人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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シンボリルドルフ「どうやら、数名の例外を除き無事に全員にグランドウマ娘は現れたようだね。喜ばしい事だ」

ギル「選抜、という点で躓いていては話にならん。奴等はスタートラインに臨んだまでのこと、見応えがあるかどうかはこれから次第よ」

シンボリルドルフ「ふふ…異なことを仰る」

ギル「む?」

シンボリルドルフ「ことカルデアにおいて、あなたが徒労に終わる選択をする筈がない。揺るぎない確信は、その胸にあるのでしょう?」

ギル「…フッ、言うではないか。七冠の皇帝よ」

シンボリルドルフ「ええ。王にも姫にも御覧に入れましょう。そしてメロスとやらに魅せつけます。───ウマ娘を、無礼(なめ)るなと」

──おおっ…!この二人がダジャレやコキュートスギャグ無しで語り合うなんて!本気だ、マジだよフォウ!

フォウ(君のやる気は保たれたね、エア…!)




始動!作戦コード・グランドリレー!

「壮観だ…カルデアの誇るマスターに、グランドウマ娘の皆々。私は今、太極の光景を目にしている…」

 

【誰も彼もが可愛らしく、それでいて人より素晴らしい技能を持つ。よく共存できたなと思いますね】

 

マスターとウマ娘達が集まるカルデア管制室。ウマ娘ファンの安倍晴明と作戦立案のニャルがそんな感想を漏らす。ウマ娘側も、カルデアの壮観なゴージャスぶりに圧倒されているのか尻尾が荒ぶる者が多い。

 

 

「ここが世界を守る秘密基地カルデア!委員長が在籍するに素晴らしい施設ですね!」

 

「すごーい!ひろーい!ねぇねぇ、色々みたーい!」

 

「うぅ…迷いそう。カドック兄様についてく、ついてく…」

 

「ふふ、心配はいらないよ。後でスマホが配られるからそれで地図を確認したまえ」

 

「タキオンさん!」

 

「やぁ、ダイワスカーレット。君ならやはりリッカ君とタッグを組むと思っていたよ。一番のウマ娘なら当然の帰結だ」

 

「あはは、やっぱりお見通しだったんですね…」

 

「あら、ルドルフは欠席?もー、トゥギャザーしないなんてイケズぅ〜」

 

「お友だちも荒ぶっていて…デイビットさんが既に4回蹴られました…」

 

「大丈夫かデイビット!?」

 

「心配ない、カドック。大丈夫でなければ死んでいるからな」

 

「さて、私はグランドウマ娘ではないがケイオスカルデアの正式アドバイザーに就任したため、作戦説明を担当する。資格なしと異論はあるかな?」

 

沈黙、即ち異論なし。タキオンが無事受け入れられた事で、その善性に感謝しつつ作戦概要を説明する。

 

「ケイオスカルデアにて、魔術師や特異点、聖杯やサーヴァントにおける知識は把握していてね。君達マスターは特異点の戦闘を、ウマ娘達はメロスの持つ聖杯の無力化を担当してもらう」

 

「聖杯の…無力化ですって?」

 

【簡単な話さ、オフェリア君。メロスの聖杯の魔力を一時的に枯渇させ機能停止に追い込む。ヤツの宝具は聖杯によりブーストされたものだ。それを使い続ければやがて使用不可能となるのは自明の理】

 

「我々が対処に困難を極めていたのは、宝具の際に特異点ごと消失、発生を繰り返していた為後手に回っていたからだ。つまり見失っていたが故の戦術的敗北だね。しかし、令呪と聖杯の関係性を使い、ウマ令呪でメロスの聖杯にアクセスし、ウマ娘が聖杯めがけて疾走する事で追跡を可能とする。これが作戦の肝要だ」

 

簡単に順序立てすれば、メロスを宝具使用まで追い詰める。メロスが宝具を使用した後ウマ令呪を使ったグランドウマ娘が聖杯を追跡する。そしてワープアウトしたメロスに追いつき、別のマスターとウマ娘が更にそれを繰り返し聖杯の機能不全を狙う。リレーのような作戦ということだ。

 

「ウマ娘自体には戦闘はNGだから、マスターがウマ娘のウォームアップと護衛を、ウマ娘は疾走をといった役割分担が必要となってくる。一人でもウマ娘側の追跡が途切れてしまえば作戦は失敗だ。ウマ令呪がなくなってしまうからね」

 

「一気に全部使ってしまうのかしら?」

 

「聖杯と宝具に干渉するには、莫大な魔力リソースが必要と計算されたのさ。それこそ、ウマ令呪三画分における転移でようやく…といった形のね。だからこそ、グランドウマ娘でないと走るスタートラインにすら立てなかった、という事なんだ」

 

晴明やタキオンの説明に、思い思いの決意を見出す。たった一人でも走ることをしくじれば、それは楽園の敗北を意味する。それは、ともすればレースで負けるよりも重大な責任だ。

 

「ウマ娘の宿したウマソウルにより、追跡フィールドは最適化されるはずだ。速さはもちろんだが、挫けないガッツや根性、パワーも必要となる。文字通り、ウマ娘側も全身全霊が試されるというわけさ」

 

「……責任重大、だな」

 

「大丈夫?オグリ…」

 

「あぁ。だがそれは、いつものことだ」

 

「メロスは今、カルデアのサーヴァント達がはぐれサーヴァント達と協力して交戦しているものの…やはり最後には逃げられてしまう。そして特異点が消失してしまい強制退去のイタチごっこだ。追跡しようにも、まるで尻尾を掴ませてはくれない」

 

「こうなったらウマ娘の皆様が頼りなんです。特異点を消失させず追跡を完遂させ、なんとしてもメロスから聖杯を奪還する!これが、この作戦の中核!『グランドリレー』です!」

 

ダ・ヴィンチちゃんとシオンが大々的に発表したその作戦は、メロス自体の弱さに関わらず大規模なものとなる。いくら弱小といえど宝具は紛れもない奇跡。そういった例外処理の対応であるのだ。

 

「当然、要求される素養と絆も大切だ。準備のための猶予の期間は設けられる。パートナーとしての質を高めてこの作戦に臨んでほしい!」

 

【お互いを知り、何が得意なのかを知り、そして共に駆け抜けることがこの作戦の成功の鍵だ】

 

「マスター諸君には、君達の契約したウマ娘がどれほど人々の期待を背負った存在かをイメージしつつ彼女たちと触れ合っておくれ」

 

「ウマ娘側も、来るデビューを見越して大いにカルデアで力をつけてくれたまえ。ここには全てがある!君達の奮闘やウマ生にも実に実り多き一時となるはずだ!」

 

「…………」

 

「では副所長。いい感じの号令を」

 

「ここで私に振るのかね!?あー、えー、コホン。まずはウマ娘諸君らの協力に心から感謝する。…くれぐれも、予後不良や身体のケガには気をつけてくれたまえ。君達は馬のように疾走できる人間の姿を持った生命体だ。人間とは違うのだろうが、身体に負担がかかるのは容易に想像できる」

 

ゴルドルフ自体は馬に詳しくないが、レーサーとしての苦労や注意点は近しい視点を持つ。ならばこそ、そのアドバイスは優しいものだった。

 

「気負う必要はない。君達は君達の最大を出してくれたなら、人間はそれに全力を以て応える。せっかくなのだから、ゴールで待つマスターと笑顔で再会してくれたまえ。君達は、既に我々の仲間であるのだから」

 

「「「「「「「はい!!」」」」」」」

 

「うむ。それでは解散!ギルガメッシュ王の用意した宿舎と専用トレーニング場が各マスターに支給されたので、マスター側はキーを受け取るように!」

 

「燃えてきたわね…!行きましょう、リッカ!私達が一番の先駆け、フィニッシャーポジションなのは間違いないんだから!」

「おーっ!スカーレットが一番だってこと、メロスに見せてやろうね!」

 

 

「やろう、ライスシャワー。君が世界を救うヒーローだって、僕は全力で証明してみせる」

 

「ありがとう…!カドックお兄様のためにも、ライス、頑張るね!」

 

「良い豆がカルデアにはあるんだ。一服しながらミーティングしよう、カフェ」

「はい。お友だちもワクワクしています」

 

それぞれの思いを胸に、グランドリレー作戦ははっきりとした輪郭を帯びる。

 

「そういえば、ベリルさんはどこに?」

 

「俺ならここだぜ」

 

「うわっ!?なんかテカってません!?」

 

「色々治験したらこんなんなっちまった…だがまぁ、互いの技術確認に貢献できたならそれでいいさ、あぁ、いいのか」

 

「ありがとうベリル・ガット。君がいなければこの理論は確立しなかった。互いにマスターでもグランドウマ娘でもない者同士、陰に支えて行こうじゃないか!」

 

(まぁ…俺のパートナーなんて貧乏くじ、引くやつがいなくてよかったと思いますか)

 

【科学の邪魔になるものは倫理観、科学を発展させるものは実践投薬。ベリル、MVPだぞ。誇るといい】

 

「そうですね、おらこうなりゃなんだって来やがれ!」

 

「では、例の秘孔を突く不審者の技術を解明する為の実験を始めようか…!」

 

「なるべく痛くないので!」

 

こうして、カルデアの作戦は最終段階へと至るのであった──




マシュ「あれ?そういえば、キリシュタリアさんの姿が見えませんが…」

マルゼンスキー「ゴルシちゃんもいないわね?どこに行っちゃったのかしら?」


カルデアス内部

ゴールドシップ「へー、あのミニチュアってちゃんと星だったんだなー。大した技術じゃねーの?」

キリシュタリア「なるほどマリスビリー、こちらを焼き払うか漂白して置換してしまえば星を傷つけず表面を一掃できるのか…」

二人は異星カルデアスを探検していた。

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