人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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イリヤ「意外だなぁ…ギルくんがそんなに真面目に魔法少女と向き合ってくれるだなんて…」

ギルくん「やる気と希望に満ちた人しかいないのが魔法少女のいいところですからね。見ていて不愉快にもなりにくいですし。それに、エアさんとの約束なので」

イリヤ「本当にお姫様が大好きなんだね、ギルくん!」

ギルくん「えぇ。僕の…ギルガメッシュという存在が鎖の他に持つ唯一無二です。では、リッカさん達は管理外地球の地名海鳴、喫茶店翠屋に飛ばしますねー」

ヘラクレス「流石に話が早いな。流石幼少とはいえギルガメッシュだ」

なのは「私のお家の喫茶店はね、コーヒーとケーキ、シュークリームが自慢なんだ。すいーつじゃんぬにだって負けないんだよ〜?」

リッカ「じゃあなのはさんの地球で世界一美味しいんですね!俄然楽しみになってきました!」

ギルくん「よかったら、エアさんへのお土産を買ってきてくださいね。それでは〜」


いらっしゃい、高町一家の総本山!

海鳴市。

 

その名の通り海に隣接した街で、少女であった頃のなのはの物語の主な舞台。海辺といってもそれだけでもなく、山もあれば丘もある。果てには娯楽施設に温泉宿、スーパー銭湯も備えた大体のものは揃った素晴らしい場所。なのはを取り巻く者ほとんどはこの街に住んでおり、平行世界のこの地も大した変化がない程である。

 

そんな中、高町士郎と高町桃子が夫婦共同で経営している喫茶店『翠屋』がなのはが帰郷する自宅であり修行先である。駅屋商店街の真ん中にあり、母の桃子が15の時よりお菓子作りを志し、店を開くまでに大成した事もあってそのスイーツは大評判。遠くからはるばるこの店へやってくるという客もいるほどである。

 

夫、高町士郎との相思相愛ぶりは有名な語り草で、万年新婚気分と言われるほどのラブラブぶりは店のもう一つの名物とも言える程だ。家族みんなで撮った写真と、夫婦二人で撮った写真が並べられていることから推して知るべしな関係だろう。写真から読み取れる家族関係は、夫婦、長女、次女、長男、長男の恋人といったところであろうか。他に写る者たちは、様々な巡り合わせがあったのだろう。

 

「なのは!お帰りなさい!」

「ただいま、お母さん。皆、こちらがお母さんの高町桃子さん。喫茶翠屋のお菓子職人さんだよ」

 

 

「はーい。綺麗で優しい、なのはの大好きなお母さんです。なのはからお話は聞いているわ。いつもなのはがお世話になってます!」

 

実年齢を感じさせない若々しさで挨拶を返すなのはの母、桃子。様々な見た目の一行にも物怖じしないのは流石の肝っ玉と行ったところか。

 

「もう、お母さん。恥ずかしいからやめてよねー」

「本当の事でしょう〜?皆、今日はよく来てくれたわね。夫と長男に御用がある、だったかしら?」

 

「はい!ですが冷やかしはしたくないのでケーキとシュークリームを所望します!」

『代金は妾が持とう。好きなものを頼むがいい』

 

「あ、ヘラえいこーです。ヘラ、お前…お母さんみたいじゃないか…」

『母だが?』

 

「イリヤスフィール・フォン・アインツベルンです!なのはさんを目標に日々精進しています!」

 

「黒神愛生。リッカの友であり、付き添いです。お世話になります」

 

「まぁ、皆可愛かったりたくましかったり…!いいわ、腕によりをかけて作っちゃうから!道場にふたりともいるけど…ちょっと待っててもらいましょうね!」

「えぇ!?」

 

「さぁさぁ席に座って!翠屋自慢のスイーツ、たっぷり堪能していってね!」

 

桃子の朗らかに誘われるまま、一同は席につく。なのはは二人に話をつけてくると道場へ向かい、一同のみで桃子のケーキとシュークリームを堪能することとなったのだが。

 

「お〜いし〜〜!!本当だ、じゃんぬ店長のスイーツに負けないくらい美味しい〜!」

 

イリヤが感激しながらケーキとシュークリームを貪るように、それはじゃんぬの燃え滾る向上心と怒りの産物とは違うベクトルの、優しく柔らかい味わいに満ちていた。心を湧かせるのがじゃんぬなら、和らげるのが桃子のスイーツ。そういった感覚を、一同へともたらす。

 

「確かにこれは、素晴らしい味だ。制作者の感情と想い…店長とは異なれど劣らない熱量を有している」

 

ケーキは甘すぎず適切なクリーム量を、シュークリームは完璧なふわふわを。それらが毎日じゃんぬスイーツで味わう領域と寸分違わぬ味わいを持っておりいくらでも食べられるような錯覚を覚える。スイーツじゃんぬ店員であるヘラクレスも舌を巻くほどに。

 

『これが当世の、というより人間の手掛けた甘味か。確かに悪くない』

(ヘラも認める味か)

 

『素晴らしい創作物というものは、創作者が飢えているか満たされているかのどちらかで生み出されるものだ。前者は己の怒りから産み出す真作への飢え、こちらは後者だな。家族というものに縁遠いリッカやアキには解りにくいだろう故、言葉に直してやればこうだ』

 

(余計な一言はいらん、ヘラ)

 

『む…、いや、すまん。悪気は無かったのだ』

 

「構わん、事実だ。しかし私もリッカも、今は家族の味は理解できるぞ?」

「うん!幸せの味をちゃーんと知ってるもんね〜!」

 

『ヘラさんはなんというか、高慢ちきと世話焼きとお節介がハイブレンドされていますよねぇ〜』

 

『フン、嫉妬していてばかりの女と思うな。こう見えて私は神々の女王にして母。気遣いくらいはできるのだ』

 

拗ねるヘラもまた、ヘラクレスが見たことのない一面を示す。そういえば生前は確執ばかりで、こうした触れ合いには縁がなかったなと彼も思い返す。

 

「ヘラよ、エクレアというスイーツはゼウスのスイーツなのだ。何故か解るか?」

『……判らん』

 

「フランス語で稲妻という意味なのだ。稲妻が如く一瞬で食べれてしまうから、という由来を有している。ギリシャで稲妻といえばゼウスだ。要するに、我々にとって家族のスイーツとも言えなくはないのではないか?」

 

『…愛生。エクレアはあるかどうか聞いてくれ』

「もう頼んだ」

 

「ヘラえいこーさんったら物知りなのね〜!お仕事はやっぱりパティシエかしら?」

 

「冒険家です」

 

「フッ、確かにヘラの言うことは的を得ている。私達は出生が特殊ゆえ、血の繋がった肉親への縁は薄いかもしれん。だが…」

「そうだとしても、幸せな家族がこの世界でかけがえのない宝物って事くらいは解るもんね〜!」

 

オレンジジュースで乾杯するリッカと愛生。桃子はそんな二人にそっとクッキーをサービスする。

 

「私の奢りよ。これからも、うちのなのはをどうかよろしくね」

 

「勿論です!教官から教わる事、もっともっとありますから!」

「一蓮托生の間柄、切っても切れない縁というやつです。彼女の輝きは我らには不可欠でしょう」

 

「…うん。ありがとうね、なのはの新しいお仲間の皆さん!」

 

そうしてスイーツを堪能するだけ堪能し、カルデアの皆に土産として包んだ後、イリヤが満足げに机に突っ伏す。

 

「美味しかった〜!海鳴市さいこー!」

『イリヤさん、何をしにここまで来たか忘れてはいませんか?リッカさんの新たなる力を手に入れる為ですよ?スイーツ食べて満足はだめですからね?』

 

「わ、わかってるってば!…でも、なのはさんの強さの秘密はこのスイーツだって解っちゃったよ〜」

 

「なるほど、リッカや高町はスイーツキメていたからあれ程強かったのか…」

『そうであったか…。愛生、そなたもスイーツをキメるのだ』

 

「さては浮気絡まなければ天然だなそちらの家族は…リッカ、なのは教官が戻ってきたようだ」

 

ヘラの意外な一面を拝見したと同時、なのはがひょこりと顔を出す。

 

「お父さんとお兄ちゃん、リッカちゃんに是非会いたいって!さ、行ってみよっか!」

 

「はい!なのは教官!」

 

(ケイローン先生すら把握していなかった、日本独自のダガーナイフの熟達技能…)

 

「桃子さーん、シュークリームおかわり〜」

「はーい。いっぱい食べて大きくなってね!」

 

(その神髄、目の当たりにできるだろうか。そしてリッカは無事会得できるだろうか…)

 

師匠ならではの観点と親心にてリッカを慮るヘラクレス。

 

…そしてリッカは、出逢う事となる。

 

「やぁやぁこんにちは!高町なのはの父、高町士郎と言います!よろしくね、なのはのご友人たち!」

「高町恭也という。婿入りはしている為、本当の名字は月村恭也だが、なのはの兄として、こちらの方が君達にとっては通りがいい筈だ。話は、なのはから聞いている。留学中だが…君に会いたくてな」

 

柔和な男性と、ただならぬ気配を有する青年。招かれた道場にて、リッカは相対する。

 

(このお二人が…)

 

そう、彼等が修める剣術こそなのはがリッカに託さんとしている剣術。

 

小太刀二刀流、通称御神流。小太刀の限界を超越する神髄に、リッカは今相対しているのだ。




高町(月村)恭也「不躾ですまんが、藤丸龍華。なのはから聞いた話では…剣術の『奥義』に開眼しているというじゃないか」

リッカ「あ、雷位の事ですか?それなら、はい!」

高町士郎「とんでもない才覚を持っているんだねぇ、君は!そんな君が御神流に興味を持ってくれるなんて光栄だよ」

高町恭也「差し支えなければ、見せてもらえるだろうか。その歳で奥義を開眼しているという者はめったにいないからな」

なのは「ふふん、そう来ると思った!リッカちゃん!思い切り見せてあげて!」

リッカ「は、はい!では…藁人形か何かを御用意してもらえると助かります!」

…そうして、リッカの奥義にして絶技を改めて一同は目にする事となる。

「雷位──開帳!…はい、終わりました!」

イリヤ「ほぇ?まだ剣を構えただけのような…?」

リッカ「触ってご覧?」

イリヤ「藁人形をですか?…ひゃ、ひゃぁぁぁ!?」
ルビー『イリヤさんが触った瞬間、藁人形がひとりでにバラバラになっていきますー!?特撮映像のようにー!?』

ヘラクレス「今日も絶好調だな」
黒神「天晴れ!リッカの剣、雲曜が如し!」
ヘラ(まるで見えなかった…)

イリヤ「こ、腰が…腰が抜けたぁ…」
リッカ「大丈夫?手を貸すからね」

なのは「どうどう?リッカちゃんなら二人の剣術、マスターできるはずだよ?」

高町士郎「なのは!彼女は免許皆伝してるからお父さん教えることないよあっはっは!」
高町恭也「閃…だと…むしろ師事するべきは俺ではないか?」

なのは「え、えぇえぇえ!?」
リッカ(閃?歩法や抜刀術が奥義なのかな…?なんにせよ!学ぶのが楽しみ!)

企画倒れの危機になのはは叫び、新たなる境地の開拓に心が弾むリッカであった。

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