人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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人類悪を向き合い、乗り越えたことで。藤丸立香の在り方は昇華を果たした。ここで触れられる龍とは、精神を比喩する意味合いである


人理を(のぞ)みし龍心 EX

この世総ての悪、人類悪。それら総ての宿業を乗り越えた者に与えられるスキル。世の悪性を学び、それを美徳に換えた尊き在り方、龍がごとき気高い魂とその絶対性を例えて呼称される

自身に向けられし七つの大罪、この世総ての悪を無力化し、美徳に反転させ打ち破る。自己の絶対性を揺るぎないものとする。また、あらゆる精神干渉(誘惑、幻惑、魅了、虚言)をシャットアウトする。勇猛のウルトラ上位スキル。精神粉砕系の宝具も作った相手が狼狽するレベルでけろりと流す

総ての悪に晒されながら、けして自我を喪わず。また、罪を知りながら、けして世界を呪わず

その存在の絶対性は、世界の総てを救うまでけして揺らぎはしない。究極の域にまで達した魂の一つの答え

少女は呪われ、貶められ。しかし導かれ、歩きだし。やがて――一つの存在として、世界に産声を上げた

獣は人となり、悪性に育まれた邪龍は穢れを祓われ、世界を取り戻せんと駆け抜ける龍へと変わる

基は人類最後のマスター。心に無敵なりし龍を宿す、人理最後の希望である


――――代償として。彼女は『世界を救う』事のみに総てを懸け、未来を掴むために疾走する

その鮮烈に、輝かしくある在り方は、輝かしく在るが故に

――世界を救うその日まで。自らの幸福のために個人たる誰かを『愛』し、また『恋』をする事は無い

『愛』の素晴らしさは知っている。でも、今の私には必要ない

『恋』はいつか知りたいと想う。でも、それは今じゃない

世界を救うその日まで『自分』の幸福は省みない。総ては、世界の未来を掴んだ後に

自己が揺らがぬ故に。目指す望みが果てしないがゆえに

けして。誰かに温もりを求め、魂の休息を願う事は無いのである。彼女にとって世界は取り返すもの、人々は勝ち取る未来の先に生きていくもの。自らが寄り添うものではない

――飛び立ちし龍は、平和という天に辿り着くその日まで、自ら安寧を求めることは無い

変容(泥)A+++→C

己の肉体に泥を纏わせ、自在に変化させる。本来ならば邪龍、アジ・ダハーカにすら変化できるのだが、核たるアンリマユが弾き出されている状態では精々肉体の一部、武器の一部の形状を変化させる程度である。尚、アンリマユがやり方を教えてあげれば邪龍に変化できる

あくまで残り物、カスを使用しているにすぎない・・・が。――アンリマユの残した泥は、それでも尚、尽きることはない。

『一があれば無限に増えるぜぇ?俺はそー言うもんだからな!』


魔力放出(泥)A+

泥を魔力として噴出するスキル。人間、サーヴァントを取り込む悪性の呪い、それらを自らの魂で濾過した物体を魔術回路を通して放ち、身体能力のブーストを可能とする。人生と共にこの世総ての悪を担ってきた彼女にとって、この悪性は身近にある空気のようなものである。まさに手足の如くに、彼女はこの呪いを使いこなす。飛び道具としての射出、燃料として噴出、辺り一帯を泥に飲み込むなど。誰に影響を与え、誰に影響を与えないかはリッカの意志で決められる

基本的に使用されるのは身体能力ブースト(非常時に備え、サーヴァントと殴り合い極め合えるレベルへの肉体補強。キン肉マンの技は大体出来るようになりたいとリッカは語る)、武器へのエンチャントである。(液体金属にて自在に形を変える斬艦刀の如く泥を童子切に纏わせ形状を変える、月女神の弓矢をキーとして射出するバリスタを生成する、など)辺り一帯飲み込むとか主人公の戦いかたじゃないよね!

「主人公が使うようなスキルではないと思うんですけど・・・」とは正義の味方の後輩の言


求導師の祈り EX

彼女の在り方は、彼との出逢いの想い出が有る限りけして損なわれない



エピローグ2/2 この世総ての悪と救済 贖罪の麻婆

『バイタル、メンタル、完全覚醒を確認。藤丸リッカ、カプセルより解放されます』

 

 

電子音声が、マスターの覚醒を告げる

 

 

「少しは傷を患うとタカを括っていたが、よもや完全覚醒とはな。呆れた頑強さだ。ヤツを喰らわんとしていた雑念は、虚無の底へと逃げ帰ったか」

 

 

――良かった・・・本当に・・・

 

 

「ゲーティアのセコい企みもご破算!リッカ君も帰ってくる!僕はマギ☆マリ大好き!うん!完璧だね!」

 

 

「あなたにはミドラーシュのキャスターさんがいるでしょう」

 

「あ、その・・・もう少し、勇気を出してから・・・幻滅されるの怖いし・・・」

 

 

「・・・マシュ。リッカが目を覚ますわよ。あなたも、迎えてあげなさい」

 

『はい、所長!』

 

 

思い思いの所感を漏らす一同

 

 

「さて、では覚醒を――む?」

 

 

コンソールを操作した王の手が止まる

 

 

「これは・・・――」

 

 

――この、反応は・・・?

 

 

 

器が呟くと同時に

 

 

 

「り、リッカ君!?」

 

 

カプセルの中にいるリッカが目を見開く。同時にカプセルの中に満たされたエーテル水が瞬時に漆黒に染め上がっていく

 

 

「え!?なに!?まさかのラスボスなのかい!?」

 

『先輩・・・!?』

 

「――凄い魔力量・・・!彼女から凄まじいほどの魔力の奔流を感じる・・・!」

 

 

『カプセル、解放します』

 

 

電子音声と同時に、ハッチが開かれ

 

 

「――――」

 

王が見守る中でマスター・リッカが姿を現す

 

 

――幻、覚・・・?

 

 

自分の目を疑った

 

 

目の前にいるマスターからは、漆黒の魔力が溢れんばかりに満ち溢れている。漏れだす魔力が身体を纏い、翼や、爪や、角を象っているような形態を取る

 

 

「――――深淵を喰らい尽くしたか」

 

ニヤリ、と器が笑う

 

――ど、どういう事でしょう?

 

 

《言葉通りの意味よ。ヤツは地獄に囚われながらも、その地獄の総てを喰らい尽くし新生を果たした。奴の姿はその証。この世総ての悪を引き受けながら、ただ一人の人間である事を貫き通した輝しき阿呆。ヤツの信念、闇を抱き光となる・・・だったか。それの果てがあの光輝なりし邪龍のすがたよ》

 

 

 

「――改めて、自己紹介するね!」

 

 

身体中に光の混沌を纏いし人間が、真名を告げる

 

 

「私は藤丸リッカ!身長は158㎝体重は秘密!スリーサイズは上から84、56、82好きなものはコミュニケーションとサブカルチャー全般!嫌いなものは裏切り・・・ううん。裏切られても別にいいや!嫌いなものは先入観!座右の銘は――」

 

 

「『意志があるならば、神であろうと絆を紡ぐ』であろう?――全く。まこと長い幼年期であったな」

 

――あぁ、変わっていない。

 

 

本当だ、何も、何も変わっていない・・・

 

地獄に囚われながらも、その輝きに陰りなく

 

 

「――ようやく産声をあげたな。藤丸リッカ」

 

 

「うん!ただいま、ギル!ただいま、皆!」

 

――彼女は、何も変わらず・・・

 

「私――楽園に!大好きな皆の場所に帰ってきました!これからも頑張るから!皆、よろしくね!」

 

――いや、ずっとずっと魅力的になって、彼女は帰ってきてくれた・・・!

 

 

・・・おかえりなさい、はじめまして。藤丸リッカ

 

 

貴女の帰還と誕生に、心からの祝福を・・・!

 

 

『先輩!先輩――!』

 

カプセルを叩き、呼び掛けるマシュ

 

 

「ただいまマシュ!肉体改造中?」

 

『良かった!良かったです!本当に・・・良かった・・・!』

 

「ふふん。地獄巡り楽しかったよ!後でいっぱいお話聞かせてあげるね!」

 

『はい!お帰りなさい、先輩――!』

 

 

「り、リッカ!」

 

「あ!ただいま!マリー!」

 

リッカから溢れだす魔力が身体の秘部を隠し、かたち作りながらマリーに抱き着く

 

「おかえりなさい!よく頑張ったわねというかあなた、大丈夫なの!?」

 

「ん?何が?」

 

「魔力よ!あなたに満ちるその魔力!何よその色!真っ黒じゃない!精神と回路を侵されていないのが不思議なくらい・・・!大丈夫なの!?精神を害されたりしてないでしょうね!?」

 

「ん?全然?むしろ力がみなぎってるよ!凄い!」

 

「・・・魔術師何十人、何百何千人分なのよ・・・そんなに魔力を詰め込んで破裂しない貴女の身体、発狂しない貴女の精神と魂・・・いろんな意味で、規格外に過ぎるわ・・・」

 

「そう?そんなに変?」

 

身体を見直す

 

「良く解んないや。『産まれてからずっと一緒だった』んだし。でもこれ多分、ほんの一部だよ?――ていうか何これ!?尻尾とか角とか生えてる!?ジークフリート!?私はジークフリートになったの!?畏れ多いよ!」

 

「・・・驚いたな。彼女の中に循環する魔力、それは汚染された聖杯に宿る泥と極めて似通っている・・・いや、同じと言っていい!こんなの、人間が請け負える魔力なんて代物じゃないぞ!キミ、本当に何があったんだい!?最後らへんは見えなかったから解らないんだけど!」

 

「えっと、私の中から出てきた人類悪を皆で倒したの」

 

 

「――――なん、だって・・・?」

 

絶句するロマン

 

「ふはははははは!この世の総てを背負うに至ったか!リッカ!ますます以て奇特なマスターよ!その希少価値、流石は我が財よな!」

 

膝を叩き笑う王

 

(エアとは真逆だね。君が清らかに輝くプラチナだとしたら、彼女は総てを呑み込み魅了する黒曜石。対極の極致に位置する輝きだ。君は見惚れて寄り添いたくなる尊い輝き、彼女は総てを呑み込み、吸い込まれる魔性の輝き。共通するのは、どっちも美しいってことだけだね!)

 

 

――フォウの言葉は、的を射ている

 

あんなにも禍々しく、あんなにも透き通った輝く黒

 

闇を抱きながら、輝き続けるその魂の色彩は、総ての色を際立たせ、輝かせる無地の黒。夜の安らぎの闇が如く。それでいて、美しく輝く

 

 

その在り方は、ただ――とても尊く、美しい――

 

(・・・驚きだ。あぁ、本当に驚くべきことだ。ボクが・・・人の悪性を見て・・・『美しい』と思うなんて――)

 

《ふっ。だから言ったであろうよ。罪と美徳は表裏一体。当人の裁量一つで彩りを如何様にも変えるとな》

 

 

――はい。彼女は、もう。大丈夫なんですね――

 

 

「見ましたか、ギルガメッシュ」

 

プシュー、と部屋にジャンヌオルタが入室する

 

「私のリッカは最高なんです!」

 

集中線が入る程の迫力でガッツポーズを行う。その表情は、とても誇らしげだ

 

「ふっ、苦言も無粋も漏らすまい。・・・マスターの救出、ご苦労であった」

 

「・・・礼を言うのはこちらです」

 

「――何?」

 

固まる王に、頭を下げる

 

 

「――ありがとうございました、英雄王。私を、この楽園に招いてくれて。そのお陰で・・・私は」

 

顔を上げた先の視線に映るのは

 

 

「マシュー。出てきてー。はぐさせてー。そのマシュをマシュマシュさせてー」

 

『せせ、先輩!?なんだか、フランクさに磨きがかかりアンニュイに!?』

 

「ふふふ、アジダハーカ先輩って呼んでもいいよ?――ん?アジダハーカ?なんだろそれ」

 

「マシュはもう少し時間がかかるわ。恐らく明日には次の特異点の攻略なんだから、しっかり休むこと。いい?ただでさえ寝たきり」

 

「ふっ!!はっ!!とうっ!!」

 

拳と脚を振るう。パンチとキックの軌跡の大気と景色が切り裂ける。

 

「はあっ!!」

 

虚空から魂に刻まれた武装である月女神の弓矢を、童子切安綱を召喚し、型を行う

 

 

「――うん!身体のキレは大丈夫みたい!いけるいける!ギルのカプセルや皆の看病のお陰だね!皆、ありがとう!」

 

 

「君はどこに向かってるんだい!?性別リッカなんて失礼な渾名をつけられちゃうのもむべなるかなだよ!?」

 

 

「女子力はこれから磨くんですー!女の子らしさじゃ世界は救えないんですー!――それに」

 

ジャンヌに駆け寄り、手を繋ぐ

 

「私が頑張れば頑張るだけ、ジャンヌが可愛くなるから!私はそれでいいの!今はね!」

 

「――まぁ、そういう事です。後輩ポジだと胡座をかかないことね、マシュ?私はもう――」

 

 

渾身の、渾っっっっ身のどや顔を作り

 

「――私は、マスターの誇りになれましたから!」

 

 

『がー――――ん!!そ、そんな!私がマシュっと肉体を改造している合間にそんな!信じて送り出した先輩がジャンヌ・オルタさんと仲良しに!?』

 

 

「ふははははははははは!一本とられたなマシュよ。これはメインヒロインの座は危ういかもしれんな?だが案ずるな。お前もいずれ、お前にしか出来ぬ偉業を為し遂げようさ。――その果てに、貴様と言う存在を維持するための肉体改造よ」

 

 

――王?

 

《・・・そうか。我も魂を起こしていたのだったな。まぁ、お前も楽しみにしておけ。旅路の果てに至るまで、お前が飽きることはあるまいよ》

 

――はい。あなたの庭たる世界の総てで、愉悦を愛します!

 

《それでよい。うむ。いちいち褒めていてはキリがないほどお前は口を滑らせるのが得手よな》

 

――?

 

「ギル!そうだ、これだけは言いたかったの!」

 

「とりあえず、私の上着を貸してあげるから・・・」

 

「絆礼装はまだ早いよマリー!誰にでも身体を許しちゃダメ!」

 

「許さないわよ!?何それ!?」

 

 

「リッカ?伝えるべきことはきちんと伝えましょう?」

 

二人が肩を並べて、王の前に立つ

 

「ん?どうした?飴でも欲しいのか?」

 

「「せーの!」」

 

ぺこり、と頭を下げる

 

「「楽園を作ってくれて、ありがとう!ギルガメッシュ王様!」」

 

 

「――・・・」

 

――二人とも・・・

 

《――ふっ。何を解りきった当たり前の事を。王が納得の行く仕事を果たすのは至極当然、だが・・・》

 

 

「――よい。貴様らの感謝、受け取っておいてやろう。・・・ゴージャスたる我が好むは、混じりけのない純粋な総てであるのだからな」

 

 

――はい。彼女達の想いが無垢で純粋であることは、ワタシが魂をかけて保証します

 

《――まこと、礼を捧げられ上機嫌になるとは、我が在りようも見る影もない程に軟化したものだ。お前の責と思えよ、英雄姫(エア)

 

むにぃ、と人差し指で頬をつつかれる

 

――あう~

 

「さて、本来なら即座にベッドに叩き込むところだが・・・貴様は随分と英雄どもに気を揉ませた。一通り挨拶を済ませてくるがいい。大なり小なり、お前を案じていたのだからな」

 

 

――リッカがいない間、カルデアはずっと落ち着きがなかった

 

貧乏揺すり、廊下を行ったり来たり、気晴らしのシミュレーション、トレーニング。急に歌ったり麻婆を配布したりたくあんを栽培したり、着せ替えをローテーションで行ったり沖田さんが血を吐いたりキャットが玉藻を鍋に放り込みかけたりそれはもう大変だった 

 

「何、難しく考えることはない。すれ違うもの総てに頭を下げればよいのだ。――この楽園に、貴様を案じておらぬものはただ一人もいないのだから」

 

「――うん!ちょっと、待っててねマシュ!行こう、オルタ!」

 

「はい、リッカ!」

 

『な、名前呼びまで・・・!え、英雄王!私はいつ!いつスーパー後輩として!サイクロプス後輩として生まれ変われますか!?』

 

「さぁな。人理修復の後ではないか?」

 

『さ、早急に後れを取り戻さなくては!こ、これで勝ったと思ったら大間違いですよ!私はより強く!よりマシュっと成長して先輩の横に立ちますから!』

 

「ふっ、好きになさい。誰がなんだろうと、私を揺るがすことは」

 

 

「ここにいましたね私!お疲れ様です!」

 

ドアを鉄拳粉砕しエントリーする

 

「げぇ!!あーぱー!!」

 

 

「マスターもお疲れ様です!気付けの麻婆!ルチフェロなりしサタン風味麻婆(天草推薦)をどうぞ!栄養がみなぎりパワーアップしますよ!はい!さぁ!食べましょう!食しましょう!」

 

「わ、私の中の総てが言っている!これはまずい!死にたくないって!!」

 

「ダイジョーブ博士理論は止めてくれない!?全然大丈夫じゃないから!!」

 

 

「・・・だめ、ですか?」

 

しゅん、とうなだれるジャンヌ

 

「は・・・?」

 

「なんとなく、二人に私が迷惑をかけてしまったような気がしたのです。私にとって揺るぎなくとも、あなたたちにとっては余計な事を。――そんな声が聞こえたのです。『どんな形であれ、彼女達に、あなた方の前に立ち塞がったことへの謝罪の意志を伝えてほしい』と、啓示が・・・だから、せめてもの罪滅ぼしにと・・・麻婆を・・・」

 

ジャンヌの頬を涙が伝わる。それが麻婆に落ち、一瞬で蒸発する

 

「どうして謝罪で生命を脅かそうとするのか、これがぜんっぜん解らない!!何処ぞのアンタをたぶらかした男と食えばいいでしょう!?」

 

「・・・そうですよね・・・所詮私はあーぱー聖女・・・私なんて、麻婆しか取り柄のない田舎娘・・・私なんて・・・」

 

落ち込んでしまうジャンヌ。・・・本気で案じた故の行動のようだ

 

――う、うぅん・・・でも二人は挨拶回りが・・・また寝込むのも・・・困るし・・・

 

《――エア》

 

――はい。英雄王

 

王の声音で、総てを察する英雄姫

 

《すまぬな。――お前を擁する事ができたこの我は、まこと幸福であった》

 

――身に余る光栄です。では、諸共に・・・

 

 

「・・・まぁ待て。奴等はこれより挨拶回りだ。その麻婆。我がいただこうではないか」

 

「え、でも・・・」

 

「よい。王は世界を背負うもの。煩悶や罪滅ぼしも然り。貴様の総て、我が背負おう!」

 

「――!で、では・・・!お願いいたします!私の、罪滅ぼしを・・・!」

 

こちらに向けられる悪意なき地獄を、涙目で睨み返す

 

「行け!!我の屍を踏み越えよ!!」

 

「は、はい!」

 

「ごめん、ごめんね・・・!ギル!」

 

 

駆け出していく二人

 

 

「――え!?新しいサーヴァントの召喚が確認されただって!?」

 

「行きなさいロマン!ここは私が!」

 

「ですが!」

 

「はやく!!所長命令よ!!」

 

 

「――ご武運を!!」

 

駆け出していくソロマン

 

 

「――ふっ。知ってた、というヤツよな。何。此度は失敗して作ったのではないのだ。味わい様はある。勇者が食らったのだ、久し振りとはいえ!王が喰えぬはずが無かろうが!!」

 

――地獄の果てまで!王よ!!

 

レンゲを握る!

 

 

(ダメだ!エア!!君がそんな――!!)

 

――大丈夫、フォウ!ワタシの魂は砕けない!君との約束が、胸にあるかぎり――!!

 

(エア――!!)

 

ワタシは、この世の総てから眼を逸らしたりはしない――!!いただきます――!!

 

 

「原初を語る。辛味は熟し麻婆は地獄を言祝ぐ。王を害すは聖女の善意!」

 

 

ナプキンを取り、一口に運ぶ!

 

 

「胃袋を犯す汁、食卓を犯すは加減を知らぬあーぱーよ。――――完食を以て鎮まるがいい!!!」

 

 

――――瞬間

 

 

「『天地乖離す開闢のレンゲ(エヌマ・エリシュ)』――!!!」

 

 

――ぁ

 

 

 

 

 

 

しつけぇなあ小僧。こっちはさっさと終わらせてぇんだ

 

唸る、獣

 

それとも何か?テメェは相手の質で殺す殺さないを推し量るのか?弱いなら活かす、強いなら殺すと?

 

 

積み上げられし、無数の屍

 

 

――話にならねぇ。優しい殺生がしてぇんなら牧場に行けよ牧場に

 

それを築き上げしは

 

 

ここは戦場だ。持論ほざく前にさっさと死ね

 

紅く黒い槍を持つ

 

 

――蠢動しな、死棘の魔槍

 

 

・・・あれは

 

抉り穿つ鏖殺の槍(ゲイ・ボルク)

 

――クー・フーリン・・・!?

 

 

垣間見た景色がなんなのか、それが意味する事を考える前に

 

 

 

「ガ――――――――!!!!!???」

 

 

王と姫の意識は、まとめて刈り取られた・・・

 

 

「ギル――――!!」

 

『英雄王――!!!』

 

「――啓示が・・・!え?言い忘れていました、甘口を作ってあげ・・・そんな――!?」

 

王は矜持のみで器を動かし、麻婆を完食した・・・

 

 

その後、リッカとジャンヌは皆と顔を合わせた

 

 

かけがえのない母と兄

 

「お母さ――ん!ただいまぁ!!」

 

「ああ、リッカ・・・!真っ先に母に会いに来てくれて・・・!本当に嬉しいです!よく、よく頑張りましたね・・・!」

 

「母上のお陰だよ!刀に宿ったお母さんが、力を貸してくれた!だから、帰ってこれた!本当に、本当にありがとう!・・・あぁ・・・」

 

ぐりぐりと身体を押し付ける

 

「ずっとこうやって・・・母上の温もりを感じたかった・・・あぁ、生きてて、よかったぁ・・・」

 

「リッカ・・・はい・・・沢山、沢山。一生分。甘えてよいのですよ・・・本当に、本当に。よく頑張りましたね・・・」

 

「おにぎりおまもり大量に拵えた!二度と地獄に迷いこむんじゃねぇぜリッカ!今度は俺っちも殴り込みに!閻魔様をぶん殴りにいっちまうからよォ!!」

 

「うん!今度は皆で地獄を見に行こうね!」

 

「あまりいい行き先とはいえませんよそれ。――はい。きんつばです。皆さんで食べましょう」

 

「まぁ――!すいぃつじゃんぬのお手製!これは、皆でいただくしかありませんそうしましょう!では!」

 

「「「「いただきまーす!」」」」

 

【――ふふ、ふふふふふふ。私は見ていますよ、リッカ。私だけの深淵で。いつまでも、何処までも。ふふ、ふふ・・・ふふふふふ・・・】

 

 

大切な友人に

 

 

「リッカお帰りー!!大丈夫だった!?苦しくなかった!?ダーリンもふる!?」

 

「ただいまアルテミス!オリオンはいいや!」

 

「ぶぎゅる!!な、慰めてジャンヌちゃ」

 

「死ね!」

 

「ぶぎゅる!!」

 

「御礼参りに来ました!地獄で、力を貸してくれたでしょ?そのお礼!・・・ジャンヌ!」

 

「はいはい。こちらをどうぞ」

 

『合作ケーキ=トライスター・ディアーナ』

 

「アルテミスの所は私、オリオンはジャンヌがやってくれたよ!二人で仲良く食べて!どうか二人が、いつまでも幸せでありますように!」

 

「リッカ――!もう――もう――大大大好きぃ♥!!これからもうんと!うーんと祝福あげちゃうからね♥!!あぁ、残念・・・もう少し強くしてあげたかったのになぁ・・・国を撃つとか・・・」

 

「あ、ありがとねリッカちゃん・・・もう性別リッカなんて呼ばびぎゅ!!」

 

「確かオリオンはラグビー部だったよね。私を性別リッカと呼んだ野球部とラグビー部は、例外なく潰すと決めている」

 

「ぎゃあぁあぁあぁあぁあアルテミス助けて頭を潰されるぅう!!」

 

「ここをカッティングするとですね、ハートのイチゴが」

 

「可愛い――♥♥!!」

 

 

「きいてぇえぇえ!!」

 

 

「ほらリッカ。黒ひげと観賞会するんでしょ」

 

「そうだったそうだった!じゃ、二人水入らずで!――オリオン。次はないからね」

 

「はひぃ!!」

 

 

 

 

「おまたせみんなー!!」

 

 

「待ちかねましたぞリッカたん!!よくぞ無事で!いやぁよくぞ無事で!おぅふwww拙者涙が止まりませんぞwwホンとに!」

 

 

「心配かけて、ごめんね。アニメ、溜まってたでしょ?」

 

「いやいや!リッカたんの為にあらゆるジャンルの最新アニメを漁っておりましたからな!ヤベークソアニメが最新ライブラリに記録されましたぞ!ポプテピ――」

 

「どもどもー!お待たせしました!ミカン買ってきましたともー!さぁさ、文化の集いを始めましょう始めましょう!忠臣蔵とか見ます?見ます!?」

 

「アニメじゃなくないでござるか!?」

 

「アニメっつったら銀魂だろ。新鮮組は、新撰組だ」

 

「土方さん何言ってるんです?」

「マヨネーズはな、何にでも合うんだよ。沢庵にもな――あァ、沢庵マヨネーズ丼はうめぇ」

 

「すみません、沖田さんちょっと吐き気がしましてです」

 

「流せ沖田ァ!!新撰組!!視聴!!」

 

 

「選択権無いんだけどオォオォ!?ですな!」

 

「一気見すんぞこのやろー!!」

 

「沖田さんちょっとイケメン過ぎなんですよねー!いや嬉しいですけども!」

 

 

「やはりここはジブリでは!?ラピュタを!ラピュタを!」

 

「もう見飽きた・・・3桁は見ただろ・・・」

 

「ラム酒持ってきたよ!酔いながら見ようじゃないか!ピーターパンとかよくないかい?なぁリッカぁ!」

 

「姉御ぉ!!」

 

「やっぱワンピースでしょ!」

 

「メアリーったらすっかり夢中に・・・」

 

 

「BBAも文化の集いにwwワロスww」

 

「ま、中々面白いのは認めるよ!さぁ流しな流しな!」

 

「ひゃっほぉう!アニメだアニメだー!」

 

「新撰組だァ!!!」

 

「Bot扱いされますから止めてください土方さん!」

 

「となりのふっふふ、ふっふーふ」

 

「アンタ、ジブリ好きなのね・・・」

 

己を慕う者達に

 

 

「ご主人さ――――――」

 

「?玉藻?」

 

「死んでいるな。あまりにミリキ的な魂にノックアウトされたらしい。全く面倒なオリジナルだ。起きよ。死ぬのは顔合わせの後だな」

 

「はっ――!?・・・ご主人さま・・・」

 

「ありがとう、玉藻!玉藻のお陰で私の奥義は完成したよ!これでますます戦える!本当にありがと!」

 

すっ、と抱き寄せ、耳元でささやく

 

リッカマニュアル『奉仕欲がある人は特別待遇を意識した振る舞いをしてあげる』に従い、感謝を伝える

 

 

「これからも、よろしくね?私だけの・・・た・ま・も?」

 

「――は、はひぃ・・・♥いっしょう、ついていきましゅう・・・♥こんな、こんなの無理ぃ♥根の国色なのにめっちゃ眩しいなんてぇ・・・♥玉藻ぉ、あなたしか見えなくなりましたぁ・・・♥」

身体中を震わせ、完全に陥落する玉藻

 

「・・・よいのか?止めずとも」

 

「彼女が誰に何をしようが、私と彼女の絆は揺らぎません。どうぞ、九尾ケーキです」

 

「正妻の余裕か。よい顔になった。いただこう」

 

「じゃ、また後でね、玉藻、キャット!」

 

「うむ。タラシは程ほどにな」

 

 

かけがえのない師達のもとへと

 

 

「リッカ、これを纏え」

 

ヘラクレスから、毛皮を渡される

 

「オケアノスで渡した、ネメアの獅子の毛皮だ。君に勇気を与え、守護してくれる。私からの、成長祝いだ。私との経路が通っているなら、総ての文明の攻撃を無力化しよう」

 

「い、いいの?そんな大切なもの・・・」

 

「何、構わぬ。君はなんというか、私の女体化のような扱いを受けているようだからな。私と言ったら獅子だろう。験担ぎに使ってくれ」

 

「貴方の死は世界の終焉。防御はやり過ぎなくらいが丁度いいでしょう。そしてそれは、地獄からの生還を果たし、獣を倒した貴女への、一人前の証のようなものです」

 

「ヘラクレス・・・先生・・・!」

 

「すまねぇリッカ!!」

 

頭を下げるアキレウス

 

 

「俺ぁ、お前が苦しんでるときになにもしてやれなかった!大英雄が聞いてあきれやがるぜ!マリーにも心配かけちまって・・・!俺は兄弟子失格だ!!」

 

「いやいやいやいや凄くありがたかったよ!?アキレウスの打撃技!」

 

「いいやダメだ!俺の気が収まらねぇ!だからお前にこいつを託す!」

 

そうして渡されたのが・・・おぞましく精緻な意匠の盾だった

 

「こいつはオレの奥の手だ!どうにもならねぇ時に使ってくれ!必ず、必ずお前を護るからよ!」

 

「い、いいの!?」

 

 

「いいんだ!今度こそ、今度こそ俺は間違えねぇ!護ってみせるからよ!」

 

「・・・では、私からはこれを」

 

そうして渡されたのは一冊の本

 

「肌の美容、清潔に保つ為の秘訣を纏めました。武術と同じくらい、美容に気を使いなさい。宜しいですね」

 

「はい!先生!!」

 

「――見違えるようです。たくましくなりましたね・・・リッカ」

 

「これからです!私は必ず、世界を救います!!皆といっしょに!」

 

「あなたたちがいなかったら、リッカは死んでいました。・・・ありがとうございます。感謝を。皆様でこちらをどうぞ『オリュンポス神殿ケーキ』です」

 

「皆で食べましょう!師弟揃っていただきまーす!!」

 

「「「いただきまーす!!」」」

 

 

 

そして・・・

 

 

「このシチューギルが作ったの!?」

 

 

「ん、まぁ厳密には・・・」

――しーっ、ですよ

 

《・・・全く謙虚なことよな》

――良いのです。私は、ここで

 

「まぁそう言うことだ。素朴ながら身に沁みよう?」

 

「・・・優しい味・・・心が暖かくなる・・・」

 

「ロマン様、あーん♥」

 

「あ、あ、あ、あー・・・ん」

 

「はーい、もう一口~♥」

 

 

「(゜ロ゜)せ、先輩!よろしければ」

 

「ジャンヌ、あーん」

 

「あ、あーん・・・」

 

「させる側・・・!?」

 

「リッカはそうでしょうね。ふふ、私がしてあげましょうか?はい、あーん」

 

「あ、ありがとうございます!あーんあついっ!」

 

「シチューは勢いよく食べるものじゃないわよ・・・」

 

――フォウ、おかわりもいいよ?今は、よそってあげられないけど・・・フォウの分も、ちゃんと作ってあるからね

 

(シチューに溶けたい。とうとみのまま溶けたい)

 

――フォウ!?

 

「さぁ食らえ!あらゆる道は、ウルクに!メソポタミアへと通ずるのだ!ふははは!」

 

 

 

そして、マイルームに帰ってきたのは、カルデアをくまなく回った後だった

 

ふかふかなベッドに倒れこむリッカ

 

 

「あぁ~」

 

「リッカ。疲れているのは解りますが、お風呂には入りましょうね。マナーですよ」

 

「ん、だるい。つれてって」

 

「はぁ・・・もう。いっしょに入ってあげますから、ほら」

 

「あぃ~」

 

ジャンヌに連れられ、リッカとジャンヌはお風呂で汗を流す

 

 

「ジャンヌ、肌真っ白・・・美白?」

 

「死人の色ですよ・・・というか、リッカ、胸大きいですね」

 

「そう?」

 

「私と一センチしか違いません・・・立派なモノを持っていましたね・・・」

 

「ウエストはガッチリし過ぎちゃってるからねー。あはは、女子らしくはない、かなぁ」

 

「良いのです。あなたは、それで」

 

「・・・そっか」

 

身体を洗い合いながら、やがて身体を拭き合い、鏡の前にジャンヌを座らせる

 

「さぁ女子磨きの時間です。私の髪を傷めないようにしてくださいね?」

 

櫛を手渡し、眼を閉じる

 

「じゃあ、失礼しまーす・・・」

 

 

絹のような手触りの髪を、丁寧に丁寧にとかしていく

 

「わぁ・・・綺麗・・・」

 

「でしょう?・・・貴女の誇りです。美しくない筈がありません」

 

「ふふ、そうだよね。傷つけるわけにもいかないや。ね?私だけのジャンヌ」

 

「――ずっと、大切にしてくださいね」

 

「もちろん!」

 

二人だけの時間で、笑い合う

 

「あ・・・そうでした。ギルから、これを貰っていました」

 

そういって、懐から・・・

 

「聖杯!?」

 

「褒美だ。好きな願いを叶えよ、と・・・押し付けられました」

 

「良かったね!あ、何を願うの?ジャンヌは」

 

「ふふっ、実はもう、決まっています」

 

くすくすと笑いながら、聖杯をいじるジャンヌ

 

「教えて教えて!」

 

「――受肉ですよ、マスター。私は修復後に願います。一個の生命としての転生を」

 

「――ジャンヌ・・・」

 

「――そうすれば、あなたと一緒にいられるでしょう?ずっと、ずっと」

 

――地獄から帰還を果たした二人の時間は、穏やかに過ぎていく

 

 

「貴女の傍に――サーヴァントやマスターなど関係なしに。私はあなたといたいのです。リッカ――」

 

魔女の、無垢なる笑みと、世界に挑む龍の少女の笑みが交わされながら

 

楽園の一時は、過ぎていく・・・

 




マイルーム前

【よっ!後輩さん!何してんの?】


「・・・お前は」

【先程等先程乱入いたしました、最弱サーヴァントでございまぁす!いやぁ、宜しく頼むぜ後輩さん!カッコいい方!・・・や、ほんとはね?fate的に別れて終わるつもりだったんだけどさ、私の余りの痛快な活躍っぷりに再登場を望む声が余りにも多くてですね。こわあいお爺さんに整理券渡されてですね?当たっちゃってですね?・・・復讐の代償にしちゃあ、あんまりに恵まれてる気がするがね。まぁかまいやしないか!あー、はずいわー。二度と関わるなとか言っときながらこの様とかマジはずいわー・・・】

「・・・彼女の殻を被ったか」

【いやー、あんまり良い身体なんで気に入っちゃってさぁ?ムチムチしててオナニーのネタにゃぅおっ!!あっぶね!?】

「黙れ」

【おぉこぇえ・・・マスターさんここ?挨拶したいんだけどなー。今まで私を孕んでくれてありがとうございますってあだだだだだジョークジョーク!】

「・・・今は二人だけの時だ。邪魔をするな」

【いてて、成る程門番って訳ね。じゃあ日を改めますか。なぁに、どこにいても繋がってるようなもんですしね~。臍の緒的なアレで】

「黙れと言った」

【へいへい怒りなさんな、からかいがいがあって悪くないがね。ヒヒヒ。さぁてじゃあ着せ替えでも】

ガシッ

【へ?】

「貴 女 に は 治 療 が 必 要 で す」


「ここが楽園・・・わ、悪くないな。中々だ・・・うん。コンビニ・・・ある。ハーゲンダッツ、ある・・・くそっ、食べ放題・・・?金にあかせるとかずるいだろ・・・!あの成金め・・・それはそれとして、アイス美味いな・・・神代のアイス・・・くそっ、美味い・・・ずるいぞ、ずるい・・・美味い・・・」

「あ!アイスのお姉さんだわ!」

「アイスのひとだー」

「う・・・!あ、あっちいけ!私はアイスのお姉さんじゃない!」

「いつも、たべて、る」

「隠さなくてもいいのだわ!さぁ、一緒に食べましょう!」

「食べよー」

「う、く・・・あぁもう・・・!質の悪い楽園だな、全く・・・!」

《狗を見た、だと?》

――はい。赤黒く染まった槍、獰猛な笑み・・・あらゆるモノを鏖殺していました。・・・ワタシ達が出逢ってきたクー・フーリンとはどれも特徴が一致していませんでしたが・・・

《ならばクラスはバーサーカーか・・・?いや、有り得まい》

――王よ、それは何故です?クー・フーリン程の大英雄ならば、バーサーカーとしてでもおかしくない筈では・・・

《知れたことよ。ヤツがバーサーカーとして顕れていたならば、最早ヤツをヤツとして認識が叶わぬほどに異形と化すからだ。ヤツは太陽神の他に邪神バロールの血も引いている。その血の励起により、語るもおぞましき怪物にヤツを変える。バーサーカーであるならばその姿になろうよ。ヤツを見てヤツと認識出来ること、それこそがバーサーカーのクラスの否定に他ならぬ》

――それほど、ですか

《故に――いや。何事にも例外はある。ヤツが狂ったのでは無く、外的要因で狂わされたのだとしたら、もしや・・・》

――もしかして、聖杯!?

《――成る程な。おおよそ何処ぞのヤツに執心する女王が聖杯めに願いをくべたのであろうな。邪悪なる王に、が妥当か?・・・チ。我が財を男を縛るために使うとは、股の弛い女もいたものよ》

――聖杯の力を得た、クー・フーリン・・・邪悪なる、狂王・・・



ここは戦場だ。持論ほざく前にさっさと死ね



――っっ・・・

《怖いか?》

・・・はい・・・あの視線、殺気

・・・恐ろしい、です・・・

《貴様の恐怖は我にも伝播する。・・・可愛らしく震えおって。――心配するな》

――王?

《お前は我の姫。我の赦しなく害される事は永遠にない。――お前の価値は、既にあの場で定まっているのだ。顔を上げよ。我を信じよ、エア》

――はい・・・!

《――エア。手頃な聖杯、クー・フーリン縁の武具の原典の選別を行え》

――では・・・!?

《奴等が反則に手を染めるならば、こちらも心置きなく反則を使う。――ヘラクレスめの再来よ。次なる特異点、クー・フーリンめの本領を発揮させる》

――はい!わかりました!

《狂犬たるヤツが相手ならば、我も気合いを入れねばなるまい。雑事は任せるぞ、エア。我は寝る、何かあったら起こせ》

――よい夢を。英雄王

《うむ。よいな、けして恐怖に呑まれるなよ》


(大丈夫かい?)

「――うん。王も、フォウもいてくれるから」

(・・・怖いのは、立ち向かうことを覚悟しているからだ。避けられないから怖がるんだ。いいんだよ、怖がって)

「・・・フォウはいつも、優しいね。ありがとう。――おいで」

(うん!爆発してばかりじゃないよボクだって。さぁ、早くマイルームにいこう!)

「うん!」

マイルーム

「ただい――え?」

(ふぁっ?)


『――あぁ、やっと逢えたわね。綺麗な獣に、輝く優しいお姫様』

「あな、たは・・・」

『ふふ、だぁーれだ?なんて・・・私は、あなたたちと、お友達になりたい人よ』

(和風美人だ――!!)

『名前は、そう・・・『式ちゃん』と呼んでほしいわ――可愛いでしょう?響きが・・・ね?ふふっ――』




「はぁっ、はぁっ、はぁっ・・・」


『・・・・・・』(数多の攻撃を受け、鎧が半壊している)

「まだ、だ・・・ロンゴミニアド・・・!まだ・・・!」

『――――良いだろう』

「何っ――!?」

『お前たちの奮闘、意志。――選別するに足ると認める。ここで散らすには惜しい』

「何を、言っている・・・!」

『――善なるものを護るお前たちの輝きは、見処がある。そして・・・お前たちが護る輝きも、また』

「――!」

『・・・聖槍の拡張を検討する。ここは退くとしよう』

「ま、待て――!」

『その在り方。その輝きに感謝するがいい。――聖都にて、正しき聖抜が果たされるまで。お前たちの魂は預けよう』


「――――退いた、のか・・・」


「――皆様、ありがとう・・・ございます・・・私の役割は、ここまで・・・後は、皆様の、健闘、を・・・」

「おっと、お疲れ様。今は休みなよ」

「マー・・・」

「皆も、御苦労様。後は僕がやっておくから、ゆっくり休みなよ。――いやはや、部員のみんなは凄まじいね。女神の意志を曲げるとは!」

「――・・・」

「さぁ、アヴァロンに行こう。心配しなくていい。君にはキャメロットで、働いてもらわなくちゃならないからね――」


これにて監獄島は終了です!


リッカを主軸にした物語、いかがでしたでしょうか?

彼女のキャラクターは、疑問から生まれました


『なぜこんな一般マスターがコミュ力高いんだろう』と、プレイしていて思ったのです

英雄も反英雄も分け隔てなく仲良くできる。言葉にするのは簡単ですが描写となると難しい

『なんでこんなにチヤホヤされるのか解らない』

『マンセー乙』

などと、主軸の彼女が言われてしまっては、とてもじゃないけど良質な物語等望めない

ならばどうするか?そう考えた結果

『そう言えば型月主人公はみんなまともじゃないな』と思い至り

じゃあ、納得のあるバックボーンを作ってみようと思い立ち、思い付くままに設定を肉付けしていきました

コミュ力が高いのは、それが生きざまだったから

家庭風景が解らないのは、家庭に問題があったから

いつも明るいのは、救いと歪みが現れているから

魅力的なキャラクターを作るには、まずは欠点と闇から!といったモットーにリッカを設定した結果、リッカはこの世総ての悪を担う結果に・・・ごめんよ・・・リッカ


どうしても、我慢ならなかったのです。

『主人公だから仲良くできる』

『主人公だから他とは違う』

『主人公だから絆を紡げる』

と、それではただの歩く主人公補正。魅力など生まれるはずもありません


キャラクターは生きています。断じて物語を動かす部品であってはならない。ひとりでに台詞を紡ぐくらいの魅力的なキャラにしてあげたい

そんな思いを込めて、光と闇を抱えて生まれたのが『藤丸リッカ』なのです


どうしようもない闇を抱えて、それを皆と共に光に変えていってほしい

主人公として、一人のキャラクターとして、輝いてほしい、皆の心に焼き付くキャラクターになってほしい

ここにしかいない君であってほしい。だからこそ彼女を『リッカ』と呼んでいるのです


重苦しい設定を背負わせてしまいましたが、彼女は本当に恵まれた環境に置かれました


グドーシに、カルデアの皆に、読者の皆様に愛され、祝福を受けた主人公になってくれました

作者が用意し、背負わせてしまったアジ・ダハーカを討ち果たしたのは、リッカであり、リッカの総てを支えてくださった皆様の力なのです!


改めて、お礼を言わせてください!


ありがとうございます!リッカの光と闇を受け入れ、応援し、見守ってくださり、本当に嬉しいです!

リッカの旅はまだまだ続きます。作者の予想すら越えた彼女は、駆け抜けていきます

エア、リッカ、そしてグドーシ。オリジナル要素を受け入れていただけて、本当に本当に、ありがとうございます!

ここからは間髪いれず第五特異点です!


兄貴の

兄貴による

兄貴のための

アメリカ神話大戦!敵も味方も兄貴が大暴れする特異点、どうかご期待ください!

重ね重ね、本当にありがとうございました!

ここだけの主人公、獣を背負い龍を抱く藤丸リッカを、これからも見守ってください!

これからも、ハーメルンの皆様と皆様を取り巻く総てに、有らん限りの祝福を!


これからも、どうかどうか、よろしくお願いいたします――!

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