人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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(感想は今から返信します)

千年城

アルク「災難な目に逢いましたね…」

エア「う、ううん。災難だなんてそんな。成人男性が目の前で二人脱いだだけの事で…」

アルク「淑女、並びに特権階級の身からしてみれば刎頸に処すべき無礼では無いでしょうか…」

エア「そこはほら、ギルの裸体は最高水準のダイヤモンドに勝る至高の美で、ローランさんは逸話に名高き露出癖だから。きっと否定する方が失礼に当たるんだよ。ワタシはむしろ、光栄だと平伏する立場だと思う!」

アルク「エア、もう…」

エア「心配してくれてありがとう。ちょっと仮眠したら、また行ってくるね。少しだけ、お休みなさい…」

アルク「…えぇ。お休みなさい」

アルク(至尊の理。何かを否定も、拒絶もせず受け入れる魂のカタチ。王とはまた違う、けれど人が至れぬ窮極の境地)

「…そんなあなたの在り方は素晴らしいと思います。ですが…」

──すぅ…

「王に獣、そして私達。…全てを尊ぶあなたの魂の拠り所に、なれていれば良いのですが」

──…ん…

(ギルが、頑張りすぎて無茶をしませんように…)

アルク「………、っ!?」

アカシック・グレイル『─────』

アルク「全能の、聖杯…!?何故、此処に…!?」







2200記念改築〜神髄〜

それは、溜まりに溜まった改築の最中…キャストオフ×2により瀕死の精神ダメージを負ったエアの療養も兼ね休息を取っていた最中の出来事であった。

 

(まだ始まったばかりで何で脱ぐんだオマエは!羽目を外すには早すぎるって久しぶりすぎて忘れちゃってたのか!)

 

《ええい、あの露出騎士め…!あまりに堂々たる脱ぎっぷりについ王の気質が奮い立ってしまったわ!エアには褒美にととっておいた我の無礼講キャストオフ・カムバックを引き出されようとは…!》

 

(エアにトドメを刺す気かァ!?ともかくエアは千年城のアルクに介護してもらってるから、当分安静だ!オマエもキッチリ休めよな!)

 

《むう、仕方あるまい。エアには無理をするなと進言されている。姫の具申は聞き届けるが王の甲斐性故…》

 

そう、普段の賑やかなやり取りを部屋にて行っていた最中、当の月の姫により打診が青天の霹靂が如くに飛ぶ。

 

『英雄王、聞こえますか。ともすればこれは、由々しき事態かもしれません』

 

《む?月の姫ではないか。どうした?エアがイビキをかきでもしたか?》

 

『全能の聖杯が…アカシック・グレイルが起動しています』

 

《────何?》

 

アカシック・グレイル。時空唯一無二たる、全能の聖杯。オルガマリーらが見つけ出し、王に捧げられた究極にして至高の宝物。根源に接続した人間の全てを使い編み込まれた坏。それは当然のように起動せず、エアとギル、フォウのみが知るバビロニアの宝物庫の最下層、最重要企画エリアに安置されていた筈だった。

 

《どういう事か。エアは無事なのだな?》

 

『エアは安らかに眠っているわ。彼女が何かをしたわけではないけれど…今も、輝きを増している』

 

(アカシック、どうしたって言うんだ…!?)

 

エアとフォウは転生者、アカシックという全能の存在によりこの世界へと赴いた。即ち、その聖杯とは縁深き二人である。王もまた、真にこの聖杯を目覚めさせるは二人と読んでいた。

 

(二人を転生させた輩が聖杯の基盤であることはいい、解りきった事だ。だが何故今起動する…!?)

 

『王様!こちらマルドゥーク神殿ドック!マルドゥーク神がなんかめっちゃ吠えてんぞー!』

 

「何だとっ!?」

 

思案中の王を更に衝撃に叩き込みしは、にとりの通信におけるマルドゥーク咆哮の報せであった───。

 

 

『GAAAAAAAーーーーーー!!!』

 

「うわわわわわ!なんだなんだ、どうしたっていうんだー!!」

 

全能の聖杯が起動した全く同じ頃合いに、マルドゥーク神の神体が咆哮を上げる。暴走ではない。その出力は、極めて安定している。

 

「これは…。チーフ、マルドゥーク神の動力源とエーテル回路のデータを」

 

「アイサー!ウオオなんじゃこりゃぁ、真エーテルと魔力をすげぇ勢いで生成してる!これは神代の真っ只中の…」

 

「マルドゥーク神は何かを行おうとしている…?」

 

楽園の第二統括担当、騎士王の状況確認は的を射ていたと言っていい。マルドゥークは何かを、その身を以て何かを成そうとしているのだ。

 

『GAAAAAAAーーーーーー!!!』

 

「し、神代エーテル、魔力強烈散布!元ドルオタキングが緊急で世界規模の認識阻害魔術を展開!規模、南極全域!」

 

「マルドゥーク神、あなたは一体何を…」

 

「更に魔力強烈生成!さ、3秒後に南極を覆い尽くすぞーー!!」

 

『GUUUUOOOOOOAAAAAAAAーーーーッッッッッ!!!』

 

「うわあああああーーーー!?」

 

「くっ…!!」

 

マルドゥーク神が生みだせし黄金の魔力。アカシック・グレイルが放てし虹色の魔力。それらは楽園カルデアを一瞬で満たし尽くす。

 

「これは…!」

 

いや、それだけではない。その魔力はカルデアを飛び出し、ロマニが間一髪で世界干渉を遮断した緊急大魔術内を満たし尽くし、更に荒れ狂う。並の特異点、ビーストクラスの出力など及びも付かぬ神秘と魔力が、一瞬で南極全域を満たし尽くした。

 

 

「状況を確認して、皆!落ち着いて対処なさい!」

 

カルデア管制室もまさに蜂の巣をつついた大騒ぎである。辺りに満ちる黄金の気質と虹色の魔力は決して危険なものではないが、驚天動地にして喪われし神代時代の真エーテルであることに変わりはない。魔術師からすれば垂涎しながら卒倒する状況なのだから。

 

「き、君も落ち着くのだオルガマリー!声を荒げるのは解るがどんなときも風雅にだぞ!」

 

「ありがとう、ゴルドルフ。流石の胆力と見た目通りの安定感ね」

 

「見た目通りの!?」

 

「これは聖杯が汲み取る無色の魔力…?違う、もっと鮮やかで純粋な…」

 

「そ、それってドクター…誰かが願いを叶えようとしてるのか!?」

 

「南極全域を覆い尽くす魔術行使だなんて普通じゃないぞ…!?マルドゥーク神は、何を叶えようとしているんだ!?」

 

((((あんたが言う…?))))

 

…始まりこそ、マルドゥーク神の怒りを一同は戦慄と共に想起したが、その非常事態は震撼と規模に全くそぐわぬ無被害を以てゆっくりと沈静化していくことになる。

 

「マルドゥーク神、出力安定。神代エーテル放出、停止より三十分経過」

 

「た、た、助かった…マルドゥーク神は紛れもなく楽園カルデア…いや、人類の切り札。そんな彼を我々が怒らせたのかと…」

 

「マルドゥーク神よりメッセージが!」

 

『(⁠・⁠–⁠・⁠;⁠)⁠ゞSorry』

 

「軽い!?」

 

『(⁠人⁠*⁠´⁠∀⁠`⁠)⁠。⁠*゚⁠+Present for you』

 

「プレゼント…?」

 

マルドゥーク神のプレゼントの意味、それは改築待ちの皆の反応において、明らかとなる。

 

「メリュジーヌ、妖精騎士の方だよ。いつのまに改築を終えてくれたんだい?」

「こちらもメリュジーヌ。噂に違わぬ仕事ぶりね。要望通りの仕上がりよ」

 

「えっ!?」

 

「…ギルは今休憩している筈…」

 

『こちらコヤンスカヤ・タマモヴィッチ。いつの間にケイオス・カルデアにいらっしゃったんです?お部屋ができていましたが…』

 

『おじさまぁ〜。モアの御祝のいっぱいがのめないのですかぁ〜?わたしだって、おんなのこなんですよぉ〜?』

【改築ありがとう!そして可及的速やかに我が娘を鎮圧してほしい!端的に言うと助けて!?娘に襲われています!!】

 

「か、改築順番待ちであったサーヴァントの皆の部屋を確認したところ…全員、完了しています…!」

 

「嘘だろ!?王だって一日はかかる量だったぞ!?」

 

「…まさか、先程の光は…」

 

「王様と姫様の溜まりに溜まった改築を…終わらせてくれたのか…?」

 

 

───ふわぁ…はっ!寝過ごしました!?改築を行わなければ!

 

その騒動の少し後、エアはダメージを癒やし休息より復帰する。しかし、その奮起は今はもう収めていいものであった。

 

《よい。我等のオーバーワークを見かねたマルドゥーク神が一手を打った。一先ず我等の溜めに溜めた負債はチャラだ、エア》

 

──なんと!?マルドゥーク神が!?

 

『(⁠ ⁠╹⁠▽⁠╹⁠ ⁠)』

 

マルドゥーク神の気遣いに、驚きと笑顔を浮かべるエア。だが、手を貸したのはマルドゥークだけではない。

 

(どうやらここにいなくても、ボク達を見守ってくれているのは本当みたいだよ!)

 

──フォウ?…!

 

エアらの前に在りしは、輝きが収まっていく全能の聖杯。エアとフォウにとって、比類なき恩人であるその人。

 

《過保護な事よ。お前の我への労りと、精神が深遠に落ちた事で非常事態と認識し一瞬起動したらしい。お陰で現実改変により、我等の改築は済んでいたわ》

 

──アカシック…あなたが…!

 

《起動したのは奇跡、かつ偶然のようなもの。我等の愉しみを奪ったなどと無粋は言うまい。むしろ戒めと受け止めよう。仕事は溜めすぎるな、とな》

 

アカシックがエアのギルへの労りを受け取り、アカシック・グレイルの願望機としての機能をマルドゥーク神が行使。結果的に『ギルに無理をさせず』『改築を全て完了した』という形でエアの願いは叶えられたのだ。

 

『どうやら、エア。この坏は…あなたが鍵を握っているようですね』

 

《うむ。赦せエア、我も脱ぐタイミングは一層吟味するとしよう》

 

(むしろ脱ぐな!!)

 

──アカシック…マルドゥーク神…すみません。そして…ありがとうございました…!

 

自身らを慮り、余り在る力を皆の為に使用してくれた。その事実に何よりの感銘を受け、エアは深々と礼を行う。

 

『(⁠◠⁠‿⁠・⁠)⁠—⁠☆(⁠ノ⁠◕⁠ヮ⁠◕⁠)⁠ノ⁠*⁠.⁠✧』

 

エアの礼を、マルドゥーク神は大切に受け取る。彼もまた、エアを見守る誇らしき神の一柱であるのだ。

 

《…しかし、全能の聖杯とマルドゥークの神体が共鳴するとはな。共にエアとフォウに縁深きもの、これは偶然か…?》

『解ることは一つ。…もし、この力が完全にエアの制御下に置かれたならば…』

 

《フッ、面白い。真の意味で我が視座に至る日が来るか、エア…!》

 

──アカシックも今、見てくれているのでしょうか…?

(きっとそうだよ!)

 

未だ全く翳りを見せぬ至宝の煌めきに、王は痛快を隠そうともせずに口角を吊り上げるのであった──。




にとり「うひー、死ぬかと思ったぁ。マルドゥークあんちゃんお茶目も大概になぁ!」

マルドゥーク『(⁠。⁠ノ⁠ω⁠\⁠。⁠)』

エル「汎人類史が手にした最高の遺産…!そのスペック留まりを知らず!ですね!」

『──根源接続者の接触を確認。情報一部解禁』

エル「ん?」

『神体・マルドゥークを製作した生命体は『真化人類』。最早この宇宙、この時空への滞在が赦されぬ、高次元の位階へ到達した人類の総称』

エル「───」

『その人口、120億人。特徴は『全人類が相互理解により根源接触の手段を見つけ果たし、知性体としての真理に到達した人類』である。今や、この世界に彼等と接触する手段はない』

エル「…き、き、騎士王様!騎士王様ー!!」

───後に、南極範囲においての改築作業において疲労が堪らなくなったのはこの現象の余波とされている。

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