ギルくん「そういえば、『夜天の魔導書』を巡る事件のアレコレは、魔導書事態を愚かな連中が好き勝手に改悪した結果起きてしまった事件なのでしたっけ、司書長」
ユーノ「…はい。本来は闇の書などという危険物ではなく、偉大な魔導師の足跡や歩みを記録するアーカイブストレージといったものだったのですが、いくらかの所有者の私利私欲による好き勝手な改ざんにより暴走してしまい…」
ギルくん「なるほど、そういう事でしたか。つまりそれは魔導師達にとっての宝に値するものですね?」
ユーノ「え?あ、はい。それは勿論。価値などつけられる筈もないくらいの…」
ギルくん「よく解りました。ではきっとある筈ですよね…エアさんが整理整頓してくれた魔杖や魔導書区画にきっと…あ、これかな?」
ユーノ「!…これは…!」
ギルくん「僕には意味の分からないものですが、きっとあなたには解るでしょう。それは闇の書の『原典』。改悪されていないソレの正しいデータといったものです。ありましたね、きちんと」
ユーノ「こ、このデータを元にすれば正しい『夜天の魔導書』を無限書庫から発見することもできるかもしれない…!」
ギルくん「どう扱うかはお任せします。でもどうせなら、カルデアの為に協力してもらえると助かりますね」
結局のところ、彼女の為にこんな改革を担っているわけですから。
「カルデアの皆様が世界を救う為、境界記録帯から世界の英霊を召喚する術式『英霊召喚』を行っていることを、失礼ながら調べ把握させていただきました。本来ならば世界の脅威に行使される世界の決戦術式を、人為的に可能とした技術。グランドクラスを喚ぶそれと比べれば劣化となるやもしれません。ですが僕は、決してそうは思わない。人が扱えるよう、簡略化と洗練されていると考えます」
ユーノは既に、世界がビーストクラスの対策の為に使う術式、世界を護る決戦術式がどのようなものかを独自に研究、解析していた。既に魔導王に照会し、正しい知見かどうかとも言質を取ったとも告げる。
「この召喚に対し、基本的には召喚者の気風や資質に近しい英霊が英霊の座と呼ばれるアーカイブから選ばれ、サーヴァントという枠に当てはめられ招かれるのが英霊召喚…ですが時には、狙ったサーヴァントを呼び寄せる為、『触媒』なるものを用意すると聞き及びました。アーサー王ならば鞘や聖剣、ジークフリートならば菩提樹の葉。そういった、縁のある触媒を有すれば招く英霊は結論的に絞ることができると。魔導王とも摺合せは行いましたが改めて、この推測は正しいものでしょうか?」
ユーノに問われ、イリヤがちんぷんかんぷんな顔をリッカに向ける。リッカはロマニやオルガマリーなどに教導で魔術のアレコレは教わっているため、それらは知らぬ知識ではない。
「そうだね。だからこそ有名な触媒は奪い合いが激しくて、現存するものは少ないって言うのも聞くよ。アレキサンダー大王のマントの切れ端なんかは、没落した名家の莫大な借金の大半を返せるくらいの価値が在るとか」
「あぁ、良かった。ならば安心して、今考えているカルデアへの『夜天の魔導書』の参画が可能となりそうです」
「ちょ、ちょ、ちょいと待ちや!それって、それってつまりやな!」
「夜天の魔導書の制御人格、つまり『リィンフォース』をカルデアに召喚する…という事…?」
はやて、そしてフェイトの言葉にユーノは頷く。カルデアのある地球はそれほどに特異な存在であり、それだけの価値があるのだと告げる。
「そしてこれは魔導王が伝えてくださった情報なのですが、過去の聖杯戦争と呼ばれる儀式には無機物…つまり、山の山門等といったものを触媒に英霊が招かれたケースもあると仰っしゃられていました。もしそれが本当で、それに可能であるのなら。決戦術式は不可能ですが、人間が組み上げた術式の英霊召喚をこちらで再現し、同時に再現された正常なる『夜天の魔導書』の制御人格として『リィンフォース』を英霊として召喚を試みることは十分に可能となる筈です」
魔導王の宝物庫から導き出された、改悪されていない『夜天の魔導書』の原典。それらを元に正しい『夜天の魔導書』を再現し、本来備わっていた『管制人格』たるリィンフォースと呼ばれる存在を、夜天の魔導書を要石として召喚。そしてリィンフォースに正しい夜天の魔導書の管制者として召喚を維持してもらう。ユーノの考案したリィンフォースと夜天の魔導書のカルデアへの派遣方法は、魔導王の意見と知覚により更なる精度を有し現実味を帯びることとなったのだ。
「リィンフォースに…また会えるんか…?今度こそ、もっともっとあの娘を幸せにできる日が来るって言うんか…?」
「良かったね、はやてちゃん…!」
(はやてさんが涙ぐんでる…よっぽど大切な存在と別れてしまったんだね…)
(後で簡易的に闇の書やリィンフォースに関しての報告レポートを書くから、是非とも目を通しておいてね)
(ありがとうございます、フェイトさん!)
はやてが歓喜に涙ぐみ、なのはたちにも安堵が満ちる中、ユーノはそこに介在する懸念を口にする。
「しかし喜んでばかりもいられません。英霊召喚とは、全盛期のままに英霊を招く術式。リィンフォースという『夜天の魔導書の管制人格』を招く際には、とある懸念が存在します」
「な、なんや急に、おっかない顔して…」
「それは『英霊は全盛期の状態で呼ばれる』という事。夜天の魔導書は最早【闇の書】として呼ばれた時期が圧倒的に多くなってしまっている。もしかすれば、僕等が再現した夜天の魔導書とは別に、サーヴァントの奇跡として【闇の書】を有した状態で召喚されてしまうかもしれない…という事です」
「「「!」」」
なのは、フェイト、はやての顔が一斉に強張る。その言葉が表す意味を、エースたちはよく理解していた。
「管制人格とは別の防衛プログラム、『ナハトヴァール』。それらが現れる可能性も無視することはできません。リィンフォースを召喚するならば、君達が全力全開でなんとか討ち果たした防衛プログラムともう一度戦わなくてはならないという事でもあるんだ」
「闇の書と、もう一度…」
「それに、戦う他にも準備は必要です。リィンフォースを闇の書から切り離すための魔術的契約破棄の手段、そして夜天の魔導書のレプリカである再現体の制作。彼女を人類の英霊として招くには、多くの準備がいります。それらを、僕達は行わなくては闇の書に打ち勝つことはできないでしょう」
フェイトは大急ぎで闇の書に関しての記録レポートを作りに駆け出し、なのはとはやては思い思いの所感を告げる。
「時空管理局、そしてカルデアの皆との協力作戦が必要だね。今の私達でも、十分以上の強敵だから」
『口ぶりからしてそうであろうことは解っている。だが問題は無かろう。元々修行を目当てにきた時空だ、アルテミスの巫女は覚悟の上、望むところであろうさ』
「はい!なのは教官、カルデアの皆は必ず力になってくれるはずです!勿論私も!」
「ありがとう、リッカちゃん!そう言ってくれると信じてた!」
「わ、私もでき得る限りのことはやらせてください!なんかこう、凄く重要な意味を持っている感じがした戦いになりそうなんで!」
『周りが皆魔法淑女の中イリヤさんが名乗りをあげました!必ずややってくれると信じましょう!』
「ルビー!」
「…その、実はな?リィンフォースっていうのはうちが付けた名前なんよ。闇の書なんて哀しい名前なんか呼ばせんように、幸運の追風、祝福のエール、リィンフォースって…」
はやてにとって、それは特別な名前であり祈りであった。今でも、忘れることなどできない程に。
「別れることになってしもうて、自分は世界で一番幸せな魔導書だなんて事も言ってくれて。でもうちは、もっと幸せにしてあげたかったんよ。もうちょい、いろんな楽しいことを知ってもらいたかったんよ。でも、それはできなくて…」
はやての普段の陽気さは見えず、真面目かつ誠実に彼女は頭を下げる。それは、心の繋がった美しい別離を忘れないがゆえのもの。
「もし、そのもしもが叶うんやったら…うちは全力でそれをやってみたい。だから皆…どうかお願いします。降って湧いた夢みたいなこのチャンス、うちらと一緒にものにしたってくれへんやろか…!」
はやては夜天の主たる存在。そしてリィンフォースの名付け親。かつての別れを、忘れることなど出来なかったのだ。その懇願に一同の答えは決まっている。
「カルデアとしても、頼もしい仲間は望むところですよ!」
「困っている人間や涙を流す人間を助けるのが英雄という生き物だ。畏まらなくても問題はない」
「我等夏草の生徒、事なかれの惰弱は存在しない!ベストを尽くそう、八神はやて女史!」
「はい、これがカルデア在来組の意志となります!はやてさんはオペレーターとしていつも頑張ってくれてますしね!」
「皆…!」
「闇の書の防衛プログラム…特訓の締めくくりにはピッタリだよね!丁度いいって考えようはやてちゃん!」
「なのは?涙も引っ込む鬼教導はやめてくれん?」
「意見は決まっているようですね。それでは、お互い準備を行い挑みましょう。夜天の主の下へ、風を戻す儀式を。星見の天文台に、夜天の魔導書の参画を」
ユーノの言葉に、一同が頷く。コラボレーションイベントはいよいよ、クライマックスを迎えようとしていた。
なのは「大活躍だね、ユーノ!」
ユーノ「魔導王のお力添えだよ、僕はそれほど…」
なのは「自身持って!ユーノは私にとって特別なんだから!」
ユーノ「…なのは…ありがとう。君のためにも頑張るよ!」
リッカ(なのは教官、男性に向かって特別だなんて…大胆!!)
レイジングハート『なんでアレで結婚しないんでしょうね』
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