チルノ「という事があったんだ!あたいはこいつらの親分として、償いの旅を助けてやりたいと思う!」
リッカ「ん、そっか。…私の答えは、最初から決まってる。ここまで来て、ただ安全に帰るだけなんてそれこそらしくないよ。私達の戦いは、こういう無茶であればあるほどらしくなるって感じって事だと思うから」
ホープ「リッカさん…!」
リッカ「チルノちゃん、並びに私は手助けに賛成!他のマスターの皆はどう?」
カドック『聞かれるまでもないさ。君が挑むのなら、僕達も全力で挑む。運命共同体っていうのはそういうものだからな』
キリシュタリア『素晴らしき自我と自意識は見守らなくてはならないからね!償いの殊勝さは尚の事だ!』
ゴルドルフ『う、うむむむ…』
オルガマリー『私達スタッフも、元から逃げるという選択肢は選ぶつもりは無かったわ。愉悦とは程遠いものね』
ロマン『おや、ゴルドルフ副所長は難色かな?』
ゴルドルフ『…そうだな。犯罪者のワンダーランドならともかく、真摯な贖罪を見ぬふりは人としていかんものだ』
マシュ「では!」
ゴルドルフ『副所長として、作戦には賛成しよう。しかしそれは情もあるがソレ以上に、カース・ロンギヌスへの対処と心得るように!』
リッカ「十分だよ!という訳で!」
騎士王「皆様の贖罪、共に旅して果たしましょう」
マシュ「よろしくお願いいたします!」
ビリィ「…ありがとう。トネリコ様の見出した希望の来客達」
ホープ「本当に、本当に感激です…!」
バーヴァンシー「…素敵な、人たちね」
チルノ「親分を信じて、良かっただろ?」
バーヴァンシー「…うん」
「どうやら、妖精国を救う方針で考えはまとまったようだな。嬉しくはあるが驚きはせん。カルデアの皆の方針と属性から、そうするであろうと予測はできたからだ」
さらなる首吊りに勤しんでいたオーディンは、ウンウンと頷いてその判断を強く後押しする。彼が先んじて招かれていた理由は、その決断を見越していたが故の事だからだ。
「とはいえ、何もかもが終焉を迎えている今方針も無しに贖罪というのはあまり賢い者の選択ではない。叡智ある者は、その智慧をもって旅の航路を切り拓くものだからだ」
「うわぁ頼もしいですねおじさま!なるべく早めに本題プリーズです!」
「近頃の若いものはぁ…」
CCAに急かされ、しょんぼりオーディンとなりながらもそのプランを提示する北欧の大神。智慧の覇者だけあり、そのプランは極めて具体的かつ細部に行き届くものであった。
「まず、この地に満ちる呪いははじまりの妖精達の謀略により死んだケルヌンノスの遺体から発せられている。これらはこの地の全てを罰する怒りが根幹であり、先に戦った厄災の大本もこれと言って良い。即ち、ケルヌンノス神の怒りを鎮め、遺体を浄め、呪いを取り払わなくてはならない」
『やっぱりそうなるよね。こちらもほぼ同じ結論だ。…一万年を越える年月重ねられた呪いを纏う神の遺体、だなんて想像もできない呪物だけれど、それを果たさず贖罪はありえない』
ロマン、オーディンの意見は同じであった。神の呪いと怒りに満ちた土地。ケルヌンノスの怒りと呪いを解き放たなければ真なる贖罪はありえない、と。
「じゃあケルヌンノスの遺体をぶっ飛ばせばいいのか?んー、ごめんなさいなのに殴るのはなんか違うぞ!ごめんなさいは、頭を下げるんだ!」
「然り。故にカルデアのメンバーには、かつての妖精達が犯した罪である『巫女の身体』を集めてもらう必要がある」
オーディンは地図をモニターに映し、五つの赤点を展開する。人間の元となり今も死ねぬケルヌンノスの巫女。これらはまだ、現存されているという。
「僕達妖精は人間の模倣により、文明らしきものを築いた。巫女の犠牲ありきの繁栄を捨てることが、ケルヌンノス様への贖罪となると僕は思うんだ」
『成る程。原罪を終わらせるのは良い考えです。ならばそれと並行して『償いの鐘』を設立し、鳴らすと良いでしょう』
「償いの鐘…?」
「姉さんが言っているのは、六氏族が変化したとされる鐘の事です。鳴らすことで贖罪と謝罪の意志を示し、ケルヌンノス神へと奉る儀式となる。任せてください、それは私がビルドしてやりますよ!」
ケルヌンノス神へ捧げるのは、巫女の尊厳と償いの鐘。五つの身体と六つの鐘。ビリィ、ホープ、バーヴァンシーの願を護り抜きながら挑むべきタスクが示される。
『正確にはトネリコが用意していた地脈と霊脈に作用していた楽園の妖精式の鐘を組み立てるもので、我が妹はそれを見て組み上げるだけなのですが』
「い、いいじゃない!マニュアル通りの仕上げも制作でしょ!?」
『こちらの贖罪を『巡礼組』と名付けましょう。リッカとチルノは当然こちらね。償いを片手間にしては、意味がないもの』
リッカとチルノは頷いた。これは間違いなく要である巡礼の為、同時に護らなくてはならない為の戦いでもあるのだから。
「同時に処理しなくてはならぬもの、それは厄災である。妖精達が積み上げに積み上げた厄災、滅びの概念。それは償いの中で消え去るものではない。単純な力で、打ち払わねばならぬのだ」
「…ヴォーティガンから連なる、炎の厄災。獣の厄災。そして始まりの妖精達の怨嗟、ケルヌンノス神の呪い。それらを力で、ですね」
騎士王の懸念の通り、それらは物理現象として在る災害そのものだ。ケルヌンノスの呪いはともかく、全ての厄災は真っ向から挑み取り除かなくてはならないとオーディンは語る。
「カルデアがいなければ償いが終わらぬのはこれが原因だ。ブリテンは神秘を有した最期の地。滅亡を望む意志が具現化したのがヴォーティガンとされる。厄災を操りし、恐ろしきもの。それを討ち果たさなければ、贖罪の成就はない」
『始まりの厄災を六と仮定して、あの巨大な獣に、ドラゴンに、ヴォーティガンに、ケルヌンノスに…十も滅亡システムが積み重なるとか罪深すぎではないか妖精たち!』
「返す言葉もない…イヤァスイマセーン…(妖精用語)」
「だからこそ、私達は向き合わなくちゃいけないんです。誰も、責任を取らずに滅んでしまったのなら。生き残った私達が責任を負う。トネリコ様が望んだ国を、未来を迎えるために…!」
ホープとビリィは揺らがない。バーヴァンシーは静かに皆を見上げている。彼女はまだ、衰弱のただ中にいるのだ。
『じゃあそっちはグランドマスターズ総力戦になるな。厄災討滅戦には、全戦力を注ぎ込んで挑もう。リッカの負担も減るはずだからな』
「ありがとう、カドック!皆の力、凄く頼もしい!」
「…あの、黒いよろい…普通の呪いとは違うから、気をつけて…」
バーヴァンシー、ホープ、ビリィは頷く。あれこそは厄災を操る破滅。最大の障害にして脅威。
「でも…本当に邪悪なものかどうかは…解らない」
「うん。なんだか、懐かしい感じもするような…」
「懐かしい…?」
『所感は大事にしよう。それはそれとして方針が固まってきたね。トネリコが遺したとされる様々な仕掛けや、魔術式があることは掴んでいる。そして巫女の身体へのルートについては…』
『私達にお任せください!』
手を上げしは汎人類史のケルヌンノスの巫女、ルイノス。並びにウーサーという、始まりの勇者を知る者達。
「…わたし?」
『はじめまして、バーヴァンシーさん。私はルイノスといいます。私とあなたは近しい存在と見受けます。二人で祈り、巫女の嘆きを捉え皆を導きましょう!』
『…俺の聖剣は、誉れ高き六人の妖精の結晶だ。その力を借りれば、贖罪の鐘や赦免の導きの助けになるだろう』
「そっか!こっちの世界の妖精たちはクソ野郎じゃありませんでした!」
「キャストリア君、それは普通に失言である」
「あっ、すみません…本音が漏れました…」
(結構いい性格してますね、キャストリアちゃん)
(CCAとして見習うといいでしょう)
(見習いませんー!!)
「そして残る問題だが…これは最後でいいだろう。現段階ではどうしようもない問題だ。さらなる首吊りにより打開策を探す」
(((((さらなる首吊り…?)))))
オーディンはこの概要のため、パパポポの召喚を9日前に指定した。ソレ故に、頼もしき叡智として一行に道を示す。
「皆が挑むロストベルトは、『既に滅びを迎えた、繁栄してはならない世界』という極めて後ろ向きなものではある。しかしここには、そのような滅びを超えてほしいという願いと共に託された希望もまた存在する」
「「「……」」」
「この希望を護り抜いたその時、妖精国が理想郷となるか亡国となるかが示されるだろう。カルデアの者らよ、諸君らの奮闘により、贖罪の結果は大いに変わるのだ」
「皆さん。何度でもお願いさせてください。これはもう妖精が赦されるだけの償いではありません。トネリコ様が見出してくださった、託してくださった希望としての責任を果たすための旅なんです!」
「僕は人間が大好きだった。向上し、工夫し、発明する素晴らしい生き物たる人間。その根幹たる巫女の生地獄を終わらせ、ケルヌンノス様にお返ししたい」
「…お母様の国は…もっともっと、きれいであってほしいから…」
「カルデアの皆様、お願いします!その力をどうか、我らの罪を贖うためにお貸しくださいっ…!」
ホープ達の懇願に──
「うんっ!!」
「あたいたちに!どーんと任せとけっ!!」
リッカとチルノは、代表として力強く応じるのであった。
──短く長い、最期の赦免の試練に。カルデアが挑む。
大穴上空
ギルガメッシュ(塵も積もれば山となる、というが。神の呪いをよくぞこれまで積み上げたものだ。人の悪意ばかりを熟した愚者共の国、得られる宝もさぞ珍品であろうな)
──ですがギル、ワタシは不思議に思います。ケルヌンノス様は神、現象として呪いそのものとなることも出来るはず。その身を未だ残しあらせられるのはどういった神意をお持ちなのでしょう…
(流石に聡いではないか、エア。それは無論、かつての宿敵を封ずるためだ)
──かつての、宿敵?
ニャル【こちらケイオスカルデア調査班。調査報告。王の勅令によるターゲット確保】
(善なる妖精、神殺しの酒、神の遺体、そしてこの地のみの希少種の虫ケラ。ふはは、我の目はごまかせぬ。数多多き宝の山をな!)
ニャル【コード【アビス・インセクト】。心臓と霊核を引き抜かれ瀕死。保護します】
王は暗雲の空にて笑う。それを不思議そうに見つめる姫と、虚無顔の獣であった…。
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