パパポポ『今日も私のパチモンの情報を求め一人流離うっポ』
(ヤツの息のかかった輩は見ているが、ヤツ自身の姿はまだ見ていない。不気味な沈黙…一体何を企んでいる)
『しかし、ヤツはこの歴史を狙っているのは明白。どんな些細な変化であろうと…』
一人、気高く飛行していた彼はその目にて見つけ出す。
『……──何アレ』
そこには…まるで、嘗て救世主の脇腹を刺した槍が如くの威容を見せる、槍のようなもの。
そして──全てを爛れさせるかのような呪いを内包している黒き輝きを放っていることが、見て取れた。
そして、同刻。
【ばらばらに、ばらばらに】
ルイノス「!?あ、あ……!?」
ケルヌンノス「ヌン!?」
ウーサー「ルイノス…?」
【しなないように、ばらばらに。たいせつなたいせつな、どうぐとして】
ルイノス「あああああああああああああああっ!?」
ケルヌンノス「ヌン!?ヌン!?」
ウーサー「ルイノス!?ルイノス…!?」
「成層圏付近に未確認不明物体が観測された、ですって?」
寝耳に水、あまりの不意打ちにモーニングコーヒーとオペラをスルーしてしまった沈痛を隠しながら、オルガマリーは管制室に現れる。そこには既に、オペレーター達が忙しなく情報収集と解析に勤しんでいる。それほど予想外の発見だったのだから。
「反応自体は、藤丸立香の報告にあった空想樹に告示しています。樹というより槍、のようなフォルムですが…」
「不思議な事に、あの建造物の内部には観測可能な空間が認められています。オルガマリー所長、これは…」
「空に浮かぶ空想樹…とでも言うのかしら。見た目の印象で言えば、武器にも見えるわね」
更に観測を進めようとした際、シオンが扉を開け入室する。その顔は、切迫を極めると言うほどに遊びがない。
「シオン、どうしたの?何か解ったのかしら」
「えぇ、オルガマリー所長。楽園カルデアの盤石な施設は、訪れる最悪の事態を予見してくれました。精度としては、これは確実に起こります」
「ははは、やだなぁシオン君脅かしっこはなしだよ?まだ発見されたばかりでそんな物騒な」
「あのモニュメントの性質が変化しています。それは聖杯の泥と呼ばれる物質の何億倍の質量。一滴でも汎人類史に垂れれば、そこから瓦解する危険すらある致死性の超猛毒と言っていいでしょう。それが今、見えているアレの性質です」
「…なんだって…?」
シオンは素早くはくのんのムーンセル、ケイオスカルデアと協力し導き出した推論を展開する。まさしくそれは、破滅の兆しだと。
「あの空中に浮かんでいるものは兵器と考えてください。地上に落ちる槍、或いは神罰。質量も現象も無かったので、パパポポ様がいなければ先制攻撃を許し、そのまま汎人類史は地球ごと崩壊していました。マジでファインプレーなパパさんですね」
『光栄だっポ』
「む、むう。横から失礼なゴルドルフだが。そんなものが何故上空に出現したのだね?自然現象なはずもなかろうに」
「考えられるのは、サタンの楽園推し活説だけど…彼は楽園と綿密な同盟を結んでいるし、不意打ち十割なんて無粋な真似をする様なファンじゃないと信じたい。天才のこだわりに似たものを感じるからね」
「我々の敵、即ちビーストΩが用意した対人理兵器…そんなところかしら。わざわざ天空に設置する辺り、プライドがお高い事ね」
オルガマリーの推測は果たして正鵠を射ていたのだ。その槍は、確かなる汎人類史への攻撃。そしてそれは、楽園カルデアにおける攻撃とも成りうるものであった。
『管制室、聞こえるか。こちらウーサー。状況を報告する。ルイノスが突然苦しみだした。今医療室に運んだが、その苦しみ方が尋常ではない』
「なんですって…!?」
『医療スタッフが診療するに、これは魔術或いは呪術的な作用のようだ。マスター達との情報共有を求む』
「すぐにモニターに医療室のルイノスを映して!」
『ああっ!ああああああっ!ああああああーーっ!!』
瞬間、響き渡る絶叫。声の主たるルイノスが苦悶に悶え、ナイチンゲールが懸命に彼女を抑えている。
『こちらアスクレピオス。どうやらこの患者はとても強い共感性の苦痛、並びに呪詛に罹っている。肉体に異常が無い以上そう判断するしかない』
「共感性の苦痛…?つまり、置換魔術のように、どこかの自分の痛みを感じているというの?」
『そういう事になる。だが、その感じている苦痛のレベルが極めて深刻だ。これを見ろ』
アスクレピオスが掲げしはカルテ。ルイノスの五体を映したそれは、一様に絶句する。
「な、なんだよあれ…」
「腕と足と、首の付根が抉れてるぞ…?」
そう、身体を引き裂くかのような呪跡がルイノスに浮かび上がっていたのである。それが食い込むようにルイノスを焼き、耐え難い苦痛を齎しているのだろう。
『安静に!安静になさいルイノス!大丈夫、あなたは必ず治療します!』
『ケルヌンノス様…!だめ、それを、飲まないで…!ああっ、ああああああっ…!!』
『この様に、自らとは違う可能性を幻視しているように見受ける。今からヤツは高天ヶ原のスピリチュアルクリーナールームにて治療を行う』
「イザナミ様の禊場に?そこまで…」
『確証を得た事実だけを伝える。この症状は…『妖精』由来のものだ』
それだけを告げ、アスクレピオスは通信を切る。
「第一作戦配備警報を。グランドマスターズ招集!ブリーフィングを始めるわよ!」
「オルガマリー、やるんだね!?」
「事象関連からして、間違いなくアレが根幹よ。人理を貫く呪いの槍、仮称『カース・ロンギヌス』。アレをどうにかしないといけない様ね…!」
オルガマリーの判断は迅速である。当然であろう。
突如現れた、仲間と世界の危機であるのだから。
〜
「グランドマスターズ、揃ったよ!オルガマリー!」
「偉大なる盾、マシュも先輩のおそばに!」
3分以内に集結したグランドマスターズ。オルガマリーは頷き、即座に作戦を説明する。
「先程、ルイノスに謎の呪痕と苦痛が発症。医療チームはそれを呪術と判断し高天ヶ原の禊場にて彼女を治療。イザナミ神の診察によれば、それは超強力な『保存』と『解体』の魔術処理との事よ」
「解体保存?…なんでそんなもの、人間に必要なんだ?」
カドックの言葉に首を振るオルガマリー。その答えを、今から手にするのだと彼女は告げる。
「更にあのカース・ロンギヌスは後24時間後に地球に突き刺さるとトリスメギストスは導き出したわ。あの構造モニュメントには、劇毒といっていい呪いが満載されている。シミュレーションによれば、地球を包み滅ぼすには十分すぎる量だそうよ」
「なんだって!?天空にあるということはゼウスの仕業かな!?」
『失敬な!私がやらかすのは女性関連だけだ!』
「コントはいいっての。するってぇとなんだい?カルデアはアレをなんとかする任務に挑むのかい?」
「察しが良いわね、ベリル。その為のブリーフィングという事よ。私達はこれより、カース・ロンギヌスの攻略に向かいます!」
一同に力強く宣言するオルガマリー。仲間が窮地にある以上、イモを引くなど彼女にはあり得るはずもない。
「見た目は違えど、カース・ロンギヌスは空想樹と同じ性質を持っていることが判明したわ」
「それは即ち、汎人類史へ作用するロストベルトを有しているという事ね」
「そうよ、オフェリア。ミニマムな視点では仲間の危機、マキシマムな視点では世界の危機ね。あの槍をなんとか出来なければ、地球は滅びるという事」
「あらやだ、分かりやすい地球の危機ね?デイビッド、何か見えたりする?」
「……償いと、巡礼だ。赦免とは、誰のためにあるのか。そんな旅をするだろう」
「赦免…?刑務所にでも向かうのか?」
「考えるのも大事だけど、今はルイノスちゃんが苦しんでる。考えながら動いていこう!カドック!」
「…すまない、リッカ。確かにこれは悠長にはしていられないよな」
「オッケーだよ、オルガマリー!私達は行ける!」
「ありがとう、リッカ。では参加メンバーをリッカが選択次第、カース・ロンギヌスの攻略に向かうわ!」
「判明したよオルガマリー!カース・ロンギヌスの地表の座標…ブリテン島の真上だ!おそらくあれはブリテン…アーサー王伝説にゆかりのあるロストベルトな筈だ!」
ロマニの言葉が響いた瞬間、モニターが切り替わる。怜悧な声音を放つ女王が、告げる。
『その通り。アレが内包するはブリテンのあり得たかもしれない姿。大厄災を迎え、全てが滅びた不毛の地』
「モルガン…」
「そこは、一体!?」
『名を冠するなら『妖精國』。永劫抗えぬ罪を有した、罪人の地だった場所です』
妖精國。滅びたとされるモルガンの宣託に、一同は一様に生唾を呑み込む。
妖精達の國が、何故世界を滅ぼす呪いを放つのか。
ルイノスが何故、解体保存魔術を受けていたのか。
白き雲海を臨む黒き不気味な槍は、まるで世界を塗りつぶす漆が如くに濁っていた。
オルガマリー「常にサポートしてもらう現地マスターは決めたかしら、リッカ」
リッカ「うん!彼女!」
チルノ「妖精達の國かぁ!あたい、楽しみだなぁ!」
ブリュンヒルデ「マスターも、リッカ様も、命を懸けて御守りします」
オルガマリー「チルノ…確かに妖精の中では最強クラスの存在だものね」
チルノ「友達になれる妖精がいればいいな!」
リッカ「選抜サーヴァントはマシ「お任せください先輩!!アルティメットグランド茄子の実力をお見せいたし」
リッカ「はいはいどいてね〜。後はギルが推薦した彼女たち!」
騎士王「ブリテンというならば、つまり騎士王たる私の独壇場。あらゆる厄災を退けましょう」
アルトリア・キャスター「私いるかなあぁ…」
モルガン『諸事情でモニターを。安心なさい。決戦には向かいます』
マシュ「王は出陣なさらないのですね!」
騎士王「はい。どうにもフォウのご機嫌が斜めなようで。私に世界を滅ぼす呪いの回収を任命し、静観する様です」
マシュ「フォウさんが…何かを感じ取ったのでしょうか!」
リッカ「もしかしたら教育に悪いのかな?ともかく、あとは随時臨機応変!」
オルガマリー「わかったわ。では早速行きましょう」
カドック「行くって…成層圏にか?マルドゥーク神はサタンとの同盟で力は借りれないだろ?」
オルガマリー「ふふ、カルデアが所有する戦艦はマルドゥーク神だけではないのよ」
ネモ「そうだとも。メガロドンのようなマルドゥーク神とまでは行かないが、立派なシャチにはなってみせるさ」
オルガマリー「突入は…このアトランティス・ボーダーで行うわ!」
ギル「面白い、とは流石に言わぬが、神の怒りと呪い、呪具や呪詛としては至高の逸品であろうな」
──フォウ?フォウ〜?どこに行ったの〜?
ギル「えぇい、何を尻込みしているか珍獣!我らも一目見なくては始まらぬであろうが!」
推定、妖精國。
贖罪の旅が、幕を開ける。
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