ニャル【神霊クラスか。厄介な…ん?】
マイノグーラ【どうしたの!?】
ニャル【…………………問題ない。これはもう、私達の勝ちだ。何度も何度も墓穴を掘るのが好きな奴らだったな、全く】
マイノグーラ【???】
ニャル【真尋少年達にも帰還命令を出そう。もう、戦いは終わるだろうからな】
マイノグーラ【どういう事…???】
ニャル【悪と繋がっているということは、ただ善にいるだけじゃできないズルができてしまうのさ。…ある意味で…】
『彼女』が来なかった事は幸運だったのだろう。──奴等にとって。
【混沌の者共よ…神は貴様らだけではない。この星には数多無数の神がいる。この土着における神は、我等の想像を遥かに超える神々がいるのだ】
グールの集合体。醜悪に歪んだそれは聖杯を高々と掲げる。その願いは種の繁栄。そしてそれを邪魔する者たちの排除。極めてシンプルなものだ。
だが、世迷い言や末期の句に散るそれを汲み取るは聖杯、万能の願望機。グール達の呼び声に応え、十分な魔力を有すれば…この局面を打開する存在を呼び寄せる事は叶う。グールはその魂を用いて、それを呼び出さんとしているのだ。邪神、或いはそれに魅入られたと断じた者達を。
【やはりあのワケの解らないコップが元凶でしたか!ナイアさん、別にアレを壊しても構わないのですよね!】
「…聖杯は回収が優先です。ですが悪用されるくらいならば。私が責任を持ちます!破壊しましょう!」
【それは違いますねぇ!私が先ばしって勝手にやった!つまりあなたはノットギルティー!!死ねぇ、ゴブリンめいたグールーッ!!】
跳躍し、キックを浴びせるニャル子。当然、聖杯を砕かんとした必殺の一撃。渾身の跳躍キックだ。ナイアを巻き込まず、責任を負わんとしたライダーキック。
【遅い…!我等の悲願は既に託した!!】
【ぶわっ!?】
だが、グールの掲げた聖杯から濁流が如き魔力…泥が流れ出し、辺りを焼き尽くしていく。すんでのところで反転し、逃れたニャル子であったが、グールはその泥に呑み込まれていく。
【この地球には、混沌に並ぶ遍く全ての敵…即ち【絶対悪】が存在する。あらゆる全てに敵対する存在、世界の全てを結集させた悪の神が。我々は知ったのだ。原初における悪という概念を司る悪魔、神は存在すると!】
「…ん?」
【それこそが、貴様らを滅ぼしうる存在!あらゆる善に抗い、あらゆる悪を成し遂げる邪悪なる存在!我等グールはそれらを呼び、善と光を飲み込み世界に終焉を齎し…星を手に入れる!】
ナイアにはそれが聞き覚えのある存在であることに思い至る。だが、グール達は構わずにその魂と存在の全てを供物として、聖杯に願いを告げる。
【来たれ、邪悪なる絶対神よ!外なる神々すらねじ伏せるであろうこの世すべての悪よ!悪であるが故に、世界の全てに厄災を齎せ!】
「……んん…??」
【悪足掻きを!!ゴミはゴミらしく死んでおけばいいんですよって!!】
【我等の肉体を、魂を、悲願のすべてを捧げよう!さぁ蘇れ!【
止めるニャル子がタッチの差で吹きとばされ、願いを受理した聖杯が輝き始める。聖杯は際限なく泥を吐き出し続け、その輝きのまま天空に登っていく。
【ちぃっ、間に合いませんでしたか…!それにこの禍々しいオーラは!】
「ん〜…??」
【気を付けてくださいナイアさん!このとびきり邪悪なオーラ、間違いなくラスボスと見ました!いよいよクライマックスという感じですね、気合い入れて行きますよ!】
盛り上がるニャルに対して、ひたすら首を傾げるナイア。辺りを満たす邪悪な気配、魔力。何故ならそれらに心当たりがある。叫んだ彼の名前はとてもよく知っている気がする。
そんなナイアの予想を受けたか知らずか、聖杯に無数の魔力、グールの魂たちが贄として捧げられる。恐らくここにいない数少ない同胞に未来を託したのだろう、命をかけた召喚を果たしたのだ。
「うぅん、なんというか…あのグール達は非常に残念な事をしたような…」
【どういう事です!?】
「いえ、あの。もし予測が間違っていなければ…呼び出されるのは…」
だが、ナイアの思慮というか憂慮というか、非常に大変残念な予測が当たらなければ…といった淡い期待すら、グールらにとっての起死回生は最悪な形で裏切られることになる。聖杯は空間に、闇より深く漆より黒い孔を穿ち──。
【あだっ!?】
【ファッ】
二人の、少女と幼女を吐き出したのだ。ニャル子も流石に理解が追いつかないのか、警戒を解かずとも硬直している。
【いてて…どこだここ?なんか供物を捧げて祈られたような気がして穴に手を突っ込んだら引っ張られちまった。クソ、映画途中だったのによ】
【聖杯ッ。回収(ヒョイ)】
【あー、誰か招こうとしたって話か?どこの馬鹿だ、聖杯に神霊召喚を頼むようなモグリは。神霊は召喚難しいってのは常識だろうが。ったく、わざわざ引っ張ってまで来やがってよ〜】
マイペースに立ち上がる、橙の髪の少女が聖杯を抱える幼女を助け起こす。ともすれば姉妹に見えるそれは、聖杯をあっさりと回収する。持ち主が消えた聖杯を。
「アジーカさん!?アンリマユ様!?」
【む、ニャルの娘ェ】
【おー、ナイアちゃんじゃねーの。どした?つーかどこだここ。呼ばれたのか?私ら?】
【禍々しい邪悪なオーラ!って、え?ナイアさん知り合いなのですか?誰ですかこいつら?】
ナイアからしてみれば知己であり、グール達の願った通りの神が招かれた。最悪の眷属と共に。ただ、それはあまりにも不幸な偶然が重なってしまい、グールの思うようにはならなかった。
まず、この世界には英霊の座がなく、側面を切り取るサーヴァントは招けなかった。よって、悪神アンリマユのサーヴァントすらアクセスできなかったのだ。
しかし、潤沢な魔力リソースは聖杯に力を与え、別世界にアクセスを広げた。はじめから存在していた召喚されていたアンリマユを、呼び寄せる形で召喚したのだ。
だが、神霊を完全に呼び寄せるのは聖杯と言えど不可能であり、結果としてナイアの縁を辿り、アンリマユを呼び寄せたのだ。…彼女が所属するカルデアに存在する、正真正銘の悪神。リッカの殻を被り、セーヴァーの精神と魂を使用したアンリマユ。並びに、その眷属であり悪龍たるアジ・ダハーカを。
【リッカは呼ばれなかったってことは別口の召喚か。まぁ呼ばれて悪いんだが、私達は味方には手を出さねぇし私達だけじゃ戦わないぜ。私達は、藤丸リッカの半身だからな】
【願いをボイコット悪神is邪悪】
【賢いといえ賢いと。とりあえずもう、戦いはいいんじゃねぇかな?】
ナイアはその提案を受け頷く。ザッハークならば死闘の再演だが、幸いな事に彼女らは完全な味方だ。戦う理由も、意味もない。
要するに…グール達は縋った神に見放されたのである。それは信仰無き畜生にはお似合いであり、最高に皮肉な結末でもあった。
「もう大丈夫です。聖杯を回収し、囚われた人々を開放しましょう」
【………え?と、言うことは…もう終わりですか!?ナイアさんの知り合いの神様を呼んだグールは無駄死にで終わり!ニャル子さんコラボは相手方の自滅でキレイに片付いたということですかぁ〜〜っ!?】
「そういう事に…なりますね、はい。二人は完全に私達の味方なので…」
【どういう事ですか!?アンリマユやアジ・ダハーカと仲良しな正義の味方ってどういう事なんですか!?ニャル野郎!ニャル野郎はどこですか!詳しく!詳しく説明プリーズ!こんなギャグ漫画みたいな決着があってたまりますかーっ!!】
コメディめいた完全決着に憤慨を極めるニャル子。楽園カルデアと、特異点解決のプロ人員がブッキングしたが故に起こった、冗談みたいな結末。
【…私達もラスボスみてーに登場するべきだったのか?】
【大ボスのオファー…蹴り飛ばしてしまった】
【…〜。ま、別にいいだろ。私達を呼ぶやつなんざどうせ…】
【まともでないし、ろくでなし】
【そういう事だな。さ、コンビニでも寄って帰ろうや】
【ニャル野郎のバカはどこだ!!ニャル野郎出てこい!!】
「お父さんはヒマラヤに雪解け天然水を取りに行ったので…!」
…こうして、聖杯と人員は余さず回収。この特異点は、コメディチックなエンディングで解決に向かうのでしたとさ。
女生徒宅
女生徒「ん…」
母「あぁ、目が覚めた!大丈夫!?」
女生徒「あ…!」
父「どこも怪我してないか?大丈夫か!?」
女生徒「お父さん…お母さん…!」
母「ごめんね、心配かけて…!」
父「ちゃんと私達だ。ただいま…ただいま!」
女生徒「お帰り…お帰りなさい、ふたりとも…!お帰りなさい…!!」
窓際
ニャル【依頼達成、だな】
ナイア「はい。…お父さん」
ニャル【ん?】
ナイア「ずっと、仲良しな家族でいましょうね」
ニャル【…勿論だ。私は、家族と取り巻く全ての為にこの身を捧げる覚悟だとも。当然、お前にも】
家族の無事を見届け…二人は踵を返す。確かにそこにあり、守り抜いた報酬を受け取りながら。
──欺瞞に満ちた、夜は明ける。
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