オルガマリー「マリスビリー・アニムスフィア…私の父親は一体何を考えていたのかしら。その成すべき事は一体何なのか。デイビッド、クリプターとはもしかして…」
デイビッド「…」
「…マリスビリーの考えていた人理保障、冠位指定。振り返れば謎だらけね。今更だけど」
デイビッド「オレが言えることは少ない。だが、伝えるべきは伝えよう」
オルガマリー「デイビッド?」
デイビッド「カルデアスに浮かぶ星はなんだ?」
オルガマリー「それは、超精密に再現された地球。ミニマムスケールの太陽系第三惑星よ」
デイビッド「オレたちの今いる星はなんだ?」
オルガマリー「地球、よね」
デイビッド「ならば、アレはなんだ?」
オルガマリー「…………地球……、………!」
デイビッド「『オレたちのいる星が地球なら、アレは異なる星だ』。どれほど精巧であろうと。どれほど緻密であろうと」
「…………異星、カルデアス……?」
デイビッド「レガリオン・パニッシャーが最適解だ。月の同盟者とコンタクトしろ。星を壊せる手段を、楽園は持たなくては」
オルガマリー「……デイビッド、本当にあなたは…一体、何を…」
?『すみません、お取り込み中すみません!どうかお話させてください!』
オルガマリー「誰!?」
『すみません、シッテムの箱から通信しています!カルデアの皆さまですね!お話をさせていただけますか!』
デイビッド「…」
『私はアロナ!アロナと言います!どうか『先生』を…助けていただけませんか!』
『ふぅ、なんとか通信を安定させる事ができました!改めまして、私はアロナといいます!こちらの世界の『先生』が持つ端末『シッテムの箱』から、楽園カルデアに通信を送らせていただきました!』
所長室に響き渡る、白き髪と蒼き服装の少女。自身をアロナと名乗るその存在は、楽園にコンタクトを通したメインOSという立場であるらしい。オルガマリーはデイビッドに目配せを送る。
(俺の話はどうでもいい。楽園を頼りにしてきた者を助けてあげるといいだろう)
(どうでもいいと言うには、ちょっと衝撃的すぎるわね…あなたは一体、伝承科で何を見て、何を知ったというの…?)
(取るに足りない事だ。だが落ち着いて急げ。安心しろ、俺達の道の全てが『活路』だ)
『…?どうかなさいましたか?』
伝えるだけ伝え、デイビッドは所長室を後にする。一先ず、全てが活路たる言葉を信じアロナを名乗るAIに向き直る。
「…こちらの話です。改めまして、カルデア…シャングリラ・カルデアの所長オルガマリー・アニムスフィア。よろしく、アロナ」
『オルガマリー所長ですね!よろしくお願いいたします!早速ですが、先生が今、抱えている難題にカルデアのお力添えをいただきたいのです!』
礼儀正しくぺこりと挨拶を返すアロナの話に任せ、コーヒーを淹れるオルガマリー。アイリーンのオペラとアマデウスの音楽をリクエストする。デイビッドの所感を並列思考に渡さなければ、依頼どころでは無かった。
『それでは御説明致します!私はアロナ、タブレット端末『シッテムの箱』のメインシステムです。そしてそれを起動させられた『先生』と共に、『学園都市キヴォトス』にて先生業務を日々行っています!』
「学園都市キヴォトス…聞いたことのない組織ね。別世界の存在ということかしら」
『はい!私の先生は日々生徒さんたちの為に奮闘に奮闘を重ねています。来る日も来る日も仕事や生徒指導、着任したばかりだというのに本当に頑張ってくださっています!』
先生業務の大変さは伺い知っている。ケイローン、上白沢慧音、榊原カリン。教授も含めれば高い教養と深い愛情を擁する難行である事は完全に見て取れた。
『先生はとても優秀です!とある一つの学園を救い、廃部と廃校を避けることができました!ですがその、その学園は契約その他諸々から多額の借金を背負い、在席生徒もごく僅かな状態なんです…』
「世知辛い話ね…。借金の額を参考までに」
『9億円近くとなります!利息はなんとか低レートですが、全て返済するにはかなりの時間が必要です…。それでも、対策委員会を名乗る学生の皆さんは返済に意欲的となっております!』
それはいい。返却に意欲的ならいつかは返却できるだろう。例えどれほど時間がかかろうと、何が問題なのかと聞けば、先生の行動方針だ。
『先生がそれを聞いて、なんと『全額返済出来るまで、私は他のタスクは請け負わない。なんとしても負債を帳消しにする』と言い出してしまいました…!先生は生徒の事を第一に考えてくださいますが、真面目で頑固で融通が利かず、言い出したら聞きません!先生が所属している『シャーレ』は、言わば様々な学園の問題を解決するための何でも屋です。そんな先生が他のタスクを請け負わないとすれば…』
「他の学園や、所属組織が機能不全を起こしてしまう。でも…たかだか3年程度の在籍期間で9億近くの返済は絶望的よ、どう考えても」
サラリーマンが生涯稼ぐとされる賃金は精々二億。その四人分を学生が高々三年で返済仕切る事など不可能だろう。おそらく、学園全体の借金なのであろうが…。
『このままでは先生も、アビドス学園とそこに在籍している皆さんも学園生活を借金返済で終わらせてしまいます!急務で、極めて短期間にこの借金を返済するためのプランを実行しなければなりません!しかし…』
「宝くじを二、三回一等当てするしかないわね。夢のようなプランだけれど」
『は、はい…。ですがそれは仰る通り夢物語!諦めるしか無かったその時、アロナの前に現れた鳩さんがおっしゃったのです!』
〜
困ったのなら、ここに連絡してご覧。
君達の奮起と奮闘を、正しく評価し裁定してくれる場所だ。必ず、道は開かれるっポ。
〜
(パパポポ…?何故そのような肩入れを…)
紛れもなく唯一神、善なる聖霊パパポポの導きであることを訝しむオルガマリー。何故、わざわざそこにいるアロナや先生を助ける気になったのだろうか?
『ハトさんから色々聞きました!楽園カルデアの皆さんは知恵や知識、解析機能を集めていると!私と先生も、きっと力になれるはずです!』
ですからどうか、力を貸してはいただけませんか!…誠心誠意に祈るアロナに、オルガマリーは所長としての決定を告げる。
「いいでしょう。楽園カルデアは、我々を頼りにしたもの等を決して見捨てません。私達にできる範囲ならば、喜んで協力させていただきます」
デイビッドの忠言がある以上、力や準備は必要不可欠だ。どんな細やかな見返りでも、カルデア…否、楽園に利益相反があるならば受け入れるべきだ。
全てを行うことが活路。デイビッド…グランドマスターズの一人にして、キリシュタリアと並ぶ才覚の持ち主を信じると決めた以上、断る理由は存在しなかったのだ。
『やったぁ!難しい事は考えなくて結構です!ただ皆さんは、別の学園のイベントを手伝う助っ人感覚で力を貸していただけたならば!』
「来訪からの出張イベントね。まずは私が査察します。どうすればいいかしら」
『はい!実はすでに召喚術式を多少解析し、神秘統合ゲートとして再現しました!シャーレ、先生の活動拠点に繋げています!こちらに!』
サラッととんでもないことしているわこの娘…。シッテムの箱というのが何を意味するのかはわからないが、その解析力がカルデアの力になるのならば喜ばしい。
…いや、正確には最早『フィニス・カルデア』に力を蓄えてはならないのかもしれない。これからは完全に『シャングリラ・カルデア』と【ケイオス・カルデア】に組織概要を引き継がせる準備が必要となってくる筈だ。
『?オルガマリー所長?どうなさいましたか?』
「あ、あぁ…いえ、何でもないのよ。考え事をしていただけ」
ディーヴァという電子の隣人。先日インストールされた『大賢者アプリ』。そして未知数の力を持つアロナ、そしてシッテムの箱。それらはカルデア…楽園カルデアの心強い力となるだろう。
『それではゲートにお入りください!学園都市キヴォトス、シャーレの先生のオフィスにご案内いたします!』
(………)
オルガマリーの頭に仮説が一つ浮かぶ。自分達は、自分達の生きる世界と人理を保障する為に戦ってきた。カルデアスもまた、そうあるべき存在と考えていた。
しかし、しかし。『カルデアスが有している星が異星であるのなら、マリスビリーは一体『どの星の』『人理を保障』しようとしていたのか?』という疑問にオルガマリーは辿り着いたのだ。
デイビッドの言っていた、『星を破壊する手段』。それは彼が、マリスビリーが考えていた『何か』を阻むために必要な手段であり手法だったのだろう。
そしてそれは『念の為』のようなニュアンスで勧められたものだった。それだけの謎が、最早二の次になっているということなのだろうか?
不明だ。不明にすぎる。分からないことがあまりにも多い。必要になるのだ。カルデアスの謎を解く力と智慧が。
『それではレッツゴー!えいえい、おー!』
アロナに連れられ、彼女は思考を切り替える。
…いや、切り替えるしか無かったのだ。彼女には最悪の可能性が思い浮かんだのだから。
即ち────
(…カルデアス、マリスビリー・アニムスフィアは『私達人類の敵である』のかもしれない…)
世迷い言にしては重すぎる不安を脇に追いやり、彼女は一人向かう。
──透き通る世界。学園都市キヴォトスへと。
学園都市キヴォトス
シャーレ・オフィス
アロナ『ようこそ、オルガマリー所長!ここが学園都市キヴォトス、シャーレのオフィスになります!』
オルガマリー「異世界だったわね。まぁ、予測はしていたけど」
アロナ『それでは先生を紹介します!先生ー!帰りましたよー!』
?「───ここにいる」
そうして、オルガマリー・アニムスフィアの前に現れた先生たる存在。青と白の服装をした、稲穂色の髪と赤目、白き肌。人間離れした美貌の青年。
「アロナが失敬した。謝罪と共に、歓迎する。カルデアス所長、オルガマリー・アニムスフィア」
「あなたが、先生?」
「あぁ。放浪していた所を拾われ、先生として活動することになった──アダム。アダム・カドモンだ」
アロナ『アダム先生!それでは早速打ち合わせを始めましょう!』
オルガマリー「─────」
……その時。彼女は理解した。なぜ、パパポポが世話を焼いたのかを。
アダム「至らぬ新米だが、先を生きる者として生徒に最善を尽くす。協力してくれ」
彼こそは───始まりの人間。始祖アダムに他ならなかったのだから──
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