人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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無限書庫

イリヤ「ここが無限書庫…ギルくんが言うには、今まで時空管理局が管理してきた世界の全てが記憶されている場所…」

リッカ「地球の本棚…の超上位互換、といったところかな?ホントに規模が凄いんだね、管理局って…」

ヘラクレス「記憶を纏めるのはいいが、編纂は誰がやっているのか気になるな」

ヘラ『人間ごときにこれ程の記憶を編纂できるとは思えんが…』

ユーノ「仰有るとおりです、女神ヘラ。僕が陣頭に立ち、漸く編纂と調査が始まった…といっていい惨状でした。今では少年魔導王たるギルくんの改革もあり、こちらにも人員が回されありがたい限りです」

なのは「ユーノ!」

ユーノ「おかえり、なのは。皆さんも御足労いただき大変感謝します。僕はユーノ、ユーノ・スクライア。無限書庫の司書長を務めさせていただいています」

なのは「彼がユーノ、私にレイジングハートを授けてくれた男の子なんだよ。大丈夫?訓練ちゃんとしてる?」

ユーノ「大丈夫、欠かしてないよ。皆さんの事は調査ではなく、ギルくんの口伝で把握しています。ようこそ、シャングリラ・カルデアの皆様方。特にリッカちゃんにイリヤちゃん」

リッカ「押忍!なのは教官の弟子をやってます!」
イリヤ「なのはさんの、彼氏さんですか?」

ユーノ「か、彼氏ぃ!?ぼ、僕はその、あの…!」
なのは「もー、違うよー。家族だよ家族!」

ヘラクレス(あぁ、距離が近すぎるタイプか)

ヘラ(奥手、というやつか)




無限書庫と全能の聖杯

「こ、こほん。今日カルデアの皆様に御足労いただいたのは、皆様が存在しているカルデアを有する地球の特異性、並びに時空管理局からの人理保障の手助けを行う更なる人材の派遣の提案を試みる目論見を説明したいと思ったからです。司書メンバーも、ギルくんから随分と派遣してもらいました。それにより明らかになった事実や仮説などをお話したいと思います」

 

無限書庫司書長たるユーノ・スクライアが謳う、カルデアを有するリッカ達の地球が有する特異性。それは時空管理局が管理してきたどの地球にも見られないものであると彼は言う。

 

「結論から言うと、リッカちゃん達がいる地球は数多無数の並行世界、次元といったあらゆる可能性を内包した『卵』あるいは『揺り籠』といった極めて希少かつ多様性を持った次元という結果が出ています。未だ次元航行手段を人類自体は持っていないため、未管理対象ではありますが…それは既に魔導王たる彼からお墨付きを戴いている確信といっていいでしょう」

 

「リッカちゃんの地球が…そんなにも特別性を持っている…?」

 

なのはの問いにユーノは頷く。それを裏付ける様に、彼はデータをモニターに展開する。

 

「彼女達の時空の基盤は、ソロモン王が編纂し体系化させた行使術『魔術』を基本とした魔術師達が介在する世界であり、聖杯を巡る魔術師同士の争いによる根源への到達が命題となっています。それはリッカちゃんという固定存在、正確には『藤丸立香』の存在が証明していて、カルデアを有する地球、人理保障を可能とする組織の発足した次元はいくつか観測されています。これらはみなさんの言う『汎人類史』『並行世界』といった様相ですね」

 

「まぁ、ちょっとばっかり私は藤丸立香を名乗るにはバグが起きてる感じはするけどね!」

 

「そう、そこなんです。藤丸立香ではなく、藤丸龍華である君。そして英雄王がカルデアを運用しているかの時空には『可能性』と『多様性』、そして『実現した事象』があまりにも多い。魔術師でいう例外、封印指定。そういった特例が、まるっと皆さんの地球に当てはまっているのです」

 

ユーノの言葉に顔を合わせるリッカとイリヤ。だが、それは首を傾げるにはあまりにも心当たりが多すぎた。

 

「例えば、仮面ライダーに機動戦士ガンダム、遥か彼方の光の国の住人ウルトラマン。それらと楽園は協力関係にありますよね?」

 

「えっと、例えるならオーマじぃに、刹那さん。フィリアさんがいます!」

 

「ありがとう、イリヤ。この方々は楽園では確かに存在している。それらはつまりライダーシステムやガンダムのノウハウ、そして光の国そのものがリッカちゃんの地球に可能性として編纂されているということ。だけど当然ながら、他の『藤丸立香』の世界には今の協力者は存在していないんです」

 

楽園だけの可能性、楽園の時空のみの数多の協力者。NG召喚として招かれた者達は本来『存在していないもの』であるとユーノは提唱する。

 

「それらは別次元では単体同士で存在している世界は観測されてはいます。あるいは藤丸立香の世界線では人類が夢想としたフィクションとして。あくまで基盤は魔術師達の活躍である世界に、こういった特異的な存在は有されていないのが時空管理局と、書庫の調査で確立された結論です」

 

「それってつまり、他の世界ではフィクションな存在が、リッカちゃんの地球では現実としてちゃんとあるって事?」

 

「そうなんだ、なのは。そしてリッカちゃんの地球の特異性とは『観測した可能性』が『全て実現できる』というところにあると僕達は結論を導き出したんだ」

 

黒神とリッカは互いに顔を見合わせ頬をつねる。リッカたちが存在している時空が観測し、こうであってほしいと願ったものは、実現可能あるいは存在しているものとして形を取る、といった因果関係が導き出されているという。それらはつまり、無限の可能性に他ならない。

 

「人類が思い描く理想の未来、無敵のヒーロー、夢のオーバーテクノロジー。未だこの事実に気付いた存在は極めて少ない為、本格的な齟齬や可能性の飽和は起きていないけれど…間違いなく、君達の時空が有する可能性は数多無数の世界の何倍もの容量と数を有しているんだ。それらはきっと、リッカちゃんたちが世界を護る戦いをする限り増えていくだろう。人間が切り拓く可能性として」

 

「ちょっと待って、ユーノ!どうしてリッカちゃん達の地球だけそんな事になってるの?言われてみれば私達だってサラリとカルデアに呼んでもらってるから納得してる結論ではあるけれど!」

 

なのはの言う疑問と懸念は最もだ。可能性は願えば実現するものではない。途方もない労力、あるいは代償。それらが有されて始めて実現されるもの。

 

「………可能性というものは、知識や意志で知覚するか、識ることで始めて輪郭を帯びる。これだけ荒唐無稽な可能性が実現することが可能だとするなら、その理由は一つしか考えられない」

 

「……『時空そのものが、実現可能な可能性をすべて識っている』という事か?」

 

黒神の言葉にユーノは重く頷く。そう、人間が思い描く全て。世界が有する全てを『識っている』者が存在するのだ。それらを実現できてしまう『何か』が、リッカの時空のみにあるのだ。

 

「無限書庫すら上回る『あらゆる時空と次元で起こり得る全ての因果や事象を記録した媒体』。更に『その可能性を実現可能とすることが出来る力』、或いは『装置』。それらが、皆さんの存在する世界の何処かに存在している。これは、魔導王と僕のみが共有していた結論でした。それを今、皆様にお伝えしたかった。簡単に言えば…楽園カルデアの世界、時空そのものが『万能の願望機』と化している。望んだ事が、望んだままに実現可能な力場となっている」

 

それらの結論はあまりにも衝撃的なものだった。逆説的に言えば、その『媒体』と『力』がある者が、あらゆる時空と次元の可能性をなんのリスクもなく実現し叶える事が可能となる。

 

「集合無意識に働きかけた宝具を使用した痕跡があることから、仮定として人類全ての願いを『媒体』に届けた者は御機嫌王、ギルガメッシュと僕達は推論しています。ですがこれはあくまで盃に願いを汲み取らせたようなもの。行使する力を振るう者はまだ、僕達も断定できてはいません」

 

「つ、つまり…私達カルデアのある世界は、その力を持っている人が全部を叶えて世界や次元を好きにできちゃうって事…?」

 

イリヤの言葉にユーノは頷く。それは数多無数の次元や世界を管理してきた管理局のマクロ的視点が導き出した結論であり、リッカ達の地球が持つ特異性。『可能性』を実現させる時空なるもの。

 

「僕達はまだ全容に辿り着いたわけではありません。特級の例外として、皆様の地球は魔導王たるギルくんの手によりEXランクの情報規制が敷かれました。…これはあくまで、僕が司書長として仮定したものではありますが…」

 

それは、ユーノが導いた、司書長として導いた答え。魔術師達が追い求めるものと当てはめた名称。

 

「あらゆる叡智と可能性を有した、願いを叶える全能の盃。『アカシック・グレイル』。それが、リッカちゃんのいる地球のコードであり、なのはやフェイト、はやてが派遣された理由ともなっている『特異性』なのだと…僕は皆に伝えさせていただきます」

 

あらゆる可能性を実現する『媒体』。それが全能の書庫であるアカシックレコードと、願いを叶える『杯』。それらが合体した『全能の聖杯』。

 

…時空管理局は、ユーノは司書長として到達し、同時にギルくんへと告げていたのだ。

 

世界が有する特異性、即ち、『誰もの願いを叶えるあの世界を、誰も手にしてはならない』という、禁断の可能性を。

 

それは、楽園カルデアが有する戦いの意味に超絶的な重さを付加する大義でもあり。

 

絶対に負けてはならないという、ユーノなりのエールでもあった。




ユーノ「まだ未明の問題ばかりだけど、時空管理局のトリプルエースを派遣するに値するくらいの超重要次元だということだけは把握していただけたなら助かります。僕達が、なんとか導き出した結論ではありますが…」

リッカ「きっと、ギルやオルガマリーはとっくに知ってるんだろうなぁ…」
イリヤ「そのアカシック・グレイルは一体どこに…?」

ユーノ「解りません。果たして地球にあるのかどうか、誰が所有しているのかすら…」

なのは「…うん。これはますますリッカちゃんのカルデアに協力しなくっちゃね…!」

ユーノ「頼んだよ、なのは。そして書記長として、更にカルデアに協力者を派遣したいんだ」

なのは「え?」

ユーノ「アカシック・グレイルの発見を助ける為の存在。つまり『彼女』をカルデアに召喚したいんだ」

なのは「それって…!」


ユーノ「うん。俗に言う『世界で一番幸せな魔導書』だよ。なのは」

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