シロクマ「次の方ー」
きのこ「人の心」
ニャル【……………──】
シロクマ「次の方ー」
きのこ「人の心」
日常のように、人に仕事を斡旋していくシロクマ。
きのこ「人の心」
シロクマ「次の方〜」
その傍らには…
半壊し、指一つ動かない…一人の仮面ライダーの姿があった。
【これは…ちいかわワールド中から集められたちいかわ族共か!】
アンリマユの眼前に広がるは、大量に徒党を組んだちいかわ族。破滅を前に隠れ怯えていたにすぎない大量のモブたちが、力を合わせ悪神に挑んできた。そうとしか思えない光景が、アンリマユの視界と認識に飛び込んでくる。
「皆…!」
「わァ!皆来てくれたんだ!」
その一体一体は弱くとも、力はなくとも、心から絞り出した勇気に差異はない。世界を救うために必要なもの、一人一人の心の輝き。それらをこの土壇場で、ちいかわ族は示すことが出来たのだ。
【───へっ。やればできるじゃねぇか】
「…!」
【おっと。だがなぁ!数を揃えれば勝てるだなどと!その気になったテメェらの姿はお似合いだったぜェ!!】
演技を忘れるほどに満足な光景を見せられながらも、最後の締めとばかりにアンリマユは高く高く咆哮する。
【弾けて混ざれェーッ!!】
その絶叫は、ちいかわ族達を音圧だけで叩き伏せる程の威圧と威容を以て世界を滅ぼす試練となる。ちいかわ族は基本的に強くはない。終末に現れる神威を覆す力など容易に待ち合わせている筈がない。
「アッ、見て!あの、六本の角!」
そんな中、ハチワレが指さす。絶叫するアンリマユの角が、眩く輝いていることに。
「ェ…」
「そうか…ひょっとしたら、あの角さえ折れれば逆転できるかもしれないなって」
ちいかわ、そしてないあるはあのこが回収している。だがあのこも傷が激しく、突撃できるのは数度が限度だろう。
「やるしかない…!ないある、行けるか!」
ラッコは身体がキメラ化しており動けない。ハチワレも然り。あのこはちいかわと、ないあるしか乗せる気がない。となれば、フィニッシャーは必然的に二人となろう。今度こそ、全ての決着をつけねばならない。
「だいじょうぶ!!」
「ァ…ァ…キッ!」
ないあるは即答、追い詰められてからの爆発力が凄いちいかわも覚悟を決める。
「「「「「「ワァーーッ!!?」」」」」」
【ギミックボスだなどと勘ぁん違いするな…!!】
アンリマユは当然フィジカルも強い。並み群がるちいかわ族などものともせず弾き飛ばしていく。いよいよ、ちいかわ族の滅亡が目前に迫る。
『キャアッ!!!』
意を決し、二人を乗せたあのこが猛進する。淀みきった赤き空と黒き太陽、泥の氾濫による終末光景に、果敢に挑む最後の希望達。
【良い子の皆!よぉく見ておけェ!!】
「ワ……!!」
【キメラとして造り直してやる!記憶もそのままになァ!!!】
アンリマユは叫び、口に大量の魔力を込め、火球として生成。真正面から愚直に迫るあのこめがけ必滅の一撃を叩き込む!
【アンリパニッシャー!!イェイッ!!】
「ワ、ァ…!!」
眼前に迫る超巨大火球。ちいかわの心が本気で折れかけ、涙目で頭を抱える中、ないあるは動いた。動けたのだ。経験と殺意が彼女を動かした。
「ヤーーーーーーーッッッ!!!!!!」
気迫の絶叫を上げながら、持ち出せしは『ハンマー』。身体よりも巨大な丈のハンマーを振るい上げ、それを行った。それは戦い続けた彼女の人生の結実ですらあった。
【なんだとォ!?】
「ワァ…!!」
打ち返した。ハンマーを全身で振るい、なんと彼女はアンリマユの火球を、パリィの要領で叩き返したのである。彼女は防御、カウンターにおいて随一の精度を持つ。その人生が、今までの積み重ねが、世界を滅ぼす絶望にすらパリィを成功させたのである!
【シュワット!?でゅおぉっ!!?】
弾き返された火球をモロに直撃し、顔面に甚大なダメージが齎されるアンリマユ。口から煙を吐き出し、フラフラとよろめく。
【チィ、こうなれば貴様らをキメラ化調教して私のモノにし、私の言うことだけしか聞けないようにしてやる…!!】
懇切丁寧に次にやることを説明しながら、角を輝かせるアンリマユ。周囲にはほぼ全員のちいかわ族が揃っている。キメラ化させてしまえばその時点で世界の滅亡は確定してしまうのだ。
「ワァーーッ!ワ、ワ…!」
【もう遅い!これでちいかわはおしまいだぁ!!】
間に合わない──誰もがそう諦めかけた、その時だった。
「イィィィィィーヤッッッハァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!!」
ちいかわワールドに響き渡る大絶叫。それはちいかわとハチワレには馴染み深い、知らぬものには狂気に満ちたもの。
【ぐぁあぁあぁぁぁぁぁッ!!?】
それはうさぎ。『グライダー』に乗り飛翔してきたうさぎがなんと、全身全霊の特攻を仕掛けたのだ。稚拙ながらも完全なる予想外だったアンリマユは、もろにその直撃を受ける。
「今だッ!!」
「行くんだ、二人共!!」
ハチワレとラッコに促され、最後の一撃に移行する二人。
「てやーーーーー!!!」
ラッコから託された剣に全力を込めて、真正面上段唐竹割りをアンリマユに叩き込み──
【ぐぉおぉおぉおぉおぉお!!!】
「ヤダーーーーーーーッ!!!」
ちいかわが両手に刺股を持ち、あのこに高く高く投げつけられる。空に高く迫り、落下の勢いが存分に付き涙目になりながらも…アンリマユの頭上を完全に捉える。
【────!!!】
〜
「せー、のっ!!」
リッカがその光景に勝利を確信し、天沼矛を渾身の勢いを振り回し、心を一つにし『あの言葉』を高らかに叫ぶ。
其は────!
〜
「「「「「「「「なんとかなれーーーーーッ!!!!!」」」」」」」」
力の限りに振り下ろし、その斬撃は苛烈かつ精強な一撃を叩き込み…いよいよアンリマユ残りの角を断ち切ることに成功したのである。
【馬鹿なぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーッッッ!!!!】
角にあからさまに過剰なエネルギーをチャージしていたなアンリマユは、予想通りにエネルギー暴走を起こし大爆散。瞬間、リッカと協力した天地創造が発動する。
天沼矛とは日本の創造神の権能。その世界の地脈と魔力を掌握できたならば、理諸共掻き混ぜ新たなる世界を制作できる。
しかしそれは、イザナミ並びにその領地である日本の地でしか発動できない。平行世界もまた然り。本来ならば発動はできないのだ。
──しかし、ここにバグ技と例外、イザナミの規格外の神格が存在してしまった。
世界諸共魔力と地脈を掌握できるリッカ、そしてアンリマユ。充溢した魔力はちいかわワールドに余さず行き届く。
そして『日本人』にして『神代の肉体』を持つリッカが、イザナミの権能たる『天沼矛』を有している。
イザナミの神格により『日本人が一人でもいるのならそこは日本』というでたらめな日本認定による行使条件の踏み倒しを可能にした。してしまった。それにより、何が起きるのかと言えば一目瞭然である。
余さず地脈を満たし尽くしたアンリマユの泥は、天地創造の燃料として丹念にかき回される。
そしてやがて、湧きドコロ全体を循環し、ちいかわ族たちの代わりの魔力リソースを担う。これにより、湧きドコロから過剰摂取しない限り枯渇する事は無くなる。
「あなやーーーーーッ!!!!」
世界が残酷なのは当然だ。しかし、残酷なだけではただの悪趣味である。せめて、当たり前の幸せだけは保証し護る。それが、リッカが協力を決意した理由の一つだ。
空は晴れていく。爆発したアンリマユの内部から、大量の魔力がちいかわワールドへと満ちていく。
「よぉ──やったじゃねぇか」
ベリルは光の粒子になっていくアンリマユを見ながら、人知れず彼女を労る。
「お疲れさん。アンタはちゃんと護れたぜ──この世界を、皆でよ」
人でなしのクズの自分ではあるが、ずっと面倒を見てくれた恩義だけは無視できない。
そう簡潔に告げるベリルの声は、青さを取り戻していく空に吸い込まれていった──。
『終業音楽』
シロクマ「!」
きのこ「人の心」
ニャル【……何を帰り支度などしているのだ】
シロクマ「あら…」
ニャル【娘の契約を棄却するまで…永遠に残業してもらうぞ。抑止力ども…】
シロクマ「彼女はあなたの娘さんじゃないですよね?」
ニャル【あくまで、平行世界のナイアだからな…】
シロクマ「何故そんなに必死に?」
ニャル【平行世界の…私の、…娘だからだ…】
シロクマ「…………」
きのこ「人の心…」
シロクマ「……!」
ニャル【…!?】
シロクマ「……おめでとうございます、保護者さん」
『ないあるの契約書』
ニャル【これは…】
シロクマ「『世界の皆と世界を救う』。契約満了条件を満たしましたので、ないあるの契約は終了とさせていただきますね」
きのこ「人の心!」
ニャル【!!…ないあるが開放されなかったのは、一人だったからか…!】
シロクマ「良く頑張ったとお伝え下さい。またのご契約をお待ちしております」
ニャル【え、永続契約ではないのか…?】
シロクマ「ないあるはいつか、皆で世界を救いたいと契約しました。皆で世界を救ったなら、ノルマは果たされましたからね。永続契約は別口…世界と契約してもらわないと」
きのこ「人の心!」
ニャル【…………は、はは……ナガノの抑止力は…そこんとこ、ちゃんとしてたのか…】
シロクマ「またのご利用、お待ちしております」
ニャル【それは、二度とごめんだ…】
安堵と喜び、そして世界に挑んだボロボロのダメージにより、ニャルはずるずるとその場に崩れ落ちた…。
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