人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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アグネスタキオン「おや、意外や意外。カルデアのスーパーエース、噂の藤丸龍華はまだ契約をしていないのかい?」

ニャル【そうなんだよ〜。誰とでも仲良くなれすぎて逆にこれといった相手が決められにくい。コミュカンストならではの悩みだよね】

アグネスタキオン「ふむふむ…いや、心配はいらないよ。彼女はきっと素敵なウマ娘に巡り会うさ」

ニャル【その心は?】

アグネスタキオン「彼女が世界を救った、この世界で『一番』のマスターだからさ」



?「アナタが、カルデアのマスター。藤丸龍華さんかしら」

リッカ「お?はい。私がリッカです!」

ダイワスカーレット「そ。…確かに端正で気合の入った顔付きね。タキオンさんの言った通り、最高のマスターで間違いなさそう!こんにちは、私はダイワスカーレットよ」

リッカ「おっ……おっ!?」

ダイワスカーレット「あなた、まだグランドウマ娘は選抜中よね?もし良かったら…私を選んでみない?」

リッカ「逆スカウト!?」

(ダイワスカーレットって、あの闘争心むき出しの一着かニ着しか取らなかった最高の雌馬さん!あまりにも体格がムチムチだったあの!?)

リッカ「ち、ちなみに所属学年は?」

ダイワスカーレット「中等部よ!」

「ちゅーとーぶ!?!?!?」

(163cmの目測B90・W56・H82はあるその恵体でちょっと前までランドセル背負ってたってコト!?…いや、それはともかく)

リッカ「──解った。お話を聞かせてもらえる?」

(紅い瞳に宿した覚悟…彼女はもしかしてなってくれるかもしれない!私が組む、ウマ娘に!)




一番最初のウマ娘

「それで、色んな人から色んな事を聞いて回っていたの。カルデアは本当にギリギリの状態で、それでも世界を救うことができたって。そこには、アナタっていう世界で一番のマスターっていう存在がいたんだってこともね」

 

艶やかな栗毛のスーパーロングツインテール(ほとんど膝丈)をなびかせ、前髪のインテークには母から譲り受けたシルバーのティアラが輝くウマ娘、ダイワスカーレット。母直伝だという髪型はファーシュシュのようなアクセサリーで結っており、左耳の下には真紅のリボンを付けている。目力の強いツリ目気味の目元、口の端に覗く八重歯がその気性を物語る…のだが、体育座りで河川敷を眺める姿はその勝ち気であろう性質は鳴りを潜めているように見える。

 

「その…ちょっとデリカシーがない情報まで読み取っちゃったの。アナタの御家族は、その…」

 

「あはは、私の血の繋がった親族との関係はメチャクチャのグチャグチャだからね。でも、気づかってくれてありがと」

 

ウマソウルの大本から、リッカはダイワスカーレットの行動を読み取る。おそらく、自分がグランドウマ娘になれたならカルデアで一番のマスターがいいと思い立ち。リッカの素性を持ち前の真面目さで調べたのだろう。一番のマスターのウマ娘になるには、パートナー候補を知らなくちゃと。

 

そして──リッカの素性を知った。彼女のパーソナリティは本人が特に秘匿するべきものと感じていないためフリーとなっている。ゆえに、彼女の半生をダイワスカーレットは知ったのだ。

 

「…アナタは、本当に凄いマスターさんなんだなって事が解ったわ。私とあんまり歳が変わらなくて、家族とも、その…あんまり上手く行かなくて。それでもたった一人のマスターとして世界を救うだなんて…アナタが一番のマスターだって、確信しか持てなかったもの」

 

「ふへへ……」

 

褒められると弱い質なので、リッカから虹色の粒子が漏れ出る。彼女はそれに気付かず、耳をしゅんとしなだれさせながら言葉を紡ぐ。

 

「初めてだったわ。色んなスカウトを受けてきたこのアタシがまさか、『この人に相応しい自分になれるか』だなんて考えるだなんて。それくらい…アナタは凄い人だと思ったのよ」

 

(ツンツン娘から褒めちぎられるなんて誉れがこの世にあったんですね…じゃんぬは理想のヒロインだったよ…)

 

「…気を引くために、アタシをグランドウマ娘に…だなんて言ったけど、ウマ令呪は刻まれてなくて…あなたには、アタシは相応しくないんだろうなって思っちゃったのも事実よ。ギルガメッシュトレーナーが言うのも解るくらいの、凄いマスターさんだなって…」

 

それはダイワスカーレットを知るものが見れば信じ難いほどのしおらしさ、覇気の無さと取るだろう。彼女は一番、何よりの高みを目指すウマ娘である。当然、もし自分がグランドウマ娘となれるなら最高の一番であるマスターと定めていた。

 

しかし、カルデアが誇る一番の基準は彼女が思う常軌を遥かに逸していたのだ。英雄達から数多無数の祝福を受け、絆を結び、自身も圧倒的な実力を有し、世界を救った実績を保持している。

 

それを目の当たりにしたダイワスカーレットは真面目ゆえ、考えてしまったのだ。

 

本当の一番、頂点に立つ存在というのはこんなにも凄まじいものなのか。

 

自分の曖昧な一番という目標が矮小にしか思えない、正真正銘の『一番』たる存在はこれ程のものなのか。

 

彼女は真面目で、一番になるためにはどんな努力も惜しまない。

 

だが…この人に並び立つには一体、どれほどの努力をすればいいのだろう。G1制覇でも足りない筈だ。天皇賞、トリプルティアラの全てを保持して、やっとだろうか。

 

…一番を標榜する自分は、本当の一番たる存在にどれほどの釣り合いが取れているのか。つまるところ、カドックが挑んでいる山脈の高さに、彼女は呆然と立ち尽くしてしまった…という事なのだ。

 

「…でも、アタシは妥協したくないって感じちゃったの。もし一緒に歩むならアナタがいい。どんなに苦境や理不尽が待ち受けていても挫けないで頑張ったアナタと、どうしてもパートナーになりたいって思っちゃったの」

 

例えその資格が無くても、例え並び立つ冠を持っていなくても。世界を救うだなんて夢みたいな目標を一緒に見るなら、この人がいい。この人じゃなくちゃダメなんだと彼女は思ったのだ。

 

「アタシはグランドウマ娘じゃないかもだけど…ううん、正直グランドウマ娘とか、資格とかどうでもいい。アタシは…アナタを尊敬しているの!」

 

「ダイワスカーレット…」

 

「資格にふさわしくないなら死ぬほど練習するわ!期日があるなら絶対間に合わせる!だからお願い、リッカさん!尊敬するアナタと、アタシはパートナーになりたいの!カルデアで一番のマスターであるアナタの…!」

 

それは、一番たる存在への敬意と、本当の一番に至るための自身への誓いでもあったのだ。グランドウマ娘に先に選抜された者達を彼女は当然知っている。そんな彼女らを差し抜いて自分が選ばれるなどと自惚れるほど愚かではない。

 

だがそれでも、彼女はリッカとパートナーになりたかった。その生き方や、成し遂げた功績、何より彼女が目指す、一番という称号の体現者が彼女と確信すらしていたからだ。

 

この人みたいに真っ直ぐに走りたい。

 

この人みたいに、沢山人を幸せにできるウマ娘になりたい。

 

それはダイワスカーレットが懐いた想いにして信念…人間がウマ娘や馬に希望を見出すように、彼女もまた、リッカに希望を見出したのだから。その希望を、偽ることが出来なかったのだ。

 

「お願いします!アタシを…アナタの一番のウマ娘にしてください!」

 

立ち上がり、深々と頭を下げるダイワスカーレット。誇り高く負けん気の強い彼女にとって、自身から願うという行為はまさに絶大かつ重大な意味を持っていた。

 

「うん!よろしくね、ダイワスカーレット!」

 

…そして。その意味を正しく、そしてしっかりと見抜き受け止められるのがリッカという少女であったのである。

 

「えっ…!?い、いいの!?」

 

「うん!こんなに褒めてもらって、私のことを見てくれたアナタをパートナーにしたいなって思った!」

 

「あ、あの…今更なんだけど、ウマ令呪はない、んだけど…」

 

「そんなの関係ないよ。私があなたがいいって思ったんだもん。それに勝る資格なんてないって!」

 

「ホントに?ホントに、アタシでいいの?」

 

「アタシでいい、じゃなくて、アナタがいいの!」

 

リッカからしてみれば、そんなものは当たり前ですらあった。こんなにも敬意を払ってもらい、自分のことを知った上で、自分の至らなさを認めた上でパートナーになりたいと言ってくれたのだ。

 

自分にとって、もう彼女しかいない。そう確信させるには十分だった。資格や実力なんてあとでいい。

 

──きっとそういう運命だったんだと、リッカは素直に思えたのだ。彼女の誠実さと、真っ直ぐさから。

 

「私と一緒に、一番になろう!ダイワスカーレット!大丈夫、アナタなら一番になれる!だって、私のウマ娘になるんだから!」

 

それは、彼女にとって最高の太鼓判。世界を救った、一番の憧れの人からの後押し。

 

「は…はいっ!よろしくお願いしますっ!」

 

喜びと、聡明さからくる『アタシはなんて無茶なお願いと売り込みをしているのか』という羞恥と後悔から、尻尾を千切れんばかりに振り赤面しつつ、リッカと硬い握手を交わす。

 

すると──

 

「熱、ッ…!」

 

ダイワスカーレットの右手に焼け付くような痛み。それは、彼女が、憧れの人の隣に立つための最初の証。

 

「…ウマ令呪…!アタシ、アナタのウマ娘として認められたのね…!世界を救ったマスターのウマ娘に!」

 

「光栄だなぁ、そんなに喜んでもらえて!私も嬉しい!一緒に頑張ろう、ダイワスカーレット!」

 

「えぇ!これはまだ始まり…アタシも世界を救う走りを身につけるんだから!」

 

…こうして、皮肉にも最後にリッカはグランドウマ娘と契約を果たす。

 

それは、世界を救う戦い…特異点を救う役者が揃った瞬間でもあったのだ。

 

 

 




ダイワスカーレット「はぁあ、緊張したぁ〜…改めて、アナタと契約を結んだダイワスカーレット!あなたには特別に、スカーレットと呼んでもらうわねっ」

リッカ「いいの!?いきなり略称!?」

ダイワスカーレット「いいのよ。アナタの隣に立つにはちょっとまだ力が足りないのは解ってる。ならせめて、速く絆を深めるきっかけくらいは作らなきゃね」

リッカ「グイグイ来るね!ふふ、さてはさっきのは本調子じゃなかったね?」

ダイワスカーレット「緊張してたの!アナタはもっと、自分の凄さを自覚して!」

リッカ「そだね!ダイワスカーレットのパートナーだなんて、凄い名前ももらえたし!」

ダイワスカーレット「そ、そう…?そんな風に考えてくれるなら、勇気を出したかいがあったわね…」

リッカ(あ、じゃんぬだ…気質がじゃんぬだ…)

ダイワスカーレット「じゃあ早速やってやりましょ!世界を救うためにも、バシバシ練習しなくちゃね!」

リッカ「おー!!」

…後に、調子を取り戻したダイワスカーレットとリッカはぴったり並走。

心配なので見に来たウオッカに『ウワーッ!』と盛大に驚かれたという

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