は──一人の少女の旅路と人生の大半を徒労へと変えたのだ。我等妖精などという愚者を救うため、人生を捧げた一人の娘の半生を地獄へ変えた!!』

 

救うたびに裏切られた。友好を示すたび裏切られた。背中を見せれば必ず貫かんと迫りくる悪魔共。まともに眠ることも、休むことも叶わなかった一人の女。

 

『断じて許さぬ!巫女にしたように!ケルヌンノスにしたように!トネリコにしたように!!貴様らの罪を何億倍の苦痛にして弾劾してくれる!』

 

排熱大公の全身のエネルギーを牙に込め、ばくりと口を開ける。宝具の全てを叩き込まれしファングに、対応手段などない。

 

【い、いやだ!やめ──】

 

『六匹の悪魔に報いあれ!!見るがいいケルヌンノス!!これがオレの、救世主と御身に捧げる贖罪だ───!!!!!

 

そのまま、臨界寸前の牙を以て。ファングの首筋に噛みつき息の根を止めにかかる──!!

 

 

【ぎゃああああぁあぁあぁあぁあぁ!!!痛い、痛い、痛い痛い痛い痛い痛い!!!】

『グルルルゥウアアアアアアアアア!!!』

 

【やめて、やめてよ!死んじゃう、死んじゃうよ!また死んじゃう!やめて、おねがいだから!】

 

最早無様に命乞いすることしかできない牙の厄災。それに対するライネックの返答は、たった一つだ。

 

何千年も苦しんだ。最愛の救世主の痛みを叩きつけるように───

 

『死ねええぇぇぇぇーーーーーーーッッッッッッ!!!!!』

 

渾身の力で、霊核を噛み砕き。頸動脈に当たる部分を渾身の力で引きちぎる───!!

 

【ひぎぃいィィィィィィあぁぁぁァァァァァァァァァァァァァァァーーーーーーーッッッ!!!】

 

ブリテン中に響き渡る断末魔。噛みちぎられた場所を抑え、のたうちまわる悪魔が一匹。

 

…それは、ケルヌンノスという神すら見限るに十分であった。

 

【ひぃいぃいぃいぃ!?】

 

ケルヌンノスの呪いの腕が、悪魔を捕らえゆっくりと大地に沈んでいく。罪人達の死骸の中へと。最早安寧など無い。永劫を、呪いに染まり過ごすのだ。

 

 

【い、いやだ!たすけて!助けてください!反省しました!もうサボらない!まじめにはたらきます!だから、助けて!】

 

最早生き恥といっていい見苦しさを見せ、もがき苦しむ悪魔。しかし、ケルヌンノスの慈悲はもうどこにもない。二度の生にて、反省せぬのならば。

 

【い、いやだ!こんな汚い死骸の中に埋もれるのはいやだあぁぁぁあぁぁぁ!!】

 

ケルヌンノスの怒りに引きずり込まれ、六匹の悪魔が一匹は永遠にブリテンの死骸の一部となった。最早滅びる瞬間まで、二度と出てくることは無いだろう。

 

『…トネリコ。これでまた、お前の目指すブリテンが近付いたぞ』

 

ライネックは静かに立ち上がり、今は無き救世主を偲ぶように…

 

未だ分厚き暗雲の空を、見上げていた。




妖精の大穴

【出てきたな、始まりの死にぞこない。──塵も遺さないンだわ】

穴にて蠢く妖精が、その呪いを充溢させる。

【──魔法糸、抜糸。バレル、解放。砲身、恩讐で固定。デッドカウンター、フル稼働】

黒き砲身。巨大なる銃身。本来あり得ざるものが、顕現する。

【これは貴様らに待つ当然の応報。どれほど赦しを乞おうとも、贖えぬ罪は此処にある】

一瞬で憎悪と怨嗟をフルチャージし、狙いを定める。何よりもまず抹殺すべき相手──始まりの悪魔へと。

【赦されると思うことが間違いだ。赦されようと思うことが蒙昧だ。お前達を赦す裁きも報いも、どこにもないと哭くがいい!!】

その憎しみは、破滅を以て。

【【汝を滅ぼす、呪いの車輪(カースドスピン・トトロット)】──────!!!!】


───グランドマスターズもろとも、ファングへと放たれた。

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